― 悲しみのようにひそやかに…… ―悲しみのようにひそやかに夏は過ぎ去った―ついに、あまりにもひそやかで裏切りともおもえないほどに―もう 夙 ( とう ) に始まった黄昏のように蒸留された静けさ、なたはみずから引きこもって午後を過ごしている「自然」―夕暮れの訪れは早くなり―朝の輝きはいつもと違うねんごろで、しかも胸の痛むような優美さ、立ち去ろうとする客人のように―このようにして翼のなく船に乗ることもなく私たちの夏は脱れ去った、美しきものの中に。安藤一郎 訳世界女流名詩集/角川書店