『成長』 7


「これよりミーティングを行う。」
そこでは屈強な戦士達が円卓を囲い話し合っていた。
「荒廃都市ダメル西側のガディウス大砂漠にて周辺部族の一派が自分達の縄張りを主張するため他部族の者を人質に取り自営地に立て篭もっているとの報告あり。直ちに人質を解放させ出来れば和平交渉を行われたし。」
「以上がギルド連合から来た任務である。」
「これに課せられた期限は1週間。それを過ぎれば任務失敗と見なす。」


「何か質問は?」
一通り話し終わり参加者を見渡した。
複数の手が上がる。
「では右から順に。」
指名された者がその場で立ち話す。
「機嫌が一週間とは一体何故ですか?」
「うむ、先に他ギルドによって相手方の食料補強ルートを抑えてある。現在では10日程で食糧がきれる見込みであるが食糧がきれてくれば最低限の人数を残しあとの人質は殺害される可能性がある。あくまで任務は人質の救出である。わかったか?では次!」
続いて隣にいた男が質問をした。
「細かい役割分担はどうされるんですか?」
「うむ、細かい指示はその都度それぞれの小隊長に伝える。いつでも動ける状態で待機して欲しい。次!」
「へぇへぇ・・失礼します。もし相手が言う事を聞かず襲ってくる事があれば反撃してよろしいんで?」
「うむ、相手は指折りの戦闘部族との情報も入ってきている。もし戦闘に入る事があれば各自の判断に任せる。しかしあくまで人質の命が最優先である事も忘れない様に。」
「へぇへぇ、わかりました。我が部隊に交渉術に長けた者がいますので是非交渉はお任せを。」
「一考はするがそれは上部の考える事だ。」
「へぇ・・すみません。」
「質問は以上だな。それでは明日の正午を作戦開始時刻とする。各部隊開始時刻に間に合う様に集合する事!それではミーティングを終了する、解散!」
開始から10分程度でミーティングは終了した。


全員が出て行き誰もいないミーティングルームで誰にも聞こえない位の小さな声で話し合う二人がいた。
「小隊長殿、はたして交渉役は我が部隊に来るのでありましょうか?」
「ちぃ、全員部屋から出たとはいえどこに人がいてるかわからんのにいらん事を言うな!と言いたいがまぁいい。ふん、それに関してはすでに手をうってある。」
「という事は・・・・」
「ちぃ、それ以上は言葉にするか、ばかもん!」


 ・
 ・
 ・
「クックック・・・浅はかな人間共が私利私欲の為によく働いてくれる。」
「失礼します!潜伏している者から用意が整った。いつでも開始可能との伝言が届きました!」
「クックック・・・そうか・・・では早速始める様に伝えろ。」
「はっ!」
「クックック・・・さぁ・・宴の始まりだ。クックック・・・・」
闇よりも暗いその声はさらに深遠の闇へと消えていった。


運命・・・一つの光が引き裂かれる時、複数の歯車が噛み合い一つの闇が生まれる。
その時は・・・間近に迫っていた・・・・・










『真説RS: 赤石 物語』 第3章 『成長』-7







「おっす、この前はキオに打ち込まれたそうやね。」
「はは、こてんぱんにやられちゃいましたよ。でもすごく勉強になりました。」
宿舎ではkioraとの戦いの傷が癒えたミコトとガラテアが話し合っていた。


