ヒナコの伝言板。

ヒナコの伝言板。

Vol.7



そういいながら彰はノートに「涼」の字を書いてみせた。

「淳君とかぶるよね・・・。」

慶介が口をはさむ。

「そうなんだよね、しかもこの字、”さみしい”とか”思いやりのない”とかって意味があるんだよね。」
「笹山さん、漢字詳しいんですね・・・。」

感心したように淳がいった。

「こいつ昔から漢和辞書が大好きで常に持ち歩いてんだぜ。漢字オタク・・・、あ~きも。」
「うるさいよ!光一郎!!・・・でね、同じ「リョウ」でもこっちは”しのぐ”っていう意味があるんだよ!」

彰はまた同じようにノートに「凌」の字を書いた。

「しのぐ・・・ですか。」

意外な言葉に遼は少し驚いた。

「そう!まぁ、この字にしたのはおれの好みなんだけど、なんかいくない?どんな困難にも耐えしのいで打ち勝っていくような、どんなことにも負けない強い子になりますようにってか?」
「そんな・・・、お前の子じゃないんだから・・・。」

すっかりその気の彰に光一郎があきれて言った。

「でも、いいですよね、あたし好きですよ!その言葉。」
「そうだよね、そうだよね!遼ちゃんの名前だもんね、遼ちゃんがよければいいよね!じゃあ、遼ちゃんは「凌」で決定!オレは「彰(アキラ)」を「ショウ」と書いて「晶」の字を書こうと思うんだけど!!」
「いいですね!!すっごくいいと思います!!どう思います?木ノ下さん!」
「・・・いいんでないの?別になんでも・・・」

のりのりの遼と彰に意見を求めれてあきれながらも光一郎が答える。

「オレは「淳」のままでいいです。別に本名隠す必要ないし。」
「ああ~!」

淳の言葉に光一郎があわてて耳打ちをする。

(おい!淳!自分ばっかり先に逃げるなんてずるいぞ!)
(だって変な名前つけられちゃ、たまんないし。)

「オレも「慶」でいいや。ただのマネージャーだし。」
(え!慶介さんまで・・・。)
「オレも本名でいいよ。隠す必要ないからさ。」
「なんかおもしろくないんだよな。そのままなんて。」
「慶介さ~ん、名前なんて面白くなくていいです~。」
「じゃあ、光一郎の「光(コウ)」を「ヒカル」でどうです?」

遼の提案に彰はうなずいてノートに書き出した。

「いいね~、決定!」
「ええ?決定?もう?オレに決定権はないわけ?オレの名前なのに?」
「で、バンドの名前なんだけど漢字一文字でよさそうな意味の感じだとこの辺かな・・・。」

ノートには「撼・衒・幻」の文字が書かれている。

「”うごかす”、”てらう”、”まぼろし”・・・。」

遼の隣でぼそっと淳がつぶやいた。

「え?なんで淳君そんなの読めるの?」
「このくらいならね。」

なんかてれてるみたい。光一郎さんと話すときもこのくらい素直ならケンカしなくてすむのに。

「さすが淳君。この字を選んだのはオレの好みだけど・・・。」
「お前の好みの基準はいったいどこにあるんだよ・・・。」
「・・・光!うるさい!!」
「・・・。」

なんだか今日の彰、いつにもまして燃えてる・・・。

「で、これらはまだ別の意味があるんだよ。”さわがす”、”売り歩く”、”まどわす”」

ノートに書かれた文字をペンの先で押さえながら彰が言う。

「お前この3つの言葉捜すのに何時間辞書めくってたの?暇なやつ・・・。」
「ねぇ、彰君、この”まどわす”って言葉はさ、俺たちのウソを誰かに見破ってほしいって意味?」
「・・・さすが慶介さん。その通りです。これから世の中を欺いてくのにノーヒントじゃ、フェアじゃないですから。よーするにゲームですよ。”惑わす”というヒントを与えて誰が一番にオレ達の惑わしから抜けられるか。」

彰と慶介の話を黙って聞いてる淳の横で遼と光一郎は首をかしげている。
(光一郎さん、あたし話が難しくてわかんないんですけど・・・。)
(オレも・・・。)

「フェアじゃないってことはウソをかくしておきたくないってことだね。」
「オレ達はともかく当人の遼ちゃんには後ろめたさが残ると思うんだよね。でもある程度、『私たちはウソをついてます』って宣言しとけば楽じゃん?気分的にもね?」

彰の言葉を聞いて初めて遼は納得できた。笹山さん、あたしがつらい思いしないようにいろいろ考えてくれてたんだ・・・。

「ありがとうございます!!”まどわす”と書いて「幻(ゲン)」!これで決定ですね!!」
「幻ねぇ・・・まぁ、いいんじゃない?みんなで日本中を惑わしてやろうぜ!!」

慶介の笑顔にみんなはうなずいた。曲もできて名前も決まっていよいよ、バンド「幻」の活動開始だ!!

         Vol.8・・・つづく。


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