☆母なる風の教え/ベア・ハート






      私が生後三日目のときのこと、母はわたしを家の近くの丘の上に連れていき、母なる自然に紹介してくれた。
      まず四つの方角 ---- 東、南、西、北。
      「この子に特別な祝福をお願いします。あなたがたは、わたしたちの暮らしをとりまき、わたしたちを生かしてくれています。
      どうかこの子を守り、調和のとれた人生を送ることができますようお導きくだい」それから母は、わたしの小さな足を大地につけた。
      「母なる大地よ、いずれこの子も、あなたの上で歩き、遊び、走り回るようになります。
      わたしは、この子があなたに敬意を抱くように育てていきます。
      どうかこの子を支え、お守りください」 それから太陽に紹介された。
      「父なる太陽よ、成長していくこの子に光を注いでください。
      この子のからだのすべての部分が、肉体的のみならず精神的にもそこやかに育ちますように。
      どうか、あなたのあたたかで愛情に満ちた力で、この子を包み込んでください。
      もちろん人生には曇りの日もあるでしょうが、そんなときでもあなたが輝き続けていることはわかっています。
      どうかこの子を照らし、お守りくださいますよう」 母はわたしを抱き上げ風にあててから、話し出した。
      「どうかこの子をお見知りおきください。
      風は強く吹くときもあれば、やさしいときもありますが、この子が常にその存在の意義を理解しながら成長することができますように」 次に水に紹介された。
      「水よ、わたしたちはあなたなしでは生きることができません。
      水は命の源です。
      どうかこの子が、渇きを味わうことがありませんように」 
      それから母は、わたしの額に灰をのせて言った。
      「火よ、この子の人生の障害となるものを焼き払ってください。
      この子が、あらゆる命を愛し敬うことを学んでいく途上でつまずくことがありませんように」 夜になると、満月と星に紹介された。
      すべての自然が、わたしの成長を見守ってくれた。
      わたしは母なる大地が与えてくれた星のじゅうたんの上を走り回って成長した。
      わたしが吸い込む空気は、命を保ち、吐き出すときには、からだじゅうのすべての毒素をとり去ってくれた。
      わたしは成長するにつれ、自然とのつながりを意識するようになった。
      それは、わたしの部族が自然と深く関わっているせいだろう。
      わが部族の民の大半が、いともたやすく周囲の環境になじむことができたのもそ
      のためであろう。
      わたしはずっと昔に、自分のまわりに多くの生命が息づいていることを知った ---- 水の中に、土の中に、植物の中に。
      子供たちは幼い頃に自然に紹介されるために、成長していく過程で、自然を見下したり、見上げすぎたりということがなくなる。
      我々は自分が自然の一部であり、ほかの生物と同等であることを感じ、草の葉一枚、木の葉一枚にいたるまで大切にしてきたのである。

      ベア・ハート
      「母なる風の教え」より引用/講談社




© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: