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2014.05.07
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カテゴリ: 音楽
2026.3.23追記:Youtube動画の多くがリンク切れになっているため再編集しました。
続と名付けましたが、 前編である「コンドルは飛んでいく考」 は、実に4年も前に書いた記事です。
その中で、私は

本来「コンドルは飛んでいく」は3部構成の曲です。1部は「ヤラビ」と呼ばれるゆったりしたメロディー(世間的にもっとも有名な部分)、2部は1部のメロディーを少し変形して、「フォックス・インカイコ」または「パサカージェ」と呼ばれる行進曲調にしたもの、最後の3部はワイニョというアップテンポのリズムでメロディーも違います。
で、正式には3部構成なのですが、真ん中を抜いて1+3の2部構成で演奏するグループも非常に多いのです。


と書きました。
ところが、です。私の知人である、ラテンアメリカ研究者の水口良樹さんが、「コンドルは飛んでいく」に関して、驚愕すべき事実を書いています。

知られざる「コンドルは飛んでいく」2014.05.06

まあ、論より証拠、「コンドルは飛んでいく」が発表されて4年後の1917年に残されている最古の録音があるので、これを聞いてみてください。
※埋め込みでは再生できないようですので、YouTubeのサイトでご覧ください。


「世間的にもっとも有名な部分」である第1部(ヤラビ)が、オリジナルの「コンドルは飛んでいく」には、ないのです。2部(フォックス・インカイコ)と3部(ワイノ)しかない。
先に「2部は1部のメロディーを少し変形して」と書きましたが、事実は正反対で、2部(フォックス・インカスコ)のメロディーが先にあって、それを変形して、後の時代に創作されたのが1部(ヤラビ)、というのが真相であるようです。

現在知られている「コンドルは飛んでいく」のヤラビが、オリジナルからはメロディーが改変されていることは、私も聞いたことがありました。通説では、その改変部分は以下のとおりです。

Elcondorpasa1.jpg

上段が現在の「コンドルは飛んでいく」で、下段がオリジナルだ、という話です(赤い部分が付け加えられたところ)。この通説は、事実ではあったのですが、ただし、改変されていたのはメロディーだけではなく、リズムも変えられていたわけです。

もともと、「コンドルは飛んでいく」は、ダニエル・アロミア・ロブレスがサルスエラ(スペイン語圏の民族的なオペラ)のために作った組曲です。その一部をつなぎ合わせて1曲にしたものが、世の中に知られる「コンドルは飛んでいく」です。
このオペラの内容はかなり政治的なもので、米国人の経営する鉱山で1911年に事故が起きた際、経営者側と、先住民労働者の間に起こった激しい紛争を描いています。当時勃興しつつあったインディヘニスモ(先住民復権運動)や労働運動をテーマとする作品だったのです。当時、大変な人気を博して、ペルー全国で上演されたようです。

では、そのオペレッタのための組曲としての「コンドルは飛んでいく」はどんな音楽だったのか。ペルーでは、「コンドルは飛んでいく」誕生100周年だった2013年に、オリジナルの台本と譜面に基づいてサルスエラが再演されています。この記事を書いた当時はその音楽部分だけを集めた音源がYouTubeに公開されていたのですが、残念ながら現在は削除されています。
現在は、サルスエラ全体の動画が4部に分けて公開されています。日本語字幕はないませんので、劇の部分はスペイン語が分からないと意味不明ですが・・・・・・
※追記:2026年現在、すべて視聴できないようです。ただし、再現されたサルスエラの音楽部分だけを抜き出した動画(映像なし音声のみ)があります。


第1部~第4部(リンク切れのため削除)
第3部の冒頭に、現在のアレンジの第3部、ワイノの部分が出てきます。
第4部の一番最後に、現在のアレンジの第2部、フォックス・インカイコが出てきます。

先の1917年の録音も同じですが、ケーナなどのフォルクローレの民族楽器は一切出てこない、クラシック音楽の管弦楽の音楽として作られていたことが分かります。
そして、確かに、一番有名なヤラビのメロディーはどこにも出てきません。フォックス・インカイコは全体の中で一番最後の曲だし、第3部(ワイノ)は真ん中あたりの曲になっています。舞台の中では、ワイノのメロディーは第2幕のオープニング(なお、この部分はアロミア・ロブレスの作曲ではないそうです)で、フォックス・インカイコのメロディーは全体のフィナーレの曲だそうです。
また、今日知られている「コンドルは飛んでいく」の前奏には複数のバージョンがありますが、それらのメロディーも(必ずしも前奏としてではなく)組曲の中に収められていることが分かります。

そうすると、誰もが知っている、第1部の有名なメロディーは、いつ、誰が作ったのでしょうか。
明確には分からないのですが、前述の水口良樹さんの論考によると、可能性としてはロス・インカス(サイモンとガーファンクルのバックで演奏しているグループ)である可能性が高そうです。だとすれば、その編曲をしたのはリーダーであるホルヘ・ミルチベルグということになります。
なお、インカスによる「コンドルは飛んでいく」の最初の録音は1963年のようです。

