『VENGEANCE』 8



―やられ・・・る・・


ミコトの脳裏にそんな言葉が浮かんだ。
人間の反応速度を考えてもミコトが防御の姿勢にうつり攻撃を防ぐには到底時間は間に合わず、ミコトに与えられた猶予の中で出来る事と言えば攻撃を受ける覚悟をする位のものだった。


ドスッ


syouitirouの一撃がミコトを貫く鈍い音が辺り一面に響く・・・・・はずだった。
しかしsyouitirouの捉えた獲物は地面だった。
syouitirouはもちろんの事、周りで戦いを観戦していたmikusuke達そして何よりも攻撃を受けていたはずのミコト自身も攻撃が外れた事に対し驚きの表情を見せていた。
唯一人、Stojikovicを除いて。
「ミコト、行け!」
Stojikovicが大きく叫ぶ。
Stojikovicの声にいち早く反応したミコトが振り向きざまに剣を振る。
「ちっ。」
一歩遅れて反応したsyoutirouがミコトの攻撃を間一髪でかわし応戦した。


「ストさん今のは一体?」
mikusukeが尋ねた。
「前にミクさんに言ったかどうかは忘れましたがミコトにもゴッドギフトと呼ぶ事の出来るものが備わっています。」
「以前、初めてミコトと出会った時に不意をついて攻撃をしかけた事がありました。それをミコトは無意識のうちに重心をずらして避けていました。」
「ふむ・・今のを見るとそれを頷かないわけにもいかないですね。“無我の反応”とでも言ったところでしょうか。」
「そうです。今までの戦闘では本当に無意識のうちにかわしていたのですが、今回動作を意識する事が出来ました。」
「そこまで計算してミコト君を戦いに送り出したのですか?」
mikusukeが驚きの表情を浮かべながら話した。
「まさか、そこまでは計算出来ませんでした。これが能力を自由に扱ういいきっかけになるといいんですが・・・。」
「本当にそんな事が可能なのでしょうか?」
「わかりませんが期待したいじゃないですか。無意識がいつか意識的に出来るようになり“無我の反応”が“超反応”になることを。」
Stojikovicが力強く語る。
そしてその目線の先にはまるでその期待に答えるかのように強敵syouitirouと一進一退の攻防を繰り広げているミコトがいた。
















『真説RS: 赤石 物語』 第1章 『VENGEANCE』-8







「はぁ!!」
一度崩れた体勢を立て直すべくミコトが必死に攻め立てる。
「くっ。」
確実に決まったはずの攻撃が不発に終わるという不可解な状況に戸惑いながらもsyouitirouもイニシアチブをとるべく応戦していた。


「この流れを制した者がそのまま押し切りそうですね。」
「確かにそんな気配がですね。」
Stojikovicとmikusukeが戦いを眺めながらそんな会話を交わしていた。
「syouitirouは指輪の能力を気にして攻めあぐねている。それどころか何とかして距離を取りたいといったとこですか。」
「ですね。それに対しミコトは距離をあけられないように必死に食らいついていっているものの有効打を打てずにいる・・・。」
「お互いのダメージは五分五分といったところでしょうか・・・・ミコト君を信じましょう。」
「はい。」


ガギィ


ミコトの剣とsyouitirouの鉄爪が交差した金属音があたりに響く。
丁度、鍔迫り合いの様な形になり一時、戦闘の流れが止まった。
「ふぅ・・ふぅ・・。思ったよりもやるじゃねぇか。くく・・・それでも勝つのは俺様だがな!」
syouitirouがミコトに対し言葉を吐き捨てる。
「もう・・・誰にも負けない!目の前で味方が倒れる様な事はあってはならない!!」
ミコトが強い口調で返した。
ミコトの脳裏に2つの記憶が浮かんでいた。
ひとつはガラテアがキラーボーイズの手により倒れ崩れたところ。
そしてもうひとつは今と同じような状態で対峙したあの場面・・・・バアルとの一戦だった。
―もう誰も・・・・
ミコトが強く、強く思う。
「大そうな意気込みだが大いなる力の前ではどんな意気込みも無駄だという事を知った方がいい。」
syoitirouがきっぱりと言い放つ。
そして力を込めミコトを押し切った。
勢いに負かされミコトが後方にはじき飛ばされる。


キィィン


その隙に鉄爪を上手く利用し刃部分を剣にからませた。
剣がミコトの手からするっと離れ近くの地面に突き刺さった。
「くく・・・さっきは何故か攻撃が逸れてしまったがこれでチェックメイトだ。」
微妙な距離を開けミコトとsyouitirouが対峙する。
ミコトの手には剣が無く、2人から少し離れたところにつきささっていた。
―く・・・剣を取りにいけばその隙を確実に狙われる。
―クライもトワーも先程のように効果が見られない・・・どうする・・・・
それは誰がどう見ても最悪の状況だった。
「くそぉ!」
ミコトがやきがまわったように最後の手段に出る。
それはミコトに唯一残された選択肢、盾による攻撃だった。
ミコトの腕を離れた盾が回転しながらsyouitirouへとむかう。
「下らん。」
syouitirouはまるで何事も無かったかのようにその攻撃をかわしミコト向い最後の攻撃を仕掛けた。
絶望的な状況下、ミコトの顔が少しだがにやけた。


ヒュンヒュンヒュン


ブーメランの様に放物線を描きながら投げつけた盾が戻ってきていた。
syouitirouの死角、背部へと。
「実に下らん。」
攻撃態勢に入っていたsyouitirouが後方を確認しないまま簡単に盾をかわした。
ミコトの考えなどまるで初めからお見通しだと言わんばかりに。


「これで最後だ!」
大きく腕を振りかぶり可能な限りの力を込めた必殺の一撃がミコトに振り下ろされる。




















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