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第1章 貿易図案(外国商館/輸出用茶/生糸/燐票)/第2章 トイレタリー(化粧品/石鹸/洗粉/歯磨/月経帯/パウダー)/第3章 薬品(売薬/薬種/肥料/蚊取線香/商法 他)/第4章 食品・嗜好品(飲料/煙草お飲み物)/第5章 繊維・日用品(繊維/文具 ほか)<感想> ★★★★☆本書は明治・大正・昭和の商業デザインに関する本です。あらゆる商品についていたラベルなどがジャンル別に整理されていてレトロ文化好きなら大満足できる一冊です。 近代の小説がお好きな方なら主人公たちの背景にこんな小物が置かれているのかも・・・と思い描くのもいいかもしれません。 中山太陽堂(現クラブ化粧品)の跋扈ぶりや、森下南陽堂(現森下仁丹)の「毒滅」。 青い硝子壜に入った「神薬」が怪しすぎてたまりません。(笑) これだけ集めた著者には頭がさがります。オールカラーできれいな本ですが、お値段も高めです。図書館に予約を入れるとき、あと一冊・・・・ということがあればおススメです。 思った以上に楽しめると思います。
2012.02.25
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失業中サラリーマンの恵太が引っ越した先は、家賃3万3千円の超お得な格安アパート。しかし一日目の夜玄関脇の押入れから「出て」きたのは、自称明治39年生れの14歳、推定身長130cm後半の、かわいらしい女の子だった(表題作「押入れのちよ」)。ままならない世の中で、必死に生きざるをえない人間(と幽霊)の可笑しみや哀しみを見事に描いた、全9夜からなる傑作短編集。<感想> ★★★★☆タイトルやあらすじ。 なにより著者の作品傾向からしてほっこりーなホラーだと思っていたら、そこそこ本格ホラーしてました。 ひとつひとつの話が短いので、電車通勤のお供には最適の一冊。 荻原浩さんは何を読んでもハズれがありません。 ガツンとくる作品がないといえばそうなんだけど、これだけ幅広い読者を楽しませてくれる手腕があるんだから、そろそろ直木賞あげちゃってもいいんじゃないでしょうか?
2012.02.25
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1944年6月、多くの民間人を抱えたままサイパン島は戦火に包まれた。日系二世の「ショーティ」は、アメリカ軍の一員として上陸した語学兵のひとりだった。忠誠登録を経て帰属国家を示した彼は、捕虜となって帰属国家を見失う日本人と接し、その複雑な心理を目の当たりにする。捕虜の禁忌に縛られ、不義の罪悪に懊悩する人々にあるのは、いつの世にも通じ、いずれの国にも通じる、社会の構図だった。<感想> ★★★★☆第二次大戦中、太平洋戦線に投入された日系二世の心情を描いた作品。 日系二世の苦悶を見事に描ききっています。 旧日本軍では捕虜になることを辱めと戒めていたようですが、部下の命を守るため、部隊ごと投降した士官(将校)などもいたんですね。 ただ、その士官の末路は・・・・。ラストの七夕のシーンが秀逸でした。
2012.02.25
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谷底から見上げた「明治維新」。明治10年。時代から取り残され、根津遊廓に巣食う男と女の身に降りそそぐのは、絶望の雨か、かすかな希望の光か。『茗荷谷の猫』で大注目の新鋭が放つ、傑作長編小説。<感想> ★★★★☆時代には大きな節目というものがあります。近代と現代の境目である敗戦。 さらに遡れば近世と近代の境目である明治維新。 時代のうねりは常にドラマチックで、しばしば小説の題材になります。 これは私自身の偏った考えかもしれませんが、この二つを物語として取り上げる場合その切り口は異なります。 庶民個々のそれを物語とする敗戦に対して、明治維新は坂本竜馬などのメジャーどころが活躍する歴史物語としての側面が強いような気がします。 まぁ~それはそれで面白いわけですが、一般庶民はそれをどのように受け止めていたのか?そのあたりがすげぇ気になったりもするわけです。さて、前置きが長くなりました。本書の舞台は明治十年の根津遊郭。 主人公は武士から身をやつし遊郭の立番を勤める定九郎。 読み進めると江戸を舞台にした時代小説の雰囲気が色濃く立ち込めていますが、ところどころに明治を象徴するキーワードが出てきます。 そのあたりが中途半端と感じたりもしますが、庶民が感じていた明治十年とはそんな時代だったのかもしれません。時代に取り残されて鬱屈している定九郎になかなか感情移入できませんでしたが、ラスト間際の定九郎が肩を震わせながら泣くシーンは秀逸で思わずうるるんとなってしまいました。 正直言って直木賞作品のわりにはジミですが、時代の波に乗るでもなく強く抗うでもない。 ただ背を向けて生きる男の寂寥感や孤独がとても巧みに描かれてるように感じました。 余談ですが、舞台になった根津遊郭は東京大学ができた為、洲崎に強制移転させられます。 その洲崎遊郭の様子を記したのが、永井荷風の『断腸亭日乗』です。 作品の背景をつついてみても面白いかもしれません。
2012.01.10
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実行犯は、ジジババと幼稚園児?隣接する有料老人ホーム「ひまわり苑」と「ひまわり幼稚園」。老人とガキどもの不思議な交流、やがて起こるカゲキな「事件」とは?荻原浩渾身の熱血幼老小説!-。<感想> ★★★★☆昨年(2011年)は荻原浩さんの作品を数多く読みました。そこで学んだのは荻野作品は、あらすじを読んで絶対につまんないだろうな・・・思うものほど面白いということです。本書もひとことで言うなら子供と老人のドタバタですが、それぞれのキャラクター創りが丁寧なので、奥行きがあって行間もたっぷり読ませてくれます。 徐々にハードボイルド爺と化していく誠次がツボでした。 こんな爺サマになりたいものです。(笑)
2012.01.04
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地方営業に出かけたギタリストの夫に女の影を感じた妻が、隣家の男と営業先へと向かう表題作「夜を着る」、大人になりきれない男女のあてのないひと夜のドライブ「アナーキー」、父の葬儀に現れた愛人との奇妙な記憶を描く「よそのひとの夏」など八篇を収録。日常の皮膜が剥がれおちる旅をテーマにした短篇集。<感想> ★★★★☆思わずジャケ借りしてしまった井上荒野さんの短編集。男女間のスリリングなシーンを描かせれば井上荒野さんに敵う作家はいないのではないか?と思わせる作品集でした。これからも大人が満足できる作品を手掛けて欲しいものです。「ヒッチハイク」と「よそのひとの夏」にシビれました。オトナなあなたにおススメな短編集です。
2012.01.04
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賞味期限切れの片思いと好きでもない現実の彼氏。どっちも欲しい、どっちも欲しくない。恋愛、しないとだめですか。<感想> ★★★★☆本書は綿矢りささんの最新刊ですが、初出は昨夏の「文學界」なので一年以上前に発表されたものです。 現在27歳の綿矢さんですが、今年でデビュー十年になります。 しかし、上梓されたのはわずか4冊に過ぎません。 寡作な作家さんでもありますが、その背景には綿矢さんの紆余曲折があるような気がします。 しかし、それはご自身の問題ではなくファンを含めた周囲の問題です。 メジャーな賞を受賞するのがその作家にとってどのように作用するのか?そんなことも考えさせられます。さて、本書は前作の『夢を与える』と比較するなら徹底的に陽性の作品です。 あらすじから恋愛小説をイメージされると思いますが、主人公である恋愛経験のない26歳のヲタクOLが、そのとば口に立たされて右往左往するさまが描かれています。 それ考え過ぎじゃない?なぜそういう思考に至るのか?という箇所がいくつもあります。 主人公がまじめに考えているだけにかなり笑えます。 特に後半は電車の中で読むのは危険かもしれません。 しかし、本書は単なる恋愛ユーモア小説ではありません。 文章のキレも鋭いし、合いの手のように入る主人公のつぶやきも秀逸です。 純文学系の作家が手がけたジャンル小説を読む楽しみというのがありますが、それを十二分に味わうことができます。若い女性の方。 読みやすいけどそれなりに中身のある小説を読みたいとお考えの方。 そして、夏石鈴子さんの『今日もやっぱり処女でした』の主人公あおばのまったり感が好きだという方におススメします。著者インタビュー(楽天ブックス)
2011.09.10
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2008年刊行の文芸誌発表作品から精選した、20篇の小説集。<感想> ★★★★☆本書は日本文藝家協会が編集して、講談社が毎年一冊出しているアンソロジーです。 編集委員は秋山駿、川村湊、島田雅彦中沢けい、沼野充義の各氏。現在、芥川賞にノミネートされる作品のほとんどは五大文芸誌(新潮・すばる・群像・文藝・文學界)に掲載された作品です。 エンタメ系の文芸誌もいくつか存在しますが、この五大誌は純文学を扱う雑誌と定義することができます。 私は廃刊になってしまった「海燕」を購読していましたが、正直言って私のようなエンタメ系読者にとっては、ちょっと敷居が高かいように感じていました。 ただ、私は吉本(よしもと)ばななさんと小川洋子さんの存在をこの雑誌で知りました。 つまり、純文学系の文芸誌は手を出しにくいんだけど、大当たりを引く確率も高いということです。さて、09年版の本書は前年の08年に五大文芸誌に掲載された作品を中心に20編がチョイスされています。 約束(瀬戸内寂聴)/誰も映っていない(中原昌也)/草すべり(南木佳士)/五月晴朗(原田康子)/嫌な話(前田司郎)/あなたたちの恋愛は瀕死(川上未映子)/満ちる部屋(谷崎由依)/地下鉄の窓(村松真理)/寒九の滴(青山真治)/物語の完結(山崎ナオコーラ)/楽観的な方のケース(岡田利規)/無頭鰯(横田創)/指の上の深海(稲葉真弓)/北方交通(茅野有城子)/海千山千(伊藤比呂美)/電気馬(津島佑子)/かけら(青山七恵)/闇の梯子(角田光代)/宇宙の日(柴崎友香)/廃疾をかかえて(西村賢太) ベテラン、今が旬の売れっ子作家。 他のアンソロジーでよく名前を見かける作家もいれば、初めて名前を知った作家もいます。 私のお気に入りは赤字で表記しましたが、その評価は読者百人百様でしょう。このアンソロジーで、あなたの大当たり作家を見つけてください。【送料無料】文学(2011)価格:3,465円(税込、送料別)
