バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

リンのネグリジェ姿



  ”ISH”に戻ると、すぐ鉄臣がやってきた。
    鉄臣 「ネーねー!チケット買いに行くんだけど、付き合ってよ。」
    俺  「俺も一緒に行くの?」
    鉄臣 「暇なんでしょ?」
    俺  「暇だけど・・・・。」

  国際列車のチケットは、駅ではなく”Booking Office”で買うらしい。
 ”Booking Office”は、アテネ大学の右前にある。
 事務所の中に入ると、国内・国際両方のチケットを扱っているらしい。
    鉄臣 「ソフィアまでいくらね?」
    事務員「ファーストクラス?」
    鉄臣 「セカンド!」
    事務員「622Dr(≒4980円)」
    鉄臣 「5000円もすんの!」
    俺  「アテネ~パリ間が1700Dr(≒13600円)だからそんなもんかな?」
    鉄臣 「性がないな・・・・。チケット頂戴。」

  チケットを無事購入した後、”Rex”の映画館に入った。
 日本の坂井三郎を描いた”0パイロット”を見た。
 感動するほどの映画でもないが、他にも映画のはしごをして、夕方帰途についた。
    俺 「何時に出発すんの?」
    鉄臣「今晩、10:00発です。」
    俺 「又、日本で逢おうや!」
    鉄臣「東川さんこそ!」
    俺 「じゃあ!元気で。」
    鉄臣「日本に帰ったら、また和智さんとこでパー!!とやりたいですね!」
    俺 「帰ったら、宜しく言っといて!」
    鉄臣「寂しくなりますね。」
    俺 「みんな、日本に帰っちゃったもんな。」
    鉄臣「東川さんは、どうするんです?」
    俺 「俺は、道半ばだから・・・・できたら、ヨーロッパを全部廻るつもりだけど。」
    鉄臣「良いなー!僕も行きたいけど・・・お金が尽きたし。」
    俺 「俺は最初からそのつもりで、来てたから・・・・せっかくここまで来たんだから、金が尽きるまで放浪するさ。」
    鉄臣「ハガキ・・・下さいね!」
    俺 「ああ!」

  公園の中で鉄臣と別れる。
 ”ISH”に戻り、すぐ夕食を作ろうと、キッチンに下りて行くと先客がいた。
 ”リン”と”ジョアンナ”がちょうど食事の最中だった。
    俺 「ハロー!」
    二人「ハーイ!」
 今晩は、ラーメンライスだ。
 パリ~アテネ間のバスで、三日間の長旅の間の食料として、おにぎりを作るつもりで、500gのライスを炊く事にした。
 その間に、ラーメンを作っていると、”リン”が、けげんそうに覗き込んで来た。
    リン「What is it?」
    俺 「ジャパニーズ・ヌードル!」
    リン「Oh!ベリーナイス!」
    俺 「グッド!」
    リン「これは、何処で買ったのか?」
    俺 「日本から送ってきたものだ。」
    リン「アテネには売っていないのか?」
    俺 「日本の食糧を扱っている所だと、売ってると思うけど、ちょっと高いかも。」
    リン「これ・・何?」
    俺 「箸。」
    リン「・・・・??」
    俺 「ナイフとフォークの替わりをするもの。」
    リン「グッド!」
    俺 「たくさん持ってるから、一つやるよ!」
    リン「えっ!有難う!」

  突然の箸のプレゼントに”リン”は大はしゃぎ!
 ラーメンの袋を見て感心している。
 ”リン”は可愛くて、小柄。
 眼鏡をはずすと、少し大人っぽく見える。
 昨晩は、ネグリジェ姿で、皆が集まるストーブの部屋に現れて、少しネグリジェ姿にドギマギしたものだ。
 どこかの安宿と違って、平気で人前で裸になるヨーロッパ女とは、ちょっと違う女性がここにはいる。

    俺 「リン・ジョアンナはいつここを発つの?」
    リン「母が送金してくれるはずの、お金を今待っています。」
    俺 「素晴らしい!」

  中近東の旅とか、パリは美しい街だけど物価が高くて、旅行者にとっては長く滞在できるとこではない。
 そんな情報交換をしながら、楽しい夕食タイムを過ごす事が出来た。

  夜は、ストーブを囲んで、本を読んだり俺のラジオで音楽に耳をかたむけて過ごした。
 良い音楽が流れるたびに、”リン”の「ワッ!」という歓声が聞けて、楽しい夜が過ぎて行った。

    リン「明日は、何で発つの?」
    俺 「バスだけど。」
    リン「いくらしたの?」
    俺 「1700Dr(≒13600円)かな。」
    リン「パリへは何時頃?」
    俺 「三日後の予定。」

    リン「それは、何を書いているの?」
 俺がノートにペンを走らせているのを覗き込みながら言った。
    俺 「旅行記かな。」
    リン「じゃあ、作家なの?」
    俺 「いや?そういう訳じゃないけど・・・・記念にかな?」
    リン「良いわね!」

 リンとの楽しい夜がふけていく。

 明日は午前中、ドゥ-シュンがユーゴスラビアに戻ると聞いた。
 アテネに帰って来るのは来年だとか。
 午後からは、俺がパリに発つ。
 それと入れ替わりに、この”ISH”にはオーストリアのアベック(兄・妹かも知れないが。)が、朝やって来た。
 我々の部屋にも一人新しい住人が入った。
 その新しい住人とリンと俺の三人で、ストーブの火が消えたのも気ずかず、PM11:00過ぎまでおしゃべりが続いた。

  ”リン”は明るく、弾んだ調子で、次から次へと質問して来る積極さに、さすがの俺もタジタジだ。
 ドゥ-シュンとアラビックはもうベッドの中。
 ドゥ-シュンに貰ったブランデーが効いてきたようだ。
    リン「ヒガシワ!お休みなさい。良い夢を!」
    俺 「リンも・・・良い夢を!」
    リン「グッナイ!」


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