『成長』 4


タッタッタッ


「はぁはぁ・・・くそっ・・誰だ?!」
暗闇の中、何か得体の知れないものに追われ無我夢中で逃げるもいっこうに離れた様子はなく振り返ってみても目に映るのは果てしなく続く漆黒の闇だった。


―何を恐れる?何故に逃げる?
―全ては無駄だと理解しろ


「うるさい!姿を現せ!」


―クックック・・・・姿か・・・今にわかるさ
―今にな・・・・クックック・・・・


ガバッ
「はぁ・・・はぁ・・・・夢か・・・」
気がつくとそこはベッドの上だった


「お前だいぶとうなされてたぞ。寝汗もすごいし大丈夫か?」
「はい・・大丈夫っす。」
「だいぶ顔色悪いけどなぁ。まぁ先に下降りとくからすぐに来いよ。」


ガチャ


「なんだったんだあの夢は・・」
ただの夢にしては頭の隅にいやに鮮明に残る声が一抹の不安と不快感を残していた。










『真説RS: 赤石 物語』 第3章 『成長』-4







「よし、今日の任務はここまで。」
「「了解!」」
Andrsenが本日の任務が終了した事を告げた。


「キコ、晩御飯冷めるから早く帰っておいで。」
ミコトと共に宿舎に戻ったkikouteiを呼ぶ声がした。
「あっ、ペコさん今晩は。」
声の主はおっさんずのギルメンでありkikouteiの妻である不二家だった。
「今日もお疲れ様。調子はどうだい?」
「少しずつですけどPTにも慣れてきました。」
「それは良かった。確か今日はこの後も修行だったわね。終わったらうちに来なさい。温かいシチュー入れて待ってるからね。」
不二家の暖かい笑顔は任務で疲労のたまったミコトの心に心地よく響いた。
「ミコト、俺のつけた漬物もあるから遠慮なくね。」
「はい、特訓の後必ず伺います。」
そう言い残しミコトは修行場へと足を進めた。


「任務お疲れ様。疲れてるだろうけど時間もあまりない事だし早速始めよう。」
修行場でミコトの任務終了を待っていたのはおっさんずの剣士として3指に入るほどの達人の半魚人だった。
「半さんよろしくお願いします。」
「この前のakariさんとの修行風景見させてもらったよ。」
「今回は近距離戦での心得を教えたいと思う。まずは体で感じ頭で理解する。それからよく考え除々に体に染込ましてくれ。」
「今日はこれを使う。」
そう言って腰に携われていた2本の木刀のうちの1本をミコトに手渡した。


「隙があったら会話中でもかかってきてくれていいぞ。」
「わかりま・・」


ドンッ


「クッ・・・」
言い終わる前に半魚人の剣がミコトを襲った。
「かかってきていいと言う事はかかっていっていいと言う事だ。」 
「時と場合にもよるが大抵の場合“先”をとる事で有利立つことが出来る。」
「・・・“先”」
ミコトがつぶやく。


―ならこっちが“先”を獲る!
ミコトが攻撃の態勢に入る。
「甘いよ。」
しかし、半魚人が突きつけた剣がミコトの勢いを殺しミコトが攻撃の態勢に入る事はなかった。
「これが“先の先”」


―くそっ・・もっと速く・・


ヒュン


ミコトの2撃目は1撃目の様に勢いを殺される事もなく刀先が綺麗な弧を描きながら半魚人を襲った。
―!!
しかし、捕らえていたはずの場所に半魚人の姿はなくミコトの剣は空を斬った。それと同時にミコトの腹部に激痛が走る。
「これが“後の先”」
すでにミコトの背部に移動していた半魚人の剣がミコトの腹部を捕らえていた。


「クッ・・・」
体勢を立て直すために距離をとったミコトだったが再び剣を構える前に小さな無数の黒い影が目に映った。
「うわっ。」
急いで防御の体制をとり影から身を防いだ。
「石?砂?」
小さな影の正体は地面に落ちている砂利であった。
いきなり飛んできた砂利に一瞬の間目を奪われていたミコトの視界に先ほどより大きい影が先ほどより速い速度で入り込んだ。


バシッ
視界に入ると同時に鈍い音が辺りに響いた。
それはまたミコトに幾度目かの激痛を与えた。
「そしてこれが“虚”」
「“虚”をつく事で不利な状況に置かれた者。体格などで劣る者もそれをカバーする事が出来る。」


―“虚”・・・この状況で半さんの虚をつく事は難しい・・
「どうした?!かかってこないならこっちから行くぞ。」
特訓を始めてから初めて半魚人が構えを見せた。


―落ち着け
―“先”をとり“虚”をつかれない方法・・・・


何かを思いついたのかミコトの目により一層の力がこもる。
「はっ!!」
気合と共にミコトが半魚人むけて連撃を繰り出した。


カンッ  ガッ  カンッ


繰り出される攻撃に半魚人も防戦一方気味に押される。
防戦一方の半魚人を前にさらに勢いを付け攻撃を加えた。
「ぐっ」
勢いに押され半魚人の体制が崩れた。
「もらった!」
ミコトが渾身の力を込め剣を振り下ろす。
ドッ
しかし渾身の一撃が捕らえたのは半魚人ではなく地面だった。
「これが“勢の虚”だ。」
体勢を崩したはずの半魚人は何事もなかったかの様にミコトの横に立ちミコトの喉元に剣を突きつけていた。
「そして・・・」
ガッ  ドカッ
半魚人の足払いにおりミコトは体勢を崩し横転した。
「これが“気の虚”だ。」
「連撃はいい考えだが攻撃の時も目だけの情報に頼ってはダメだ。一点だけに集中せず体全体で流れを感じ取らないといけない。」


「丁度日も暮れてきた事だし今日はここまでにしよう。」
気付くと周りはすでに暗くなっていた。
「手も足も出なかったです。悔しいです。」
立ち上がり体についた埃を手で払い落とすミコトの顔からは悔しさの色が滲み出ていた。
「はっはっ、これでもミコトの何百倍も技術を磨いてきたんだ。少しはいいかっこもさせてくれよ。」
特訓を終えた後の半魚人は先ほどまでとは別人の様な優しい顔をしていた。
「冗談は置いといて、連撃はいい考えだと思う。勢いも圧力もあったよ。」
「次はもっといいところ見せます!いつか必ず勝ちます!」
ミコトの顔からもいつの間にか悔しさではなくやる気の色が見えてきた。
「その意気だ。大丈夫、今の気持ちを忘れない限り強くなるよ。」
「今日キコさんのとこ行くんだろ?早く切り上げて行かないと。そこいらのMOBより怒ったペコさん怖いからなぁ。」
「え・・・本当ですか?」
「嘘だよ・・・・・多分」
「多分ですか!急いで行った方がよさそうですね。」
「ははは、急いで行っておいで。」


「やれやれ・・俺ももっと修行しないとすぐに抜かされそうだな。」
ミコトを送り出した半魚人がつぶやく。
しかしその顔は息子の成長を楽しむ父親の様に微笑えんでいた。



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