バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

日本人観光客



  いつもより遅くシンタグマ広場へ向かい、いつもの野外カフェに座る。
     「Are you Japanese?」
 と、後ろから女性の声がして、振り向くと毛唐の若い女性が笑顔で話し掛けてきた。
     「Would you mind writting here, karate!」
 差し出された物を見てさらにビックリ。
 何と、ピンク色の折鶴だった。
 手にした折鶴に”空手”と書いて、ついでにサービスで俺のサインを入れた。
     「Oh!No!!」
 どうも俺のサインが余分だった見たいだ。

                       *

  青いシート(野外カフェは左右で二色に分かれている。)の方では、日本人旅行者達がゲームに夢中。
 良く見ると、マージャンをやっている。
 彼らにしてみれば、思いっきりギリシャの青空の下で、マージャンをする事が日本を出てくる前からの夢なのだろうけど、何もここまで来て何かやる事ないのかよ。

  他にもいろんな日本人が居る。
 リヤカーに畳を積んでアテネに向かっているやつが居るとか、それを見ようとアテネに向かっているやつが居るとか、漫才のような話が実しやかに伝わってくる、なんともお気楽な世界である。
     ”何年も放浪しているやつに、碌なやつはいない!”
 というから、俺も早く日本に帰るとするか!

                       *

  夕方、5:00近くになって両替をしておこうと銀行に入って、一人の日本人旅行者に逢った。
     「やー!」と俺。
     「日本の方ですか?」
     「ええ!・・・・どこから?」
     「ストックホルムまで飛行機で・・・・それからヨーロッパを南下して今日アテネに着いたところです。あなたは?」
     「俺はアジアハイウエーからここへ!」
     「ずっと陸路ですか?」
     「ネパールからはずっと陸路でした。」
     「それはすごいですね!大変でしたでしょう!お一人ですか?」
     「ええ!」
     「・・・・・。」
     「これからどこへ?」
     「アテネから日本へ帰ります。」
     「北欧はどうでしたか?」
 これから行く予定の北の情報を得るために聞いてみた。
     「フィンランドの湖はすべて凍り付いていて、寒さと物価が高いのには驚きました。」
     「そうでしょう!」
 そんな話を聞くと、北欧が何となく遠のいて行く様な気がする。

  ”アジアを歩く”の著者が、新しい情報を得るべく旅をしていてアフガン辺りで殺されたという話が伝わってくる。
 旅の途中、旅のバイブルである”アジアを歩く”も古くなったので改訂版を出すべく、著者が俺達の後を追うようにこちらに向かっていたという話を聞いていたので、一概に嘘とは決め付ける事が出来ず情報が錯そうしている。

                     *

  話がはずみ、彼と一緒に夕食をとった後、彼が宿泊していると言うホテルを訪ねることにした。俺の住んでいるISHと違い、一人100Drと言うだけあって、なかなかきれいな部屋で3人のドミトリー(相部屋)だった。
     「このホテルには、5人くらいの日本人が居るんですよ。」と彼。
     「一人、いくら?」
     「100DR(≒800円)」
     「ええ!!100ですか!俺ん所は50DR(≒400円)ですよ。」
     「でも外人と一緒のドミトリーでしょ!」
     「そうですよ!アメリカ・ドイツ・イギリス・カナダ・レバノンの6人かな。」
     「へ~~~!話は通じるんですか?」
     「片言の英語と手振り身振りで大丈夫ですよ!」
     「たいしたもんでね!」
     「ここまで来て、日本人と一緒のドミトリーでは面白くないでしょう!」
     「・・・・・・・。」

  ・・・・・夜の11:00頃まで久しぶりに話が弾み、日本語の洪水の中で過ごした。
 彼に別れを告げて、真夜中の街に出る。
 こんなに遅くアテネの街を歩くのは久しぶりだ。




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