★思い出


+++思い出+++



わたしはそれがいきてるあいだ、胸にだきしめた
それが死ぬと、心にそっと隠した
楽しそうに、ひとり坐っていた
だけど、ひとり悲しんで、黙っていた
・・・・・・・
だれもわたしのした選択を知らない、
まだしてるのに
だれも、わたしが選択し、胸がはり裂けたことを
知らない
わたしの偶像を打ち壊したことを、
一度だけ気力を奪い
一度限りに、わたしの役割を選んだことを
わたしは一挙に打ち壊した、冷たい屍体を葬った
それが生きていた心の奥底で、打ち砕いた
わたしの心は少しずつ死んでゆき、
その時は遠のく
遠のくあいだも、わたしは嘆きをやめない



わたしには、誰もはおれない部屋がある
わたししか、はいれないところ
聖なる思い出が、そこで王座につく
それこそわたしの命の中心

冬が来て、また行く時―ああ、嫌になるほど、長い訪れ!
身を切る冬の風が吹くときも
溢れるばかりの夏の季節の、血のけのない百合と
暖かいバラが咲くときも、同じこと

誰かが無理に押し入ったら、見るだろう
葬ったけれど、死んではいない人を
その顔の前に、わたしはもう頭を下げたり
膝を屈したりはしないけど
しばしば、わたしの生の疲れた秋に
澄んだ目でそこを凝視し
天国ではどんなかしら、と考える
二人が一緒になれた時は、と


(Christina Rossetti)




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