ハピー百貨店

ハピー百貨店

人生最大のピンチ


今だから笑い話だけど私は恐怖の体験をしました。
それは私が建設現場の事務員として働いた時期の出来事です。

 仲良しの型枠大工の親方Nさんはとってもバブリー、
羽振りもよく、お財布の中はいつもお札でいっぱいでした。

ある日Nさんは、「奥様に指輪を買うから一緒に見に来てほしい」と
私に言いました...
歩いて5分ほどの百貨店なので
「いいよ」と安請け合いしたのが大失敗でした!!

 Nさんと私が宝石店に入ると、
外商の人と宝石店の人がもみ手でお出迎え、
既に指輪をNさんのためにチョイスしてあるので
奥の部屋にどうぞとサロンのような特別室に案内してくれました。


 宝石店の人たちは横にいる私を見て
「結婚20周年おめでとうございます」
「優しいご主人様ですね」とか言うので(20年前私は子供♪でしたが)
私もNさんもおもしろいので、
勘違いさせたまま聞いていました。
Nさんは「思ったより若いやろ」とかウソを楽しんでいました。

 ところが宝石やさんは「どうぞ奥様はめてみてください」と言うのです。さすがにマズイと思いましたが、
当のNさんが「はめてみいや」とか言うので左手の薬指にはめてみました。
「きつい..」
なんとか入ったその指輪は300万円もするダイヤのリングでした。
「お似合いですよ」とみんなが一斉にほめるので「ホホホ」の気分でいた私、ちょうどその瞬間。

本物の奥様登場!!

静寂の数秒のあと。

「いやー、実はこの子は 宝石店のひとり娘で
このダイヤの目利きをしてもらうために来てもらったんや」
とっさに出たN氏の言い訳のマズイことマズイこと、
マニキュアもはげた私の荒れた手が
宝石屋のしかもひとり娘のはずがない、
しかしウソは通さなくてはいけない。
私も真っ赤な顔に作り笑いで
「そうなんですよ、ごめんなさいね」とか
いいながら必死でそのリングをはずしました。
めっちゃ痛かったです。
 奥様はN氏がとんでもない指輪を選ぶとイヤなので
確認に来たのでした。

 その後(仮)宝石店の一人娘さんは
自然な形でのフェイドアウトを謀りましたが
「せっかくですもの、ご一緒にお食事でもいかが?」と
捕らえられ、おフランス料理店で
Nさん夫妻のなれそめや現在のアツアツぶりを
みっちり聞かされたのでした。
あんなにお高い指輪を買うんだもの
そりゃそうだろと納得しながらも
奥様の目は私をN氏の浮気相手と思って
マークしていたのでした。
私にもどちらの宝石店にいらっしゃるの?とか
チェックが入り
梅田のとある宝石店の名前をぶっこきました。
すんません。

「奥さん、本当に私とN氏はなんでもないっすー。
悪いのはあんたのご主人が
奥さんが来ることを予測できなかった事っス」
しかし、怖かったよう。フランス料理美味しくなかったよう。

当のNさんは帰ってから死ぬほどしぼられたそうです。
奥様あの指輪、今でもはめてますか?



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