冒頭に書いたように、現在知られているコンドルは飛んでいくの「正統な」構成は1+2+3の3部構成ですが、「ロス・インカス」の演奏は2部を抜かした1+3の2部構成なのです。もし彼ら自身が、第2部のメロディーを改変して第1部を創作したとすれば、「コピー元」(?)の第2部を省略して2部構成にしたことは辻褄が合います。

もう1人、昨年亡くなったアルゼンチンのギタリスト、エドゥアルド・ファルーも、1960年代から「鷲は過ぎ行く」という邦題でこの曲を演奏しています。
YouTubeには、1967年録音として、この曲を含むファルーのライブ演奏がアップされており、やはり今日知られているあの曲調とワイニョの2部構成になっています。


(27分20秒頃から「コンドルは飛んでいく」)

ファルーのコンドルが1967年でインカスが63年ならば、やはりインカスの方が先でしょうか。あるいは、彼らより前からこのようなアレンジは存在したのでしょうか。ファルーは亡くなったし、ミルチベルクは生きている(多分)けれど、本当のことは言わないだろうから、それをはっきりと確認することは不可能でしょう。
彼は、様々な伝承曲や他に作者がいる曲を、自作曲として発表した前科が多数あるのです。ただし、盗作と言えば盗作なのですが、曲をそのままで名義を横取りしたわけではなく、元のメロディーラインだけを生かして大幅にアレンジを加えている(コンドルは飛んでいくも、その例の一つと言えそうです)ので、「自作曲みたいなもの」と言って、全面的に間違いだとは言えないかな、とも思います。しかも、そのアレンジがなかなかセンスがよい。

アロミア・ロブレスの「コンドルは飛んでいく」も名曲と思いますが、多分、ミルチベルグが今の形にアレンジしていなければ、サイモンとガーファンクルが取り上げて世界的にヒットすることはなかったでしょう。

ホルヘ・ミルチベルグは、少なくとも2012年10月の時点では、現役で演奏活動を行っていました。相当高齢のはずなので、1年半後の現在も演奏しているかどうかは分かりません。(追記:2022年に93歳で亡くなりましたが80代後半まで演奏活動を行っていました)


左端でチャランゴを弾いているのがホルヘ・ミルチベルグ。



この録音は時期は明確ではないものの、1962年8月にVol1が録音された後、ということのようです。しかし、改めて聞いていただくと分かりますが、第2部の部分の曲調、リズムは現在我々が知る「コンドルは飛んで行く」のヤラビになっていますが、メロディー自体は第3部から改変されていません。
一方、"Machu-Picchu"(SONORADIO SE8031)の音源はYouTubeでは発見できませんでしたが、同じアレハンドロ・ビバンコがケーナを吹くコンドルは飛んで行くの音源は発見することができました。


こちらも聞いた頂くと分かりますが、先に譜面で示した赤字の改変部分のうち後半部分(ソミが2回繰り返しになった)は取り入れられていますが、前半の改変部分(ミレシが付け足された)は取り入れられていません。なお、こちらの音源は、同じ音源を紹介する別動画によると、1975年1月1日リリースとなっていますので、かなり新しいものです。
従って、今のところ、ロス・インカスが1963年に発表したコンドルは飛んで行くより古い、現行のアレンジは、YouTube上では発見できていません。


今回の記事は、水口良樹さんの論考を全面的に参考にさせていただきました。ありがとうございます。

---

まったく余談ですが、「コンドルは飛んでいく」の現存する最古の録音が1917年というのは、非西欧世界で音楽が録音された年代としては、最古に近い部類ではないか、という気がします。日本で現存する最古の録音は、1900年、川上音二郎の「おっぺけぺ節」ですが、これは日本国内ではなく、パリの万国博で録音されています。(同じ時期に、他の日本人の声も録音されている)
日本国内で録音された音楽、という条件だと、最古の録音がいつ頃なのかは分かりませんけれど、「コンドルは飛んでいく」と、そう大きくは変わらないのではないかと思います。





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最終更新日  2026.03.23 12:10:19
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Re:続・「コンドルは飛んでいく」考(05/07)  
楚星蘭三 さん
面白い話ですね。
私もご他聞にもれず「コンドル」はS&Gのバージョンで知った口ですが、その後、本格的なフォルクローレ演奏の1+2+3または1+3バージョンを聞きなれてからあらためて聞くと、S&Gのバージョンは途中で終わっている感が強くなって逆になじめなくなってしまっていました。

しかし今回のお話で、あの部分はある種オリジナルだということを知った上で聴くと、また違った心持ちで聴けるかもしれません。

ついでながら、ライブ演奏で「コンドル」が演奏されると、やはりS&Gのバージョンでこの曲を知った方が多いのか、あのパートが終わったところで拍手される方が結構多かったりします。
演奏慣れしたバンドになると、リズムキーパーの方がその拍手を手拍子に持って行って2,3パートを盛り上げるのに活用(?)されたりしていますね。

あとラジオのトーク番組などでゲストが「好きな曲・コンドルは飛んでいく」というと、判で押したようにS&Gバージョンばかりがかかるのも面白いと言えば面白いところ。ゲストがそれしか知らないのか?曲にそのレコードしかないのか?ディレクターが不勉強なのか?

