c - Rakuten Inc
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
266077
ホーム
|
日記
|
プロフィール
【フォローする】
【ログイン】
山さんの刑事部屋
Under Control
ルナ・カヤマ・・・女性。大学生。
デール・ドロップワート・・・男性。無職。
リー・ブラッドレー・・・男性。政府職員。
バート・トンプソン・・・男性。会社員。
マギー・・・女性。バートの妻。
リサ・・・女性。バートとマギーの娘。
●コテージ・夜
閉ざされたカーテン。
ランプに淡く浮かび上がる室内。
ベッドの上で向かい合う男女。
女、ルナ・カヤマ。
二十代前半、肩からローブを纏って。
男、デール・ドロップワート。
三十代前半、逞しい上半身を露わに。
デール「いい?」
うなずくルナ。
デール、ローブをそっと落とす。
腕で胸を隠すルナ。
ルナ「・・・やっぱり恥ずかしい」
デール「どうして」
ルナ「自信ないの、カタチとか」
デール「自己評価低いんだな」
ルナ「言われたことあるもん」
デール「セカンドオピニオンは大切だよ」
ルナ、おずおずと腕をほどく。
こぼれる胸に息を飲むデール。
デール「・・・綺麗だ、かわいい」
ルナ「うるさいよ、もう」
照れ隠しのように抱きつくルナ。
ルナの髪を撫でるデール。
デール「俺を信じて」
ルナ「・・・うん」
デールの胸の中でくぐもる声。
ベッドに倒れかかる二人の影。
二人の枕元。
睦まじく寄り添う折り紙の恐竜。
●州道~SUV車内・午前(以下回想)
快晴の州道を走るSUV。
車内に流れるスプリングスティーン。
運転席にリー・ブラッドレー。
四十代前半、チョコレート色の肌。
シックなスーツの弁護士風。
後部座席にルナ。
ダサ眼鏡、無造作に束ねた黒髪。
バンドTシャツにダメージデニム。
リー、ルームミラーに視線。
つまらなそうに窓の外を眺めるルナ。
流れ過ぎる単調な森林風景。
リー「たまには田舎も悪くないだろ」
ルナ「・・・・・・」
リー「特に君のような出不精の穴居人には」
ルナ「変えて」
リー「?」
ルナ「音楽」
リー「『ボス』はお気に召さなかった?」
ルナ「なんか似合わない」
リー「よく言われる」(苦笑い)
プレイリストを操作するリー。
フロントガラスに目をやるルナ。
進路の先を横切るオジロジカ。
ルナ「リー」
リー「ん」(スマホに気を取られて)
BGMがスリー・ディグリーズに。
『誰もが月に行ける』と高らかに。
*****
何事もなく走り過ぎるSUV。
キョトンと見送るオジロジカ。
●タイトル
●キャンプ場~SUV車内・午後
SUVがゲートをくぐる。
鎌首もたげた首長竜の像がお出迎え。
ルナ、身を乗り出す。
ルナ「出るの、ここ」
リー「一応ね。写真にも撮られてる」
スマホで写真を検索するルナ。
湖面から突き出た首のシルエット。
ルナ「うわ、マジだ」
リー「夢を壊すようで申し訳ないが、正体は
あんなのじゃないぞ」
リー、像のマヌケ面を一瞥。
ルナ「見てよ、まんまじゃん」
後部座席からスマホを突き出す。
リー「首長竜の首はそんな風に上がらない」
ルナ「じゃあ、これ何?」
リー「流木か水鳥か、そんなとこ」
ルナ「他の目撃談は?」
リー「でかいウナギか何かだな。だだっ広い
湖だからヌシくらいいるさ」
ルナ「ミスター・ブラッドレー」
リー「何だい、ミス・カヤマ」
ルナ「濡れた毛布って言われたことない?」
リー「クールエイド・ドリンカーよりはマシ
だよ」
リー、窓の外を見渡して口笛。
リー「ご機嫌な眺めじゃないか。ヴィレッジ
とかソーホーに比べれば退屈かもだけど、
ひと夏を健康的に過ごすには申し分ない」
湖畔に点在するテントやコテージ。
釣りや水泳やBBQを楽しむ人々。
ルナ「ここって丸ごとATMoS所有?」
リー「まさか。保養施設って名目で一棟だけ
借りてる」
ルナ「よかった」
リー「?」
ルナ「国民の税金は守られた」
●コテージ・午後
外から開く玄関ドア。
気軽に足を踏み入れるリー。
バックパックを背負ったルナが続く。
リビングを見回して思わず感嘆。
ルナ「すごっ」
リー「一階建だからその分天井を高く取れる
んだ。どう、この開放感。寮とは比べ物に
ならないだろ」
上の空のルナ、室内を渉猟。
照明をつけたり消したり。
ふかふかのソファにダイブしたり。
ジュークボックスにいたずらしたり。
リー「案内するから落ち着いて。ほら、荷物
その辺に置く」
歌い出すディラン、慌てるルナ。
*****
キッチン。
大理石アイランド、ゆったりシンク。
四口コンロ、SBS冷蔵庫。
冷蔵庫の中は食料品の宝石箱。
ルナ「こんなの宝の持ち腐れだって」
リー「面倒くさけりゃTVディナーもある。
まあ折角なんだし、得意料理の一つや二つ
身につけて帰ったら」
*****
バスルーム。
日本式の浴槽、洗い場広々。
木の香漂う内装、アメニティも充実。
ルナ「温泉みたい・・・」
リー「売りの一つでね。(シャワーレバーを
捻って)水圧だって一流ホテル並みだぞ」
*****
ベッドルーム。
フランス窓とクイーンサイズベッド。
カーテンを開くリー。
窓の外は煌めく湖水。
リー「ウッドデッキの向こう側はすぐ湖だ。
人目を気にせず最高の景観が楽しめる」
ベッドの端に腰かけたルナ。
落ち着かなげに足をぶらぶら。
リー「固めのマットが好みかい」
ルナ「一人には大きすぎない?」
リー「お相手はセルフサービスで頼むよ」
リー目がけて飛ぶ枕。
*****
再びリビング。
ソファに沈んで夢見心地のルナ。
リー「ご感想は」
ルナ「・・・ちょっとキャパオーバー」
リー「時間はたっぷりある。引きこもろうが
アウトドアに目覚めようが君の自由」
ルナ「いいのかな、三週間も」
リー「ルナ、君はこれまで十二分に貢献して
きた。学業との両立も大変だったはずだ。
この程度の労いじゃ足りないくらいだよ」
リー、運転用のサングラスをかける。
ルナ「もう行くの?」
リー「三日後また来る。メディカルチェック
だけは欠かせないからね」
ルナ、一転苦虫。
リー「そんな顔するな、しょうがないだろ。
何か足りない物があれば持ってくるけど」
ルナ「日焼け止め」
リー「ん」
ルナ「詰め忘れちゃった。薬棚にあるはず」
リー「アイ・コピー」
行きかけて立ち止まるリー。
リー「あと一つ。休暇の間、約束してほしい
ことがある」
ルナ「約束?」
リー「『ダイヴァーシティ』は極力抑えろ」
ルナの顔、たちまち曇って。
ルナ「・・・そんなの分かってるよ」
リー「分かってるならいい」
ルナ「いちいち思い出させないで。最悪」
リー「悪いように取るな。心配なんだ」
ルナ「言っとくけど、車のアレは・・・」
リー「あれはノーカン。私が不注意だった」
リー、ドアノブに手をかける。
顔を上げるルナ。
ルナ「・・・あの子、どう?」
リー「安定してる。気に病まなくていい」
開いて閉じるドア。
ルナの顔をよぎる光と影。
●同・夜
レンチンの音。
レンジの中からの視点。
扉を開けてプレートを取り出すルナ。
*****
ソファでチキンステーキを食すルナ。
大画面テレビをザッピングしながら。
カートゥーン、NFL、警察24時。
西部劇、リアリティ番組、ニュース。
ブルックリン橋崩落現場からの中継。
電源オフ、画面にルナの無表情。
*****
バスルーム。
湯船に浮かんだ木製の湯桶。
白濁した水面に泡と波紋。
湯桶を押しのけて浮上する黒い物体。
顔に黒髪を貼りつかせたルナ。
*****
ベッドルーム。
ベッドの隅に腰かけたルナ。
下着以外はダボT一枚まとっただけ。
長い髪を億劫そうに乾かしている。
ルナ「・・・切っとけばよかった」
●同・朝
広いベッドの端で丸まったルナ。
窓の外から素数ゼミの一斉ユニゾン。
ルナ、たまらず目を覚ます。
ベッドから滑り降りて窓辺へ。
カーテンの隙間から射し込む朝陽。
目を細めてウッドデッキへ踏み出す。
はしたなく呻きながら大きく背伸び。
胸で伸ばされるクリムゾン・キング。
シャツの裾から無防備な太腿。
さっぱりした顔で湖に向き直るルナ。
十メートル先のデールと目が合う。
デール、湖に浮かんだボートの上。
救命胴衣をまとって中腰。
水質検査キットを手に気まずい笑い。
デール「・・・ハイ」
