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バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)
≪モロッコ≫荒れ狂うジブラルタル海峡
予定を急遽変更。
モロッコへ渡ろう。
昨日に続いて、曇り空の朝。
十三日、月曜日。
午前十時半、部屋を出るが、一階のフロア-には誰もいない。
何度も何度もベルを鳴らすが返事がない。
仕方なく、ドアの取っ手に部屋の鍵を引っ掛けて宿を出た。
月曜の昼間だと言うのに、バザーは相変わらず賑わっている。
その人込を縫って、バザー内にある”Banco(銀行)”に入り、両替を済ませる。
(US$20≒1311pt)
港に出ると、強い風をまともに受ける。
肌寒い、なんとも、出発には相応しくない日和ではないか。
通りから見える建物に入る。
Tanger、Ceuta方面と大きな文字で書かれた、チケット売り場の窓口に行くが、船は別の建物だと言われ、教えられた建物に向かった。
もう港には二隻の船が停泊している。
船のチケット売り場の建物は、海に近い方にあって、何人かの旅行者らしい奴らが、すでに窓口に並んでいた。
窓口に並ぶ。
俺 「Tanger、一枚!」
窓口「495pt(2400円)です。」
俺 「船は、何時に出ますか?」
窓口「十二時半ですよ。」
俺 「そう、有難う!」
まだ、出発までに一時間以上ある。
チケット売り場を出て、Tanger行きの船が接岸されていないか探すが、まだ到着していないとの事。
暫く港をぶらついていると、モロッコの国旗を掲げた船が港に入って来るところだった。
十分大きな船だ。
待合室に行こうと、外の階段を上っていくと係員に注意された。
部屋の中に入ると、今度は港湾ポリスらしい人が10人ほどいて、「出口にまわれ!」と、またまた注意されてしまう。
俺「船に乗りたいんだ!」
何度もへたくそな英語で怒鳴ると、やっと理解したらしく、入り口近くの待合室まで連れていってくれたではないか。
俺「解ればいい。」
しかし、どうやら間違えたのは俺の方らしく、裏口から建物の中に入ってしまったようだ。
事務所の外からではなく、中から二階に上がるようになっていて、上がって行くと大きな掲示板には、CEUTA行きが二便とTANGER行きが一便、ランプが点灯している所だった。
TANGER行きは、9:30・12:30・17:00・21:30の一日四便。
船が着いて、TANGERからきた人たちが船から吐き出され、パスポートと荷物の検査が始まった。
十一時半、乗船が開始。
建物の中でパスポートのチェック。
パスポートにスペイン出国のスタンプが押される。
いよいよ、北アフリカ・モロッコだ。
乗船口でチケットを手渡し、船の中に入ると、陽気なおっさんがいて、モロッコ入国の為の用紙だろうか、乗船してきている人たちに配っている。
俺の方を見て、「ニッポン、カラテ!」などとおどけてみせる。
船内には、日立など日本製品が並ぶ。
カフェ入り口でパスポートのチェックが行われ、今度はモロッコの入国スタンプが押されている。
長い列が続いている。
自分の番が来るのをジッと待つ。
心なしか、黒人が多い。
北アフリカといっても、モロッコは元フランス領である。
中東と同じイスラムの国なのだ。
ついに俺の番が来た。
パスポートとさっき入り口で渡された用紙に書き込み差し出す。
係員「モロッコには、友達とか家族はいますか?」
俺 「NO!」
係員「モロッコには、何日ぐらい滞在する予定ですか?」
俺 「One Week!」
係員「OK!」
英語で聞かれ、英語で答える。
パスポートにスタンプがペタリ。
これでモロッコへの入国を許可された訳だ。
船内のカフェに陣取り、Tangerまでの一時間半あまりの船旅を楽しむ事にした。
本を読みながら、青い海を眺める。
俺「オー!これがかの有名な、ジブラルタル海峡か!」
風がかなり強くなってきたらしく、白い波しぶきが、波のうねりと共に青い海を変え始めた。
かなり揺れ始める。
海が息づいているのだ。
あれだけ曇っていた空も、強い風のせいか、いつの間にか青い空が広がり始め、船首の方から強い陽射しが窓を通して入り込んでくる。
テーブルの同席者はキリスト教に関係している中年の女性で、昔はなかなかの美人だってらしく、目鼻立ちの整った落ち着きのある婦人が座っている。
窓からは、アフリカ大陸が大きく姿を現し始め、大きな山々が折り重なるように波打って見える。
Tangerの待ちが見えてきた。
近代的なビル群と土色の昔ながらの建物が混在しているのが良くわかる。
十五時四十分、モロッコの港町Tangerに到着した。
下船を始めようとするが、車が先だと言わんばかりに、待てという指示。
船には係員が二人しかいないらしく、パスポートのチェックにも相当手間取っているようだ。
パスポートのチェック後も、まだ検査があるらしく、船から事務所の二階へ通じる長い管のような橋を渡り誘導に任せて歩いて行く。
長い陸橋に半円のガラスがかぶせられているような、蒲鉾型の橋だ。
海は酷く荒れているらしく、堤防に当たった波が空高く打ち上げられ、白いしぶきとなって空から落ちてきているのが見える。
数羽のカモメが飛び交い、白い波筋がいくつも立ち、渡って来たばかりの海は荒い息遣いをしているようだ。
あれだけ曇っていた空も、いつの間にか眩しい陽射しとなって降りそそいでいる。
天気が良いのに、海は荒れている。
それがこのジブラルタル海峡の特徴なのかも知れない。
荒れ狂う海峡を俺は今渡って来たばかりだ。
歓迎してくれているとでも言おうか。
ジブラルタルが吠えている。
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