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お話一。白と赤。
「初めまして。アレンザス君。」
言って、純白のコートの下に、白衣と、白いカッターシャツ、白いダブルのパンツを着込み、白いネクタイを締め、白い布のベルトを腰に締め、白い靴の中に、白い靴下を履いた、髪まで白い男が、握手を求める。白髪とも言えるが、その髪は、非常に、艶があり、柔らかだ。なにより、見た目の年齢は、二十代ぐらいなのだから、元々の、生まれつきの色が、白いのだろう。態度も爽やかだ。
「握手はしない主義でな。」
言って、背を向ける男は、対照的に、全身を赤い服で包んでいる。
「赤のアレンザス」と、後に呼ばれる男だ。
差し出した白い手を、残念そうに引っ込めて、白い男は、咳払いをする。
「僕の名前は、スピア・ナルキッソス。アレンザス君。お互い、初任務を精一杯こなそうじゃないか」
「セイルで良い。」
「え?」
「俺の事は、セイルで良い。俺も、お前をスピアと呼ぶ。」
不機嫌そうに、そう呟くと、辺りを見渡し、班長の姿を探す。
ここは、冥界の養成所の近所の公園。妙な形をしたオブジェが鎮座しているため、子供が遊んでいたりはしないが。
マコトが死ぬより、四年前の冥界。
セイルは、養成所の卒業証書を渡され、初任務に出ようとしている。
もっとも、班長が来ないので、なんとなく、自己紹介などしているが。
「君の事は、噂で聞いたよ。なんでも、かなりの使い手とか。いやあ、頼もしい仲間だなあ。」
「俺も、聞いた事がある。去年、優秀な成績で卒業した、ナルキッソスと名乗る男の話を。」
「それは光栄だね。それじゃ、僕の生前の話も?」
「まあ、一応。ハリネズミだったか?」
「その通り!で、君は?」
「まあ、鳥だよ。そう、人に飼われてた。」
言いながら、何か嫌な顔をして、また、辺りを見渡す。
ナルキッソスは、聞いてはいけない事を聞いたのかと、セイルに問うが、答えはない。
「白のナルキッソス」
「赤のアレンザス」
二人が強者の代表と評されるようになるまで、あと一年。
初任務の成否は、言うまでもない。
白と赤の二人は、こうして出会った。
お話2。ケイの趣味。
カチャカチャ。
「いぇーーっくし。」
くしゃみ一つ、店主は手にした本とプラモデルを、脇に置き、さっきから、棚を見て悩んでいる青年に目をやる。
ここは浄化役向けの少し特殊なサイスを扱う店だ。何を悩むのか。
「お客さん。お困りですか?」
店主の声に振り向く客。いつも悩んでいる客だ。買う気はあるようだが、懐具合が良くないらしい。
「すみません。この首輪、いくらですか?」
緑の髪の青年、ケイが、悩む男の後ろから、声を上げる。
「ああ、それなら、1300円だよ。」
常連客の声に答え、革製の首輪を受け取る。
紙袋に入れ、テープで封する。
ケイが、財布から、地上の通貨とは少し違う、冥界の「円」を出す。
「首輪とは、また変なもん買うねー。
この間は、虫かごだったし。」
「趣味の問題だよ。趣味の。それに、この店が置いてるから買うんだ。」
と、そこで、悩む男が、口を開く。
「なあ、あんた、浄化役なのか?」
振り返り見ると、養成所の制服を着た見た目20代後半の男が居た。
「ああ、そうだけど?」
当たり前の質問に、それなりの反応を返し、紙袋をしまう。
「俺、大切な人への贈り物を、ずっと迷ってるんだ。」
「はあ?」
店主まで小さく同じ声を上げるほど。意味の分からない言葉。
男が話す。
浄化役として現役で戦っている彼女に、プロポーズ(冥界でも、結婚はできます)をするのに、何を送ろうか考えているのだが、数ヶ月考えても、判断できない。もうすぐ、彼女が帰って来る日なので、それまでに、どうにか決めたいのだ。人間なら指輪が一般的だと言うのは聞いたが、今の自分には、普通の指輪も、サイスの指輪も贈れない。そこで、ケイに、どんな物が実用的で、喜ばれるかアドバイスして欲しい。実践経験の有る友達も居ないので、協力して欲しい。
「なるほど、よーく、解った。俺なりに、一生懸命考えよう!」
「ありがとうございます!」
固く握手を交わし、先ほどの棚へと向かう。
「これなんてどうだ。『ペアブレスレット』だと。結構手頃だぞ。」
「ええ!?でも、これ、確かに普通よりは安いですけど。無理ですよ。」
「ペア物なら、装飾が地味でも良いかと思ったのだが。」
「ええ、困りました。」
とか、しばらくやっていて、結局、ガントレットにしたらしかった。
「まいどあり。」
店主は思った。ガントレットって、本当に喜ばれるのだろうか?