自分のあられもない姿に気づくルナ。
カートゥーンみたいにとんぼ返り。
残されたデール、波に揺られ呆然。
*****
ベッドルーム。
シーツに包まって悶えるルナ。
●同・午前
リビングルーム。
盛大に冷気を吐き出すエアコン。
ルナ、ソファでごろ寝スマホ。
キャンプ系配信者の動画視聴中。
豪快なBBQシーンに腹の虫。
*****
キッチン。
開かれる冷凍庫の扉。
TVディナーに伸びた手が止まる。
反対側の冷蔵扉を開くルナ。
牛ブロック肉や海鮮がお出迎え。
*****
収納庫に上半身を突っ込むルナ。
木炭やトングを引っ張り出す。
●キャンプ場・午前
ルナが小道をやってくる。
サングラス、パーカー、マスク。
完全防備の不審者スタイル。
肩からクーラーボックス。
道具を満載したキャリーを押して。
今にもすっ転びそうな危なっかしさ。
*****
BBQエリア。
ルナ、グリルの前で悪戦苦闘。
木炭と着火剤を手に試行錯誤。
挙句、まとめてグリルに投入。
様子を背後で見ていた幼女(リサ)。
すっとその場を離れる。
*****
着火剤に恐る恐る火を近づけるルナ。
バート「ヘイお嬢さん、ちょっと待った」
駆け寄る巨漢の中年男(バート)。
その後ろに付き従うリサ。
バート「ダメダメ」
ルナの手からロングライターを没収。
ルナ「え? あ、あの・・・」
バート「そんなやり方じゃ事故っちまうぞ。
あと、着火剤は使わない方がいい。雑味が
つくから」
困惑するルナをよそに道具を漁る。
バート「チムニーは・・・あったあった」
火起こし器を手にするバート。
バート「お嬢さん初めて? 一人?」
ルナ「あ、はい・・・」
バート「食材も拝見していいかな」
返事を待たずクーラーボックス確認。
下処理していないブロック肉が鎮座。
バート「ワオ、ビギナーにも程がある」
ルナ、マスクの下で赤面。
バート「このまま焼くつもりだったのかい。
せめて下拵えを・・・まあいい、おいで」
ルナ「へ?」
裾を引っ張られて見下ろすルナ。
リサのはにかんだ笑顔がそこに。
*****
大型グリルに集う十人ほどの男女。
バート「おーい、新しいお客さんだよ」
バートとルナに視線が集中。
ルナ、気おされながらも会釈。
バート「こちらはたった一人で十ポンド肉に
挑もうとしてた無謀なお嬢さんだ。我らの
仲間に加わる資格は十分と思うが」
一同を見回すバート。
難しい顔でルナを品定めする面々。
ますます縮こまるルナ。
たまらず吹き出す一人の男性。
男性A「とんだ肉食系女子だぜ」
たちまち咲き誇る笑顔。
掲げられるクラフトビール缶。
口々に歓迎の言葉。
男性A「ようこそ、クソ開拓者たちの宴へ」
女性B「遠慮しないで。フットボールチーム
を丸々養えるくらいのお肉はあるから」
フレンドリーな輪に囲まれるルナ。
女性(マギー)と前に出るバート。
バート「バートだ。彼女がワイフのマギー、
そしてこのお姫様が・・・」
すっかりルナに懐いているリサ。
バート「リサだ。リサ、ご挨拶は?」
リサ「・・・ハーイ」
ルナ「ハイ、リサ。私はルナ、大学生です」
マギー「よろしくルナ。ところで・・・」
ルナを頭から爪先まで見て。
マギー「その恰好、暑くない?」
ルナ「あ、これはその・・・」
マギー「失礼」
ルナのサングラスとマスクをずらす。
マギー「やだ、可愛いじゃない。隠すなんて
もったいないわ」
ルナ「日焼け止めを持ってなくて・・・」
マギー「だったら私の使って。余分に持って
きてるから一つあげる」
ルナ「でも・・・そんなの悪いです」
男性A「さすが東洋の娘さんだ。奥ゆかしい
ったらないね。君らも少しは見習って」
聞き咎めた別の女性。
女性C「ちょっと。今どきその発言はPC的
にどうなのよ」
男性A「おっと、くわばらくわばら・・・」
グリルの傍の男性が声をかける。
男性D「バート、そろそろじゃないか」
バート「ガッチャ。地獄の門を開こう」
バート、ルナにウィンク。
バート「十時間手塩にかけた我が子だ」
ルナ「十時間!?」
マギー「ゆうべからずーっと焼いてたの」
バート「ぜひ堪能してくれ」
マギー「そうそう、ルナ」
ルナ「あ、はい」
マギー「あなたのお肉ね、今のうちに冷蔵庫
に戻した方がいいんじゃない? そうだ、
ついでに日焼け止めも塗ってきたら?」
ルナ「それもそうですね」
クーラーボックスを肩から下げる。
バート「重そうだな。手伝おうか」
ルナ「大丈夫です。このくらい余裕です」
リサ「わー、おねえちゃん力持ちー」
ルナ「そう、私とっても強いんだよ」
ルナ、リサに力こぶを見せつける。
*****
ハアハア言いながら小道を戻るルナ。
デール「ねえ、君」
振り返ると自信なさげなデール。
首から一眼レフカメラをぶら下げて。
ルナ「あ」
デール「やっぱりそうだ。コテージSの子」
ルナ、無視して行こうとする。
デール「待って」
ルナ「人違いです」
デール「いやいや、何で嘘つくかな」
ルナ「・・・・・・」
デール「顔隠してたって分かるよ。この俺の
審美眼をなめてもらっちゃ困る」
後から必死についてくるデール。
デール「ごめん、そうじゃなくて・・・謝り
たかったんだよ、今朝のこと」
ルナ「・・・・」
デール「部屋を覗いてたわけじゃないんだ。
湖の調査の一環で・・・」
ルナ「・・・トム」
デール「トム? いや俺はデール、デール・
ドロップワートだ」
ルナ「ピーピング・トム」
デール「だから違うって・・・」
平行線をたどる二人。
デール「・・・荷物、よければ持つけど」
ルナ「結構です。すぐそこなので」
いつのまにかコテージの前。
カードキーをかざすルナ。
ポーチの下で立ちつくすデール。
ルナ、中に入りかけて振り向く。
ルナ「立ち去らないと警備の人呼ぶから」
デールの前で冷たく閉じるドア。
●同・昼
開拓者たちの宴は盛況だ。
その中に違和感なく混じるルナ。
カジュアルで涼しげな装い。
リサ「うしさんだ。モーモーうしさん♪」
Tシャツは振り返る乳牛のデザイン。
マギー「わざわざそんな服着てくるなんて。
なかなかいい性格してるわね」
ルナ「あ、これはたまたま・・・」
マギー「気に入ったわ。牛さんじゃんじゃん
召し上がれ」
ルナの皿にスライスをてんこ盛り。
ルナ「あはは・・・こんなにいけるかなあ」
男性D「いけるいける。トンプソン家秘伝の
ブリスケットはコンペでも評判なんだぜ。
食っても食っても後を引かない、胸焼けも
しないって」
バート「なんだ、淡白って言いたいのか」
男性D「褒めてるんだってば」
女性B「ルナ、ヴァーモントのナンバーワン
クラフトはいかが?」
露のついたビール缶を差し出す女性。
ルナ「あ、私はこっちで・・・」
ルートビアの缶を見せるルナ。
女性B「あら残念、シティ辺りで買うと結構
値が張るのよ」
ちょんちょんとルナの脇腹を突く指。
ルナ「ひゃっ」
リサ「おねえちゃん、キャッツ・クレイドル
できる?」
赤い毛糸を指に巻いたリサ。
バート「リサ、今は食事中だよ。行儀悪いし
ルナにも迷惑だ」
ルナ「あ、私は別にいいですよ。あっちの方
でやろうか」
少し離れた東屋を指す。
*****
東屋で向かい合って座るルナとリサ。
リサ、器用に毛糸を操る。
ルナ「それは何かな」
リサ「ナバホのちょうちょ」
パタパタとルナの周りで羽ばたき。
ルナ「へー、日本のと違うんだね」
リサ「やってやって」
毛糸をルナに突き出す。
ルナ「えーっと、どうだっけ・・・」
うろ覚えながらも蝶が完成。
リサ、無邪気に拍手。
リサ「もっともっと」
ルナ「まいったなあ・・・」
ルナ、手探りで連続技。
ゆりかご、川、ダイヤモンド。
ルナ「だんだん思い出してきたぞ」
鼓、船、吊り橋。
リサ、目を輝かせて釘づけ。
吊り橋越しのリサがぼやけ始める。
赤い毛糸にオーバーラップする実景。
炎に包まれるブルックリン橋。
サイレン、ヘリのローター音、怒号。
爆発音、自動小銃の銃声、泣き声。
リサ「おねえちゃん?」
我に返るルナ。
毛糸が切れて指から垂れ落ちている。
まるで滴る血のように。
●コテージ・午後
シャワーレバーを捻るルナの手。
シャワーヘッドからは雀の涙。
ルナ「何が『一流ホテル並み』よ」
*****
リビング。
内線電話をかけるルナ。
ルナ「そう、シャワーが出なくなって」
受話器の向こうでくぐもった応答。
ルナ「もう少し早く来てもらえませんか?