「いよいよ対決まで2週間きったね。年越してすぐに対決ってのもなかなか面白いもんやな。」
「日付はたまたまですけど・・・でも皆さんが鍛えてくれたのを棒にふる事だけはしないように頑張りますよ。」
ミコトがこぶしを作り熱弁した。
「うんうん、いい心構えだ。で今日は一つ提案あるんやけど。」
「提案ですか?何ですか?」
「これから2週間体に鞭うってトレーニングするよりも体を休め、心を落ち着かせ対決に向けていいコンディションで臨める様に時間ギリギリまで一緒に出かけんか?」
思いもよらない提案に少しビックリしたミコトだったが
「はい、是非!」
今だ一緒に修行した事のないガラテアの実力を見る為そしてコンディション作りの為に特に迷う事なく返事した。
「おぉ、そうか。なら出発は明日の朝にしよう。」
「どこに行く予定なんですか?」
「んー、大したところではないんやけどちょっとした思い出の地なんよ。」
少し照れた様子でガラテアが答えた。
「なんか怖いなぁ・・強いMOBいたりとか・・・」
「ははは、強いMOBか・・・いたりしてね。」
「え・・・」
ガラテアの言葉にミコトは少し困惑の表情を見せた。
「冗談やって。さっきも言ったけど体休める事が目的でもあるからそんな構えないで楽にな。」
「よし、準備もあるから今日は休もうか。」
「はい。」
そう言い2人はお互いの部屋に戻り身支度をし始めた。


「ん・・・ふぁぁ~。」
出発の日の朝は肌をさす様な寒さだったがそれでも雲一つない空からサンサンと降り注ぐ太陽の光により幾分かましだった。
「準備は大丈夫?」
「はい。」
「よし、行きだけ付近の町までポータルあけてもらうから早速行こうか。」
そう言いAndrsenがあけてくれたポータルの中へと2人は消えていった。


「ん・・・・ここは?」
「ここは砂漠村リンケン。来るの初めて?」
「リンケンですか、初めてですね。」
今までに行った事のある街と比べ人が少なく時折西から吹きぬける風に乗って運ばれてくる砂塵が頬に当たった。
「砂漠村って事は砂漠近いんですか?」
「リンケンは古都ブルネンシュティングと砂漠都市アリアンの間に位置していて東側にはグレートフォレスト、西側にはガディウス砂漠があって砂漠地帯への入口、出口的な村かな。」
町中にはチャドルなどを見に纏い砂塵から身を守っている人やそういった物を着用せず普通の服装の人がまばらにいた。
「じゃあ目的地まで歩いて行こうか。」
「砂漠方面ですか?」
「いや、東側のグレートフォレストに向かおう。」
そう言いながらガラテアとミコトは西側の出入口から出て町を後にした。


「ガラさん、その場所にどんな思い出あるんですか?」
町を出て目的地に向かう途中が尋ねた。
「そうやなぁ。若い頃のちょっと苦い経験と1人の大切な恩人・・いや一家族との出会いがあって自分の中の転換期を迎えた場所・・・かな。」
ガラテアは遠くを眺め昔を思い出す様に答えた。
「もしよかったら聞いてもいいですか?」
ミコトが尋ねた。
「いやぁ、ほんま大した事じゃないしなぁ・・・まぁ、目的地まで時間あるしいっか。」
「昔・・・」
ガラテアが話し始めそれをミコトはおとぎ話を熱心に聞き入る子供の様に聞いていた。


「・・・・とまぁこんな感じかな。大した話ちゃうかったやろ?」
ガラテアが話し終わり聞くと
「いえ、聞けて嬉しかったです。その家族にあってみたいですね。」
ミコトが笑顔で答えた。


話が終わる頃にはすでに太陽が東側に影を作り始めていた。
「さぁ、ここが言っていた目的地だ。」
古都ブルネンシュティングと砂漠村リンケンの間にあるグレートフォレスト妖精たちの蜘蛛の糸地方ある森の中に2人はいた。
「静かなところですね。すごく落ち着きます。ここで野宿ですか?」
ミコトの質問にガラテアは森の奥を指をさし答えた。
「ん・・・?」
そこには一軒の小屋が建っていた。
「今は空き家やからあそこで過ごす事にする。」
「とりあえず・・昼も過ぎた事やし昼食にするか。」
「はい。」


ミコトは小屋に入る前に森を見渡し大きく深呼吸をした。
季節柄、葉はほとんど落ちていたがそれでも力強く立つ木々や地面に落ちた葉っぱ、栄養に富んだ土の匂い、そしてすがすがしい空気がミコトの鼻と口を介し体の隅々までいきわたるのを感じた。




© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: