バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

≪スペイン≫列車内でスペイン女に出合った



  午前6:30。
 ”Bay onve”の駅で目を覚ました。
 この辺りから各駅停車しているようで、列車はゆっくりと進んでいる。
 同室だった老夫婦は、国境の手前の駅で降りたらしい。
 列車の窓からはすぐ近くに海が見える。
 ヨーロッパの西に面している荒々しい海が、白い波しぶきと共にかなり遠くの方まで続いているのが見えている。

  まだ外は薄暗く、波の荒々しさだけが、窓から見える唯一の景色である。
 スペインとの国境の街である”Hendaye”の駅に午前8時少し前に到着した。
 暫く停まっていたが、またゆっくりと滑り出した。
 また少し眠ったのか、次に目を覚ますともうそこはスペインの町”Irun”駅だった。
 どうやら、眠ったまま国境を越えたらしい。

  フランスとスペインでは、一時間の時差があるらしく、駅の時計は午前九時十三分を指している。
 この国境の街”Irun”駅で乗客たちは全員列車から降ろされた。
 列車を降りると、小さなカスタムがあって、まずフランスそしてスペインの順番で、パスポートのチェックがある。
 両国のカスタムが同じ部屋にあり、チェックはわりと簡単に済む事が出来た。

  あまり入念に調べもせず、スタンプも押さない。
 荷物検査においては、荷物にチョークで印を入れるだけの簡単な作業で終わってしまった。
 駅とは言え、改札口らしいものは何もなく、人は自由に出入りしているようだ。
 駅の中にあるBANKで、US$10を両替する。
           ≪10US$≒632ペセタ≫
 外はフランスの鬱陶しい天候と違い、青空が広がっていて、清清しい空気が充満していて、気持ちのいい朝を迎えている。

                   *

  一時間ほどの時差を調整する。
 もうすぐ、マドリッド、リスボン方面行きの列車が出るらしい。
       俺 「すんません、マドリッド行きの列車は何処から出てますか?」
       駅員「5番線ですよ。早く行きなさい、・・もうすぐ出ますよ。」
       俺 「5番線ですね!ありがとうございました。」
 言われたとおり5番線にまわると、もう列車が到着していて、次々と乗客たちが列車に乗り込んでいる。

  この列車はマドリッド方面とリスボン方面行きの車両が一緒になっていて、車両を間違えるととんでもない所に連れて行かれると駅員が教えてくれ、リスボン方面行きの車両を確かめて列車に乗り込んだ。
 車内は日本の寝台車のように、コンパートメント(個室)になっていて、一つの車両にいくつか仕切られている。
 右窓際が通路になっていて、コンパートメントは六人入れる個室だ。

  ドアを開けると、一等車らしくフワフワのソファがゆったりと配置されていて、鏡まで壁にかけられている。
 窓は上部を押し下げて開くようになっているのだが、これがなかなか力のいる作業となる。
 午前九時四十五分、Irun駅を発車。
 乗客はまばらだ。

  午前十時、”San Sebastiain”駅到着。
 途中、トンネルの多い山岳地帯を走っている時、遠くに雪山が見えた。

  午前十一時十分、”Alsasua”駅に到着。
 十一時三十分になると、車内食堂からアナウンスではなく、白い制服を着たおじさんが、「カフェの用意が出来ました。」と歩いて知らせにやって来た。
 早速、カフェに出向いてカフェとサンドウイッチを注文するが、これがなんと93ペセタ(440円)も取られてしまった。
 支払いの時、100ペセタ札を出したのがいけなかったのかもしれない。
 一緒にチップも取られた可能性がある。
 俺はチップを払わない主義で通してきているのに・・・・悔しい。
 やはり最初にいくらか聞いて注文するべきだった。
  (聞いても腹が減っているんだから・・・無理だったと思うよ。)

  午後から雲が広がってきた。
 十二時十分、”Miranda”駅に到着。
 通り雨が降ったかと思うと、太陽の陽ざしが再び顔を見せる。
 六人個室に一人となってしまった。
 どのコンパートメントも乗客が少なく、一部屋貸し切り気分で気持ちがいい。
 無料?チケットであるユーレイル・パスは、列車が”Irun”駅を出るとき一度、車掌に見せただけ。
 ちょっと緊張したが、何も疑わなかった。

  正確に言えば無賃ではない。
 日本に帰った彼がちゃんとお金を支払っているのだから。
 勿体無いから俺が替わりに使っているだけだから、ヨーロッパ諸国に対して悪事を働いている訳ではない・・・・・と思っている。
 ・・・・・・。