はい、はい、できれば至急」
*****
ノックに応えて玄関ドアを開くルナ。
ラフな服装のデールが立っている。
ルナ、黙ってドアを閉じようとする。
隙間に突っ込まれるデールの靴。
*****
バスルーム。
シャワーレバーを操作するデール。
戸口の外で見張っているルナ。
デール「カランはちゃんと出てる。切替弁が
いかれたのかも」
ルナ「・・・・・・」
デール「小一時間ってとこかな」
ルナ「・・・・・・」(不動)
デール「部屋で寛いでてもらった方が」
ルナ「変なの仕掛けられると困るし」
デール「は?」
ルナ「カメラとか」
デール、溜息。
デール「あのさ、俺呼んだの君でしょ?」
ルナ「は? 呼んでませんけど?」
デール「いやいやいや、急ぎって聞いたよ」
ルナ「呼んだの修理屋さんなんですけど」
モンキーレンチを取り出すデール。
デール「どこぞのイタリア系配管工みたいに
ヒゲ生やしてくればよかった?」
*****
分解されるシャワーレバー。
デール「あー、やっぱり」
ルナ「説明して」
デール「ここ、それぞれ穴が開いてるよね。
これがぴったり合わなくなると・・・」
ルナ「じゃなくて」(指さす)
デール「俺?」
ルナ「ここのスタッフなの?」
デール「違う」
ルナ「委託業者とか」
デール「まさか」
ルナ「じゃあ何者?」
デール「強いて言うならボヘミアンかな」
ルナ「ただの失業者じゃん」
デール「そう呼びたきゃお好きにどうぞ」
ルナ「うわ、開き直った」
デール「こういう雑用を引き受ける見返りに
タダでテント張らせてもらってるんだ」
ルナ「しかも住所不定かよ」
デール「俺には崇高な目的があるからね」
ルナ「え」
デール「見た? 入口のブサイク」
ルナ「・・・恐竜のこと?」
デール「俺、アイツ助けに来たの」
*****
シャワーレバーを捻るデールの手。
景気よく雨を降らすシャワーヘッド。
デール、振り返ってすまし顔。
ルナ「・・・腕前は認めるよ」
デール「早く浴びた方がいいと思ってさ」
道具を素早くまとめるデール。
デール「ま、嫌いじゃないけど」
ルナ「?」
デール「汗っかきの女の子」
ルナ「ちょ・・・」
慌ててシャツの胸元を嗅ぐルナ。
デール「冗談冗談。君からは甘いココナッツ
の香りしかしないよ」
ルナ、ムスッ。
バスルームを後にするデール。
少し引きずったその右足。
ルナ、神妙な表情に。
ルナ「・・・ありがと」
デール「どういたしまして」
ルナ「あと、ごめん」
デール「何が」
ルナ「ドア」
デール「いいよ、君のせいじゃないし」
ルナ「・・・ドロップワートさん」
デール「デール」
ルナ「デール、もっと聞かせてくれる?」
戸口で足を止めるデール。
ルナ「恐竜の話」
●同・午前
玄関ドアが開く。
膨らんだ紙袋を抱えたリー。
迎えるルナ、心なしか朗らか。
リー「フィトンチッドの効能かな」
*****
紙袋の中身を冷蔵庫に移すルナ。
ポケットからチューブを出すリー。
リー「バスルームに置いとくぞ」
薬棚に置こうとしてストップ。
既に置かれている日焼け止めの瓶。
リー「何だ、あるじゃないか」
瓶を手に取って嗅ぐ。
リー「ココナッツか。(キッチンに)ルナ、
持ってきた日焼け止めどうしたらいい?
一応置いて帰ろうか?」
ルナ(声)「あげる。使っていいよ」
*****
ベッドに横たわるルナ。
胸から下を清潔なシーツで覆って。
むき出しの左腕から採血するリー。
ルナ、目を閉じて眉間に皺。
*****
ルナの頭部に無数の電極。
伸びたコードは枕元の装置に。
モニターの波形に無言で見入るリー。
電子音だけがベッドルームに響く。
●キャンプ場・午後(以下ルナの記憶=夢)
管理事務所の隣の空地。
鋸で丸太を切っているデール。
額の汗を首のタオルで拭いながら。
セミの混声合唱が唐突に止む。
眩しそうに顔を上げるデール。
麦藁帽子のルナ、逆光を背負って。
ルナ「ハイ」
ルナの両手にセブンアップの瓶。
*****
湖畔の遊歩道。
連れ立って歩くルナとデール。
時折、セブンアップを傾けながら。
ルナ、煌めく湖面を眺める。
ルナ「信じられない、こんなキレイなのに」
水際に近づいて屈み込むデール。
片手で湖水をすくってルナに示す。
デール「ほら、もうこんなに」
掌に溜まった水は薄い緑色。
デール「夏が終わる頃にはもっと酷くなる。
湾全体が黄緑に染まって酸欠で死んだ魚が
大量に浮いてくる。それが一日も経たずに
腐り出して・・・オエー」
並んで屈み込むルナ。
ルナ「住み心地悪そうだね」
デール「悪いに決まってるさ。息苦しい上に
お日さまの光もろくに届かない。おまけに
毒素の危険性だって・・・」
掌の水を土の上に流して。
デール「スラムで下水嗅ぎながら生きてく方
がまだマシだよ」
実感のこもったデールの言葉。
ルナ「デールはさ・・・」
デール「ん」
ルナ「どうやって助けるつもりなの、恐竜」
しばし沈思黙考ののち。
デール「・・・さあ?」
ルナ「は?」
デール「まだ考え中」
ルナ「え、結構キメキメで言ってたよ?」
デール「だって会ったこともないんだぜ」
ルナ「そこ?」
デール「君は見た?」
首を横に振るルナ。
デール「じゃあ知らないでしょ、大きさも」
ルナ「そうだけど・・・」
デール「サイズ感分からないとどうしようも
ないから。どこかよそに引越すにしても、
誘導方法とか落ち着き先とか」
ルナ「引越し?」
デール「陸路は現実的じゃないし水路かな。
セントローレンス湾までは繋がってるし。
あ、ダムがネックか・・・」
ルナ「待って待って。そもそも引越しが前提
なのおかしくない?」
デール「・・・まあ確かに。当人の気持ちを
真っ先に考えるべきかもな」
吹き出すルナ。
ルナ「当人って」
デール「ここに住み続けたいなら水質改善の
方法を考えてやらないとだし」
大真面目なデールの顔。
柔らかい表情で見つめるルナ。
ルナ「ふふ、じゃあとりあえず、会うことが
当面の目標だね」
デール「そういうこと」
●コテージ・昼(現実に戻る)
ベッドルーム。
サンプルを保冷ケースに収めるリー。
背中を向けて服を着るルナ。
リー「脳波は安定してたよ。どんな夢見てた
んだ?」
ルナ「・・・ヒミツ」
リー「血液とDNAはラボに届けておくよ」
ルナ「コレステロールが心配だな。お肉食べ
すぎちゃった」
リー「イヤミか? 若いから余裕だろ」
ルナ「運動しないとなあ・・・」
大きく伸びをして低い唸り声。