2011.08.31
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貧しく孤独な生い立ち、失意の青春時代、そして作家としてデビューするまでの苦闘の日々を、切々と告白した心うつ魂の記録。<感想> ★★★★☆かつて、長者番付(高額納税者公示制度)なるものが例年発表されていました。 新聞などでは分野別に発表していて、松本清張は作家の分野で常に名前が記されていました。作品を読むようになり、そんな大ベストセラー作家がかなりの苦労人だと知りましたが、私小説の体裁をとっている本書では、そのすさまじい苦労ぶりが詳細に描かれています。小学校しか出ていないとか、朝日新聞で版下工をやっていたなどのエピソードは有名ですが、戦後は北九州から西日本一帯を旅しながら、箒を売り歩いていたというのは初めて知りました。 代表作である『砂の器』に物乞いをしながら旅を続ける親子が出てきますが、それは清張が行商をしながら、どこかで見た光景だったのではないだろうか?などと思ったりもしました。清張作品は社会から抑圧されている弱い立場の人たちを描いたものが数多くあります。 彼はなぜそんな作品ばかりを書いていたのか?そして、それらの作品がなぜ多くの人に受け容れられたのか?そのヒントがこの私小説に隠されています。清張ファンはもちろんですが、単純に貧乏話がお好きな方にもおススメします。
2011.08.28
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人の世はなんとおぞましく、美しいのだろうー。若く美しいまま亡くなった妹の思い出を残したいと、凄腕だという遺体専門のカメラマンに写真撮影を依頼した早苗。ところが…。初恋、純愛、そして日常と非日常への切望の数々。赤々とした、炎のような何かに身を焦がす者たちの行く末を、切ない余韻の残る筆致で巧みに描く。直木賞作家・朱川湊人の真骨頂を、連作集であなたに。<感想> ★★★★☆懐古調(ノスタルジック)の作品で私のようなオッサンを癒してくれる朱川湊さんですが、元々はバリバリのホラー作家です。 時々そんなことを思い起こす朱川作品に出合うことがありますが、本書はまさにそれで、読書系のブログでは黒朱川と表現される方が多い作品集です。さて、前段でホラーをイメージされた方も多いと思いますが、この作品のコンセプトをひとことで言うならエロ・グロです。 necrophiliaやApotemnophilia(←興味のある方は自己責任で検索してくださいませ)などを扱っています。 性倒錯というやつですが、そこまで行き着いてしまう人間の心理を巧みに表現しています。 江戸川乱歩に似ているというレビューを見ましたが、私は小川洋子さんの作品を読んでいるような錯覚を覚えました。 作品を支配する独特の静謐感からそのように感じました。題材が題材だけにおススメはしませんが、小説としてのクオリティーはかなり高いのではないかと思います。
2011.08.27
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かれらもまた、あの夏、ひとりの兵士だった。俳人・金子兜太、考古学者・大塚初重、俳優・三國連太郎、漫画家・水木しげる、建築家・池田武邦。廃墟の中から新しい日本を作り上げた男たちの原点は、太平洋戦争の最前線で戦った日々にあった。何もかも失った若者は、どのようにして人生を立て直したのか。過酷な戦場体験と戦後の軌跡を語り尽くした感動のノンフィクション。巻末に児玉清氏との対談を収録。<感想> ★★★★☆この国では戦争の記憶が年々薄れ行くような気がしてなりません。特に原爆が投下され、敗戦を迎えた夏にその思いを強くしています。私は反戦を声高に叫ぶ市民団体や、物事を曲解して、戦争に結びつける人達が正直言ってあまり好きではありません。 ただ、昨今の情勢(特にネット社会)を見るにつけ違和感を覚えます。 さまざまな論議がなされること自体に問題はありませんが、なにやら戦争の悲惨さを認識していない人達が、好き勝手なことを言っているように思えてなりません。 さて、本書でインタビューをされている人たちは、いずれもそれぞれの分野で名前を残しています。 そして、もうひとつ共通するのは若き日の彼らは兵士として太平洋戦争に従軍していたことです。インタビュされているのは、俳人・金子兜太、考古学者・大塚初重、俳優・三國連太郎、漫画家・水木しげる、建築家・池田武邦の各氏です。 彼らはどのような従軍経験をし、敗戦後どのような思いで生きてきたのか?それをインタビュアである著者は煽ることなく、抑制の効いた筆致で彼らの想いを綴っていきます。 その姿勢は真摯という言葉がぴったりです。著者の梯久美子さんは61年生まれ。 私とほぼ同世代でもあります。 語り継ぐという言葉の責任と重みを強く感じた一冊でした。
2011.08.21
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懲戒免職になった同期の公安刑事が、連続殺人の容疑者に。「教えてくれ。おまえはいったい何者なんだ」男たちの前に立ちはだかる最も高い壁-組織の論理。その壁を突破するのは、刑事たちの誇りと絆。現時点での集大成ともいえる最新警察小説、登場。<感想> ★★★★☆数多くのシリーズものを擁している紺野敏さんですが、本書は単発の警察小説です。おそらく「踊る大走査線」と横山秀雄さんの影響だと思いますが、昨今の警察小説に求められるのは徹底したリアリズムです。警察とは日々、正義と秩序のために奔走する警察官の組織ですが、その内実はサラリーマン社会だったりします。 大半のサラリーマンはそこに感情移入して読んでいるのだと思います。 ただ、子供のころから刑事ドラマを観て育った私からすると、ちょっとスケールが小さくなった気もします。 さて、本書も前半においてはリアルな警察小説ですが、読み進むにつれてそこから逸脱していきます。 かなり大風呂敷を広げていて、あちこちの感想を読むと設定に無理があるという指摘もありますが、私は面白く読みました。 主人公を支える先輩の刑事二人がサラリーマンではなく、職人気質だった点も好感が持てました。 警察小説はリアル感も大切だけど、基本はエンタメだよね!!という方におススメします。
2011.08.20
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引先大企業「来月末までで取引終了にしてくれ」メインバンク「そもそも会社の存続が無理」ライバル大手企業「特許侵害で訴えたら、…どれだけ耐えられる?」帝国重工「子会社にしてしまえば技術も特許も自由に使える」-佃製作所、まさに崖っプチ。<感想> ★★★★☆本書は今回(第145回・平成23年度上半期)直木賞受賞作です。タイトルから想像がつくと思いますが、大田区にある中小企業が最先端技術であるロケット開発に関わるという物語です。 前半は大企業の横暴や特許をめぐる攻防がメインになっています。 使われているパーツのみで判断するなら企業小説に分類されるのではないかと思いますが、それを企業小説らしくしていないのが池井戸さんの巧さです。 人情話や、過去に屈辱を味わった主人公(社長)のいきざま。 それらをちりばめて「プロジェクトX」的な味つけがなされています。 大半のオッサンは激しく感情移入すると思います。後半に関して、すごく意地悪な言い方をするなら予定調和の勧善懲悪といった展開となっています。 話の中心となるロケット開発参入に関して主人公は、水戸黄門の印籠に負けず劣らずの決定的な切り札を持っているので、正直言ってハラハラもドキドキもしません。 しかし、理不尽がまかり通る世の中において、正しいことが正しく行われるのは、ある意味で稀有なことです。 予定調和の勧善懲悪をこれほど面白く読ませるのは著者の力量にほかなりませんが、そこには深い皮肉がこめられているような気がしてなりません。過去に直木賞候補になった『空飛ぶタイヤ』と比較するなら、正直言ってまとまりすぎているように感じました。 それを念頭において★をひとつ減らしましたが、震災で低迷にしている日本を元気する作品という点においては満点です。 平成23年度上半期直木賞には、もっとも相応しい作品であることを最後に申し添えておきます。【送料無料】空飛ぶタイヤ価格:1,200円(税込、送料別)
2011.08.13
