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モロッコ紀行 【フェスエルバリの夜景】
-エルフード発、エルラシィディア経由ボンボヤージュ-
鏡に映った自分の姿をしげしげと見つめる。
昨日スークで買い求めたネグリジェのような普段着の民族衣装姿になっている。
よーくみると、ぶざまのようでも、さらによーくみるとなかなかどうして似合って
いる。
どこか、安っぽいお笑い芝居にでも出てきそうな天使のようでないか、似合ってい
るとは、そういう意味合でのことだ。
それでも、木綿で気心地は良い。
荷物を持って部屋を出るのに少し勇気がいった。
意を決して堅い扉のノブをおもいっきり廻し、廊下にだれもいないことを願って外
へ、勢いよく飛びだした。すぐにキャリア・ボーイが3人、目の前に飛び込んでき
た。
-しまった。-
彼らの一人が赤面する私に、笑いながら「トレビアン」となげキッスした。
湯からあがった後、体から発する蒸気でもこんなに体はほてらないだろう、という
くらい私は全身熱くなった。
今日一日この恰好で過ごすつもりだった。
一日がとても長く感じるかもしれない。
でも、いいや、この服の下はジーパンにTシャツ姿なのだから、いつでも脱ぎ捨て
れば良いのだ。
それにしても、この先の尖った現地のスリッパは履き心地が良い、これはジュラバ
を買った後、スークで一生懸命専門店を探して、求めたものだ。
ジュラバにスリッパ、これがご当地のスタイルなのである。
この格好に唯一欠点があるとすると、それは走るときだ。
でも、なに、ここはアフリカだ。アフリカにはアフリカの時間が流れている。
急いで走って済まさなければならない用事など何一つありゃしないじゃないか。
ちょっとした、ハレの姿はしだいに気もおおらか、-イエーイ、アフリカだぜ-な
どと悠長にチェックアウトの手続きをしていると、ホテル前のエルラシィディア行
きのバスが今にも出発するという。
慌てて走り、前につんのめりそうになった・・。
町を出入りする街道をバスで5分も走れば、また、岩砂漠が延々広がっている。
自然の驚異とそこに生活する人々の生命の偉大さに圧倒され、ときには閉口させら
れたものだが、旅行く人の悲しい性か、すでに飽きていた。
エルフードから北へ120キロ、サハラ外縁の隊商基地であったオアシス町エルラ
シィディアへ。
そこからバスを乗り換えて2時間ばかり走れば小アトラス山脈を越え、古都フェズ
の町へ向かうのだ。
変わらぬ車窓に眠気が誘発されるが、必死でこらえていた。
メスキという泉のある小さなオアシス町を抜け、沿道のがればの岩が小さなもの
から大きなものへと変化していくのに気づく。
エルフードを7時にたち、9時にはエルラシィディアに着いた。
この町はワルザザードを結ぶカスバ街道と、アルジェリアのガルダイワなどへ通じ
る街道とが交差する交易拠点であった。
昔日の賑わいこそみせていないものの、今でも毎週 月曜日には大きな青空市が開
かれる。
この町は、オリーブの栽培でも有名だ。
オリーブ栽培が可能な南限となっている。
すでに地中海地域に入っていたのだ。家はクリーム色がかったペンキで塗られてお
り、赤茶けた土だけの砂漠地帯で見てきた家と違いモダンにみえる。
乗換待ちのバスを待つあいだポプラの木の下で煙草をくゆらせていた。
モロッコの民族衣装を着たこてこての東洋人をみて不思議に思っただろう、観光に
来ているらしい少年が声をかけてきた。
「中国人か?インドネシアか?ベトナムか?」
「日本だよ」ちょっとむっとしながら返事した。
「ところで君は?」
「フランスから」
「ほう、一人で?」
「父と母と3人で」
少年によると、バカンスで家族とバカンスでプジョーかなんだかの車でスペインを
南下し、セウタからフェリーでタンジールに揚がり、首都ラバト、フェズを経由
し、今日のうちにエルフードへ向かうのだと言う。
ちょうど時計の逆周りのコースをしている私とは逆周りとなる。
「そうか、そうか君はまだ、ほんとの砂漠を知らないんだね?きっと感動すること
請け合いだよ」
こんな調子で、もちろん英語はなめらかではないが「見てきた者」の強みで威厳だ
けはたっぷりに伝えた。
「砂漠?ああ、オマーンやテルアビブやナミビアで見たことあるけど・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
私がだまりこむ番だった。
瞬の白けた空気を吹きとばすつもりで、少年が首からかけてあるおもちゃのような
カメラと私のオリンパスの3倍ズーム付カメラとでお互いの写真を撮りあいっこし
た。
用もないのにわざわざズームはフルオンにして。
少年は私の所有する「優秀な日本製品」に興味が尽き無い様子だった。
私はまたまた威厳を回復し、写真を送ってやるよ、とメモを少年に差し出した。
彼が書いた住所はパリでも高級住宅地で有名な11区になっていた・・・。
どんどん萎縮していく自分が手にとって分かる。
私は12、3歳のアメリカンスクールに通っているというジュウーディーに、さん
