2012年07月29日
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カテゴリ: シリーズ京歩き



若狭で獲れた魚を京に運ぶための道として発達し、
特に、多く鯖が運ばれていたことから、
古くからこの道は、「鯖街道」と呼ばれていました。


大原の里をめぐったあとは、この鯖街道に沿って、さらに北へと向かい、
「植髪の尊像」と呼ばれる、ちょっと変わった仏像を本尊とする
「古知谷阿弥陀寺」というお寺に行ってきました。



鯖街道.jpg



鯖街道。

今では、車やトラックが行きかう国道となっていますが、
それでも、この道に沿って、鴨川の上流である高野川のせせらぎが流れ、
山間を縫うように続いているこの道は、今でも往時を偲ばせるものがあります。

かつては、一昼夜をかけ、歩いて鯖を運んだといい、
塩をまぶされた、この鯖が、京に着く頃には、ちょうど良い味になっていたといいます。

海から離れた京の都にとって、この道は、
貴重な海の幸の調達源になっていたんでしょうね。

また、大原からも近い、この付近は、石折地区と呼ばれていて、
かつては、火打石の産地として栄えていた地域だったのだそうです。


さて、古知谷阿弥陀寺を目指して、この道を歩いていきますが、
これが、なかなかの距離です。

国道を通る路線バスも、あるにはありますが、一時間に一本程度と便が少なく、
結局、大原から40分くらい歩いて、ようやく古知谷のバス停に着きました。



古地谷阿弥陀寺山門.jpg


中国の寺院を思わせるような山門。

ここが、古知谷阿弥陀寺の入口です。

しかし、実際のお寺は、まだ、この奥にあります。
ここから山中に入り、山道を登っていかなければなりません。



山中の参道.jpg


山中の参道を、ひたすら登っていきます。

参道とは言っても、鬱蒼とした木々の中。

しかし、雑踏から離れ、深山に入ってきたという感じがして、
こうしたところを歩くのも楽しいものです。

聞こえてくるのは、川のせせらぎと鳥のさえずりだけ。

おそらく、このあたりは、昔そのままの状態で残っているのでしょうね。


この一帯は、紅葉の名所としても知られているところということで、
古知谷カエデと呼ばれる名木が数多く群生している場所なのだといいます。

訪れた季節は新緑の時期ではありましたが、
新緑の紅葉というのも、また、すがすがしさがありますね。



古地谷カエデ.jpg


山門から15分くらい登ったでしょうか。

ようやく、古知谷阿弥陀寺の堂舎が見えてきました。



瑞雲閣.jpg


崖に建つ、この建物は、茶室なのだそうです。
瑞雲閣と名付けられているもので、訪ねてきた客を、ここでもてなしたのでしょうね。

階段を上っていったところに受付、そして、その奥に本堂があります。


古地谷阿弥陀寺本堂.jpg


この寺の創建は、慶長14年(1609年)といいますから、江戸時代初期の頃。

弾誓(たんぜい)上人という人が開いた、念仏寺院であります。


弾誓上人という人は、尾張の出身で、美濃・佐渡・信濃など諸国を行脚して修行を重ね、
最後の修業の場として、この地にやって来たのだといいます。

弾誓は、古知谷に入るや、岩穴を住みかとして、念仏三昧の日々を送りました。

そうした中で、弾誓は、霊木を刻み、自らが求め続けた理想の人間像を仏像として作り上げます。

そこへ、さらに自分の頭髪を植え込み、
この像に、自己を投影させたのだと云われています。

これが、「植髪の尊像」と呼ばれている仏像です。

その後、弾誓は、この阿弥陀寺を建立。
この時に、この「植髪の尊像」を本尊として祀りました。


さらに、もうひとつ、この弾誓上人という人は、
木食の修行を続け、ミイラになったということでも知られています。

木食とは、肉や穀物を一切食べず、木の実や草だけを食べて過ごすという修行のこと。

弾誓上人は、木食を続けた後、即身仏となることを目指したといい、
弾誓の最期というのは、生きながらにして石棺に入り、自らミイラ仏になったのだとされています。



通廊.jpg


山上にあるということもあるためか、なかなか趣きのある良いお寺です。

ここの本堂も、少し昔の部屋という雰囲気で、どこか懐かしさすら感じます。


植髪の尊像.jpg


この本堂に祀られているのが、この寺の本尊「植髪の尊像」です。

弾誓上人、自刻の仏像。

自らの頭髪を植え込んでいるということですが、
今では、それも、わずか耳のあたりに残っているだけなのだといいます。

この寺は、浄土宗に属している寺院ではあるのですが、
この一風変わった仏像を本尊にしているということから、
浄土宗の中でも「一流本山」という別流を称しているのだそうです。



石廟.jpg


弾誓上人のミイラ仏が祀られているという「石廟」です。

木食修行から、即身仏(ミイラ)になるとは、
想像をはるかに絶するような、過酷な荒行であったろうと思われます。

死後においても、救済を念じ、永遠の命を得るための修行だったということのようですが、
それにしても、常人には計り難いものがあります。

今でも、念仏を唱えて、救済を念じてくれているのでしょうか。

この石棺の中に納められている弾誓上人は、今も端座合掌の姿のままなのだそうです。



古地谷阿弥陀寺庭園.jpg


ここは、静かに思いをめぐらすのには、本当にいいお寺なのだと思いますね。

人里から遠く離れた、山深くのお寺。

しかし、それでも、この日は連休中ということもあってか、
来るだけでも、かなり不便なところであるにも関わらず、
私の他にも、いく組かの人がここを訪ねてきておられました。

意外と、ここは、知る人ぞ知るという感じの、隠れスポットなのかもしれません。


大原の里から、ちょっと足を延ばして、、

この古知谷阿弥陀寺というお寺は、
独特の雰囲気を持ちながらも、素敵な佇まいにあふれている、
そんなお寺でありました。






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最終更新日  2012年08月05日 09時34分55秒
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