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身に覚えのない幼稚園の同窓会の招待状を受け取った、葛見隆一。仕事と恋人を失い、長い人生の休暇にさしかかった隆一は、会場でミライと出逢う。ミライは、人嫌いだったという父親の行方を捜していた。手がかりは「厭人」「ゴリ」、二つのあだ名だけ。痕跡を追い始めた隆一の前に、次々と不思議な人物が現れる。記憶の彼方から浮かび上がる、父の消えた70年代。キューブリック、ベトナム戦争、米軍住宅、そして、特撮ヒーロー番組“宇宙猿人ゴリ”-。<感想> ★★★★☆タイトルになっているエンジンはいくつかのキーワードを兼ねている言葉ですが、その中で大きなキーポイントは『宇宙猿人ゴリ』です。 それってなんじゃらほいと仰る方も多いと思いますが、70年代の初めに放映されていた特撮ヒーロー物です。 その後タイトルが『スペクトルマン』に変わりますが、その内容に関してはほとんど記憶がありません。 思えば再放送の回数も少なかったのではないでしょうか?さて、本書は幼稚園の同窓会の招待状が舞い込むという突飛な冒頭からはじまります。 ちょっと謎めいている幼稚園と行方不明になっている父親と思われる男の影。 今まで読んだ中島作品は食いつきがイマイチだと感じていましたが、このミステリーっぽい展開は読者をぐいぐい引っ張っていきます。 この作品を端的に言えば、団塊ジュニアに属する女性のルーツ探しですが、それだけに留まらず、70年代そのものを検証するという試みもなされているように感じました。 そのツールのひとつがタイトルにもなっている『宇宙猿人ゴリ』となるわけです。 まとまりのない感想になりましたが、ネタばれになるのでこれ以上書くことができません。 ただ、『宇宙猿人ゴリ』(スペクトルマン)を知らなくても作品は十分に楽しむことができます。中島京子さんの作品に興味のある方。 特に中島作品はちょっと退屈だとお感じの方に強くおススメします。
2011.08.06
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第二次大戦下のドイツ。私生児をみごもりナチの施設「レーベンスボルン」の産院に身をおくマルガレーテは、不老不死を研究し芸術を偏愛する医師クラウスの求婚を承諾した。が、激化する戦火のなか、次第に狂気をおびていくクラウスの言動に怯えながら、やがて、この世の地獄を見ることに…。双頭の去勢歌手、古城に眠る名画、人体実験など、さまざまな題材が織りなす美と悪と愛の黙示録。吉川英治文学賞受賞の奇跡の大作。<感想> ★★★★☆断言できるほど多くの本を読んではいませんが、読むたびに、すげぇ~!なんでこんな小説書けるんだよ!!とのけぞってしまう現代作家が三人います。 村上春樹さん桐野夏生さん。 そして本書の著者である皆川博子さんです。 さて、本書の舞台はナチが台頭していた時代のドイツです。 ナチの施設である「レーベンスボルン」を中心に描いていきますが、この施設は実在の施設で皆川博子さんはそこから物語を創りだしていったようです。 そもそもナチの政策自体がマジキチなわけですが、その意を基に造られた施設では到底許されないことが日常化されています。 どこまでが事実とシンクロするのかはわかりませんが、それを描く著者の筆は実にイキイキとしていて容赦がありません。 特にヒロインの視点で描かれる夫(施設の長である医師)の狂気が秀逸です。後半は敗戦後の彼(女)らが語られています。 前半と比較するならスピード感があり評価も高いようです。 個人的には視点が変っているのがザンネンでしたが、訳者あとがきのオチはチビりそうになりました。 本書は作中作というカタチを取っています。 この点はかなり凝っていて早川書房ワル乗りしすぎだろうという感じですが、結果的にはそれが功を奏しているように思います。 ドイツ人や東欧系の登場人物の名前がやたらと長ったらしいので、しっかり頭に入るまで混乱するかもしれませんが、一度入り込むとその世界から抜け出すことができなくなります。 文庫600頁の長編ですが、できれば一気に読むことをおススメします。
2011.07.30
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手垢にまみれた「男らしい」という言葉は、現代では「オヤジ」に変わった。当たり屋のオヤジ、嘘つきなオヤジ、亭主関白のオヤジ、定年退職したオヤジ、娘が薬物中毒のオヤジ-。大藪賞作家がさまざまな父親像を温かく描く、傑作小説。<感想> ★★★★☆本書は湯屋(←個人経営の健康ランドみたいな感じ)の亭主を主人公にした連作短編です。さて、ヒキタクニオさんはアンダーグラウンドに生きている人を描く筆が秀逸ですが、本書の主人公も元ヤクザという肩書きです。 そんな亭主(主人)のもとにやってくるお客それぞれが、父親についてぽつりぽつりと語るという設定です。特に印象に残ったのは、当り屋だった父親を描く『小指のおもひで』子供からすれば滅茶苦茶情けない父親を語り合う二人の会話が胸に沁みます。もうひとつあげるとするなら『鬼やんま』子供たちも成長した老夫婦が出てきますが、幼馴染だった二人のエピソードや憎まれ口をたたき合う夫婦の会話。 そしてラストが泣けます。最後の『上を向いて歩こう』 正直ってヤクザ絡みの人情モノはズルい気がするんだけど、オチがとてもいいです。 日々、お仕事でお疲れのお父さんにおススメな一冊です。
2011.07.24
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昭和5年『放浪記』がベストセラーとなり、芙美子は念願の中国行きを果たす。翌年はシベリア経由で渡欧すると、半年余りをパリ、ロンドンで過ごした。小説を書くのは恋人が待ってくれているように愉しいと言いながら、「苦しいことは山ほどある。一切合財旅で捨て去ることにきめている」。旅を愛した作家の、愉楽の時を記す20篇。<感想> ★★★★☆本書は林芙美子の紀行集です。 昭和5年(1930)シベリア鉄道に乗ってパリ・ロンドンまでの行程と、その後の滞在記がメインになっています。 昭和5年(1930)といえば満州事変の前年になります。 すでに大陸はきな臭くなっていて、随所にそれを思わせる箇所も見受けられます。 そんな時になぜ・・・しかも一人旅だったようです。 多少なりとも出版社とのタイアップもあったと思いますが、その無鉄砲ぶりには唖然としてしまいます。 シベリア鉄道でも料金の高いクラスではなく、一般人の乗る二等や三等で旅をしたせいか、当時の民衆の暮らしや大陸を覆っていた空気を感じ取ることができます。 他にもいくつかの紀行文が掲載されていますが、私が興味深かったのは南樺太(南サハリン)のそれです。 当時、南樺太は日本の領土でしたがその期間は僅かに40年。 樺太に関する文献として読んでも、それなりの価値があるのではないかと思います。余聞ですが、文中にX27という言葉が出てきます。 特に注釈はついていないので???ですが、先日読んだ北村薫さんのベッキーさんシリーズで当時の風俗のひとつとして取り上げられていました。 改めて北村薫さんの取材力を思い知りました。
2011.07.16
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世界中の人間には、それぞれに一日だけ、すべての願いが叶う日がある。それが、サービスデー。神様が与えてくれた、特別な一日。本来は教えてもらえないその日を、思いがけず知ることになったら。直木賞作家の幸運を呼ぶ小説。<感想> ★★★★☆最近、朱川湊人さんの作品を読んでいます。 特に意図しているわけではなく、いつも行く図書館での在庫が豊富だからです。 さらに加えるなら、大当たりこそないものの、基本的にハズレがありません。 さて、本書は表題作を含めて五作の短編が収められています。 いずれもホラー風味のほっこり系というところですが、私が今まで読んだ朱川作品のなかでは最もホラー度は薄い作品集でした。 その辺りをどう感じるかが評価の分かれ目だと思いますが、イケてないサラリーマンの一日をコミカルに描く表題作を含めて、典型的なおっさんホイホイで私はそれなりに楽しむことができました。少し掘り下げるなら『東京しあわせクラブ』はちょっとだけ小川洋子っぽくて、『あおぞら怪談』は行間から川端康成の『片腕』チックなエロが漂ってきました。 素直に読めば、肩のこらない娯楽作品といった感じです。 通勤電車のお供におススメです。
2011.07.09
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オカマの蘭子とともに福岡に流れてきた消し屋の幸三。久々に訪れた博多のヤクザから依頼された今回のターゲットは、ホークスの名捕手・真壁。内容は、殺しはナシで、彼を一試合の間だけ消すという奇妙なものだった。野球一筋で真面目な真壁には、スキャンダルなど付け入る弱味がない。幸三が取った手段とは。<感想> ★★★★☆B級映画という言葉があります。 いわゆる名作の範疇には入らないものの、低予算で作られらたにも関わらず、それなりにコダワリのある作品を指すときに使われるようです。さて、それらの要素を小説に当てはめるのはいささか無理があるような気がしますが、本書を評するならB級映画ならぬB級小説といったところです。主人公はオカマと暮らす一匹狼の消し屋(殺し屋)。 脇を固めるのは博多のやくざとプロ野球選手。 あらすじからは典型的なドタバタ小説しかイメージできませんが、なかなか面白いピカレスク小説でした。 正直って主人公のキャラ造形が弱いと感じましたが、脇を固めるキャラクターが魅力的です。 特に経済やくざとプロ野球選手はピカイチでした。 加えて、賭博や野球の試合を描写する筆のキレ味はハンパではありません。 上質なエンターテイメントという言葉もありますが、著者は意識してそれを避けているような節があります。 この作品はシリーズ化されているようです。 しばらくはB級小説を堪能しようと思います。
2011.07.03
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昭和初期の帝都を舞台に、令嬢と女性運転手が不思議に挑むベッキーさんシリーズ第二弾。犬猿の仲の両家手打ちの場で起きた絵画消失の謎を解く「幻の橋」、手紙の暗号を手がかりに、失踪した友人を探す「想夫恋」、ステンドグラスの天窓から墜落した思想家の死の真相を探る「玻璃の天」の三篇を収録。<感想> ★★★☆☆本書は北村薫さんのベッキーさんシリーズの二作目。 中篇が三作収められています。さて、このシリーズの楽しみ方は読者それぞれだと思いますが、私は、昭和初期の東京の雰囲気を強く感じることのできる点がツボです。 二作目ではベッキーさんの正体も明らかになっています。 正直言って、若干中弛みしている感が否めないシリーズ二作目ですが、平穏な暮らしを送っている主人公の周りにも時代を覆う不穏な空気が見え隠れしています。 そのあたりをきっちり読み込んでいくと、シリーズ最終章である『鷺と雪』を堪能することができると思います。