リー「おいチューバッカ、その声聞かれたら
王子様も裸足で逃げ出すぞ」
振り返るルナ、悪戯っぽい笑顔。
ルナ「もう遅いかも」
*****
ダイニング。
テーブルで向かい合うルナとリー。
強張ったリーの顔。
ルナの冷徹な顔。
リー「どういうことだ、ルナ」
ルナ「始末をつけなきゃ」
それぞれの前に分厚いステーキの皿。
二人の間に山盛りマッシュポテト。
ボウルを手に取るルナ。
ポテトをたっぷり掬ってリーの皿へ。
肉と芋の威圧感。
リーのこめかみを伝う汗。
リー「・・・爆弾だぞ、私にとっては」
十字を切るルナ。
ルナ「一ポンドたりともムダにはしません」
荘厳なグレゴリオ聖歌。
●キャンプ場~SUV車内・午後
恐竜像に見送られるSUV。
運転席で胸焼けに耐えるリー。
たまらず制酸剤の容器を取り出して。
水無しで錠剤を噛み砕く。
分岐で大きく切られるハンドル。
帰路とは反対の方向へ。
●ATMoS臨時監視所・午後
一面に並んだモニター。
映っているのはキャンプ場の各所。
眠そうな目で眺める女性職員。
時々、椅子から転げ落ちそうになる。
後方のドアから入ってくるリー。
職員、その音に飛び上がる。
リー「いいから。楽にしなさい」
職員E「みっともない所を・・・」
リー「こんな穴倉で半日も缶詰になってりゃ
砂男の思う壺さ。私だって・・・ウップ」
言葉の途中で邪魔するゲップ。
リー「・・・失礼」
聞かなかったふりの職員。
リー「八時間三交代を上に提言しておくよ」
リー、職員の隣に掛ける。
リー「どう、リアリティショーの進展は」
職員E「イライラします、もどかしくって」
リー「ほう」
職員E「お互いティーンエイジャーじゃある
まいし」
リー「ハハハ、まったく」
職員E「せっかくB班が盛り上げてくれてる
のに・・・」
リー「まあ強引に進めるのは悪手だ。ここは
温かく見守るとしよう」
ふと顔を顰めるリー。
息を掌に吹きかけて嗅ぐ。
リー「君、ブレスコか何か持ってない?」
一つのモニターにズームイン。
東屋のルナとリサが映っている。
●キャンプ場・午後
テーブルに広げられた折り紙。
一枚取って折り始めるルナ。
食いつくように見つめるリサ。
みるみるうちに出来上がるペンギン。
リサ「ピングーだ!」
ルナ「これだけじゃないぞ」
続いてカエル、カニ、ペガサス。
リサ「すごいすごい、まほうつかいみたい」
ルナ「お褒めに預かり光栄です」
パクパク折り紙で挨拶。
キャッキャ喜ぶリサ。
ルナ「他に作ってほしいのある?」
リサ「うーん・・・」
ルナ「何でもいいんだよ。折り方はスマホで
調べるから」
リサ「・・・パパとママ!」
ルナ「人間かあ。ちょっくら待ってね」
動画サイトを開くルナ。
ルナ「リサはパパとママが大好きなんだね」
リサ「うん、だいすき!」
ルナ「どういう所が好き?」
真剣ぶって考え込むリサ。
リサ「ママはね・・・あわてんぼでなきむし
なところがかわいいの」
ルナ「へー意外。めっちゃしっかりしてそう
なのに。ギャップ萌えってやつかな」
リサ「あと、パパはデニーロさんににていて
すごくかっこいいとおもいます!」
ルナ「(似て・・・るのかなあ。ああ、役作り
してる時のバージョンか)なるほどね」
リサ「なにがなるほど?」
ルナ「ううん、何でもなーい」
濁しているうちに男女の顔が完成。
ルナ「さ、パパとママのお顔描こうか」
東屋の建つ桟橋に近づくボート。
デールがオールを握っている。
デール「ご機嫌いかがかな、お嬢さん方」
ルナ「見ての通りよ。楽しい女子会中」
リサ「リサ、おじょうさんじゃない、おひめ
さま!」
デール「これはご無礼を、お姫様とその侍女
の方」
ルナ「いーえ許しません、そこの無職の方」
我慢しきれず吹き出す二人。
リサ「ねーねー、むしょくって?」
ルナ「ずーっとヴァケーションってこと」
デール「おい、せめてダンジョンクエスト中
とか何とか言ってくれよ」
ルナ「そのダンジョンに宝箱はありますか」
じーっとボートを見ていたリサ。
リサ「リサ、あれのりたい」
ルナ「ん? ボート?」
リサ「うん」
ルナ「どうだろ・・・」
リサ「ルナもいっしょにのせてもらお」
ルナ「ムリじゃないかな、二人乗りだし」
デール「子供用のライフジャケットを積んで
ないんだ。また今度乗せてあげるよ」
リサ「いやだ、のりたいのりたい!」
デール「明日じゃダメ?」
リサ「リサ、あしたかえるんだもん」
デール「そっか・・・」
そこにやって来るバート。
バート「何があったんだ、サイレンみたいに
ワンワンと。向こうまで聞こえてたぞ」
ルナ「こんにちは、バート」
バート「ああ、こんにちは。悪いね、いつも
娘と遊んでもらって」
ルナ「遊んでもらってるのは私の方ですよ。
あ、彼はデール。ここの臨時スタッフさん
です。バートはリサのお父さん」
デール「どうも。実はお嬢さんがこのボート
に乗りたいと・・・」
屈み込んでリサを窘めるバート。
バート「駄目じゃないか、わがまま言って。
お兄さんに迷惑かけるから我慢しなさい。
わかった?」
リサ「・・・・・・」(恨みがましい目)
デール「あの、迷惑ってほどでは」
バート「仕事の邪魔して申し訳なかったね」
リサの手をとるバート。
バート「連れて帰るよ。ちょうど昼寝の時間
だったんだ。さ、行こう」
リサ「まだねむくないもん・・・」
バート「アイス抜きでもいいのかな」
渋々従うリサ。
ルナとデールに小さくバイバイ。
ルナ「明日帰っちゃうんですか」
振り向くバート。
バート「この子が?」
ルナ「はい。聞いてなかったので、ちょっと
寂しいっていうか・・・」
バート「僕も残念だよ。君をテキサスBBQ
の沼にもう少し沈めたかったんだけどね。
これも宮仕えの虚しさ、あとは若い二人で
楽しんでくれ」
東屋を離れる父娘。
大小の背中を見送る二人。
ルナ「いい親子だよね。羨ましいな・・・」
メランコリックな微笑み。
デール「・・・ルナ」
ルナ「ん」
デール「楽しめってさ」
地上と水上で見つめ合う二人。
●ボート・湖上・午後
オールを漕ぐデール。
向かいに座ったルナ。
共に救命胴衣をつけて。
ルナ「仕事の邪魔じゃない?」
デール「分かってて言ってるでしょ」
くすくす笑うルナ、苦笑いのデール。
ルナ「今日も恐竜探索?」
デール「そう。朝からずっと水の上」
ルナ「収穫は」
デール「あったら真っ先に君に言ってる」
ぐるりを見回すルナ、遠い陸。
ルナ「やみくもに探したってムリじゃない?
