★わたし自身のうた/ホイットマン





        ―わたし自身のうた 52―

        まだらの鷹がそばをよぎり わたしを非難する 彼は わたしの無駄話とぶらぶら歩きに不平を述べる

        わたしだって ちっとも 飼い馴らされてはいない わたしだって 人に伝わる言葉には変われない
        わたしは 世界じゅうの屋根の上に 野蛮な叫び声をあげてやる

        その最後の風が わたしを引き留める
        他の者に似て 翳った荒野に立つすべてと同じほどに正しい わたしの似姿を投げかけながら
        風が わたしを宥めすかして 靄と夕暮れのほうへ向かわせる

        わたしは 空気のように別れる わたしは 走り去る太陽のように白い髪をなびかせる
        わたしは わたしの肉体を渦巻きに放出する レースのような馬鹿騒ぎに流す

        わたしは じぶんを土に遺して わたしの愛する草から育つようにする
        もしも あなたたちがわたしを再び必要とするなら じぶんの靴底の下に わたしを捜せ

        あなたがたは わたしが誰だか わたしが何を言いたいのか ほとんど分からないだろう
        でも わたしは あなたがたにとって よき健康であるだろう
        そして あなたがたの血を濾過し 繊維化するだろう

        わたしを捉えるのに 初め失敗しても 諦めるな
        一つところに見つからなければ 別の場しょを捜せ
        わたしは どこかに立ち止まり あなたがたを待っている

        (ウォルト・ホイットマン)渡辺信二 訳


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