2011.06.26
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2009年、秋。翌年6月から施行の改正貸金業法がもたらすのは、借金からの救済か、破滅か-四十過ぎの翻訳家、吉野解は貧乏学生の頃に下宿していた神保町の古書店「泪亭」の二階で謎の美女、白井沙漠と出会う。裕福な家庭に育った妻とは正反対の魅力に強く惹かれ、粗末な部屋で何度も体を重ねる。しかし、沙漠が解に借金を申し込んだことから「悲劇」の幕があがる-。<感想> ★★★★☆本書は桜庭一樹さんの最新刊です。 ラノベ、伝奇モノ、ユーモア系さまざまなジャンルを手がける著者ですが、この作品は直木賞受賞作『私の男』に似たトーンで描かれています。 さて、あらすじを読んだとき宮部みゆきさんの『火車』を連想しましたが、本書に社会派の要素は皆無です。 改正貸金業法や総量規制などがきっかけになっていますが、むしろ借金に振り回される男女の姿を容赦なく描くことに主眼が置かれています。ミステリーとして読むなら弱いし、この社会問題に関してはそれとなく、からくりのようなものに触れていますが、それ以上踏み込むことはありません。 ただ、前段で申し上げた通り、金にがんじがらめになって堕ちていく一組の男女を描く筆は力強くて、読み応えがあります。 とにかく暗く重い作品ですが、それは著者の意図するところだと思います。 しかし、前後の脈略なく出てくる『細うで繁盛記』にはニンマリしました。 そのあたりは読者サービスのひとつかもしれません。(笑)『ばらばら死体の夜』スペシャルサイト(集英社)
2011.06.18
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2002年10月、全国で次々と犯行声明付きのバラバラ遺体が発見された。被害者は平凡な家庭を営む会社員沢野良介。事件当夜、良介はエリート公務員である兄・崇と大阪で会っていたはずだったが-。絶望的な事件を描いて読む者に“幸福”と“哀しみ”の意味を問う衝撃作。<感想> ★★★★☆よくわからないけど、なんか難しそうだ・・・。 という先入観で今まで手を出してなかった平野啓一郎さん。 本書は比較的読みやすい作品とされているようなので、平野作品に初チャレンジしてみました。さて、純文学の作家がエンタメを手がけるといえば吉田修一さんの『悪人』が思い浮かびます。 劇場型犯罪を現代の闇として描く本書は、読み応えのあるエンターテイメントという立ち位置であることに間違いはありませんが、『悪人』と比較するなら、エンタメ読みの私は敷居の高さを感じてしまいました。上巻のラスト付近からの半端のない加速感は見事ですが、私は最後まで魅力的なキャラクターに出会うことができませんでした。 しかし、本書のクオリティーが低いなどと申し上げるつもりはありません。 むしろその逆だろうと思います。 別の言い方をするなら、私はこの作品を評価するモノサシを持ち合わせていないということです。 論理的な思考を求められる作品がお好きな方や、エンタメ作品により強い文学性をお求めの方におススメします。皆さんのレビュー(読書メーター)
2011.06.11
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「週に三度、他の男とセックスすることを習慣にして」いる主婦・麻美。彼女の不倫相手が、次々と身体全体に瘤のようなものを作って原因不明の死を遂げる。彼女自身の肉体にも異変が起こる。女同士の憎悪や嫉妬、母娘で繰り返される愛憎劇。一見幸せな主婦の誰にも言えない秘密とは…。<感想> ★★★★☆喩えるなら、リミッターの外れた角田光代。 掟やぶりの桐野夏生。 本書は、私が勝手にドロドロクィーンと認定している真梨幸子さんのデビュー作です。さて、この作品は第32回メフィスト賞を受賞しています。 講談社が主催するこの文学賞からは名だたる作家さんたちがデビューしているわけですが、私はこの賞の選考基準というのがイマイチ理解できません。 受賞作のジャンルがあまりにも多岐にわたるからです。 基本的には面白ければなんでもいいじゃんというノリだと思うんですが、この作品の受賞はそれを裏付けているように思います。真梨さんの十八番である女性同士のドロドロはもちろん。 エロ、背徳、バイオホラー、伝奇小説。 そして独特のおどろどろしさ。 個人的には角田光代と鈴木光司(←新作出てないけど『りんぐ』の人です)と真藤順丈(←スプラッタ系の人です)と坂東真砂子と横溝正史をドロドロに煮詰めたような感じです。 まぁ~節操がないといえばそれまでですが、それらを効果的に配分して構成したのはまぎれもなく真梨幸子という作家で、その手腕は見事だと思います。 後半は失速気味だというレビューもいくつか拝見しましたが、私はこの展開は好きです。 真梨作品を読んでいると、いくつか???の箇所がありますが、このデビュー作を読むとスッキリするかもしれません。 ドロドロ、エログロということでおススメはいたしませんが、興味本位で面白い作品を読んでみたいという方なら満足できるかもしれません。
2011.06.05
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昭和七年、士族出身の上流家庭・花村家にやってきた女性運転手別宮みつ子。令嬢の英子はサッカレーの『虚栄の市』のヒロインにちなみ、彼女をベッキーさんと呼ぶ。新聞に載った変死事件の謎を解く「虚栄の市」、英子の兄を悩ませる暗号の謎「銀座八丁」、映写会上映中の同席者の死を推理する「街の灯」の三篇を収録。<感想> ★★★★☆本書は北村薫さんのベッキーさんシリーズ第一作です。 ご存知のとおり三作目(最終巻)の『鷺と雪』は第141回直木賞を受賞しています。さて、北村薫ファンの方には大変申し訳ありませんが、ドロドロ系が大好物の私としては北村薫さんの専売特許ともいえる日常の謎ミステリーが物足りません。 このシリーズで直木賞を受賞した時には、ミステリー色が皆無の『ひとがた流し』で受賞するべきだったのではないか?などと思ったほどです。そんな想いでシリーズ一作目を手に取ったわけですが、どうやら私は間違っていたようです。(ファンのみなさんホントにすんまそん)なんといっても本書が優れているのは舞台になる昭和初期の東京とそこで暮らす人たち。 そして、主人公の家のお抱え運転手である別宮(ベッキーさん)のキャラクター造形です。 普段は忠実な運転手ですが、上流階級の属する主人公が貧しい人たちの暮らしを垣間見て可哀想だと嘆くシーンで、それは傲慢だと返すベッキーさん。 そのあたりはかなりハードボイルドしているように感じました。 一作目ではまったく正体不明のベッキーさんですが、これから少しずつ正体が明らかになっていくと思うとワクワクします。 さらに時代は戦争の暗い影が差してくるわけで、これだけ魅力的なパーツを組み合わせた物語の最終章を期待せずにはいられません。 二作目はこちら↓【送料無料】玻璃の天価格:500円(税込、送料別)
2011.06.04
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たとえば、苔むして古びた水路の先、住宅街にひしめく路地のつきあたり。理由も分らずたどりつく、この世界のひとつ奥にある美しい町“美奥”。母親から無理心中を強いられた少年、いじめの標的にされた少女、壮絶な結婚生活の終焉をむかえた女…。ふとした瞬間迷い込み、その土地に染みこんだ深い因果に触れた者だけが知る、生きる不思議、死ぬ不思議。神妙な命の流転を描く、圧倒的傑作。<感想> ★★★★☆本書は恒川光太郎さんの文庫最新刊です。さて、ホラー小説というジャンルがあります。 ひと昔前なら、怖さと気持ち悪さ(スプラッター)のみがその良し悪しを判断する材料になっていたように思いますが、朱川湊人さんの『花まんま』以降、ホラー小説は細分化されてきたような気がします。 かつて、ミステリーがそうであったように一般文芸との垣根が低くなりました。 その中にあって、恒川光太郎さんは読者を確実に異界に導いてくれる作家の一人です。 本書は連作短編で舞台は美奥という町。 それぞれの時代で深い悲しみを背負った人達が登場するわけですが、この作品の主人公はあくまで町(土地)です。 いずれもハッピーエンドではありませんが、そこが恒川光太郎ワールド。 ファンは120%納得のいく作品だと思います。朱川湊人さんには癒されているけど正直言って物足りないと感じている方。 岩井志麻子さんはビミョーなんだよね・・・とお感じになっている方におススメします。恒川光太郎さんのブログを発見しました。 ホラー作家らしからぬフツーのブログでした。コウタライン
2011.06.04
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ささやかな出来事が簡単にシアワセにしてくれる。笑えて味わい深いエッセイ集。<感想> ★★★★☆先々週の日曜日に図書館で借りてきた本です。コバヤシサトミ相変わらずおもしれぇ~と思いつつ読んでいましたが、突然のニュースが・・・本書は、そんな小林聡美さんの爆笑系エッセイです。さて、小林聡美さんは女優さんなので、あえて分類するとするならタレント本ですが、クオリティーの高さでは専業の作家が書いたエッセイに勝るとも劣らないレベルです。 本書を含めて10冊のエッセイが出ていますが、基本的にハズレはありません。 どちらかといえば女性をターゲットにしているように思えますが、小林さんと同世代なら男性でも十分楽しめます。女優・小林聡美に興味のある方はもちろん。 子供のころ、東京タワーの蝋人形館で一生のトラウマを背負ってしまったという方にもおススメします。
