バックパッカーの旅Ⅱ（欧州～北アフリカ～欧州～日本）

リンとジョアンナ！

　　もうすでに全員ベッドを離れている様だ、・・・・俺以外は。
　騒がしく朝から動き回るショーンの靴音が聞こえてくる。
　　　　ショーン　　「Do　you　have　a　new　Dr.？」
　　　　ドゥ－シュン「No!　I　have　not!」
　朝からシャワーを浴びようと、コインをせびっているようだ。

　　ドゥ－シュンが拒否したとなると・・・・・来た！来た！
　　　　ショーン　　「グッド・モーニング！ヒガシワ！New　Dr.？は持ってませんか？」
　毛布を頭から被って寝たふりをしていたのだが、起こされてしまった。
　毛布を被ったまま、手探りで手だけ毛布から出して、コインを一枚掴みショーンに手渡した。

　　　　ショーン　　「サンキュウ！ヒガシワ！！」
　毛布の上から、ポンポンと軽く叩いた。
　実に陽気な、要領の良い奴である。

　　ドゥ－シュンとアラビックは、日曜日と言う事もあって、無料のミュージアムへ行くと言う。
　ドゥ－シュンは朝早くから、勢力的に良く動く男である。
　さすがに子供二人を持つ父親だ。
　家庭を犠牲にして、他国へ勉強に来ていると言う、嫁さんに対して少しの後ろめたさがあるのかも知れない。
　アラビックは、金魚の糞のように、必ず誰かにくっ付いて外出する以外、全く自分から進んで何かをしようと言う気持ちが、全くないようだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊

　　アテネの街に急に寒さが訪れてきてからは、あまり外に出なくなった。
　”ＩＳＨ”のフロア－のストーブを前に、忙しくペンを走らせる。
　今までのように、シンタグマ広場のカフェで、陽を浴びペンを走らせる勇気は今はない。
　風と寒さに打ち震えるばかりである。
　冬のヨーロッパが見えてきた。

　　１１：００、律子が荷物を背負って部屋を出てきた。
　昨日の夜の話では「１０：００頃出発するつもり！」と言っていたのだが・・・・。
　　　　俺　　　「じゃあ、俺はまだベッドの中だ。」
　と、言っていたのだが、どうやら出発が遅れているらしい。
　昨日「サヨナラ」をしたのだが、もう一度”サヨナラ”を言えるチャンスが巡って来たようだ。

　　　　デニーズ「ヒガシワ！元気で・・・・五年後には、カナダに来てよ。」
　　　　俺　　　「ＯＫ！」
　　　　デニーズ「この牛乳飲んでください！」
　飲みきれなかった牛乳を手渡してくれ、握手をして別れた。
　彼女等はテルアビブへ向かった。
　一ヶ月の予定だと言う。

　　この”ＩＳＨ”には、どういうわけか、カナダ人が多く、四人のカナダ人が去ったあとも、このフロア－には今なお、二人のカナダ人がいる。
　出発した二人を見送ったあと、ラーメンを作るべく、下のキッチンに降りていくと、その二人のカナダ人が昼食を取っているところだった。
　　　　俺　　　　　　　「ハロー！How　are　you！」
　　　　リンとジョアンナ「ハロー！」
　　　　俺　　　　　　　「Which　your　contry？」
　　　　リン　　　　　　「カナダ！」
　　　　俺　　　　　　　「モントリオール？」
　　　　リン　　　　　　「No！ニュートロント！」
　　　　俺　　　　　　　「OH!ベリーナイス！」
　　　　リン　　　　　　「Are　you　coming　from　Japan?」
　　　　俺　　　　　　　「イエス！」
　　　　リン　　　　　　「From　Tokyo?」
　　　　俺　　　　　　　「イエス！東京。」
　　　　リン　　　　　　「I　may　go　to　Tokyo　after　any　month!」
　　　　俺　　　　　　　「Oh！It’s very nice. But very expensive!」　
　　　　リン　　　　　　「・・・・・・・・。」
　　　　俺　　　　　　　「Are you a student?」
　　　　リン　　　　　　「No! I’m worker， but she is student.」
　ジョアンナの方を向いて言った。
　　　　俺　　「名前は？」
　　　　リン　「私はリン！彼女はジョアンナよ！あなたは？」
　　　　俺　　「ひがしかわ！って言います。宜しく！」
　　　　リン　「ヒガシワ！ベリーナイス。」
　　　　俺　　「サンキュウ！」
　　　　リン　「We　may　go、イスラエル！」
　　　　俺　　「イスラエルに行くの？」
　　　　リン　「そう！キブツで働いてみようと思って！」

　　なんと彼女達も、イスラエルを目指しているとは！
　もしかして、ここ”ＩＳＨ”は、イスラエルのキブツへ行く、若者達の集合場所なのかも知れない。

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