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カネノナルキ 2024
173
木村伊兵衛 「本郷森川町 28. 4. 7 」 1953
ジョエル・スタンフェルド 「ヴァージニア州マックレーン」 1978
こうして2枚セットみたいにして並べると、これらの写真に何か共通点でもあるのかなと勘ぐる人もいるでしょうね。
特にそんなものは何もないのですが、あえて言うと、どちらもいわゆる写真の名作だという点では共通しています。
だから、両者ともそうした名作を紹介したり解説したりする本の中ではよく取り上げられます。
私の場合、「本郷森川町」は赤瀬川原平の『鵜の目鷹の目』の中で初めて見ました。
もうずいぶん昔の、たぶんネットが普及する以前の話です。
その本を先日読み返していて、当時はあまり興味がなかったものの、その後面白いと感じるようになった写真家たちの作品が何枚かこの本の中に紛れこんでいることに気づきました。
ジョエル・スタンフェルドもそんな写真家のうちのひとりです。
最初読んだ時は、この人のことをよく知らなかったので、その写真もイマイチ印象に残りませんでした。
それはニューヨーク州トロイという所にある変テコなビルを写したもので、それを赤瀬川原平は「あられもないトマソンビル」と題して面白おかしく観察しまくっています。
じゃあ、その写真をUPすればいいじゃん。
まあ、その手もあったのですが、残念ながら『鵜の目鷹の目』に掲載されている38枚の名作写真はすべてモノクロ印刷なんですよ。
もともとが白黒写真ならそれを転載してもいいのですが、スタンフェルドの写真はやっぱりカラーで見てナンボのものなので、今回は「ニューヨーク州トロイ」が収めてある同じ写真集( 『American Prospects』) の中から、一番有名な「ヴァージニア州マックレーン」をチョイスしてみた次第です。
さて、さて。
やはり名作として残るだけのことはあって、両者とも見る人にちょっと不思議な感じ(謎)を抱かせる写真ではあります。
まずは、木村伊兵衛の写真。
全部で11人の人物が写っていますが、みんな視線がバラバラな感じがして、面白いですね。
police box の前に立っている警官とねじり鉢巻の男は同じ方向の何かを見ているようですが、それでも微妙に視線の角度が違っているようにも見えます。
右隅の男の子と中央の男性はひょっとして同じものを見ている可能性もありますが、その視線の先には見るべき何があるというのでしょう。
特に変わった光景は写っていませんが…
でも、まあ、全体的に何だか変な雰囲気が漂っているのは確かですよね。
一番怪しいのは中央のイギリス紳士然とした男性の足元。
中折れ帽を被り、スーツにネクタイ、コートにステッキという出で立ちなのに、足元が足袋に草履って一体どういうファッションセンス? 笑
しかも脇に抱えているのは風呂敷包みみたいに見えるんだけど。
この点に関して、赤瀬川原平はこんなふうに謎解きをします。
「じつはこの身につけているものは全部盗品であり、慌てて草履をつっかけて逃げるところなのかもしれない。
しかし走ると怪しまれるので、通り過ぎながらお巡りさんたちの方を見て、
(へえ、何だろう、何があったんだろう、へえ…)
なんて野次馬のポーズだけ作り上げて立ち去ろうとしている。
手に抱えている風呂敷包みも怪しいと思う。全身イギリス紳士ふうなのに、足もととこの風呂敷包みだけが日本ふうだ。右手をポケットに入れて何か押さえているが、この中にも何か日本ふうの、文鎮とか硯とかが隠してあるのかもしれない。」
ね、面白いでしょう?
