ポエムガーデン

ライ麦物語外伝



ライ麦




まだ短い稲の苗が
手のひらで撫でるとくすぐったい
窓辺の鉢植と並んで
不思議そうにライ麦の子供たち

ここじゃ不満かい?畑じゃなくて
僕だってそうさ
朝のコーヒー片手に
ほらおまえたちにはコップの水を

退屈に外を眺めたら
時間がいじわるして急ぎ足になる
朝からこの日差し
今日も一日暑くなりそうだ

ティー






バースデイプレゼント花束手にさげ
時間つぶし覗いたとある楽器店
響き渡るメロディー ピアノの音色
足もとどかない椅子に腰掛けて
BGMのしょうたいは小さなお嬢さん

「CがこれでGがこれ」
「CがこれでGがこれ?」
教えてもらったコードとてもきれいな響き

シューベルト モーツワルト
アンコール二度も応えてくれて
バースデイの花束は
未来のピアニストにプレゼントしてあげた

花束






キラキラと透き通った野菜の顔を覗き込んで
ガラス市場の野菜たちが僕の息で曇る
昨日の晴れのち曇り
恋人たちのハローグッドバイ
映し出すかのように
グラスポテト
グラストマト
グラスオニオン・・・

ペンギンみたいな可愛らしいナスが
話しかけるみたいに見上げたままの姿勢

野菜たちにそっと耳を近づけてみて
僕の耳に飛び込んできたカナキリ声は
通りすがりのトランジスタラジオのロックンロールだった

ガラス細工






よく冷えたふたつのグラス
汗をかいて赤と白のワイン

すくっと立った二本のろうそくの火が
店の扉のベルの音に合わせて小さく揺らぐ

澄ました顔で彼女がウインク
グラスを手にしてサヨナラの乾杯

ワイン






リクエスト曲とメッセージ
一度きりのリクエストと決めて
受話器を握り締める僕は少年リスナー
受話器の向こうでメモを取る音

「七時の空の一番明るい星を探してください
  僕が見ている星です」

DJが空に目をやる
ノート






まだ明るい空の星々を数えながら
ラベンダーの花浮かべてぬるま湯の中

右の疲れも
左のわだかまりも
上の心配も
下の失敗も
ひとつ ふたつ
みっつ よっつ 数えて
星の瞬きとラベンダーの香り

ラジオのスピーカーから懐かしのメロディー♪

ウトウトと遠い記憶の夏の思い出
ウトウトと遠い記憶の初恋の思い出

ラベンダー






月が笑った
いや怒った
星が寝ごとを言っている
雲にかくれたりあらわれたり
となりの空に流れ星ひとつ
願いを言ったつもり
聞いてもらったつもり


昨日の約束果たせなくて
ごめんなさいの水曜日の夜
そんなに遠くでもないライ麦畑に
いつおまえたちを返してやろう
もしも傷付かないままでいたいなら
哀しいめに合わずにいたいなら
窓辺のままでいいだろうに と
ごめんなさいのひとり言

笑ったままでお月さん
眠ったままでお星さん
おやすみ おやすみ
今夜におやすみ

夜景






新しい朝が生まれた
新しい季節の匂いが漂っている

二匹の早起きの蝶が
いつか見た夢のように
仲良くじゃれ合っている

「今何時だろう?」 と
彼女に振り返ったつもりの
ひとりの部屋で・・・



mugi



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