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沖田さん夢 らいる様
私は総司が隊務でいない時、よく総司の代わりに、と子供達と遊んであげていた。
”遊んであげて”なんて言うけれど本当は、私が一人で総司を待つのが嫌なだけかもしれない。
「なぁ、葉月ネェ。今日、宗次朗はいつ来るん?」
私は子供達に葉月ネェ、と呼ばれていた。総司は呼び捨てなのだから、呼び捨てで構わない、と言っているのに
なかなかそうは呼んでくれない。
「そうだねー・・・。もう少しで来ると思うよ?」
おにごっこにも飽きた子供達はさっきから総司の事ばかり気にしている。
こちらとしても、そればっかりはいつになるか分からないので”もう少し”としか言えないでいた。
私が困っていると、ある一人の少年がさらに私を困らせる質問をしてきた。
「葉月ネェは宗次朗のこと好きなん?」
「・・・・えぇっ!!?」
予想もしない質問で私はひどく慌てた。
「ど・・・ど、どうして・・・?」
「だって、宗次朗は葉月ネェのこと好きや、言うてたで。なぁ?」
聞かれた子供もふんふん、とうなづく。
私は高鳴る心臓を抑えつつ、子供が言ってることだ、と自分に言い聞かせて落ち着こうとした。
「せやから、葉月ネェも宗次朗のこと好きやとええなぁ、と思っとったん。」
「うん・・・、そうだね。・・・私も宗次朗のこと・・好きだよ。」
言うのはやはり躊躇われたが、子供達になら本当のことを言ってもいいか、と思い、こう答えた。
それを聞いた子供達は、自分の事の用にわぁい、とか、やったぁ!とか、声を上げて喜んでいた。
そんな様子を見ていると、こっちも何だか嬉しくなる。
気持ちもだいぶ落ち着いて、私は微笑ましく思いながら子供達を見ていた。
が、しかし、ある一人の子供が大声で、
「よかったなぁ~!それなら宗次朗、葉月ネェのことお嫁さんにできるなぁ!」
と、嬉々として言った。
これを聞いた私は再び落ち着きを失ってしまう。
「な・・・何言ってるの・・結婚だなんてそんな・・・・。」
「だって好き同士やったら結婚できるよなぁ?」
そうだよなぁ、とうなづく子供達。こういう時、正直な子供達には本当に困ってしまう。
「だ、だからね、それは・・・」
私が何とかして誤魔化そうとしていると、
「どうかしたんですか?」
と、何とも悪いタイミングで総司がやってきた。
「宗次朗~!!」
子供達が早速総司に走り寄る。
みんな自分の話を聞いてもらいたくて、次々と総司に話しかけている。
「みんな落ち着いて。ね、順番に話して下さいね。」
それを聞き、大人しくなる子供達。
そしてそれぞれが、最近自分の周りで起こったことなどを話していった。
私はその様子を見て、自分が標的から外れたんだとほっとした。
しかし、ほっとしたのもつかの間。
「あのなー、葉月ネェが宗次朗のこと」
「うわぁぁーっ!!!」
私は大声で叫んで、その声を遮った。
「え、何ですか?教えて下さいよ~!」
と言う総司に、私は必死に首を横に振る。
「もう、酷いですね~。私だけ仲間外れですか?」
「そ、その話はお終い!!さ、総司も来たんだし早く遊ぼう!ね?」
それを聞いた子供たちはわぁ、と私の周りに集まってきた。
「みんな何がしたい?」
私の問いに子供たちは、おにごっこがいい、かくれんぼがしたい、と口々に言った。
「そうだね~…じゃあ、総司に決めてもらおっか!」
子供たちはうなづいて、総司の元へ再び走り寄る。
「そうですね~…かくれんぼにしましょうか!」
子供たちは嬉しそうにうなづく。
子供の一人が、「俺が鬼~!」と手を挙げる。
数を数え始めるとみんなが一斉に走りだす。
「ほら、何してるんですか、葉月!隠れますよ!」
「え、あ、うん!」
私は総司に手を引かれるまま走った。
「ここなら大丈夫そうですね。」
「うん、そうだね!簡単には見つからないよ!」
その後は見つかるといけないので、お互い黙っていた。
私はさっき子供伝で聞いた総司の言葉を思い出して、急に恥ずかしくなってきた。
「ふ、二人一緒にいると見つかっちゃうから私、別のところ行くね!」
と、言って立ち去ろうとしたが、私は総司に手を掴まれた。
「大丈夫ですよ。ここなら誰にも見つかりませんから。」
「で、でも…!」
「そうそう、さっきのこと、子供たちから聞いちゃいましたよ。」
総司は今だ手を掴んだまま、笑顔でそう言った。
一瞬、総司が何を言っているのか理解出来なかった。
「……は?」
「だから、さっき聞いちゃいましたって。葉月が子供たちを集めてるときにこっそり、ね。」
あの時かーっ!