  パリからのリザーブ(予約)も一度確認しただけで、どこかの国のように厳しくないようだ。
 それだから無賃乗車が可能なのかも知れない。
 ただ、見つかった時はそれなりの覚悟が必要だ。
 その覚悟がない人は、ちゃんと自分のチケットを購入して列車に乗るべきだろう。
 ヨーロッパも南北に分けると、南はどちらかと言うとルーズなところがあるらしく、北へ行けば行くほどチェックが厳しいという情報は得ていた。
 だから、貰ったユーレイル・パスで南を回り、自分のパスで北を回る計画を立てている。
 何事も起こらないように祈っていてください。

                     *

  かなり長い間停車している。
 一体何がどうなっているのかまるでわからず面白くない。
 小雨になり、陽ざしが差し込んで来る。
 大きな雲がかなりの速度で西から東に走っているのが分かる。
 奇妙な空模様だ。
 駅は何事もないかのように静かで、荷物だけが列車に積み込まれている。
 貨物も兼ねているのかも知れない。

  時折、駅の構内にアナウンスが聞こえるのだが、何をアナウンスしているのかさっぱり分からない。
 そうこうしているうちに、マドリッド行きの列車が横に滑り込んで来たかと思ったら、先に発車してしまうではないか。
 どうやら、アナウンスはこの一時間四十分程の停車の間に、マドリッド行きの車両を切り離し、後からきたマドリッド行きに連結して、さっさと発車してしまったというのが真相らしい。

  午後一時五十分、やっとの事で”Miranda De Ebro”駅を発車。
 列車が動き出すとホッとする。
 広い広い田園風景の中を、時には車より遅く、時にはとち狂ったように車体を右に左に動かしながら、何処までも続いている二本のレールの上を疾走していく。

  午後3時58分、”Burgos”駅から、ユーレイル・パスを持ったスペイン女性らしき二人組みが乗り込んできた。
 大柄な女で、顔から判断すると三十代なのだが、着ているものを見ると二十代にも見えてくる。

      16:55、Venta De Banos駅
      17:17、Valladolid駅
      17:55、Medina Del Campo駅
      19:27、Salomanca駅

  Salomanca駅に近くなって、同室の女性に聞いた。
       俺 「すみません!この列車はリスボンまで行きますか?」
 彼女英語が話せるようだ。
       彼女「NO!この列車はSalomanca駅どまりですよ。」
       俺 「・・・・・。」
       彼女「何処まで行くんですか?」
       俺 「リスボンまで行きたいんですけど。」
       彼女「そうですか!私達もリスボンまで行きます。乗り換えがなかなか大変ですよ。時間もかかりますし。」
       俺 「オー!アイ、シー!(わかります。)」

       彼女「だから私達はSalomancaで一泊して、明朝リスボンへ行く予定なんです。あなたはどうしますか?」
       俺 「俺は今夜リスボンへ行きたいのですが。」
       彼女「今夜?あなたも一泊すれば、私達が案内しますのに・・・。」
       俺 「そうですね。」
       彼女「ところで、何処から来たんですか?」
       俺 「日本です。」
       彼女「日本!それは素晴らしい。」
       俺 「シー!(これ、スペイン語で”ハイ”)」

  この頃になると、ろくに食事を取っていなかったので?胃が痛み出してきた。
 腹が減りすぎたために痛くなってきたのか分からない。
       彼女「ビスケットですけど、食べますか?」
       俺 「ハイ!いただきます。」
       彼女「フフフ・・・・。」
       俺 「美味しいです。」

  日が落ちて行く。
  十九時二十七分、Salomanca駅に到着。
       彼女「どうしても今夜行くの?」
       俺 「ええッ!(宿泊所替わりに列車を利用しているとはどうしても言えず)」
       彼女「気をつけてね!」
       俺 「ありがとう。」

  列車を降りると、外はもう真っ暗。
 サロマンカ駅には、まだ沢山の人がいて、レストランも賑わいを見せていた。
 寒さのせい?
 俺はそれどころじゃなく、レスボア(リスボン)行きの列車を探して、構内の掲示板を見たり、駅員らしいスペイン人を見つけては、レスボア行きの列車はどれか、何処から出るのか?と一人に聞くには不安なので、何人にも聞いてまわった。

            ≪1US$≒300円≫
            ≪1US$≒63.2ペセタ≫
            ≪1ペセタ≒4.75円≫


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