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2009.10.04
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カテゴリ: 江戸時代を知る
耳嚢(上) 』から、好きな話を現代語訳で紹介する。
 「見式」は「見識」のこと。

 ある年の暮れに、わたしが親しかった浪人が、貧しい暮らしながらも年末の支払いをきれいに済ませ、賑やかな大晦日の様子を見ていると、門口を、
「サザエ、サザエ」
と悠々と売り歩く声がしたので、何だろう興味深いと思い、
「サザエ」を買って正月の肴にしよう」
と呼び入れたところ、その商人は、
「サザエは無くて菜っ葉ばかりです」
ということで、青菜を十四、五把、かごの中に入れている。子細があるのだろうと、煙草や茶を振る舞い、
「どうしてサザエと言っていたのだ」
と尋ねたところ、
「わたしは夫婦差し向かいではなはだ貧しい暮らしをしております。さりながら、三十年来サザエを売って渡世にいたし、もちろん三十年来出入りしているお屋敷も十軒ございます。そちらでサザエと声をかけますれば、いつものサザエ売りが来たと、菜っ葉を持って参りましてもほかのものを持って参りましても買っていただけますので、夫婦はやっていけるのです。お前様に限らず、強いてお求めにならなくともかまいません」
と語った。
「世にはこんな珍しいのもいる」
とその浪人一方齋が語った。

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Last updated  2009.10.04 17:49:45
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