今が生死

今が生死

2023.09.03
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カテゴリ: 読書
カリブラコア
庭に咲いているハンネマニア
トルストイの晩年の作品に短編民話『人は何で生きるのか』がある。
貧乏な靴職人セミヨンが集金してその金で上着を買おうと出かけたが料金を支払ってくれる人は少なく上着も買えずにやけ酒をのんで帰宅途中お堂にもたれかかって身動きもしない裸の男に気がついた。「かかわりあうと厄介なことになる」と思い急いで通り過ぎようとしたが心の声「困っている人を見捨てて行ってしまうのか?それはいけないよ」が聞こえてきて自分の家に連れて帰った。妻のマトリョーナは激怒し
激しい夫婦喧嘩になった。「晩飯なんかありませんよ、裸の酔っぱらいをいちいち賄えるものですか」とまくしたてた。セミヨンは「お前の胸には神様はいないのかね」とやり返した。その男の惨めな様子に同情して結局妻も受け入れて靴屋の見習いとしてその裸の男ミハイルはセミヨンの家で一緒に暮らすことになった。そして6年の歳月が流れた。
ある時、裕福そうな婦人が二人の子供をつれて靴の注文にやって来た。一人の子は足を骨折した障害者だった。二人の子供の実の母親は子供が小さい時亡くなってしまい、その騒ぎの時子供が重なり合って下になった子供の足が折れてしまったとのことだ。
その後二人の孤児は今のご婦人に育てられたが、差別なく愛情込めて立派に育ててくれた。彼女の中に生きた神を見てミハイルは微笑んだ。裸の男ミハイルは実は天使だったのである。人は 何で 生きるのかの でとは「何をもって」という意味で他人との交流であり、愛情であり、慈しみがあるから生きるのだとトルストイは言いたかったのだと思う。それは孤児を温かい愛情で包みながら育てることだけでなく、命と命をつないで苦しんでいる人をたすけるために生きるのだということでもあると思う。
人は何のために生きるのかの答えは難しく何通りもの答えがあり、個人によってもその答えは違ってくると思う。しかしトルストイはこの作品を通じて人は人を助け、人のお役に立つために生きるのだということを伝えたかったのだと思う。





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Last updated  2023.09.04 13:37:20
コメント(8) | コメントを書く


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こんばんは!(^_-)-☆  
 葉の様子から判断すると「ハンネマニア」ではないでしょうか?  (#^.^#)
別名・メキシカンチューリップポピーとも言います。


https://flower365.jp/17/403.html

https://blog.goo.ne.jp/yunnyao/e/e6ecc7069158d85f3d64f6151645a8e9

https://www.atariya.net/hana/hunfum.htm

なかなか出来ないことですね。 素敵なお話ありがとう! (#^.^#)
(2023.09.03 23:30:40)

Re:人は何で生きるのかートルストイ(09/03)  
かんぼう さん
人は何のために生きるのかの答えは難しく何通りもの答えがあり、個人によってもその答えは違ってくると思う。しかしトルストイはこの作品を通じて人は人を助け、人のお役に立つために生きるのだということを伝えたかったのだと思う。
◎カリブラコアは可愛いですね。
黄色い花は巾着そうでないですか。貴方のブログ友のだいちゃんの言うのが正しいかもね。
トルストイの傑作品はこういう問いかけが多いですね。
人の真心はこうした見えないところに潜んでいる。お釈迦様の乞食で布施するものが無いから土の団子を布施したり自分お命を投げ出して布施したりして誠の命、生き様を表現していますね。
惨めな服装の乞食の姿は仮の姿で人の真の心を試すための振る舞い。私たちは外観で人を判断してしまう。肩書で人を見てしまう。
大きな落とし穴にハマり込んでしまう愚かな処が多いです。
大半外観で人を判断してしまっていますね。
トルストイはそれを言いたかったんですね。鋭い監察、洞察力ですね。
甲府のブドウが届きました。仏壇に早速お供えです。ありがとうと奥さんいお伝えください。12日から旅に出ます。 (2023.09.04 08:01:29)

