★悲しみのようにひそやかに…… 





            ― 悲しみのようにひそやかに…… ―

            悲しみのようにひそやかに
            夏は過ぎ去った―
            ついに、あまりにもひそやかで
            裏切りともおもえないほどに―
            もう ( とう ) に始まった黄昏のように
            蒸留された静けさ、
            なたはみずから引きこもって
            午後を過ごしている「自然」―
            夕暮れの訪れは早くなり―
            朝の輝きはいつもと違う
            ねんごろで、しかも胸の痛むような優美さ、
            立ち去ろうとする客人のように―
            このようにして翼のなく
            船に乗ることもなく
            私たちの夏は脱れ去った、
            美しきものの中に。

            安藤一郎 訳

            世界女流名詩集/角川書店





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