何かいい方法とか無いの」
デール「ソナーを借りたいけど金が無い」
ルナ「あっちから出てくるようにしたら?」
デール「簡単に言ってくれるね。例えば?」
ルナ「鳴き声で呼び寄せるとか。仲間がいる
って勘違いさせるの」
デール「で、どんな声?」
ルナ「・・・・・・」
デール「でしょ?」
ルナ「・・・餌とか」
デール「ボートの上で肉でも焼こうか」
ルナ「フェロモン」
デール「君が提供してくれる?」
ルナ「もういい、好きにして」(ツン)
デール「ごめんごめん、真剣に考えてくれた
のに」
ルナ「・・・言うほど真剣でも」(チラ)
デール「オイ」
のんびりと湖を回遊するボート。
少し硬いルナの表情。
デール「酔った?」
ルナ「え? 何で?」
デール「いや、なんか力入ってるし」
ルナ「マジ?」
デール「マジ」
ルナ「・・・笑わない?」
デール「笑わないよ。言ってみ」
ルナ「泳ぐの、あんまり得意じゃないんだ」
デール「・・・・・・」
ルナ「あ、笑った」
デール「笑ってないって」
ルナ「ニヤニヤしてるじゃん」
デール「いや、その、安心したって言うか」
ルナ「?」
デール「俺も泳げない」
ルナ「は?」
デール「同類が近くにいて良かった」
ルナ「待って待って一緒にしないで。私泳げ
ないわけじゃないからね。得意じゃないっ
てだけで・・・」
デール「了解了解」
ルナ「もー、信じてないでしょ」
デール「信じてるって。ビッグフットだって
信じてる俺を信じなよ」
ルナ「25ヤードくらいは余裕なんだから」
ワチャワチャして揺れるボート。
ルナ&デール「おっと」
急に大人しくなる二人。
デール「まあ、いざという時はこれで」
救命胴衣をポンと叩いて。
*****
傾く夕陽。
湖面のさざ波が黄金色に輝く。
何か言おうとしてモジモジするルナ。
目ざとく気づくデール。
デール「大自然が呼んでる?」
ルナ「違う!」
デール「岸につけようか、大至急で」
ルナ「だから違うって!」
ルナ、食い気味に否定。
デール「じゃあ何?」
ルナ「・・・牛、好き?」
デール「牛」
ブンブン頷くルナ。
デール「どっちかと言うと好き寄りかなあ。
可愛いよね、意外とつぶらな瞳してるし」
げんなりするルナ。
ルナ「・・・ビーフよビーフ」
デール「ああそっち。チキンの次くらいには
好きだけど」
ルナ「・・・来ない?」
デール「?」
ルナ「私のコテージ。今晩」
デール「えっと、それはどういう・・・」
ルナ「いいお肉が大量に余ってるの。どこか
の誰かさんが頼りないから」
俯くルナ、耳が紅い。
デール「・・・何かよく分かんないけどさ、
せっかくだしお呼ばれしようかな」
ルナ「・・・・・・」
デール「顔見せてよ」
ルナ「・・・やだ」
デール「顔見て話したいんだけど」
ルナ「このままがいい」
デール「じゃあそのままでいい。ひとつだけ
お願い聞いて」
ルナ「・・・・・・」
デール「俺にも教えて、オリガミ」
遥か上方で遠雷のような音。
思わず見上げる二人。
茜空を横切って白線を描く飛行機雲。
消え切らない何本もの雲と交わって。
●ATMoS臨時監視所・夕
望遠で最大限に寄ったボート。
ルナたちの表情や声は読み取れない。
職員E「これはさすがにタッチダウンでは」
リー「まだ分からんぞ、あのおぼこ娘は」
職員E「室長は勉強不足です。いざという時
女子はヴァンプにだってなれるんです」
モニターに釘づけの二人。
*****
二人の頭上の通風孔。
スリットを通る微かな気体の音。
●コテージ・夜
キッチン。
あとは焼くばかりのステーキ肉。
冷蔵庫を覗き込むルナ。
ワインに惹かれるもかぶりを振る。
ミニッツメイドのアップルを手に。
ルナ「こっちにしとこ」
*****
バスルーム。
鏡の前で身だしなみチェック。
打って変わって清楚なワンピース。
サイドで柔らかくまとめた髪。
眼鏡を外そうとするがすぐ戻す。
ルナ「・・・顔、見えないじゃん」
*****
リビング。
スマホで時間を確かめるルナ。
落ち着かなげに行ったり来たり。
ルナ「いくら自由人だからって・・・」
ソファに倒れ込んで膝を抱える。
ルナ「時間くらい守ってよ」
響くノック。
ソファから飛び降りるルナ。
ルナ「はいはーい」
再度ノック、慌ただしく。
ルナ「遅刻したくせに生意気だぞ」
浮き立つような足取りで玄関へ。
ドアを内側に開くルナ。
ルナ「デ・・・」
戸口に立つのは蒼ざめたマギー。
●キャンプ場・夜
宵闇に閃くフラッシュライト。
せわしげに動き回る複数の人影。
リサの名を呼ぶ男女の声。
一際背の高い影に歩み寄るルナ。
肩を叩かれて振り向いたのはデール。
デール「ごめん、断りもなく」
ルナ「それよりリサは・・・」
デール「まだだ。ほんの五分ほど目を離した
隙にいなくなったって」
近づいてくる巨体の影。
憔悴しきったバートである。
バート「君らも来てくれたのか。助かるよ」
ルナ「どこか心当たりは?」
バート「行きそうな所は一通り探した」
デール「森の中だと厄介ですね」
バート「あの子は虫が死ぬほど嫌いなんだ。
その可能性は薄いと思う」
ルナ「先入観は捨てた方がいいんじゃない?
子供のことよく知ってるでしょ。私たちの
想像力なんて何の役にも立たないって」
バート「分かった。僕は男連中と森に入る」
ドタドタ戻ってゆくバート。
デール「俺たちは水辺を探そう。まさかとは
思うけど」
ルナ「まさかって・・・」
不安な面持ちで歩を進める二人。
デール「・・・ボート」
ルナ「え」
デール「ボート乗り場だ」
次第に加速する歩み。
ルナ「ボートの中で寝ちゃったとか」
デール「あり得るな。それだと助かる」
二人、しまいには駆け足。
*****
桟橋。
呆然と見下ろすルナとデール。
係留された三艘の手漕ぎボート。
その中にリサの姿はない。
一本だけ解けて水面に漂うロープ。
デール「ちゃんと繋いだのに・・・」
ルナ「デール、あれ!」
湖面を透かし見ていたルナが叫ぶ。
遥か沖合に漂うボートの影。
空きボートに飛び乗ろうとするルナ。
それをデールが止める。
デール「何のつもり?」
ルナ「追っかけるの!」
デール「ジャケットがないと危険だ。取って
くるからここで待ってて」
ルナ「手遅れになっちゃう・・・」
デール「あれにリサが乗ってる保証は?」
ルナ「・・・・・・」
デール「もし転覆でもしたらどうする」
ルナ「・・・・・・」
デール「三分で戻る」
管理事務所の方角へダッシュ。
ルナの視線、デールから沖へ。
*****
救命胴衣を抱えて戻ってきたデール。
デール「あの爆弾娘・・・」
さっきまであった一艘が消えている。
●ボート・湖上・夜
暗い水面を切り裂くオール。
不器用ながらも必死に漕ぐルナ。
何度も振り返って針路確認。
なかなか縮まらない二艘の距離。
ルナ「何でこんなに遠いの・・・」
オールを握る指先に青白い火花。
漂流ボートの上で動き。
立ち上がる小さな影。
向かってくるルナに手を振っている。
ルナ「リサ、危ない! じっとしてて!」
バランスが崩れて揺れるボート。
ルナ「あっ!」
転げ落ちるリサ、無情の水音。
一旦沈んで浮かび上がるリサ。
泣き叫びながら水面で藻掻く。
ルナ「リサ!」
思わず手を伸ばすルナ。
二人の間には残酷な隔たり。
リサの動き、次第に弱々しく。
ルナの腕が青白い光に包まれる。
ボートの軋み、泡立つ湖面。
ルナ「お願い・・・今だけは・・・」
脳裏にフラッシュバック。
炎、黒煙、瓦礫、圧し潰された車。
くすんだ空、子供の泣き声、血の赤。
ルナ「ダメ!」
光を無理やり押さえ込むルナ。
涙のにじむ目で水面を見据える。
水中に消えようとしている小さな手。
