宇宙は本の箱

     宇宙は本の箱

人生は過ぎ行く


煙突から出た煙は風になびかず 分断され固まり 地面に落下する
すぼめた口から吐いた煙草の煙も ドーナッツとなって地面に落ちる
ただの吐息でさえ

いつか聞いた話。

そうしてまた 君は僕ほどには巡りあわせがよくなくて
あの美しいカディスの少女を見たことがないのだ と

そういう詩を謳った。


私は大層無愛想な女の子だったが、そんな娘に屈託なく喋ってくる少数の者がいて
それがなんなのか考えることもなく、何ヶ月か何年かの月日が流れたこともあった。
愛されたら愛し返さなければならない理由などどこにもなかったが、
愛すことも愛さないことも苦しかったのは事実で、
だから あの人のことも すごくよくわかるような気がしたのだ。
解放されたのは実は子供を産んでからなんだ。

それでも枚方のMが抱いてくださいって言った時 だめだったんだ。
S先生が一年ぶりに現れて まだだめですか?って言った時もだめだったんだ。
神聖な娼婦には永久になれっこないまま年だけはとった。

人生は切なくて 人生は愛しくて 思いを重ね 想い出を思い出して過ぎ行く。


君は愛されることの苦しさを知らない。

君は 私ほどには巡りあわせがよくなくて
誰を愛しむべきかも まだ知らない

カディスの少女の話 さ。


もう思い出ばかり。










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