ざん打ちのめされたような暗い気分になってはやくこの場を逃れたいと思うように
なった。
それでも少年は極東からきた奇妙な闖入者に興味が尽きないのか、矢つぎばやに英
語でまくしたててくる。語尾があがっているから質問攻めだろな、ということぐら
いしかわからなかったが、ウンウンと、ものわかりのいい近所のおじさんを演じて
いた。
すると少年はたまりかねたようにこう言った。
その一声だけは私にもはっきり理解できた。
「ドウーユースピーク・イングリッシュ?」
がらがらと音を立てて崩れていくものを私は感じた。
「い、いや話さない。もちろんフランス語も。スペイン語も、ドイツ語も・・・」
問われる前に私はよけいなことまで弁解するような憂鬱さで答えた。
私はいよいよ気まずくなり、はやくこの場を離れ、かつ少年を傷つけないような言
い訳を汗をたらしながら考えていた。
「すまないジュウーディー君、バスがもう出るんだって」
少年は急に打ち切りを告げられたことに不満そうな顔をして「バイバイ」と言っ
た。
エルラシィディアの空は砂漠の黄色がかった空と違い真っ青としていた。
私は恨めしそうな眼で別れを告げた少年に、何かこの空のように晴々とする言葉を
投げ返してあげたかった。
が、なんの機転もきかずに、握手だけは力を込めこう言った。
「ボン・ボヤージュ」
握手を返してきた少年の瞳がみるみる輝きを帯びてくるのが手にとるように、はっ
きりとわかった。
-フェズ・エル・バリの夜景-
タクシーが止まったのは、見覚えのある門の前だった。
その門はライトアップされ、とても綺麗だった。
ブー・ジュルドー門である。
フェズ旧市街の入口として象徴的な青タイルで装飾されたこの門の向こうにイブン
トュルーン・メルッサ門がかいま見え、イスラム世界への旅情をそそる構図になっ
ている。
何度か、写真でみたことある私も、そのうちの一人だった。
ここに来るために、はるばる極東の地からマグレブ(極西の地)へ来たといっても
過言ではない。
旅の誘惑はメルズーガ砂漠に始まり、 ブー・ジュルドー門で完結していた。
しかし、今夜私はタクシーの運転手に地図を見せながら何度も反復して示した地は
この「場所」ではなかった。
ワルザザード以来のNさんを、宿泊を同じくしているFホテルのロビーで「夜のフ
ェズのメディナでも」と誘った。
エルフードからの長い路線バスの移動に心身疲れ果ていたはずだったが、思わずも
のがなだった。
Nさんは心よく返事をして、少しはにかんだようにして言った。
「でも、疲れてるんじゃないですか?」
Nさんが疲れていることには気にもとめずに、
「あんまり遅くなってもあれだから、2時間期限でデートをしましょう」
と遜って、ホテルのロビーに9時と待ち合わせした。
それから、レストランでありきたりの郷土料理、クスクスや鳩肉を詰め込んだパイ
や、きゅうりとトマトのサラダを食べた。
ワインを1本とビール2本を飲んだ。
お酒がいつもほんのわずかな勇気を与えてくれる。
そして、食事も誘えばよかったと、いつもl「後から気づく」自分を呪った。
ムーレイ・ハッサン通り(どこの町にもこの現国王の名を関した名の通りがある)
を歩き、旧市街へ向けて歩いた。
ガイドブックで予習する時間がなかったので歩きながら私は焦っていた。
椰子の木を植樹している大通りは人影、交通量ともに少なく夜になると街自体が眠
りに就いているような感じだった。
たしか、満月に見守られながら歩くのは実に爽快だ、というような言葉を言ったと
思う。
Nさんに「ロマンチストなんですね」と言われたのはハッキリ覚えている。
「ところで、どこへ連れてってくれるのかな?」
レモンに砂糖水をかけ絞り漉したような声で尋ねられた。
私は焦った。彼女は心底、健康な心の持ち主だった。
ますます混乱した。
自分と向き合っているのは世界でNさんだけしかいないような錯覚 に落ちいっ
た。
「行ってのお楽しみ」などと卑屈さを隠しきれなかったが、内心じくじたる-おも
い- があのときあったに違いなかった。
それは異国を旅する者が、遠い異国へいるという舞台装置が手伝った、あるいはそ
うさせる「淡い想念」であった。
Nさんもそれ以上は問わず「Sさんは行動力あるから」
と、よけいプレッシャーを与えてくれた。
新市街はマラケシュの比でないくらい大きいらしく旧市街へはいっこうに辿り尽
きそうにもなかった。
うきうきした気分と完璧なコースをまっとうする義務感で混乱した。
目的地をめざすばかりによけい私は無口になり、Nさんを困惑させた。
最後まで何処へ行くかはNさんに伝えなかった。
やっと解決の糸口を与えてくれたのは、私たちの進路方向とは反対側に止まってい
た、赤いプチタクシーだった。
歩かなければならない理由などどこにもなかった。
「向こうに渡るよ」
そしてタクシーの男に手振りを使い良いかい、と聞いてからNさんの肩をそっとお
して「ささ、お嬢さん」と言った。
乗り込むやいなや、私とタクシー運転手かりに髭氏としておこうか、の格闘がはじ
まった。
ちっとも役に立たない日本のガイドブックを広げ、指をさしながら何度も言った。
「ビュー・スレ・ムンジュール、OK?]