ルナ、躊躇なくボートからダイブ。
リサの元へ向かって懸命にクロール。
着実に近づく漂流ボート。
息を吸って潜るルナ。
底知れぬ深淵に沈みゆくリサの姿。
空を蹴るようにしてルナが追う。
届きそうで届かない手。
ルナの指先、再び深海魚のような光。
それも気力で押さえつけて。
もういちど大きな蹴り出し。
口から洩れる空気、霞む視界。
リサの服に手が届いた。
限界、全身の力が抜ける。
もろとも引きずり込まれるルナ。
その時、力強い手がルナを抱く。
●都市・白昼(以下ルナの記憶=夢)
ルナの視点。
ブルックリン橋を空から俯瞰。
炎に包まれて崩壊寸前の橋。
その中ほどに取り残された車。
運転席が潰れたファミリーカー。
後部座席から身を乗り出す男児。
泣き喚いて助けを求めている。
自分の体を見下ろすルナ。
ボディスーツを覆う青白い光。
ルナ、空中を蹴って橋へと急降下。
その目の前をヘリが墜ちてゆく。
炎上するヘリの横腹にエンブレム。
『Anti-Terrorism Modules of Superhumans』。
つんざくローター音と突風。
上方から接近するハヴォック。
唸りを上げる機関砲。
放たれた弾丸がルナの手前で蒸発。
ハヴォックに手を伸ばすルナ。
光る拳が空間を握りしめる。
アルミ缶のようにハヴォック圧壊。
橋の橋脚で新たな爆発。
大きく傾く橋、ずり落ちてゆく車。
ルナ、強引に何かを引き剝がす仕草。
車のルーフが缶詰の蓋のように開く。
チャイルドシートごと男児浮遊。
車の落下と同時にルナの腕の中へ。
橋に背を向けて飛び立つルナ。
イースト川に崩れ落ちてゆく橋。
*****
ブリッジパークに降り立つルナ。
まだ薄らと蒼光に包まれて。
集まってくる緊急車両とマスコミ。
ルナの近くでことごとくエンスト。
記者の持つ電子機器も次々ショート。
人々、静まり返って遠巻きに。
ルナ「怖かったよね。もう大丈夫・・・」
弱々しく泣く男児に視線を落とす。
腕の中のチャイルドシートが溶けて。
火傷と体液に覆われた男児。
今しも顔の血管が皮膚ごと裂ける。
ルナにしぶく血。
赤く染められてゆく視界。
魔女の笑いのようにサイレンが響く。
●キャンプ場・夜(現実に戻る)
サイレンと共に走り去る救急車。
それを見送るルナとデール。
大きなバスタオルに一緒に包まって。
管理事務所前のベンチ。
三々五々散ってゆく人々。
二人に握手とハグと挨拶を残して。
ルナ「初めて見た」
デール「?」
ルナ「あんなに人が泣くとこ」
デール「バートとマギー?」
頷くルナ、デール溜息。
デール「もう一生分感謝された気がする」
ルナ「満腹?」
デール「ん」(無言の催促)
ルナ「何よ」
デール「君のは別腹」
ルナ「・・・ありがと」
デール「何が」
ルナ「何って・・・」
デール「具体的にどうぞ」
ルナ「・・・・・・」(口の中でモゴモゴ)
デール「幻聴かな」
ルナ「無鉄砲な私を捕まえてくれてどうも」
満足そうに頷くデール。
デール「ボスのヤマハにも感謝しないとね」
ルナ「・・・嘘つき」
デール「えっ」
ルナ「カナヅチって言った」
デール、黙って右脚を投げ出す。
濡れたズボンの裾を捲り上げて。
細い脛に装着した金属装具を露わに。
ルナ「それ・・・」
デール「一生の付き合い。歩く方はとっくに
支障ないけど、泳ぐのはさすがに」
ルナ「ごめん、知らなくて・・・」
デール「そういう反応」
ルナ「え」
デール「いらないから、別に」
ルナ「・・・・・・」
デール「まあ良かったんじゃない? お互い
土壇場でアドレナリンが仕事してくれて」
ルナ「・・・それはそう」
ルナ、くしゃみ。
抱き寄せるデール。
ルナ「・・・震えてる」
デール「そっちこそ」
ルナ「変なの、真夏なのに」
デール「ルナ」
ルナ「ん」
デール「ディナーの招待はまだ有効?」
●コテージ・夜
バスルームからシャワーの音。
リビングのソファにルナ。
一足先にお風呂上がり。
バスローブ、濡れ髪、曇った眼鏡。
膝を抱えて唇を固く結ぶ。
止まる水音、ビクッとするルナ。
気を紛らすように折り紙を手に取る。
恐竜映画のテーマ曲をハミング。
指先で折り上がってゆく恐竜。
隣に座る気配、沈むソファ。
デール「プレシオサウルス?」
ルナ「足があるでしょ。アパトサウルス」
デール「すごいな。俺も折りたい」
ルナ「えー、めんどくさい」
デール「約束したよね」
ルナ「時間めっちゃかかるけど」
デール「何の問題もない」
ルナ「ディナー・・・」
デール「ステーキ肉って足あったっけ?」
ルナ「?」
デール「多少待たせたって逃げやしないよ」
*****
デール、完成した恐竜を手にご満悦。
デール「なかなかハンサムでは?」
ルナ「そう? なんか歪んでる」
デール「君のと変わらないって」
ルナ「ウッソだあ。比べてみてよ、ほら」
デールの恐竜に自分の恐竜を並べる。
二頭、まるでじゃれ合っているよう。
無言で恐竜を押しつけ合う二人。
いつの間にかお互い見つめ合って。
どちらからともなく近づく顔。
重なる唇、離れて、また重なって。
ルナ「あっ」
ルナの身体に回されるデールの手。
ローブの上から火照る肌をまさぐる。
ルナの腰の上で潰れる恐竜。
●ATMoS臨時監視所・夜
涎を垂らした女性職員。
コンソールに突っ伏して爆睡中。
突如鳴り響く起床ラッパ。
職員E「面目ございません、また寝てしまい
ました!」
飛び起きて直立不動。
我に返って辺りを見回す。
隣で同じように爆睡しているリー。
職員、モニターに視線を移す。
光る警告灯、鳴り続けるアラーム。
全モニターが同じ場面を映している。
ルナとデールのキスシーン。
*****
乱暴に揺り起こされるリー。
リー「何だ、もうセカンドハーフか・・・」
職員E「室長起きて! 始まりそう!」
リー、大あくび。
職員E「お許しを!」
職員のびんたでずれるサングラス。
リー「何のマネだ!」(いきなりの剣幕)
職員E「あれを・・・」
モニターを見て目を見開くリー。
リー「オーマイ・・・これは・・・」
職員E「よく分かりませんが見ての通りで」
リー「行けそうか」
職員E「はい、これで世界も無事・・・」
リー「イエス!」
二人、抱き合わんばかりの喜色。
ふと素に戻るリー。
リー「私としたことが経過を見落とすとは」
職員E「実は私もその・・・また居眠りを」
リー、職員の顔をまじまじと見る。
職員E「あの、報告書は後ほど・・・」
リー「妙だな」
職員E「え」
リー「我々は何時間寝ちまってたんだ?」
腕時計を見るリー。
悪態をついてコンソールを操作。
幾つかのモニターが別映像に。
夜も更け人通りの絶えたキャンプ場。
リー「こいつはただの居眠りじゃないぞ」
懐からグロック17。
マガジンと薬室を確認して戻す。
リー「ちょっと見てくる。モニターに異状が
あればすぐ知らせてくれ」
二人の背後で続く愛の行為。
●コテージ・夜
唇を離すデール。
とろんとした目で見返すルナ。
手に折り紙恐竜を持ったまま。
デール「もっと?」
頷くルナを横抱きに抱き上げる。
ルナ「きゃっ」
デール「・・・君はアイスクリームだ」
ルナ「冷たい?」
デール「すごくあったかい」
ルナ「ふふ、何よそれ」
デール「温かくて柔らかくてスウィートで、
腕の中で溶けちゃいそうだ」
ルナ「・・・知らない」
デール「持ってて」
ルナの手に自分の恐竜も握らせる。
デール「さて参りましょうか、お姫様」
●キャンプ場・夜
コテージSに徒歩で近づくリー。
木陰伝いに忍者のように。
グロックをローレディに構えて。
明かりの灯ったポーチは一見平和。
不意に鼻をひくつかせるリー。