花の名前教えて頂き感謝  
楽天星no1  さん
だいちゃん0204さんへ

当にハンネマニアそのものですね。私も調べたのですがわかりませんでした。ありがとうございました。 (2023.09.04 13:07:58)

花博士とトルストイの奥さんと布施の大切さについて  
楽天星no1  さん
かんぼうさんへ

花の名前を教えてくれた大ちゃんはサラリーマンでしたが今は定年退職後の方です。牧野富太郎のように植物学にすごく詳しいです。おそらく勤務していた頃から好きで勉強していたのではないかと思います。
この本で家に帰ったところでセミヨンと奥さんが大喧嘩しますが、トルストイと奥さんは実生活の中でも大変仲が悪く争いが絶えなかったみたいです。
トルストイはキリスト教の教えの中で真っ裸で曰くつきの浮浪者みたいな者を家に連れて帰ってきました。仏教でも同じですね。乞食のような者に布施する。それで大きな功徳を受けることがあります。セミヨンも浮浪者を連れ帰ってから幸福な生活になりました。12日から海外旅行に行くので今回は見合わせたらと申しましたが、何とか間に合うように送ってもらうと言っていました。 (2023.09.04 13:31:34)

Re:人は何で生きるのかートルストイ(09/03)  
年寄りのお金は猫に小判。

意外と年寄りはお金をためている、ところが使い道がない。
だから詐欺師さんは狙いをつける。

デコちゃん、欲だけ一人前だから詐欺には気を付けている。
かといって浄財であって、浄財でない。

山のお寺の賽銭箱に入れるお金はない。財布の中を探して100円玉がないと、10円玉を投げ入れる。確かに箱に落ちる音は変わらない。

気前よく小銭をまとめて入れる。今度は豪華な気分になる(^_-)-☆。
(2023.09.04 23:56:15)

気前よく小銭をまとめて入れる  
楽天星no1  さん
デコちゃん6902さんへ

[気前よく小銭をまとめて入れる。今度は豪華な気分になる]

世の中には何億という大金を持っている人もいれば、その日暮らしの小銭しか持っていない人もいます。100億円持っている人が1万円貧しい人に寄付するのと100円持っている人が60円寄付するのではどちらが尊いのでしょうかね。それは1万円の方が60円より価値があり、色々なことに役立ちますが貧者を思いやる気持ちとしては60円寄付してくれた人の方が大きいのではないかと思いました。
小銭を気前よく他人のために使える人には後で大きな福運が巡ってくるような気がします。 (2023.09.05 10:40:04)

Re:人は何で生きるのかートルストイ(09/03)  
 人の心の中を見抜く力は、大切ですね。中国、魯迅の「小さな出来事」という短編の話を思い出しました。 (2023.09.05 17:59:11)

魯迅の「小さな出来事」のサマリー  
楽天星no1  さん
ケイサン9574さんへ

魯迅の「小さな出来事」という短編はある努力家の男が都会に出て階段を駆け上がり、高い地位につき、かなり偉い人間になったと思い始めていた。そしてある風の強い日に人力車に乗った。車夫がスピードを上げようとした瞬間、老婆が梶棒の所に倒れ込んできた。その偉くなったと思っていた男は「どうせあたり屋かなにかだろう。かまわず行きなさい」と車夫に言おうとしたら車夫はその老婆を支えて派出所に連れて行った。車夫の行動をみて、自分は「当たり屋にちがいない」と疑いの心をもってその老婆が怪我したかどうかを案ずることもなく人力車を進めさせようとした。自分は努力して偉くなったと思っていたが、学問もない車夫の方が立派な行動をした。とすごく反省して、その小さな出来事を常に思いだしてその後の言動に留意したという話である。恐らくこの偉くなったと思っていた男は魯迅その人のことだと思う。魯迅はこの小さな出来事をきっかけに自省を重ねて中国近代文学の祖になったのですね。 (2023.09.05 22:33:22)

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