春に思い立つ


  麗らかな春の日に生まれたから
  本当は私は「うらら」なのよ、と
  名前の由来を教えてもらった
  うららかという言葉もまだわからない
  子供の頃のできごとだ

  それからしばらくして
  うらら、うらら、という歌が流行って
  わたしは彼女の歌だとはしゃいでは
  よく歌ったものだった

  あの頃からわたしは
  フリルだのレースだの
  そういう服装が苦手だった
  いつもTシャツとGパンだったとまでは言わないけれど
  女の子じみた甘ったるい服装は
  苦手より何より
  ガリガリで色黒のわたしには似合わなかったのだ

  年月を重ねて
  あの頃の彼女の年齢を
  わたしはいつの間にか越した
  彼女に編んでもらったレースのカーディガンを羽織っても
  似合うとか似合わないとかではなくて
  この年頃の女の人にはよくあるセンスだと笑ってもらえる程度に
  わたしは年を取った

  そして今日
  麗らかな春の日に
  久しぶりに彼女からの手紙が届いた
  うす黄色のカモミールの草木染めの便せんで
  あんまり黄色の服や小物を見たことがないから
  きっと黄色は嫌いだと思うけれど
  この黄色だけは大丈夫な気がしたの
  と、近況に添えて書いてある

  わたしはちょうどカモミールティをいれたところだったので
  その不思議な偶然に
  少し季節は早いけれど
  春物のレースのカーディガンを
  出してきて羽織ってみたのだった


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