― Passing away, saith the World ―
Passing away, saith the World, passing away:
Chances, beauty and youth, sapp'd day by day:
Thy life never continueth in one stay.
Is the eye waxen dim, is the dark hair changing to grey
That hath won neither laurel nor bay?
I shall clothe myself in Spring and bud in May:
Thou, root-stricken, shalt not rebuild thy decay
On my bosom for aye.
Then I answer'd: Yea.
by Christina Rossetti
― 過ぎてゆく ―
過ぎてゆくのだ(こう、世界がいった)過ぎてゆくのだ。
幸運も、
おまえの
栄光のしるしである月桂樹を見たことも
おまえの目は
おれのほうは、春になれば新しい衣装をつけ、五月になれば芽ぐむのだ。
だが、おまえは、根のところが傷んでるので、おれの胸ふところにおりなが
ら、
とこしえに、おまえの衰えからたちなおることができないのだ。
―そこで、わたしは答えた。「はい、そうです」
過ぎてゆくのだ(こう、わたしの魂がいった)過ぎてゆくのだ。
恐れやのぞみの重荷をおって、労働や愉楽の重荷をおって、過ぎてゆくのだ。
過去が証人となって語ってくれる言葉に傾聴するがよいのだ。
おまえの金貨には錆がつき、おまえの美しい着物には虫がつくのだ。
おまえの蕾は害虫がむしばみ、あまえの葉は腐れ衰えるのだ。
だが、ある日、その真夜中に、その鶏鳴のときに、その朝明けに、
注意してごらん、「花婿」がやって来るのだ。遅れずにやって来るのだ。
目をさまして祈るべきなのだ。
―そこで、私は答えた。「はい、そうします。」
過ぎてゆくのだ(こう、私の神がおっしゃった)過ぎてゆくのだ。
ひさしく停滞してみたものの、冬は、けっきょく去ってゆくのだ。
新しいぶどうはぶどうの木にみのり、新しいいちじくは若い小枝にみのる。
山ばとは、天国の五月には、友なる山ばとを呼ぶ。
かりにわたしの来るのが遅れようとも、わたしを待て、わたしを信ぜよ。め ざめて祈れ。
起きよ。立ちて去れ。夜は過ぎ、みよ、陽のひかりかがやきてあり。
わが恋びと、わが妹、わが妻よ。なんじらに、わが声を聞かすべし。
―そこで、わたしは答えた。「はい、そうします。」
斉藤正二 訳
世界女流名詩集・深沢須磨子編/角川書店