リー「(ココナッツ・・・)」
リー「ルナ?」(振り向きながら)
完全に振り向く前に衝撃が走る。
肩口に刺さったタクティカルナイフ。
凍りついた驚愕、崩れ落ちる体。
その背後にアサルトスーツの人影。
●コテージ・夜~早朝(現在に戻る)
ベッドルーム。
風にそよぐカーテン。
ランプに淡く浮かび上がる室内。
ベッドの枕元。
睦まじく寄り添う折り紙の恐竜。
ルナ「やっ、ちょっと・・・」
ルナに覆いかぶさっているデール。
夢中で胸に顔を埋めて。
ルナ「やだもう、赤ちゃんみたい・・・」
くすぐったそうに笑うルナ。
デール、顔を上げて。
デール「君のフルーツが甘すぎるのが悪い。
けなすなんて分かってない野郎だ」
ルナ「男の人じゃないよ。施設で一緒だった
女の子に言われたの」
デール「なーんだ、ただの嫉妬か」
再び胸にキスを浴びせるデール。
唇を噛んで声を我慢するルナ。
カーテンが風で大きく膨らむ。
何かに気づいて上体を起こすデール。
カーテンの隙間で何かが光る。
空気を裂くような軽い音。
デールの頬が弾ける。
ルナの胸に降り注ぐ血。
目を見開くルナ。
シーツにうつ伏せに倒れるデール。
全てがスローモーションじみて。
ルナ「え、やだ、どうしたの、ねえ・・・」
肩を揺さぶるルナ。
デールの顔の下から広がる血。
ルナ「待ってよ、冗談よね、デール!」
男「冗談でもプランクショーでもない」
声の方向を向くルナ。
窓の前に立っているアサルトスーツ。
覆面では隠しきれない巨体。
拳銃の銃口をルナに向けて。
サイレンサー付きのシグ・ザウエル。
ルナ「なんで・・・リサの病院じゃ・・・」
男「君の前ではこんな物役に立たないか」
覆面を脱いだ男、バートである。
人の好さそうな笑顔も仮面に見える。
ルナ「・・・あなたが撃ったの?」
バート「そうだ」
ルナ「なんでこんな酷いこと・・・」
ルナの瞳から涙と共に青い光が。
バート「おっと、そいつはご遠慮願いたい。
私は君の味方だから」
ルナ「え・・・」
バート「私もATMoSだ。同僚だよ」
懐から出した何かを下投げで放る。
ルナの膝元に落ちるバッジ。
バート「もっとも、ダイヴァージェンスでは
ないけどね。しがない一般職員さ」
銀色のバッジに降る涙の雫。
ルナ「・・・まだ答えてない」
バート「?」
ルナ「なんでデールを撃った!」
ぐちゃぐちゃの顔で睨むルナ。
バート「まさか、その男を本気で愛してると
でも?」
ルナ「・・・・・・」
バート「勘弁してくれ。そいつはただの道具
に過ぎないんだぞ」
ルナ「何を・・・」
バート「コントロールロッド。暴走の危険性
があるダイヴァージェンスを制御下に置く
ためのヒューマンデヴァイスだ」
ルナ「・・・・・・」
バート「あのままオママゴトを続けてたら、
一体どうなってたと思う?」
ルナ「・・・・・・」
バート「ダイヴァーシティを完全に奪われて
ただの廃棄物になり果てるところだった」
ルナ「・・・・・・」
バート「全て上の判断だ。君の能力の暴走が
世界に危機をもたらす。そうなる前に穏便
に始末をつけたい。そこでお膳立てされた
のが、この三文芝居さ」
ルナ「・・・・・・」
バート「君の純情なんて二の次。重要なのは
気づかれることなく奪う、ただそれだけ」
銃口を下げて一歩近づくバート。
バート「まだ信じてないな。じゃあ・・・」
取り出したボイスレコーダー。
流れ出すデールとバートの会話。
デール(声)「あんな事故聞いてないぞ!」
バート(声)「ちょっとしたスパイスさ」
デール(声)「余計なことをするな! もう
少しで臨界を起こすところだった!」
バート(声)「おかげでいい雰囲気になった
じゃないか」
デール(声)「あんなことがなくたって俺と
彼女はもう・・・」
バート(声)「色男さん。余計なお世話かも
しれないが、彼女、そろそろシャワーから
出てくるぞ」
掌中で破裂するボイスレコーダー。
火のついた手袋を脱ぎ捨てるバート。
ルナの瞳が怒りで青く燃えている。
バート「だから私は味方だって。力を向ける
矛先を間違えるんじゃない」
ルナ「・・・リサは」
バート「元々、上のやり方には疑問を抱いて
たんだ。生み出したダイヴァージェンスに
まともな情操教育も施さず、過酷な現場に
年端も行かないうちから放り込んで、都合
が悪くなったら即廃棄。それも高レベルの
危険物扱いときた」
ルナ「リサはどうしたの・・・」
バート「青春の全てをなげうって、世のため
人のために戦ってきた君に対する仕打ちが
これだ。君は何とも思わないのか」
ルナ「質問に答えろ!」
バートのイヤホンが耳ごと弾け飛ぶ。
マギー「リサなら施設に戻したわよ」
部屋の戸口にマギー。
アサルトスーツ姿で素顔。
マギー「あの子は小道具だったの」
ルナ「・・・・・・」
マギー「簡単に懐いてくれて助かったわ」
バート「ルナ、我々と一緒に来なさい」
耳から血を流しながらも平静。
バート「君の力は神からのギフトだ。全ての
ダイヴァージェンスの解放のためにそれを
役立ててほしい」
バートの体が浮き上がる。
透明な手に首を吊り上げられる如く。
バート「(絞り出すように)・・・M99を」
麻酔ピストルを撃つマギー。
ルナの白い背中に刺さるダーツ。
ゆっくりと振り返るルナ。
ダーツを抜いて投げ捨てる。
マギー「困ったわ。ゾウ三頭分でも効かない
なんて」
カートリッジを再装填するマギー。
リー「それを捨てろ、マギー」
マギーのこめかみにグロックの銃口。
亡霊のようにリーが立っている。
ナイフが肩口に刺さったまま。
マギー「部下も上司もしぶといのね」
足元に落ちる麻酔ピストル。
ルナ「リー・・・」
ルナの蒼光がやや弱まる。
天井近くから落下するバート。
リー「ハロー、ミスター・サンドマン」
バート「やあ、ぐっすり眠れたかな」
よろよろと立ち上がりながら。
シグ・ザウエルをリーに向ける。
ルナを挟んで奇妙なスタンドオフ。
リー「ルナ、無事でよかった」
ルナ「ナイフが・・・」
リー「ああこれ。なに、大したことはない」
ルナ「でも・・・」
リー「そんなことより、ファッ●だ」
ルナ「え・・・」
凍りつくルナ。
リー「その男がくたばる前に早く交われ」
ルナ「何言って・・・」
リー「聞こえなかったのか。やっちまえって
言ってるんだ!」
ルナ「おかしいよリー。どうしちゃったの」
リー「●●●●か何かだと思って、自分から
突っ込むんだよ!」
ぎくしゃくとデールを見下ろすルナ。
血の海の中で動かないデール。
ルナ、口を押さえてえずく。
ルナ「ひどいよ・・・なんでみんな・・・」
リー「ファッ●か滅亡か、お前ごときに選ぶ
権利なんて・・・」
バート「黙れ」
リーの右目を撃ち抜くバート。
その弾みでグロックも発射。
マギーの頭半分が消し飛ぶ。
がらくたのように倒れる二人。
その瞬間。
ルナの体が青い焔に包まれる。
地震のように揺れるコテージ。
あちこちで何かが壊れる音。
天井から雨のように降る漆喰。
バート「ここじゃまずい。我慢しろルナ!」
ルナ、ベッドの上に立ち上がる。
後ずさるバート。
その背後で枠ごと吹っ飛ぶ窓。
やや明けそめた湖と空。
接近してくる軍用ゴムボート。
乗っているのはBBQのメンバー。
揃いの戦闘服にライフルを携えて。
バート「まだ来るな! 刺激する!」
警告虚しく迸るエネルギー波。
バートを通り越してボートを直撃。
火の玉と化して湖面を染めるボート。
バート「ルナ、待て、いちから説明する」
バートを真っ直ぐ指すルナの指。
指先から一条の細い光。
じりじり伸びてバートの腹に達する。
バート「ルナ?」
ルナ「その名前で呼ばないで」