私は後部席から身をのりだし、髭氏はきゅうくつそうに半身なって私の指さすとこ
ろが何処だか思案していた。
地図の示している地名はフランス語だった。
髭氏はようやく心得たとばかりに車を発車させた。
後部席のスプリングはダメになっているようで、アスファルトの上とはいえ、臀部
に響いた。
「おもしろーい」Nさんはこの先のこともわからずキョトンとしたまま言った。
Nさんは単純ながらも人を安心させる言葉を素直に言える人だ。
自分の心がくすぐったかった。
そして運転手が着いたよとばかりに、振り向いて指さしたところが、ブージュルー
ド門の前だったのである――――。
位置確認のためにこの地も指さしたのかも知れなかったし、また発音がまずかっ
たのかもしれない。
とにかくまた地図を広げてやり直しのはめになった。
――やれやれ――。
運転手はサイドガラスを開け通行人に大声で叫んだ。
またたくまに数人集まり、運転手と後ろにいる私たちを見比べては、なにやら相談
しあっている。
やがて、ひとりの人のよさそうな男が手を引っ張られて運転手と二人話しはじめ
る。
私はやけっぱちに、
「フェズ、パノラマ!」と、そのご意見番のような男に叫んだ。
すると男は了解とにっこり微笑み、得意げに運転手に私が求めているであろう目的
地を告げた。
運転手も承知したとばかりに私に振り返ってウィンクしてみせた。
-よっしゃ、まかせなさい-の言葉に散々この国で泣かされてきた私だったが、今
度こそ間違いなさそうだ。
車は旧市街を囲む城壁をなぞるようにして門の反対側に出、やがて坂道を行きだし
たから。
そう、間違いなく「私たち」はフェズ・メディナの美しい夜景がみられる展望所へ
向かっているのだ。
間違いなく・・・・・。
Nさんは「コミュニケーションを楽しそうに取るんですね、ほんと楽しい」
そして、ある言葉を自分に言い聞かせるように言った。
その言葉はいまでも私の耳に残っている。
しかし、そのとき私はまだ慌てていて、聞き流した素振りをした。
Nさんが-さして意味もなく、なにげなく言ったこと-と私が理解したのは、まだ
ずっと先のことだった―――。
運転手が着いたとばかりにキュッと車を止めた。
私たちは車を降り、そこで眼にしたのは暗黒に消え入るような星の光のような明か
りがちらほらしているだけだった。ものさびしい。
ここに約30万人の人口を擁する、北アフリカ、いや世界最大の規模を誇るメディ
ナの夜景としてはあまりににももの足らなかった。
「キレイねえ」とそれでもNさんはほっと息をつくように言った。
お世辞で言ってくれたものと心得ていたが、
「ここに来たかったんですよ」と言った。
映画「シェリタリング・スカイ」の主人公の男が妻に「ここを見せたかった」とあ
る風景をふたりでみながら、そうはいた台詞が釘でやさしく打ちつけたよう心の底
に残っていた。
私もホテルを立つ前こう言いたかったのだが、あのシーンを再現するのには二人の
立場も条件も、あまりにももの足らなかった。
それでも私は、あの夜景を忘れることはあるまい。
運転手は二人がみつめる夜景の背後の城を指し「カスバ」と自慢そうに言った。
ホテルへの帰り道、私は今日の夜景がこれまでみてきたどの夜景よりも深く瞼の
裏に焼きつくことであろうことを確信していた。が、それは「真実」ではなかっ
た――――。
Nさんとその年の9月に東京で再会をはたした。
その夜、さんざん遊び尽くした二人は新宿Nビルの50階にいた―――。
新宿の高層ビルから見下ろす夜景は東京タワーや放射線上に花のように延びている
主要幹線やネオンがこれでもかと迫るばかりのきらびやかさだった。
夏の終わりに遠くでは花火があがっていた。
Nさんは「キレイねえ」とため息をついて、次の言葉がでてこなかった。
Nさんはフェズの夜景をどのように心に留めたのだろうか。
その夜、私は結局確認はできずじまいだった。
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