宇宙は本の箱

     宇宙は本の箱

想いの果て



私はかつて言葉を持たなかった。
そして、今も持たない。
持たないがゆえに、私は語らず、語らぬまま私は逝くだろう。
語るより前に想いはあふれんとするが、
その溢れんとするものを受けとめてくれる人らももうここにはなく、
長い長い時を経て、私ははじめてあなたの名を呼んだ、
神よ!
と。


私は私を愛しみ、私は私を想う。
もう何千年も前に過ぎ去ったような想いの数々。
まだ昨日のような胸の痛み。

けれど、あの人の長かった髪が短くなったのはいつだったか・・・
私はそれさえも知らないで来た。
私がなぜ膝を丸めていたのか、
今の私にはもう懐かしいとしか答えようがないそれらのこと。


語る言葉などない日々があり、
到底言葉などでつくせない日々があり、
それが私を創った。
語れなかった言葉を語る日は永久にないのだと、
死んでも抱いてゆく想いというものを心に刻んだ日。
ひとひらの雲を見上げた廃墟での切なき戯れの午後。












© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: