第1章 『出会い』

一面の緑の上を心地よい風が吹き抜ける。
穏やかな日差しに照らされながら稲穂達がいっせいに踊りだす。


ここは古都より少し離れたのどかな田園地帯。


どこの風景をとっても一つの“画”になりそうだ。
そんな中、大きな悪意をおびた狂気が蠢き今、その牙をむこうとしていた・・・・・










『真説RS: 赤石 物語』 第1章 『出会い』-1






その者は自らの小さい体躯を最大限に活かし、音無く気配も残さず少しずつだが確実に標的へと足を進めていた。


青年はそんな事にいっさい気付く様子はなかった。
これから始まるであろう旅に希望を胸に膨らませ、まだ見ぬ将来の自分の姿を想像し笑みを浮かべていた。


ガサッ


青年の近くで草が揺れる音がする


「お!野うさぎだ。可愛いなぁ」
青年は草むらから姿を出した野うさぎに興味を持った。
しかし、彼は今だに気付いてない。
この行為が彼の命取りになってしまうことを・・・・


!!


その者がその瞬間を見逃すはずはない。
確信とも言えるほどの自信を得て、右手に持たれた槍に籠められた狂気を標的へと向ける


ガサガサッ


再度草むらがなる


―こいつの親かな?
そう思い振り向いた青年の目に映ったのは
ファミリア!!


彼が想像していた“それ”と比べ何回りも大きい体、そして自分に狙いが定めてあろう槍が彼に大きな衝撃と絶望を与えた。


「キィィィ~~~~!!」
人語ではない雄叫びにも似た叫びと共にファミリアが渾身の一撃を彼めがけて放つ。


半ば自らの最後を確信した彼の目に何か黒い物体が映った。


キィ――――ン!!
金属と金属がぶつかり合う乾いた音が周囲に広がる。


何がなんだかわからなかった。
少し前に確かに男目掛けて槍を突き刺した。自信の一撃だ。
いつもならすでに自分の足元にいるはずだ。
しかし、男は今だ目の前で立っている。


―いつもと何か違う・・・?
ファミリアの目に入って来たのは、同じ様に何が起きたのか理解してないであろう男の姿と、男の周りをグルグルと回る・・盾だ。


「ふ~、何とか間に合ってよかったぁ。」
ふいに女性の声がした。


声の方向に目をやるとそこには全身に鎧を、手には剣を纏う2人剣士の姿があった。


「ま、すぐ終わらせてくるわ」
もう片方の剣士が口を開く。声からして男性の様だ。
言い終わると、男は目にも留まらぬ速さでファミリアに近づき、ファミリアが持つ槍を払い落とした。


「パラレルスティング」
そう呟くと男の左右にいくつもの分身が生まれた。
その分身たちがファミリア目掛けていっせいに攻撃を繰り出す


ゲボッ


ファミリアは地面に倒れこみそのまま起き上がってくる事はなかった。


「ん~~、大丈夫??」
今だ何が起こったかわからなかったがその一言で我に帰る事が出来た。


「あ、・・ありがとうございます!助かりました!!」
「いや・・・ま、まぁ仕事でもあるしね・・」
男は照れを隠すように答えた。
「同じ様な事あったらあかんし、これ使い」
そう言って腰にかけられていた剣を青年に渡した。
「でも、こんな・・・・」
「いいから、もし不要やったら適当に処分してくれたらいいから」
青年は少し考えたが
「わかりました。大切に使わせていただきます。」
そう言い、剣を受け取った。


―!!
「そろそろコルくるみたいやから行くな」
そう言うと2人の剣士の周りを薄く光が覆いだした。


「あの・・自分、ミコトっていいます。このご恩必ず返します!!」
「あぁ、またな」


そう言い残し男たちは光の中に消えて行った


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