unbelievable
vol.4~麦粒腫~
私は以前 [カラオケ同好会]に入っていました。
同好会といっても、週に一度みんなで集まってカラオケを楽しむ、
と言うものでした。
しかし、そのメンバーの職業がみんな違っていて
・コンビニの店長
・トラックの運転手
・バスガイド
・フリーター
・お寺の住職の奥様とその娘
・銀行員
・水商売(ここでは私のことを指す) etc・・・・
と、バラエティーに富んでいたのです。
(その当時私は看護師婦の傍らスタンドでアルバイトをしていました。
メンバーは私が看護師であることは知らなかったのです。)
メンバーの、お寺の親子はものすごくおしゃれな人たちでした。
毎回素敵な服を着て、高価な指輪やネックレス、バッグや靴。
シャナリシャナリと登場してくるのです。
そのままどこかのパーティーや結婚披露宴に出席しても
恥ずかしくないようなそんな装いで来るのでした。
そして、
・化粧品は外国からの輸入品ばかり
・週二回のエステ
・毎日の気功や、ジャズダンス
と、親子そろって美容や健康にもかなりうるさい人でした。
あるカラオケが開かれる日の朝。
同好会会長のところに、お寺の奥様から電話がありました。
「私、今日のカラオケは欠席します。
娘も用事があるらしく欠席しますのでよろしくお願いします」
「どうかされたのですか?今までに欠席なんてなかったのに」
「実は私、麦粒腫という病気にかかってしまいまして、
病院の先生に、
『治りきるまでは安静にしていなさい』
と、注意をされましたので治るまではお休みします。
娘も私が休んでいる間は一緒に休むと
言っておりますのでよろしくお願いします。」
・・・と言う、内容でした。
その日、私は夜勤だったのでカラオケに参加できなかったが、
集まったメンバーの中で奥様の所に
『お見舞い』 に行くことに決まったらしく、
その二日後に私の元にお見舞いのお誘いコールがかかってきました。
「奥様が、なんとかと言う病気になって動けないんだって。
だから、みんなでお見舞いに行くことになったんだけど、
芽ネギも行く?」
お見舞いに行く日、ちょうど夜勤明けでお休みだったので即OK!
当日、集合場所でみんなを待ちながら私は会長に聞きました。
「奥様の病気って、そんなにひどいものなの?」
「えっとね・・・麦粒腫っていう病気なんだって。
聞いたことのない病気だけど、
動けないって言うくらいだから大変な病気なのかもね?」
麦粒腫・・・・なるほどねえ・・・・
私はその時初めて自分の本業は看護師であることを告げました。
そして、麦粒腫のことを教えてあげたのです。
「奥様の病気は ものもらい ですよ。
きっと、顔を見られたくないからカラオケを
休んでいるのでしょうよ。奥様はプライドが高いから。」
みんな、唖然!
当然その日のお見舞いは中止。
みんなで楽しく食事をして解散しました。
二週間後・・・・・
回復した奥様が、娘と一緒にいつもの格好で出席してきました。
「病気で寝ているのって結構辛いものなのですね。
なかなか先生が許可してくれなくて~
おかげで背中が痛くなっちゃったわ~。etc・・・・」
しばらくはみんな黙って奥様の「病床記」を聞いていたんだけど、
10分、15分と経っていくうちに
トラックの運ちゃんがしびれを切らして・・・・
「奥様、なんだかんだ言ってるけど、
結局あんたは 『ものもらい』 で休んだわけだろ?
みんな知っているんだからそんな作り話をするなよっ
奥様の顔がどんなに醜い顔なっていたって、
誰もみんな笑ったりはしないよ。」
運ちゃんは、全然悪気はなかったのだけど、
奥様はプライドが傷付けけられたらしく
「私は麦粒腫だって言ったでしょ!
『ものもらい』だなんて!
そんなのじゃありませんからっ!
誰がそんなありもしないデマを流すの??」
って、カンカンに怒って帰っていきました。
その後その奥様と娘は
二度とカラオケに来なくなってしまいました。
ごめんね、私があんな事を言わなかったら
ずっと一緒にカラオケ楽しめたのにね。
完