バート「聞いてくれ・・・レディウラヌス」
ルナ「じっくり焼いてあげる」
バートの体内から吹き出す焔。
穴という穴からオーロラのように。
バート、阿鼻叫喚の苦悶。
窓枠を踏み越えて外へよろめき出る。
脱力したように膝をつくルナ。
その耳に大きな水音が聞こえる。
蒼光はルナ自身をも焼き尽くすよう。
ルナ「やだな・・・さっきまであんなに幸せ
だったのに・・・」
血に染まったシーツを握りしめる。
ルナ「デール・・・あなたも私を・・・」
丸まって子供のように泣きじゃくる。
ルナの手に優しく重なる手。
顔を上げるルナ。
下顎を半分失ったデールと目が合う。
壊れた顔でぎこちない微笑み。
ルナの身を焼く光が潮のように引く。
デール「ルナ・・・」(不自由な発声)
ルナ「デール・・・」
デール「このままじゃ・・・君も助からない
・・・」
ルナ「いいの・・・いいんだよもう・・・」
デール「良くない・・・君に・・・」
必死に体を起こしながら。
デール「生きていて・・・ほしい・・・」
ルナ「そんなこと言わないでよ! 好きでも
ないくせに・・・」
デールから目を逸らして。
ルナ「もうほっといて・・・」
デール「ルナ・・・」
ルナ「・・・・・・」
デール「ルナ・・・君が好きだ・・・」
ルナ「嘘つき」
デール「ずっと好きだった・・・」
ルナ「嘘つき嘘つきウソツキ!」
デール「君が・・・無防備に俺の前で・・・
チューバッカみたいな声出しながら・・・
背伸びした瞬間からずっと・・・」
泣き腫らした目でデールを見るルナ。
デールの透き通った眼差し。
デール「俺を・・・信じて・・・」
ルナ「・・・嘘つき」
ルナ、デールを抱きしめる。
ルナ「嘘つきでもいい・・・もう私を一人に
しないで・・・」
弱々しく抱き返すデール。
*****
しばしの抱擁ののち、離れる体。
シーツの上、座って向かい合う二人。
ルナ「世界のためじゃない。自分のためでも
ないよ・・・」
デールの肩に手をかけて体を浮かす。
ルナ「あなたが好きだから、するの」
そのまま腰を落とす。
一瞬の痛みと、深い悦び。
ルナから迸る蒼白い電撃。
四方に飛んで壁や天井を焦がす。
エネルギーはデールにも逆流。
快楽とも苦痛ともつかない衝撃。
二人、つながったまま抱き合って。
ルナ「怖い・・・おかしくなりそう・・・」
デール「大丈夫・・・大丈夫だから・・・」
ルナの手の下で脈打つデールの皮膚。
肉体が変容と崩壊を始めている。
体のあちこちで裂けるデールの血管。
ルナの白肌が返り血に染まってゆく。
ルナ「ダメ・・・体がもたないよ・・・」
離れようとするが引き留められる。
デール「まだだ・・・ぜんぶ俺が引き受ける
までは・・・」
ルナ「なにか・・・なにか来る・・・」
デール「行こう・・・ルナ・・・」
共に頂へと駆け上がる二人。
やがて、同時に果てて。
天井を吹き飛ばすエネルギーの柱。
*****
燻ったシーツ。
壁紙に踊る残り火。
折り紙の恐竜たちは無傷。
ベッドの上でぐったり横たわるルナ。
何か大きな塊がベッドから落ちる。
そのまま這うように窓の方へ。
ルナの傍らに残された金属装具。
薄っすらと目を開けるルナ。
窓枠を覆い隠す巨大な影。
人間の三倍はありそうな。
ルナ「行かないで・・・」
影、壁を壊しながら窓の外へ。
軋むウッドデッキ。
ややあって、派手な水音。
ルナ、ゆっくり目を閉じる。
巨獣の咆哮が朝ぼらけの湖に谺する。
●テレビ画面・白昼
ブレイキングニュース。
男性レポーターが緊迫のレポート。
再建中のブルックリン橋を背景に。
レポーターF「ご覧ください。これが現実の
光景でしょうか。傷ついたニューヨークに
またしても悪夢が訪れようとしています」
イースト川から浮上する巨影。
高波が工事の足場を押し流す。
レポーターF「先月、レディウラヌスの無謀
な戦闘によって無残な姿となった橋。復興
の象徴として再建されようとしていた橋が
市民の願いを嘲笑うかのように再び攻撃を
受けています。あっ、今橋脚が完全に崩れ
落ちました!」
退避を促す声に、レポーター移動。
レポーターF「こんな時に限ってヒーローは
何をしているのでしょうか。彼らの本来の
敵はあのような怪物だったはず。同じ人間
同士で争っている場合ではありません」
スタッフが原稿を差し入れる。
レポーターF「ただいま情報が入りました。
ATMoSのヘリがこちらに向かっている
そうです。(接近する音を耳にして)あれ
じゃないか?」
機影にズームするカメラ。
レポーターF「来ました。ヒーローが現場に
到着しました。今、ヘリから人影が二つ。
一直線に怪物に向かっていきます」
カメラが捉えた二つの飛行物体。
次の瞬間、なぎ払う太い尻尾。
レポーターF「あ・・・」
*****
ヘリ機内の女性レポーター。
本番に気づかずメイクチェック。
促されてカメラの前で取り繕う。
レポーターG「失礼いたしました。私は現在
マンハッタン上空を飛んでおります。ご覧
頂けますでしょうか。怪物は我々の真下、
MoMA付近をゆっくり北に向いて進行中
です。市消防局の発表によりますと、既に
多くの建造物に甚大な被害が出ているとの
こと。人的被害も計り知れません。これは
まさに天災です」
カメラ、真上から怪物を追う。
レポーターG「果たしてあの生物はどこから
来たのでしょうか。見た目はまさしく太古
の恐竜、いわゆる雷竜に酷似しています。
しかし、あの頭部はまるで・・・」
カメラの方に長い首をもたげる怪物。
荒い粒子の画面に映る人間じみた顔。
その口元が青白く輝く。
レポーターG「何か発光しています! これ
ちょっとヤバイんじゃない? 離れて!」
光に飲み込まれるヘリ。
●セントラルパーク・白昼
人気の絶えたパーク一帯。
乗り捨てられた車や散乱したゴミ。
混乱の爪痕がまざまざと。
一人の女性がベンチに座っている。
短く切り揃えた髪、ふんわりワンピ。
ルナである。
バゲットをちぎって鳩に与えている。
ズンと地響き、一斉に飛び立つ鳩。
顔を上げるルナ。
六番街をパークに向かってくる怪物。
後ろ脚を少し引きずるようにして。
ふと、その歩みが止まる。
まるでルナと目が合ったように。
上空に響き渡るジェット音。
青空に幾条もの飛行機雲。
怪物に向かって殺到するF‐15E。
優しく微笑むルナ。
ルナ「がんばって、パパ」
ルナ、膨らんだお腹にそっと手を。
了
ジャンル別一覧
出産・子育て
ファッション
美容・コスメ
健康・ダイエット
生活・インテリア
料理・食べ物
ドリンク・お酒
ペット
趣味・ゲーム
映画・TV
音楽
読書・コミック
旅行・海外情報
園芸
スポーツ
アウトドア・釣り
車・バイク
パソコン・家電
そのほか
すべてのジャンル
人気のクチコミテーマ
映画あれこれ
コラボ企画・クイズスタンプラリー『…
(2026-05-20 14:00:04)
TVで観た映画
映画 8番出口(監督:川村元気) …
(2026-05-06 16:24:03)
宝塚好きな人いませんか?
『RYOFU』『水晶宮殿(クリスタルパ…
(2026-05-17 19:49:54)
© Rakuten Group, Inc.
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Create
a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
評判のトレンドアイテム情報
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: