第二章

【第二章】（突然）
どこからか携帯の着信音が聞こえてくる。

ビールを飲み、熟睡体制に入っていた拓哉が　自分の携帯がなっているのだということに気が付くまで
かなり時間がかかった。
「いったい何時だと思ってるんだ！」
仕事の用件でかかってくる時間帯ではないことを確認した拓哉は思わず毒づいていた。
携帯の画面には見たことも無い番号が表示されている。
間違い電話か何かだろうと思い無視しようと一瞬考えたが、文句のひとつもいってやろうと考え直し
通話ボタンに手をかけた瞬間
「おっちゃん！車・・・迎えに来て・・・別れた場所で・・・・」
そこまで聞いた時、通話は途切れてしまった。
眠っていた脳が段々と目覚め、さっき聞いた言葉を思い出してみる。
「冗談じゃない！」
沸々と怒りが込み上げてきた拓哉は、携帯を放り出しベットに潜り込む。
が・・・さっきの言葉が気になって眠れない。
彼女の声がわずかに緊張して誰かに聞かれないよう小声で話していたのを思い出した拓哉は
急いで服を着ると自宅を後にした。

９月も中旬になると夜間は肌寒いんだなと、上着を着てこなかったことを後悔しながら自転車をこぐ。
時計は午前３時をまわったところだ。
拓哉は昨日のことを整理しようと彼女のことを思い出してみた。

まず記憶に残っているのが黒い髪。最近ではどちらをむいても茶髪全盛で黒い髪など探す方が難しい
だろうと苦笑しながらも、だから記憶に残っているのかと妙に納得している自分がいる。
でもそれだけか？
もう少し彼女のことを思い出してみる。
公園では、他の若者が道路にべったりと座り込みながらスナック菓子を食べていたのに彼女だけは
ポツンと立っていたのを思い出した。
拓哉の目には彼女が今時の若者とは少し違って映って見えた。
はっと我に返った拓哉は、なんで今ごろこんなことしてるんだとブツブツ言いながらも
彼女を最後に見た場所に向けて自転車は移動していく。

第二章ＥＮＤ