ケイのセンスは、やはり、店主の理解を超えていた。
お話3。マコトの(生前の)ある一日。
マコトが、台所で、ごそごそと、冷蔵庫から何かを出したり、調理器具をいじったりしている。隣の部屋からは、ケイ(まだ生きた鳥)の催促するうるさい声(普段は綺麗な澄んだ声なのだが)が、家中はもちろん、隣の家まで響いている。マコトが時々「待て、ちょっと。」と言うが、意に介するケイではない、止むことのない、警戒音のような鳴き方を続ける。
緑色の液体と、袋詰めにされた黄粉のような粉を、ガラスのコップ(あるいは大阪では大抵誰でも置いておく心理が解る、チェーン展開もしている有名菓子店のプリン容器)に入れ、良くかき混ぜる。
程なく、粉が溶けたと言うか、液体が吸収されたというか。ドロドロした、結構気味の悪い色の固まりになる。ケイの餌だ。練り餌(?)と呼んでいる。
大根の葉をジューサーで潰した汁と、市販されているメジロ用の餌を混ぜたもので、マコトは、ケイをくれた人にこれを与えるよう聞いた。
事実、ケイは、よく食べ、この餌で、美しい羽根の色を保ち、餌が遅いとき、マコトにかみつく体力もある。いや、マコトが、ケイに毎日与えている物は、もう一つ。それを用意する前に、マコトは、餌入れに、練り餌を入れると、台所に置いておく、別に、ここに置いておく道理もないのだが、もう一つの食事は、一緒の器に入れた方が早い。
寒い、冬の廊下、其処に置かれた、「母親が絶対見ない」虫かご。
今はおがくずと、大根の茎が見えるだけだ。
トントン軽く叩いてやると、出てくる
何匹ものウネウネ蠢く芋虫、寒さで動きが鈍ってはいるが、母には恐怖の対象らしい。さもあらん。幼虫のような外見は、餌を与え、「つまみ上げる」マコトでも、軽く気味悪いと思っている。
詳しい方なら、「ミール・ワーム」と言えばお解りになるだろうか?
成長するのをマコトはあまり見たことがないが、抜け殻だけはいつも見ている。マコトは以前テレビで人間がこれの大きいのを食べてるのを見たが、種類が違うのだろうかと疑問を抱きつつ、ピンセットで、一匹つまみ上げる。
母と姉に道をあけるよう声を掛けながら、持っていく。
ピンセットの先で、ウネウネと身をよじって、横開きの口をシカシカ動かし、目の無い顔を振る姿は、これから自分がケイの血となり肉となるのを感じてか、それとも、自分の体を音さえ立てて潰した鉄の器具を恨んでか。
餌入れの中にいれ、ケイのかごの中へ。
ケイはまず、ミール・ワームをつまみ、口へ、良い声の秘訣は、このタンパク質と言っても過言ではないと確信するマコトは、同時に死んでから虫に復讐されやしないかとか思いつつ、笑みを浮かべる。ケイの嬉しそうな顔に、満足げにうなずきながら、ケイのかごを覗き込む。覗かれた方は見るなとばかりに一瞬マコトの顔をにらんでから、練り餌を食べ始める。
マコトの笑みはさらに顔に表れ、「ようさん食べや。」と掛ける声も、弾んでいる。少し前は、マコトが何をしても大して反応しなかったケイは、今はいくつかマコトに解る感情表現をするようになっていた。
それなりに平和な冬の日、マコトの一番幸せだった時間の話。
ケイは囚われの身に慣れ、ミール・ワーム達が、家に居たときの話、マコトの、想い出に残る、ただの、何も起きない、日常の話、ケイが死ぬ、一年前の、冬の日。ほんの少し、ケイは、マコトと仲良くなった。マコトは、ケイに話しかけ、悩みを話し、さえずりを聞いていた。マコトは、ケイが大好きだった。初めてあった時から、好きだった。
お話4。甘い物を食べよう。
冥界のケーキ屋「ぴーち」店内、同部屋三人組、ケイ、マコト、カサオが、難しい顔をして、ウィンドーをにらんでいる。
店名に掛けた、桃を使ったケーキ達や、季節の物(?)や、酒漬け、砂糖漬けのフルーツをふんだんに使った、ショーウィンドーの花たち、イチゴのショートに、ショコラケーキ、モンブランに、ブッシュドノエル、白く化粧をしたシフォンケーキは、「店長のおすすめ」の文字がその前のガラスに張られている、端っこの方には、サンプルだけが展示されている、アイスケーキや、注文を受けてから焼き上げる、焼きたてが一番美味しいケーキ達、ふっくらとしたマフィンのサンプルも、いくつも並べられている。
