バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

雪降るウィーン



   地図を持って、ドナウ川へ向かう。
 中程まで歩いて、地下鉄を利用するべく、地下へ向かう。
 通りすがりの人に聞く。

       俺「ドナウ川へ行くには、どうしたら良いですか?」
       男「地下鉄より、Tramwayを使った方が良いよ。」

   地下から上に上がる。

       俺「ドナウに行くには、どのTramwayですか?」

   聞く人、聞く人、違う方向を指す始末。
 「あっちへ行け!」と言われ、ほかの人に聞くと「こっちだ!」と言う。
 そんな状態を二三度繰り返し、苦笑いをしながら歩く。
 こうなれば、地図を頼りに歩くのが一番と、雪の降るウイーンの街中を歩 きだす。

   しばらく歩いていると、フッと頭の中を過ぎった。

   「なぜ、そんなにしてドナウ川を見ようと思うのか。」
   「ドナウ川を見たところで、川は単なる川ではないか。」

   ライン川の時とは違って、ずいぶんと気持ちが荒んでいるのがわか  る。
 疲れているのだろう。
 とうとう、気持ちに勝てず、Uターンしてしまった。

                     *

   駅に戻ると、”Post Office”を見つけて、早速絵葉書を4枚、購入し てしまった。
 田舎に、武君、和智会長に、スペインに居る筈の充子女史。
 23.5シリング(≒440円)もかかってしまった。
 通信費は高いと分かっているのに、また使ってしまった。

   15:00ちょっと過ぎ。
 ウィーンの街は、降雪のため、街全体が霞んで見える。
 なるほど、冬は特に美しさを増す街だ。
 女の人も美しい。
 ファッションも美しい。

   カフェも日本的だし、人も良い。
 でも今の私には、問題がひとつ。
 これら美しいものをすべて断念しなければならない問題がひとつ。

   ホテル代が、2500円。
   コーヒー一杯が、320円。
   食事代が、1000円。
 これから私はどうしたら良いのでしょうか。
 オーストリアの物価は安いぞ・・・ですって、そりゃあ・・パリよりはま しかもしれないけど・・。

   今夜で、4泊目です。
 汽車の中で眠るのは・・・・。
 これから向かうドイツが、ここオーストリアのようだと、ここ当分白いシ ーツの上で眠れる日は来ないでしょう。

                      *

   手と身体はポカポカしていますが、雪を踏みしめてきた足は冷え切っ たまま。
 暖かかったマドリッドでの生活が忘れられず、この過酷さは何なんでしょ う。
 これからも、あのマドリッドでの生活は、要求できないでしょうか    ら・・・希望はロンドンだけなんでしょうね。

   経済的な苦痛は、精神的な苦痛につながると言うことが、やっと分か った様な気がします。
 甘いと言えば・・・甘かった・・・ヨーロッパの冬。

   アマディオでこじらした風邪は、ほとんど完治した。
 ホッとした、安堵感がもたらした風邪だったのでしょう。

       薫「それって、スペイン風邪よ!」

   そう薫が教えてくれた。
 そういえば・・・・思い返せば・・・・アマディオの住人すべてが、何ら かの病に侵されていたような、そんな気がします。

       薫「やっぱり、スペイン風邪は、スペインの薬で治さない          と・・・。」

   日本から持ってきた抗生物質を呑んでいると、薫はそう言って笑っ  た。
 スペインよりずっと寒い。
 北欧への旅で治るんだから、気持の持ちようなのか、この寒さで風邪の菌 がすべて凍死してしまったのか・・・。
 それは分からないが・・・。

                    *

   今日は、久しぶりにタバコを吸ってみた。
 地元の安いタバコなのだが、目が一瞬で覚めるような、すごい味がする。
 夜になって、雪は止んだ。
 そのことに私は、このプラットホームに立つまで気がつかなかったよう  だ。

   20:45発、オーステンデ(Oostende)行きの、国際列車ようのプラッ トホームだ。
 オーストリアのウイーンを発ち、ドイツを縦断し、ルクセンブルクを瞬間 に通り過ぎ、ベルギーに入る。

   時刻表を見ると、随分列車の本数が多そうだが、同じ方面へはそんな に便数はなくて、いろんな国へ向けて走っている、国際列車がすべてここ へまとめられている感じだ。
 ほとんどが、国際列車だと言う事だ。

   外はあまりに寒く、コーヒー一杯で一つ店に、そんなに長居出来ない ことから、列車に一番乗りすることにした。
 列車の中は暖かく、おまけにシートをベッド代わりに使えるとあって、な かなか快適な場所なのだ。

   一時間半も前から乗り込んでしまった。
 それなのに、さっきっからこの列車、二度三度と動き回っている。
 乗客を乗せたまま・・・・それとも、乗客が乗り込んでいるとも知らず、 車両の連結のし直しをしているのだろうか。
 日本では考えられない事なのだが。
 ここは、ヨーロッパ。


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