2011.05.29
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戦争が終わってちょうど十年目、いまだ空襲の跡が残る大阪の下町に生まれた作田又三。高度経済成長、六十年安保闘争、東京オリンピック、大阪万博、よど号ハイジャック事件、日本列島改造論、石油ショック-激動の昭和の時代、生まれながらの野生児、作田又三は、人生という荒海を渡っていく。いざ、海図なき嵐の海へ。さあ、錨を上げよ!疾風怒濤の2400枚。圧倒的青春小説。<感想> ★★★★☆本書の著者である百田尚樹さんはデビュー作である『永遠の0』がベストセラーになりました。 関西地域では『探偵!ナイトスクープ』(←この番組何ゆえ関東ローカルでは冷遇されているんですよね。 すげぇ面白いと思うんだけど・・・)の放送作家として知られているようです。 さて、昭和30年代からバブル崩壊までを舞台にした一人の男の物語は上下巻1200頁という大長編です。 加えて、本屋さんの平積台で見た渋めの装丁とタイトルから、なんか高尚っぽい・・と思いましたが、読みやすくてスルスル読めるエンターテイメントでした。あらすじには青春小説と書かれていますが、本書の肝は冒険活劇的な要素だと思います。 主人公のキャラクターは破天荒だし、人生の転機についても深く語られているわけではありません。 私が子供のころ『どてらい男』というTVドラマが放映されていましたが、それと似たものを強く感じました。 とにかく、読者を飽きさせず1200頁の小説を読ませてしまう筆力に圧倒されます。ただ、この破天荒な主人公の女性に対する考え方は、きわめて特殊です。 結果的にそれがアキレス腱となって様々な失敗を繰り返すことになります。 男性目線で読むならその愚かさを笑いながら読むことができますが、女性目線で読むなら途中でこのキャラクターに愛想を尽かしてしまうかもしれません。 興味のある方はそのあたりを踏まえた方がいいかもしれません。作家の読書道 第107回:百田尚樹さん
2011.05.28
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「あらすじ」の名人にして、自分の原稿は遅々としてすすまない作家の私。苔むす宿での奇妙な体験、盗作のニュースにこころ騒ぎ、子泣き相撲や小学校の運動会に出かけていって幼子たちの肢体に見入る…。とある女性作家の日記からこぼれ落ちる人間の営みの美しさと哀しさ。平凡な日常の記録だったはずなのに、途中から異世界の扉が開いて…。お待ちかね小川洋子ワールド。<感想> ★★★★☆ここしばらく小川洋子さんの新刊はエッセイが多かったような気がします。 昨年の8月に上梓された本書は日記体の小説です。 小説としては『猫を抱いて象と泳ぐ』以降一年半ぶりとなります。さて、日記体の小説と書きましたが、主人公の小説家と著者の境界があいまいで冒頭はエッセイを読んでいる気分にさせられます。 しかし、物語は少しづつ現実世界と乖離していきます。 そこで使われるパーツや独特の文章は小川洋子さんのものですが、ところどころで差し挟まれるユーモアの要素は川上弘美さんのそれに似ているようにも感じました。 たとえば、子泣き相撲。 運動会荒らし。 パーティー荒らし等々。 小川洋子さんは油断して読んでいると大やけどを負わされることも多いわけですが、この川上弘美さん風の味付けが加わることで、バランスのいい仕上がりになっていると思います。ただ、あえて難を言うならそれぞれの文章が短かい上にエピソードの数が多いので、ちょっと消化不良気味でした。 従来の作品が海中に10メートル引きづりこまれるとするなら、この作品は海中5メートルといったところでしょうか?みなさんのレビュー(読書メーター)
2011.05.22
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友もなく、女もなく、一杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの港湾労働で生計を立てている十九歳の貫太。或る日彼の生活に変化が訪れたが…。こんな生活とも云えぬような生活は、一体いつまで続くのであろうか-。昭和の終わりの青春に渦巻く孤独と窮乏、労働と因業を渾身の筆で描き尽くす表題作と「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を収録。第144回芥川賞受賞。<感想> ★★★★☆申し上げるまでもなく本書は今回(144回)の芥川賞受賞作です。さて、純文学で私小説。 そして、やたらと重い作品をイメージさせるあらすじ。 さぞ暗い作品なんだろうな・・・と思って読み始めましたが、殊の外読みやすい作品でした。 中卒でその日暮らしの日雇い労働者である主人公はそのまま著者の姿でもあるわけですが、ある程度キャラクター化された主人公の言動はどこかユーモラスでもあります。 あちこちで感想を拝見していたら「寅さんっぽい」と仰っている方がいらっしゃいましたが、当たらずしも遠からずといったところです。著者の経歴から中年フリーターの星だとか、ワーキングプア、ニートという言葉で括られる向きもあるようですが、それはちょっと違うような気がします。 私自身、著者と同世代で同じ時代を生きてきたし、似たような生活を送っている友人がいますが、そこには潔さや破天荒という名の強さがあるような気がします。 文章に関して言えば、意図的に古い言葉を使う一方で新しい言葉も差し挟んでいます。 そのあたりも面白いんですが、やたらと長いセンテンスを用いる文章もある意味で新鮮です。 最後に貼り付けた動画の中で稲垣吾郎さんと小島慶子(元局アナ)さん。 そして西村さん自身が本書を朗読するシーンがあります。 稲垣さんはもちろん、喋りのプロである小島さんまでもが読みにくそうにしているのに対して、西村さんは啖呵売のような口調でいっきに読んでいます。 まぁ~自分の書いた文章だから・・・というのもありますが、そこが西村節というやつかもしれません。ご注意↓関東ローカルで放映されている深夜枠の番組です。 深夜枠であることを踏まえてご覧ください。
2011.05.21
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お前とふたりだけの話ばしたかったとたい-。ある日、わたしに届いた母の声のテープが、日本全体が貧しく、家族同士の体温が熱かったあの時代の記憶を呼び覚ます-。『悩む力』から二年ぶり、著者初の自伝的小説。<感想> ★★★★☆本書の著者である姜尚中さんを初めて見たのは「朝まで生テレビ」だと思います。 とにかく出演者が怒鳴りまくるのがウリの番組の中にあって、物静かにボソボソと自説を展開するさまが印象的で、独特の存在感がありました。さて、本書はそんな在日コリアン二世の姜尚中さんが自分のお母さんについて書いた自伝的な小説です。 この作品に関して姜尚中さんはインタビューで次のように答えています。母は文字を読めませんでしたから、文字情報を一切、残していないんです。 日記もなければ、手紙もない。つまり、自分の痕跡を残せなかった。 それだけに、いま、母のことを書いておかなければという気持ちになったのです。かなり話題になっていたのでお読みになった方も多いと思いますが、決して派手な作品ではありません。 在日コリアン二世の作家が親を描いた作品といえば梁石日さんの『血と骨』が思い浮かびますが、それと比較するならとてもジミで、お世辞にも巧い小説とは言えません。 ただ、それだからこそ作り物ではない在日一世の苦労や母(オモニ)に寄せる強い想いがストレートに伝わってくるような気がします。 みなさんの感想(読書メーター)
2011.05.08
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―君のこと忘れたこと、なかったよ、これから先も、百歳になっても。十六年前に起きた『西池袋事件』。被害者は受験戦争を潜り抜けて超難関校に合格した中学生。加害者はその父だった…。歳月を超え、繰り返された悲劇と『西池袋事件』をつなぐものとは?あのときからずっと、僕は遺書を書きつづけているんだ。<感想> ★★★★☆本書はどろどろクィーン(←私が勝手にそう呼んでいるだけですが)真梨幸子さんの二作目です。さて、真梨作品は女同士のどろどろを描いたものが多いわけですが、本書の主人公は男性です。過去に起きた殺人事件と現在を交互に描きながら、それを収斂させて行くという展開です。 そこに中学受験や雇用問題などを絡めています。 思えば「学歴=社会での成功」という図式が成立しなくなってずいぶんたつわけですが、それでも有名私立の小学校や中学校への受験は過熱しているように思います。 そのあたりの分析や、派遣労働の実態などはリアルに描かれているように思いますが、如何せん重すぎます。 もう少し柔らかい方が一般読者は受け入れやすいかもしれません。とは言いつつも、嫌いではないので★4にしておきました。あまりおススメはいたしません。みなさんの感想(読書メーター)
2011.05.08
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恋に戦う君を、誰が笑うことができようか?何かにとらわれ動けなくなってしまった私たちに訪れる、小さいけれど大きな変化、奔放な想像力がつむぎだす不穏で愛らしい物語たち。<感想> ★★★★☆本書は西加奈子さんの短編集。 表題作を含めて八作が収められています。さて、ここしばらく西加奈子さんのトンガリにはまっていますが、この作品をひとことで言うなら不条理系です。 純文学に近いファンタジーか、ファンタジーに近い純文学というところですが、そのあたりは読者のスタンスによって異なると思います。 新潮社に海外の現代作家をセレクトした新潮クレストというレーベルがありますが、そのシリーズに入っていても何の違和感もないのではないかと思います。 個人的には『船の街』 読みやすさでいえば『ある風船の落下』あたりがイイ感じでした。みなさんのレビュー(読書メーター)