赤瀬川原平が語ると必ずこんな感じになるんですよ。笑
まあ、でも、もともとこの写真自体がそういう見方を許容しているわけで、そういう意味では実に懐の深い写真ではあります。
そのへんのスナップ写真のように、たまたまそこを歩いていた人を無造作に撮っただけだとはどうしても思えないのですが、みなさんはどう思われますか。
お次はスタンフェルドの写真ですが、こちらも奇妙な点では前の写真に負けていません。
背後の家が火事で燃えていて、消防車のはしごが伸びていることから、今消火活動の真最中であり、切迫した状況であることがわかります。
にもかかわらず、消防士のように見える男がのんきに小屋の前に並べてあるカボチャの品定めをしています。
「さてと、こいつを2、3個持って帰ってやれば、カミさんの機嫌も直るんじゃねえ?」
なーんて呟いてるかどうかはわかりませんが、どうやらこの男、仕事をサボってるんじゃないかと思われます。
この件に関して、小久保彰氏は「この作品は裏目読みしてアメリカの勤労意欲の低下の象徴などと解釈することも可能だが、ある日ある所のユーモラスな一瞬で十分であろう。(『アメリカの現代写真』)」と述べておられます。
それにしても、撮影者であるスタンフェルドはいかにしてこの絶妙なタイミングを掴んだのでしょうか。
たまたまこの付近をドライブしていて、火災が発生していることに気づき、大急ぎでこの現場に駆けつけてシャッターを切ったのでしょうか。
8×10インチの大判カメラですから、インスタントカメラで撮るようなわけにはいかないと思うのですが。
気になるのは、画面前方の空地につぶれたカボチャが大量に捨てられている景色です。
ひょっとして作者は何らかのテーマを抱いてこの場所の写真を撮っている最中だったのかもしれません。
そこに全くのアクシデントで火事が発生し、その結果、とんでもなく不思議な傑作写真をモノにすることが出来たということかもしれませんね。 笑
174
ニコチャン大王 by 鳥山明
グリロス by ヒエロニムス・ボス
鳥山明氏が亡くなられた頃、追悼の気持ちで『ドクタースランプ 完全版2』を読み返していて、ニコチャン大王に再会しました。( 「地球SOS ! の巻」)
地球の占領を企む宇宙人です。
これを見てパッと思い浮かんだのが、グリロス(頭足人)です。
上掲の絵でわかると思いますが、頭と足が合体した怪物です。
これはギリシア・ローマ時代の玉石彫刻から発生したと言われており、その後中世になってヨーロッパ全土に広がっていき、やがてヒエロニムス・ボスがそれを芸術にまで高めたとされています。
ニコチャン大王も顔からいきなり足が出ているので、とっさに似てる!と思ったんですね。
ところが、よく見ると、こちらには手も付いているのでした。
ということは、グリロスよりはむしろ、ハンプティダンプティに似ていると言った方がいいのかもしれません。
少なくともずんぐりむっくりな点はよく似ています。
ファーストコンタクトの際に、こいつを指差してアラレちゃんが不思議そうに「カオばっかし!」と言いますが、まさに全身が顔という感じです。
そして、アラレちゃんによるツッコミはさらに続きます。
「ごはんたべたらどこへはいるの?」
これに対し、ニコチャン大王は頭を指差して、「ここだここ!/ だからわれわれが空腹のばあい…/あーアタマがすいた!というのだ」と答えます。
これを聞いて、好奇心全開のアラレちゃんは頭部についている触角のようなものが何かと尋ねます。
大王の説明によると、これは鼻で、頭頂部の割れたところがおケツということだそうです。
「だからうかつにオナラをすると…/と…とてもくさい…!」
これに対し、アラレちゃんとガッちゃんは床にひっくり返って大笑い!
どうです?この下らなさ加減。
とは言え、この漫画の爆裂的な可笑しさはとても言葉では伝わらないのも確かです。
やはり鳥山明氏の天才的な絵をシークエンスとして見ないとわからない世界ではあります。
私は今回久しぶりに「ドクタースランプ完全版2」を読み返しましたが、やはり最初から終わりまで爆笑の連続でした。
何回読んでも笑えるところが凄いなと思います。
しかも笑うことによって免疫力がアップし、体調がすこぶるよくなるから不思議です。
貧乏人には最強の健康法です。
そのことが今回の再読ではっきりわかったので、今アマゾンに「ドクタースランプ」の3巻目を注文したところです。
文庫本で9冊あるみたいなので、まだまだこれから先、末長く楽しめそうです。
全部読み終えても、先程言ったように、その後また何回も笑えるので、それこそ死ぬまで医者いらずってとこですね。 笑
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