と、私は心の中で絶叫する。が、既に遅い。私はその場にへたり込んだ。
「な、何で聞くのよー…総司のばか…。」
「私としては直接聞きたかったですね。葉月の言葉をv」
「わ…、私だって直接聞いたわけじゃないもん。私だけずるいじゃない…!」
知られてしまったからには隠しても仕方ないので、今度は小さな抵抗を試みた。
しかし、そんな微々たる抵抗、総司には通用しない。
「私は葉月のこと、好きですよ。葉月…私と一緒になってくれますか?」
私はとっさに、声が出なかった。
「葉月、返事は…?」
「えっと…あ、あの…、私で…良ければ…。」
「葉月…。はぁ…よかった…。」
安心したように溜め息をつくと、総司は私をきゅっと抱き寄せた。
「葉月に面と向かって嫌だ、なんて言われたら私、生きていけませんよ。」
「そんなこと…言うわけないでしょ!もう…。」
私は呆れつつも、そう言ってくれたことをとても嬉しく思い、総司に抱きつき返した。
ふと、ぱたぱたと小さな足音が近付いてくる。
話し声が大きすぎたからか、意外にも早く隠れ場所がバレてしまった。
「わ、総司大変!見つかっちゃうよ!」
「諦めましょうv」
と笑顔で言い、抱き締める力を強くする総司。
「はぁ?!と、とにかく離してよっ!」
まだ離してくれない総司をぐいぐいと押して、私は何とか総司の腕から逃れた。
と、ちょうどそこへ鬼の子供がやってきた。
「あ~!宗次郎と葉月ネエ見~つけた!」
「見つかっちゃいましたか~!」
総司は私の手を引いて、見つけに来た子供へ歩み寄る。
「次は宗次郎と葉月ネエが鬼だよ!」
少年は私たちにそう告げると、他の子達を探す為に元気良く走っていった。
「あ~ぁ、総司のせいで見つかっちゃったじゃない!」
「声が大きかったのは葉月も同じですよ?」
最もなことを言われてしまい、私は何も言い返せない。
「で、でもそれは総司が…」
私が言うのを遮って、総司は私の唇にちゅっと口づけた。
「私が、何です?」
「…もう…。」
私は何をやっても総司に勝てない。
でも今日のことは、剣術で勝てない時程悔しくはない。
そんな悔しさよりも、総司の気持ちを知れた嬉しさの方が強いからだ。
「…総司。ありがとう…好きになってくれて…。」
私は総司と繋いだ手をきゅっと握り直すと、総司に聞こえない程小さな声で呟いた。
「え?何か言いました?」
「ううん、何も。」
「また教えてくれないんですか?」
「うん、教えない!」
私ね、すごく嬉しいんだよ。総司に好きって言ってもらえて。
私の感じている嬉しい気持ちを、総司も感じてるといいな。
なんて、恥ずかしくて言えないけれど、少しでも伝わるといいな、と思い私は再び呟く。
「好きだよ…総司…。」
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