2011.04.30
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異界はいつでも日常の中にある。目を凝らし耳を澄ますと入口が見えてくる。そこを覗くと物語がはじまる。創作をめぐるエッセイ集。<感想> ★★★★☆本書は1月に上梓された小川洋子さんの最新エッセイ集。 今まで発表されたものの中で創作に関わる文章がまとめられています。さて、前回読んだエッセイのレビューで、テーマに対しては申し分がないけど小川洋子さんらしさが云々・・と書きましたが、本書は装丁とタイトルをごらんになればわかる通り、らしいエッセイ集です。特に著書ひとつひとつを、短い文章で綴っている最終章を楽しく読みました。 ちなみに小川洋子さんが相手をキレさせてしまった仕事の結果はこちら。みなさんのレビュー(読書メーター)
2011.04.23
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大学2年の繊細美男子、鮎太朗。美人で怖い姉3人。女たちはみな彼に恋をする。けれどいつも鮎太朗が振られてしまう。何もしていないのに包丁で刺されたり、貢がされたりする。彼を慕い続ける可愛い同級生には、どうしても心が惹かれない-。恋は理不尽。恋は不条理。だけど、ひなたを走りたくなるくらいあったかい気持ちになるのは、何故なのだ?恋する心の不思議・普遍・歓び。<感想> ★★★☆☆本書は青山七恵さんの最新刊です。この作品をひとことで言うなら、草食系男子を主人公にした恋愛小説といったところです。ヲイヲイ!!おまえ後ろにいる雌ライオンに脚食われてるぞ!!モグモグ草食ってる場合じゃないぞ!!! 的な展開です。 ハードカバー400頁弱の分厚さ。 そして、ポップな装丁にポップなタイトル。 短編の名手である青山さんのイメージから著しくかけ離れていますが、それはそのままこの作品を語る上での客観的な指標になりえると思います。『魔法使いクラブ』では、そんな先入観を見事に裏切ってくれました。 個人的には◎だったわけですが、さまざまなレビューを見る限りでは、その裏切りに対して否定的な意見が多かったような気がします。 かなりまどろっこしい言い回しになっていますが、青山七恵という作家を知らずにジャケ買いした読者は当たり。 青山七恵というブランドで選んだ読者には正直言ってビミョーです。 主要キャラである「公民館の女」をもう少し掘り下げてもよかったんじゃないかな・・・・。コミカルな恋愛小説をお読みになりたい方、現代の草食男子の実態を知りたいとお考えの方には楽しく読める一冊だと思います。みなさんの感想(読書メーター)
2011.04.17
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これって恋or愛?いえ、これこそ恋愛そのもの。世間の注目も原稿の注文も「恋愛」のことばかり。なら、とことん書いてみようじゃないの!ということで生まれたただならぬ「恋愛短篇集」。初恋、禁忌、純愛、結婚、信仰、偏愛、同性愛…本気で恋し、だれかを愛したいなら読むしかない!われらの時代の聖典。<感想> ★★★★☆以前、三浦しをんさんの事を職人と書きましたが、本書はその職人ぶりが余すことなく発揮された作品集です。 あらすじにも書かれているように恋愛を主眼に置いていますが、作品の醸す雰囲気は多岐にわたります。 正統派恋愛。 心理サスペンス。 コミカル。 近代文学。 そしてBL。 私自身はそれらのジャンルすべてに精通しているわけではありませんが、おそらく、それぞれにおいてパーフェクトな出来なのではないかと思います。 それを例えるなら、リフォームや建売住宅建築だけではなく高層建築。 さらに、宮大工までこなしてしまう腕のいい大工の仕事ぶりといったところです。個人的には『骨片』『ペーパークラフト』『私たちがしたこと』あたりがお気に入りですが、『冬の一等星』の巧さにはただただ平伏してしまいました。 三浦しをんなんてどうせ流行モノだろう・・・・とか、あっ!おいらBL絶対に無理だから・・・という先入観をお持ちの方に強くおススメします。みなさんのレビュー(読書メーター)
2011.04.10
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温泉宿で一夜を過ごす、2組の恋人たち。静かなナツ、優しいアキオ、可愛いハルナ、無関心なトウヤマ。裸の体で、秘密の心を抱える彼らはそれぞれに深刻な欠落を隠し合っていた。決して交わることなく、お互いを求め合う4人。そして翌朝、宿には一体の死体が残される-恋という得体の知れない感情を、これまでにないほど奥深く、冷静な筆致でとらえた、新たな恋愛小説の臨界点。<感想> ★★★★☆『さくら』がブレイクしてメジャーになった西加奈子さんの作品に対して癒し系、ほっこり、などというレビューをしばしば見かけますが、個人的にはトンガり系の作家なのではないかと思います。 いっけん心地よさそうなクッションですが、その上に深く腰を下ろすとビミョーな心地悪さが伝わってくる。 ただ、この心地悪さこそが西加奈子さんの持っている個性(文学性)なのではないかと思います。 さて、それを踏まえるなら本書のクッションはかなり薄くて、癒し系、ほっこりとは縁遠い作品です。 解説で中村文則さんがデビュー作の『あおい』に通じる作風だと書いていますが、私も同じ感想を抱きました。 ただ、かなり荒けずりだった『あおい』と比較するなら円熟を増しているように感じました。 例えるなら文学色の強い心理サスペンスといったところです。あのさぁ~私も売れるからっていう理由で普段はJ-POPなんて唄ってるけど、ホントはバリバリのロックが唄いたいんだよね・・・・。そんな西加奈子さんを味わいたい方におススメします。 みなさんのレビュー(読書メーター)西加奈子他作品のレビュー(当サイト)
2011.04.06
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女の子だった時代を過ぎ、「奥さま」などと呼ばれたときから、突然世の中は一変する。逃げてばかりいる夫。言うことを聞かない子供。身勝手な姑。無自覚な世間の好奇の目。理解のない上司。修羅場のタネはどこにでもある。でも、彼女たちは何事もなかったように毎日を生きている。そんな「奥さま」たちの胸にそっとしまいこまれた、心の叫びが胸に迫る。夏石鈴子による大反響の奥さまシリーズ、ついに単行本化! 未婚既婚問わず、共感の嵐。涙をさそいます。<感想> ★★★★☆夏石鈴子さん4冊目です。 最近すっかりハマってます。さて、今まで読んできたのはOLが主人公でしたが、本書はニッポンの奥さまを主人公にした短編集です。 タイトルからコミカルな作品をイメージしていましたが、どの奥さまもかなり煮詰まっています。 前半こそ感動したりする要素がありますが、後半に行くにしたがって奥さまはブレーキの壊れた暴走列車状態で、シリアスな展開になっています。特に子供に関する記述は思いっきりリアルでした。 私もPTAの役員決めと連絡帳がとても怖かったです。 子供が仕上がってしまえば、あ~こんな経験をして自分も成長して来たんだなぁ~などと悠長なことも言えるわけですが、渦中にいる時のどうしようもないイライラや焦りは激しく共感しました。タイトルで惹かれてお読みになる方は圧倒的に奥さまが多いと思うわけですが、個人的には男性に強くおススメします。
2011.04.02
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プロテスタント系の私立女子高校の入学式。中等部から進学した希代子と森ちゃんは、通学の途中で見知らぬ女の子から声をかけられた。高校から入学してきた奥沢朱里だった。父は有名カメラマン、海外で暮らしてきた彼女が希代子は気になって仕方がない。一緒にお弁当を食べる仲になり、「親友」になったと思っていた矢先…。第88回オール讀物新人賞受賞作「フャーゲットミー、ノットブルー」ほか全4編収録。<感想> ★★★★☆本書はお嬢様系女子高を舞台にした連作短編。 著者の柚木麻子さんは本書がデビューの新人作家さんです。さて、女子高。 新人作家。 装丁。 それらのパーツで癒し系の青春モノをイメージしてしまいがちですが、巷では吐き気がするほどリアルな女子高生小説などと言われているようです。 なんか怖そうですね・・・・・・。さて、お嬢様系女子高のドロドロさといえば桐野夏生さんの『グロテスク』にも描かれています。 徹底した階級社会と排除の論理。 そして過剰なまでの自意識。 それがどれほどリアルなのかはお嬢様でも女子高生だった経験もない私には量りかねますが、まったくの絵空事ではないことはたしかだと思います。 桐野さんはそれを主人公の育った環境と位置づけて面で描いていましたが、柚木麻子さんはそのひとりひとりを掘り下げて点で描いています。 表面的な行動はまったく理解できないけど、その内面を知ると感情移入が容易くなる。 俯瞰で描ききるという点では迫力不足ですが、息苦しい感情の細部を描くさまは秀逸です。 個人的にはユーモアを交えながら進む『ふたりでいるのに無言で読書』が好きですが、この一作は全体のバランスを保つ上で大きな役割を与えられているように思います。キャラクターそのものとまでは行きませんが、彼女たちが持っているさまざまな側面に、あの頃の自分を照らし合わせることはそれほど難しくはないかもしれません。 かつて女子高生だったみなさんにおススメです。「フォーゲットミー、ノットブルー 」で第八十八回オール讀物新人賞を受賞作家「柚木麻子」さんインタビュー!
