風鈴のページ 

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熟し柿


 朝、電車を降りると熟し柿のいい匂いがしてきた。「どこから匂ってくるのかな?」キョロキョロ。どこにも柿の木はないし、果物屋さんもない。私の近くには昨日は相当飲んだと思われる、スーツ姿のおじ様しかいないもの。ひょ、ひょっとしておじ様の口からその匂いは発せられているのか!・・・戸惑いを覚えたけれど、時既に遅し。すっかり”いい匂い”として私の脳みそクンは反応してしまっているし、おじ様の吐いたと思われる息は私の鼻から肺へ肺から鼻へと何度も行ったり来たりしている。おや、そう言えば、うちの父が昔、秋になると渋柿をたくさん取ってきて、焼酎に浸けていたっけ。焼酎を浴びた渋柿は暗いところにしばらく寝かされる。すると不思議なことに(ちゃんと科学的に立証済みだけど)渋が抜けて甘くて美味しい熟し柿に変身するのだった。このおじ様は昨夜どんなお酒を飲んだのだろう?!ああ気になる、気になる!焼酎だったらどうしよう! おじ様 x 焼酎 x 秋。 朝っぱらから私の妄想は膨らむのであった


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