~少女。~


   「りんごを切る音が好き」
僕は24個のりんごを刻んだ。
サクサク、トントン。
サクサク、トントン。
クシュッという音がして甘い香りが漂ってきたとき、
それが破裂であることに僕はようやく気がついた。

雨上がりの空を焦点を合わせずに眺めて彼女が言った。
   「未来の色」
僕は3日間空を見つめ続けた。
人間と同じように空も成長していく。
けれど、4日目の朝が来る前にわかったこと、
そこにあるのは空ではなく山だったんだ。

学校の3階から紙ひこうきを飛ばしたあと彼女が言った。
   「永遠、」
僕は風に揺られる紙ひこうきをじっと目で追っていた。
紙、ひこーき。
腕時計は止まっていた。
紙、ひこうき、と僕は思った。

平均台の上を歩くように、彼女は坂道を上っていった。
ゆっくりゆっくり、彼女が小さくなっていった。
僕はその後ろ姿を見つめていた。
それでも影は、
追いついてくることはなかった。


2003/06/05


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