2011.03.28
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楽しいかどうかなんて重要じゃない。会社で働く女の子にとって必要なのは、つまらないことも我慢できること、そして、その我慢のなかでも何かを忘れないことではないか―。短大の英語科を卒業後、出版社の受付に配属されたみのり。初めての経験で戸惑うことばかりの毎日を過ごしながらも、持ち前の正義感でみのりは社内に新風をもたらしていく。初心で胸を膨らませた新入社員と、初心を忘れたかつての新入社員へ贈る、初めての受付嬢小説。<感想> ★★★★☆本書は短大(←激減しちゃいましたね)を卒業して、出版社の受付に配属された新人OLの話です。 あらすじを読むと『ショムニ』や『働きマン』などの職根モノ(←職業根性)をイメージされる方もいらっしゃるかもしれませんが、舞台はいたって穏やかな四半世紀前です。 新人OLの主人公が会社での自分の役割や、やりがいをいかにみつけるか?というのがテーマになっていますが、そのキャラクターは『今日もやっぱり処女でした』のあおいを彷彿とさせます。 夏石さんの描くプチ不思議ちゃんキャラはクセになります。さて、夏石鈴子さんといえば『新解さんの謎』の仕掛け人編集者として知られています。 文藝春秋社のバリバリ編集者というイメージがあるわけですが、あとがきや白石一文さんの解説を読むと、この作品は夏石さんの自伝に近いことがわかります。 作品のトーンはユーモア路線ですが、あとがきを読むとこの作品にこめられた想いに触れることができます。 夏石ファンはもちろんですが、どこかのんびりしていた時代にOLデビューされた方にもおススメします。 【中古】エッセイ・随筆 ≪エッセイ・随筆≫ 新解さんの謎【10P25Mar11】【画】価格:80円(税込、送料別)
2011.03.26
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商家から武家へ嫁いで楽をするはずだったのに、甲斐性なしの亭主殿のせいで、自ら的屋となって一家を支えた女。大名の姫君から一転、芸者として身をたてた女。髪結いの見習いから、お雇い外国人のもとに嫁入りした女…。激動の維新を乗り越え、幕末から明治を生きた女たちの奮闘を、情緒あふれる語り口で描いた全四篇。<感想> ★★★★☆えっ!?ホラー?時代小説??というタイトルにひかれて読んでみました。 奥さんがヘビみたいな女なのか?鶴の恩返しみたいな展開で奥さんの正体がヘビだったのか? う~ん。 どちらも単体だけでも十分オソロシイ気もするんですが・・・・・・・・・。さて、本書は幕末から明治までの波乱の時代を生きた女性たちを描いた短編集です。 連作色はそれほど濃くはありませんが、登場人物が微妙にリンクするので一作目から順番に読むのが基本です。 この時代を舞台にした作品は数限りなくあるわけですが、その多くは男性を中心に描かれています。 女性。 特に市井に生きる庶民を素材にしたものはそれほど多くないように思います。表題作は没落した武家の奥さんである主人公が、ヘビの皮を膏薬として販売しながら一家を立て直していく話。 維新を嘆き何もしようとしない完全失業中の夫。 プライドだけは高い姑。 明日食べるものさえない状態から状況を変えていく過程や息子の嫁問題などを、ほろりとさせる人情を交えながら語る手法は江戸を舞台にした時代小説のそれですが、そこに新しい価値観とのせめぎあいのようなものが加わっています。 二作目以降は現代小説風なエンタメ要素も盛り込まれているので、時代小説がそれほど得意ではない私でも十分楽しめました。念のため申し添えておきますが、ホラー要素は皆無です。(笑)蜂谷涼さん初読みでしたが、ハマりそうな予感が・・・・・。作家の読書道 第110回:蜂谷涼さん
2011.03.19
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おおむね楽しい、ちょっぴりさみしい。カラダ半分、ずれている――。カワカミ・ワールドが詰まった、日記シリーズ最新作。2008~2010年までの3年分を収録。「WEB平凡」の人気連載を単行本化。 <感想> ★★★★☆本書は川上弘美さんが「WEB平凡」に連載しているエッセイ「東京日記」の書籍化第三弾です。あとがきによれば、以前は5分の4だったホント率は10分の9にアップしているそうです。 たぶんウソだと思いますが、そのウソ話こそ川上弘美さんの十八番でもあります。赤パンツ、黒パンツ、紫パンツ。 そしておばさんパンツとエッチパンツ。 果たして仕事(執筆)が一番捗るのは・・・・??芥川賞選考委員の考察は正しいのだと思います。(たぶん)読書メーターの感想に「東京日記は一生続けて欲しい」と書かれている方がいましたが、私も激しく同意します。WEB連載なので最新分までネットでも読めますが、このシリーズは門馬則雄さんの絵がふんだんに使われた装丁がいい感じなんですよね。 座右の書として手元に置くことをおススメします。「東京日記」(WEB平凡・平凡社)【送料無料】卵一個ぶんのお祝い。価格:1,260円(税込、送料別)【送料無料】ほかに踊りを知らない。価格:1,260円(税込、送料別)
2011.03.14
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いっぺんしか願いを叶えない神様を探す少年とその友人の奇跡を描く感動の表題作「いっぺんさん」、田舎に帰った作家が海岸で出会った女の因縁話「磯幽霊」とその後日譚「磯幽霊・それから」、山奥の村で、ほのかに思いを寄せた女の子に起きた出来事「八十八姫」など、じんわりと沁みる恐怖と感動の九篇を収録。<感想> ★★★★☆本書は朱川湊人さんの作品集です。まずは冒頭の『いっぺんさん』 朱川湊人さんの読者が最も求めているであろう癒し系ファンタジィーです。 個人的にはファンタジィーはあまり得意ではありませんが、この作品はすげぇ~イイです。 少年なら誰でも憧れる白バイ警官というパーツの使い方も巧みだと思います。ところが二作目はめちゃくちゃ後味の悪い作品です。 ただ、怖さという点においては秀逸で、元来バリバリのホラー作家であった朱川さんの本領発揮と言えるかもかもしれません。 他の作品も癒し系と正統ホラーが混在しています。 あのさぁ~言っとくけど『花まんま』だけじゃないんだよ・・・・そんな朱川さんの気迫が感じられる作品集でした。
2011.03.12
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山口あおば、24歳、派遣社員。テンポの遅さは、わたしとワンセットなのか、それとも、いつか変わる時が来るのか…。頼りない自分と向き合いながら今と将来を考え中の、「あおばの物語」第二弾!青春しみじみ小説。<感想> ★★★★☆本書は24歳の派遣社員を描く『今日もやっぱり処女でした』の続編で、前作同様ジミな24歳「あおば」の平凡な日常を淡々と描いていきます。さて、この作品の面白さを具体的に書け!と言われるとかなり困ってしまいます。 ただ、続編が出ていると知ったら読まずにいられませんでした。 あちこちでレビューを拝見しましたが、みなさん同じようなことをおっしゃっています。いわゆる「癒し系」でもないし、この作品の魅力をひとことで言うのはかなり難しいと思いますが、二作目で強く感じたのは世ズレした主人公のじれったさです。 その言動は、えっ!なぜそこ引っ掛かるの?そういうコト言ったらマズいんじゃないのか??という連続ですが、それを強く否定することのできない自分(読者)がいたりします。 そのリンクが成り立つ読者なら周りにいるキャラクターが主人公に放つ説教じみたセリフに、ある意味での心地いい痛さを感じ取れるのではないかと思います。特に秀逸だなと感じたのは、ずんどこルミちゃんこと富貴子さんが語る「ある雑誌」に関する考察と、それに答える主人公のひとことです。 「ある雑誌」に関して具体名は記されていませんが、一度でも読んだことのある読者なら「あの雑誌」だと気がつくはずで、そのあたりも夏石さんが巧妙に仕込んだリンクだろうと思います。かなり中途半端な終わり方をしていますが、最終頁に「続きは三巻で」と書かれています。 なんだよぉ~この話まだ引っ張るのかよぉと思いつつも読んじゃうんだろうな・・・・と思います。(笑)『今日もやっぱり処女でした』のレビュー【送料無料】今日もやっぱり処女でした価格:1,470円(税込、送料別)
2011.03.05
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処女をうばわれた十五の春。置屋に売られた十六歳の朝。運命の男との出会い、世を沸かせたあの殺傷事件。出所後、つかの間の幸せ。そして今―伝説の“悪女”阿部定の恋の軌跡を男たちの視点で描く連作短篇小説集。<感想> ★★★★☆タイトルから宇野千代の作品を思い起こされる方もいらっしゃると思いますが、本書は阿部定を取り上げた島村洋子さんの作品です。 さて、2011年の日本で阿部定事件の認知度はどれくらいでしょうか?事件は1936年(昭和11年)に発生していますがたびたび映像化されていて、その流れは平成になっても絶えることがありません。 1936年(昭和11年)といえば2.26事件のあった年ですが、現在の認知度はそれ以上に高いのではないかと思われます。本書は事件そのものを描くのではなく、彼女と関わりを持った男性たちの視点で阿部定を描いていきます。 フィクションとの但し書きがありますが、男性たちはすべて実名でそのあたりは虚実を織り交ぜたというのが正しいのかもしれません。阿部定事件の入門書としておススメします。【送料無料】愛のコリーダ価格:1,796円(税込、送料別)大林宣彦監督!黒木瞳主演!SALE OFF!新品北米版DVD!SADA 戯作・阿部定の生涯!価格:2,990円(税込、送料別)
