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バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)
詐欺師だと言い切れない詐欺師のガイド
ガイドが本業に入った。
ガイド「あれがタンジールのビーチだ。」
白い砂浜を指さしていった。
俺 「なるほど。」
ガイド「左がポルトガル、正面がスペイン、右へいくとイタリアだ。分るか?」
俺 「地理的に言えばそうだな。」
ガイド「そうさ。」
波の荒々しい海が眼下に広がっている。
幾筋もの白い波の筋が見えている。
天気の良い日でも荒々しく吠えている海、それがジブラルタル海峡という事らしい。
遠方の陸地は、靄で霞んでいて薄ボンヤリとしか見えない。
太陽はアフリカ大陸に、まさに今沈もうとしていた。
ガイド「スペインとモロッコでは、時差が一時間ある。モロッコへ来たら、時計の針を一時間戻さなくてはいけないあるよ。」
俺 「そうなんだ。」
いやにゆっくりと時が流れていると思ったら、時差の関係らしい。
ガイド「次はミュージアムを見せよう。」
ミュージアムと言うところへ入っていく。
中に入ると、客らしい客はほとんど見る事がない。
博物館のようだ。
俺 「入場料はいるのか?」
ガイド「いらない。」
俺 「・・・・・。」
ガイド「上を見ろ!あれは全て木で出来ている。ハンドメイドの木だ。」
見上げると、ドームのようになった天井が見事な造形美を見せていた。
ガイド「天井は木製で、壁は漆喰、床はタイルになっている。」
広いドームにガイドの声が響き渡る。
中は静かなもので、一人だけイスに座って退屈そうにしているおじさんに出会った。
俺 「サラーマ・レークン!」
おじさん「サラーマ・レークン!お前は言葉が分かるのか?」
俺 「これだけだ。」
おじさん「フ~~~ム!」
俺 「・・・・。」
おじさん「俺の名前はモハメッドだ。」
俺 「モハメッド・アリか?」
おじさん「ノー!アリではない。ただのモハメッドだ。」
ガイド「あそこにあるのが、ポルトガル銃だ。大きいだろう!」
俺 「ウ~~~ン!」
ガイド「右に置いてある小さい銃がモロッコ銃だ。どれもこれも昔使っていた奴だ。」
ポルトガル銃と聞かされて良く見るが、日本に伝わってきた種子島銃とは、ちょっと形が違っているようにも見える。
次の部屋に入る。
ガイド「正面にあるのが楽器だ。全てハンドメイドだ。左のケースに納められているのが書物だ。どれも古いもので全てハンドメイドだ。」
この”ハンドメイド”という言葉が、彼の口癖らしい。
お互いへたくそな英語なので、話が通じるようだ。
流暢な英語だと俺がウンザリするからだ。
ガイド「ここの庭は、キングガーデンと言われている所だ。これはバナナツリー。」
言われなくても、バナナの木ぐらい分るのだが、初めて見るような顔をして言う。
俺 「なるほど。」
感心して見せるのだ。
キングガーデンと言っても、そんなに立派な物ではなくて、本当にちゃちな庭にしか見えてこないのだ。
*
カスバを歩き回って少々疲れ気味。
レストランに入る。
なかなか小奇麗なレストランだがカウンターが一つあるだけのレストランだ。
若いモロッコ人が二人いて、ほかに一人いるだけの寂しいレストランだ。
店の人「何にしますか?」
俺 「オムレツ一つ。」
店の人「イエス!」
俺 「あー!それとコーラ一つ(1ドラハム≒60円)。」
ガイド「俺はちょっと出て、すぐ戻ってくるけど、待ってるかい?それとも一人でペンションへ帰れるかい?」
俺 「一人で大丈夫だよ。」
ガイド「そうか、じゃあガイド料!」
俺 「いくらだい?」
ガイド「9ドラハム(540円)だ。」
俺 「高いんじゃあない?」
ガイド「安い!安いよ!」
俺 「OK!」
ここへ来る途中、大きな土産物屋に立ち寄った。