「ここは、既婚者であるカサオが頼りだ。どんなケーキなら、師匠に喜んでもらえると思う?俺もケイも、彼女さえ居なかった身だ。」
マコトが真剣に悩んでいるのは、師匠リズの誕生日ケーキ。日頃の感謝も込めて送るからには、やはり喜んでもらえる物が良いに決まっている。
「チーズケーキとかどうだ、あまり甘い物好きにはあの人は見え無えし。」
「そうだな、匂いの香ばしい物とかの方が良いかも知れないしな。」
「でも、匂いのきつすぎるのは嫌いだって言ってたぞ。」
横からケイが口を挟み、また振り出し。
アップルパイは、お誕生日ケーキと解ってもらえないかも知れないから、普通のイチゴと生クリームの物にしようかと思えば、マコトが時期がイチゴのシーズンかどうかを気にして、かといって、ショートケーキの類では、少し寂しいし、そうあれやこれやといってる間に、もう一時間が過ぎている。
「やっぱり、今日は、普通のケーキにしようか?」
マコトの提案に、すでに飽きてきていたケイは同意し、デコレーションを凝った物にすることで、カサオも納得した。いや、この三人で、一番リズと交流が無いのは、カサオなのだが。いい人である、いわゆる。
で、その日の夜、マコトが、リズをサカエのアパート(広い)に連れて行くと、電気が消えている。で、リズが扉を開けると、クラッカー。
リズは喜んでくれた、結構甘い物にはうるさかったらしく、ケーキを買った店をマコトが聞かれて、そこから、冥界の食べ物屋のおすすめランキングに話が移り、盛り上がった。冥界では、結構和菓子の高等技術を使える人が居るので、いつかお茶会を開こうかとリズが提案したり、パーティーは盛り上がったし、マコトが誤って日本酒を飲み、暴走したり、ハプニングも適当にあった。
マコトは、もうろうとする意識の中で、普段あまり馬鹿笑いをすることなど無い師匠の、うち解けた笑顔を見た。
お話6。拾い物ですか?
「養成所」は広い。隣接された寮や、マンションにも、様々な設備が備えられ、必要最低限の物なら、町に行かずとも、間に合う。
もっとも、その基準は、人間基準ではある。人間の姿をしている以上、行動が馴染む必要性もあるし、そもそも、風呂に入る必要も、何かを食べる必要も、無いはずなのだ。
気分の問題だ。
しかし、養成所には、さらに様々な設備がある。
「菓子職人部」専用厨房。建築作業練習場。他。
そんな色々な設備の内の一つ、通称「武装研」と呼ばれる、小さなビル。
その廊下で、マコトがパンフレットを手に座っている。
パンフレットには「遠距離用武器についてのご説明」とある。
マコトの座った長いすのすぐ横の扉から、人が出てくる。
マコトは立ち上がり、出た来た人が、声をかける。
「実験に強力いただける、一札さんですね?
パンフレットを読んで、解らない事は有りませんか?
もう一度お聞きしますが、実験は危険ですよ?よろしいですね?」
「ええ、とにかく、一度、挑戦したいのです。」
「それでは、こちらにどうぞ。」
二人は、部屋の中に入っていく。
その帰り。
マコトが、意気揚々として、歩いている。
「高価だけど、やっぱり、いつかは・・・。」
マコトが話しかけるのは、白いフワフワの毛が、首の周りを覆う、授業仲間。頭髪は、艶のある深い緑色。染めたらしい。
気持ちよさそうな毛が、気温の変化から起こる、緩い風に、そよいでいる。
そうして、マコトが話していると、ふと、歩みを止める。
マコトも止まって、「フワフワ」の指さす方を見れば、緑色の塊。
近寄って見れば、大量の布。触ってみれば、サイスだと解る。
「落とし物だな。」
当たりを見回しても、誰もいない。
寮に行けば、誰かが知ってるだろうと考え、マコトが手に取る。
重い!!
後に、嫌な拾い物だったとマコトは語る
(修正を待って下さい。未完成です。)
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