今が生死

今が生死

2008.01.22
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カテゴリ: 読書
今回も小説「人間の絆」から:
主人公のフィリップは幼くして両親を亡くして叔父夫婦に育てられ、亡くなった父親の遺産でロンドンの医学校で学ぶ学生である。

喫茶店に通って恋をしたり、彼女に自分のアパートの一室を提供してやるなど、人並み、もしくはほんの少しそれより上の生活をしてきたのに、卒業して医師免許がもらえる1年前に友人に誘われて父の遺産の大部分で株を買ってしまった。以前やはり友人に勧められて少額の株を買って大もうけした思いがあり、今回沢山買ってしまったのだ。

イギリスが南アフリカでボーア戦争を行っており、友人が言うにはこの戦争は早々終わってイギリスが勝利するので株が上がるのは間違いない。そうなってから買うのでは儲けは少ない。遅れをとるな、今がチャンスだと言われて買ったのだが、実際にはボーア人の抵抗が強く、戦争は長期にわたり、株価は下落の一途をたどった。

フィリップは大損をして、手元には数ポンドしか残っておらず、下宿代も払えず野宿し、食事も粗末なものを2食しか食べられず、自分がまさかこんな境涯になろうとは夢にも思わなかった境遇になってしまったのだ。

「株など買わなければよかった」と思ったが後の祭りである。あと1年経てば医師免許がもらえる。そうなれば医師として稼げるが今は免許はない。学校を休んでデパートの売り子などの募集広告に応募したりして職を探すが中々見つからない。

この後、恐らく学業が続けられなくて医学校を退学するのではないかと思うが、株によって人生を狂わせられた人はフィリップだけでなく、現在は世界中に溢れていると思う。フィリップは毎日新聞を見て株価の下落、下落を見て生きた心地がしなかったとのことだが、生きた心地がしない人は日本は勿論、世界中にいる。

フィリップつまり作者のサマセット・モームは後に大小説家になるので、株価で落ち込んでも別の人生がある。世界中の株で損している人達よ。人生いたるところに青山ありだ。サブプライムローンや戦争のつけが株価下落につながっているのだと思うが、それは株主の責任ではない。

フィリップの時代のボーア戦争、現在のサブプライムローン、株主がやきもきしてもどうすることも出来ないことだ。なる様にしかならないが、株で損して、あんなに貧乏になったフィリップも後に小説家として大成したのだから、今はどんなでも後に必ず大成することを頭に描いてがんばって貰いたいと思う。






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Last updated  2008.01.22 21:22:04
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