モロッコの土産物がずらりと並んでいた。
バッグ・小物・絨毯・服と何でも揃っていた。
見ると、欲しいものばかり。
店の人「らくだの皮だ。駱駝のレザーだ。安いよ!」
俺 「・・・・。」
店の人「ここから船で日本に送る事も出来るよ!」
日本語を巧に操って、美味く乗せてくる。
世界各地へ送っていると、名簿を見せてくる。
日本人らしい名前も見える。
結局小さな絨毯二枚(20$)と女子用服一枚(20$)を購入してしまった。
これらを船便で日本に送ることにしたが、服だけ確認できたけど絨毯は日本に届けられたかどうかいまだに不明。
結局これも詐欺なのだろう。
旅行者は国に帰れば、何もいってこないから、儲けになる。
そういう事なんだろう。
食事を済ませて、いったんペンションに戻り、荷物を置いたまま外に出ると、日本人らしい女の子に出会った。
なかなかの美形だ。
絵葉書をあさっていた。
だいたい街の様子がつかめかけてきた。
大きな・・・・といっても、賑やかだけの通りへ出る。
人込の中に入っていく。
”カラテ”と日本商品は特に浸透しているようで、シャープとかセイコーの看板は至る所で目にすることが出来る。
坂道をドンドン登っていくと、大きな広場に出た。
激しく人が往来していて、カスバの様子とは違った風景である。
広場を突き抜けて、店に入り夕食を取る。
パンにチーズ、オレンジを買った。
オレンジを売っている所に、ナショナル・パナソニックが置いてある。
俺 「ナショナル?」
店番「ナショナル、ベリー・グッド!」
ニッコリして、つり銭を手渡してくれた。
こうして道を歩いていると、毛唐より東洋人が珍しいのか、よく声をかけられたり、握手を求めてきたりしてくるので忙しい。
また、青年が近づいてきた。
青年「ハッシッシはどう?」
俺 「いくらだ?」
青年「1g、1ドラハムだ(60円)。」
俺 「ハッシッシはいいよ!」
青年「女はどうだ。」
俺 「いくらだ?」
それには答えず。
青年「俺の店を見ていけ!」
俺 「ノー!サンキュー!」
*
帰り道、いろんなペンションに立ち寄って、値段を聞いてみると、だいたい一泊6ドラハム(360円)らしい。
してやられたか。
この分だと、4~5ドラハムのペンションもありそうだ。
ガイドがピンはねしているのだろう。
ペンションに戻る頃には、周りはもう暗くなり始めていた。
部屋の鍵は閉まるのだが、なかなか開かないという鍵で、ドアを開けようとするとうまくいかず、ペンションのマスターとやらを呼んできては開けて貰うと言う始末。
いつかも、必死でガチャガチャやっていると、毛唐が様子を見に来てくれた。
毛唐「モロッコ・キー!ノーグッド!」
そういって、笑いながら通り過ぎていくではないか。
なんとも酷いペンションである。
とにもかくにも、こうして13日が暮れようとしている。
久しぶりに興奮する街に出会った。
この街からカサブランカへは、南へ汽車ですぐの所。
そのすぐ南には、サハラ砂漠が広がっている。
そのサハラ砂漠の南にマリ共和国がある。
そこには、我等ヒッチハイクの仲間が眠っている。
サハラ砂漠を一人で越えようとして、死んでしまったという話だ。
原因は駱駝の数が少なかったという事らしい。
好きな事をして死ぬ!
なんと素晴らしい事か!
何も目的も持たず、死ぬ事もなく、周りに迷惑ばかり掛けている若者よりも、人が無茶という事を実行して死んでいく。
それでも彼は生きてきた存在を示して、死んでいったと言って良いだろう!
そんな彼を俺は尊敬している。
アルジェシラスの退屈な小さな町と比べて、カスバをのような迷路を彷徨えただけでも、本当に充実した一日だったと言っても良いだろう。
美人が多いのも、アラブ特有の風景なのだろうか。
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