2011.02.27
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インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて…戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が、詩句から触発された全八篇。夢幻へ、狂気へと誘われる戦慄の短篇集。<感想> ★★★★☆本書は皆川博子さんの短編集です。さて、昨年読んだ『少女外道』にはドギモを抜かれましたが、05年に上梓された本書も同じテイストを共有する作品集です。 正直言って完成度という点においては『少女外道』に劣るものの、詩からインスパイアされたそれぞれの物語は儚く、それを綴る文章は限りなく美しく妖しげです。本書は文庫化されているので、皆川博子入門の一冊として手にとるには最適だと思います。 『少女外道』レビュー
2011.02.25
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生まれてすぐに家族になるわけじゃない。一緒にいるから、家族になるのだ。東京から田舎に引っ越した一家が、座敷わらしとの出会いを機に家族の絆を取り戻してゆく、ささやかな希望と再生の物語。朝日新聞好評連載、待望の単行本化!<感想> ★★★★☆荻原浩さんといえば若年性のアルツハイマーを描いた『明日の記憶』がすごく印象に残っていますが、作品を手にとるのは久しぶりです。 さて、本書に関しては直木賞にノミネートされた時から気になっていましたが、その分厚さ(450頁弱)に腰が引けていました。 どうしたら座敷わらしをネタにこれだけ長い作品を描くことができるのか?期待と不安が相半ばするというやつです。結果から言うなら、本書はメインキャラクターである5人の家族が順番に語り手となっているので、これだけの頁数を要しています。 父・母・長女・長男・姑。 それぞれに悩みや問題を抱えていますが、家でも会社でも空回りしている父親をユーモアたっぷりに描いているので、ほんわか気分で読み進めことができます。 座敷わらしがきっかけになって家族の絆が強まり、それぞれが問題をクリアしていくという設定は、座敷わらしを他のもの変えればハリウッド映画にありがちな展開だなぁ~とは思いますが、頁数が残り少なくなると、この座敷わらし話をどのようにおとすのかが気にかかって頁をめくる手がとまりません。 特にラスト間近の急展開に唖然とさせられます。 えっ!そんなカタチで終わりにしちまうのかよ?と思った最後の一行。 この一行が最高に巧いです。 この一行に敬意を表して★をひとつプラスしておきます。
2011.02.19
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『名短篇、ここにあり』では収録しきれなかった数々の名作。人間の愚かさ、不気味さ、人情が詰った奇妙な12の世界。舟橋聖一「華燭」、永井龍男「出口入口」、林芙美子「骨」、久生十蘭「雲の小径」、十和田操「押入の中の鏡花先生」、川口松太郎「不動図」、吉屋信子「鬼火」、内田百けん「とほぼえ」、岡本かの子「家霊」、岩野泡鳴「ぼんち」など。文庫オリジナルでご堪能下さい。<感想> ★★★★☆本書は北村薫さんと宮部みゆきさんが編者となったアンソロジー『名短篇、ここにあり』の追加版です。 さて、本書には12の短篇が収められていますが、『名短篇、ここにあり』と比較するなら、かなり渋めのラインナップになっています。華燭(舟橋聖一)/出口入口(永井龍男)/骨(林芙美子)雲の小径(久生十蘭)/押入の中の鏡花先生(十和田操)不動図(川口松太郎)/紅梅振袖(川口松太郎)鬼火(吉屋信子)/とほぼえ(内田百けん)家霊(岡本かの子)/ぼんち(岩野泡鳴)ある女の生涯(島崎藤村)林芙美子の『骨』は病弱の父と肺結核の弟を抱えた戦争未亡人の話。 おそらく十回以上読んでいると思いますが、読むたびに胸に迫ってくる作品です。 吉屋信子の『鬼火』はガスの集金人が主人公。 ホラーチックな展開とオチに使われる帯が印象的な作品でした。十和田操って誰?状態ですが『押入の中の鏡花先生』は、とぼけた文章が味わい深く感じられました。黒で表記した作家の作品は著作権が切れているので、青空文庫で読むことができます。【送料無料】名短篇、ここにあり価格:798円(税込、送料別)
2011.02.09
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最後に会ってから七年。ある事件がきっかけで疎遠になっていた幼馴染みの冴木。彼から「お前に会っておきたい」と唐突に連絡が入った。しかしその直後、私の部屋で一人の女が死んでいるのが発見される。疑われる私。部屋から検出される指紋。それは「指名手配中の容疑者」である。冴木のものだと告げられ─。<感想> ★★★★☆中村文則さんを読むのは4作目になります。 キレのある文書と作品全体を支配する独特の緊張感は、読み応えのあるエンタメと抜群に相性がいいと思いますが、基本的に中村作品は純文学の範疇を逸脱することがありません。 さて、 本書は幼い頃の特異な体験を共有する二人の物語です。 その体験を契機に性と暴力を忌避する主人公。 対照的にそれを異常に昂進させ犯罪者となってしまう幼馴染みの冴木。 過去の出来事と日々葛藤する主人公と、謎を秘めている冴木。 二人を描く筆はやたらと重たいので、読者によっては生理的に受けつけないかもしれませんが、適度にミステリーの味付けがなされているので、決して読みにくい作品ではありません。 冒頭で申し上げたことと矛盾するようですが、言い換えるなら純文学という素材はどこまで加工が許されるのか?という試みがなされているような気がします。 ちょっと変わった純文学をお読みになりたい方。 ちょっと変わったミステリーを読みたい方におススメします。
2011.01.23
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昭和23年、急逝した太宰治のピンチヒッターに立った船山馨は、準備期間のない新聞連載の執筆に心身とも消耗し、ヒロポンに溺れていった。やがて妻・春子も追うように中毒になり、なりふりかまわず借金を重ね薬物を買い漁った。同じ幻覚を見ながら、奇行を繰り返すふたり。懇意にしていた林芙美子の死をきっかけにヒロポンを断つが、馨の作家としての評価は地に堕ちた。しかし、春子は夫の復活を信じて、家族を守るために奔走する─薬物中毒、借金地獄、激動の時代を破天荒に生きた作家とその妻の壮絶な人生を描いたノンフィクション。<感想> ★★★★☆本書は船山馨と、その妻春子を描いたノンフィクションです。と申し上げても大半の方は船山馨って?誰??状態だと思います。 私も著書を読んだ記憶はありません。 詳しくはこちらさて、本書の楽しみ方は二つあると思います。 まずは作家船山馨の評伝としての側面です。 今では忘れられた作家となっている船山馨ですが、エピソードや交友関係からその人物像を見事に浮き上がらせています。 そして、もうひとつは妻の春子を描く側面ですが、本書はそちらに重きを置いています。 夫とともにヒロポン中毒になってしまうくだりこそは悲壮感が漂っていますが、印税が途絶えて借金まみれになっても「そのうちお父さんはすごい傑作を書いてお金がたくさん入ってくるようになるから大丈夫!」と周囲に喧伝する様子。 姑息な手段で借金取りを追い返すエピソードなど、『ゲゲゲの女房』的なノリで楽しみながら読むことができました。 加えて、もともと作家志望の編集者だった春子は直接執筆に関わることさえないものの、常に夫婦で作品を創りあげるという想いが強かったのではないかと感じました。 さらに言うなら夫の船山馨はそのあたりも理解していたようで、読んでいてほんわかした気分にさせられました。 文學オタクの方。 夫婦の在り方についてお迷いの方。 あれっ!夫婦でヒロポン(覚醒剤)中毒って・・・・・・という方におススメします。ちなみに表紙の彫刻は、作品にも出てくる次男の船山滋生さんの作品です。「声」のスケッチブック価格:1,260円(税込、送料別)【送料無料】ゲゲゲの女房価格:1,260円(税込、送料別)ゲゲゲの女房 完全版 DVD-BOX 1価格:14,364円(税込、送料別)
2011.01.22
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二之浦ゆり子は青年医師・里見に誘われ、瀬戸内海の小島巡りに同行するが、その際、ひとつの無人島を目にしたことで、過去の悪夢が甦る。彼女は十五年前誘拐され、その島に放置されたことがあるのだ。里見と交際を始めたゆり子は、彼とともに過去の謎と向き合う決意を固めるが、浮かび上がってきたのは驚愕の真実だった。『症例A』の著者が贈る、ドラマとトリックが融合した傑作。<感想> ★★★★☆本書は第106回(平成3年/1991年下半期)直木賞ノミネート作品です。そのわりにはちょっとジミかなぁ~という気がしますが、著者お得意の文芸路線ミステリーです。この作品では恋愛小説の味つけがされています。 日本ではあまり好まれませんが50~60年代の翻訳ミステリーを読むとしばしば出てくるパターンです。 作家のさじ加減ひとつですが、ミステリーと恋愛小説は優れたサスペンス小説になりうる素材で、本書も例外ではありません。磐石だったと思っていた足元が不安定だと気がついた時の不安。愛されていると思っていた相手から突きつけられる不信と孤独。そして、隠されていた秘密。サスペンス系の翻訳モノがお好きな方なら、楽しめる作品だと思います。私はなにやら懐かしい気分にさせられました。
2011.01.10
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