個人的には、アルベルト城間のこの演奏(花祭りとのメドレー)が結構好きですけどね。ラジオ番組に呼ばれたら、CDを持ち込んででもこっちの方をかけてもらいますが、そういうシチュエーションもないでしょうなあ。せいぜい地元局で自分が携わっているイベントの告知か何かで、その他大勢で出るくらいでしょうから(苦笑)
youtube.com/watch?v=rYfLpnS0FxE (2014.05.08 13:24:25)

Re[1]:続・「コンドルは飛んでいく」考(05/07)  
inti-sol  さん
楚星蘭三さん

>S&Gのバージョンは途中で終わっている感が強くなって逆になじめなくなってしまっていました。

私も同じです。

>しかし今回のお話で、あの部分はある種オリジナルだということを知った上で聴くと、また違った心持ちで聴けるかもしれません。

はい。

>あのパートが終わったところで拍手される方が結構多かったりします。

そのとおりです!私も、これまでに「コンドル」は100回ではきかないくらい人前で演奏していますが、そういうことはよくあります。

>リズムキーパーの方がその拍手を手拍子に持って行って2,3パートを盛り上げるのに活用(?)されたりしていますね。

そうか、その手があったか!

>あとラジオのトーク番組などでゲストが「好きな曲・コンドルは飛んでいく」というと、判で押したようにS&Gバージョンばかりがかかるのも面白いと言えば面白いところ。

まあ、それがもっとも知名度のある音源でしょうから、仕方のないところではあります。最近では、押尾コータローなども知名度はあるかな。

>個人的には、アルベルト城間のこの演奏(花祭りとのメドレー)が結構好きですけどね。

あ、これいいですよね。昔、この人がギター1本でコンドル~花祭りを弾き語りしたのを聞いたことがあります。さすがに、歌はすごく上手かった。 (2014.05.09 06:43:54)

Re:続・「コンドルは飛んでいく」考(05/07)  
はさみ さん
はさみと申します。昨日は雨の降る中、村祭りにお出で頂きありがとうございました。そのお礼にこちらに伺ったところ、コンドルについての考察を発見。大変興味深く拝読させて頂きました。また、紹介されている水口さんのコラムも見てきました。時期を逸しているので読んで頂けるかどうか分かりませんが、以下、わたしの考えるところを少々記させて頂きます。

まず、60年代初頭のペルー盤のアンデス音楽の代表的な LP、例えば Alejandro Vivanco 他アヤクーチョの音楽家が参加した "Machu-Picchu"(SONORADIO SE8031)、クスコの著名な楽団、Conjunto Sol del Peru の "Musica de los Andes Peruanos Vol.2"(同 SE9017)に収録されている El Condor Pasa はどちらも三部構成となっています。いずれも LP 自体に発売年の記載がありませんが、前者については Vivanco が1961年の録音と述べています("Alejandro Vivanco - Vida y Obra", Jose Carlos Vilcapoma, Nuevo Mundo Ediciones, 1999)。また、後者についてははっきりした情報が見つからないのですが、Vol.1(同 SE9016)の録音が1962年8月ということらしいので、それに続く時期の録音と推察されます。従って、ペルー国内では、この頃には既にケーナを用いた三部構成での演奏がアンデス音楽のレパートリーとして確立されていたと考えて良いかと思います。

以上のような状況を考えると、インカスの録音が1963年ということであれば、「彼ら自身が、第2部のメロディーを改変して第1部を創作した」とする積極的な根拠は無いように思われます。そもそもインカスがこの曲をどのようにして知ったのか分かりませんが、彼らは、三部構成の演奏を参考にしたが単純に第二部を省略した、または、既に第二部を省略した演奏が他にありそれを模倣した、と考える方が自然ではないでしょうか。

結局、1913年から60年代初頭に至る期間の演奏内容を知らない限り、このサルスエラ楽曲のアンデス音楽としての受容とアレンジの変遷がどのように進んだのかを正しく理解することはできないように思います。

長文、失礼致しました。では。 (2014.10.25 00:09:01)

Re[1]:続・「コンドルは飛んでいく」考(05/07)  
inti-sol  さん
はさみさん

>はさみと申します。昨日は雨の降る中、村祭りにお出で頂きありがとうございました。

どうも、お久しぶりです。素晴らしい演奏をありがとうございます。

>まず、60年代初頭のペルー盤のアンデス音楽の代表的な LP、例えば Alejandro Vivanco 他アヤクーチョの音楽家が参加した "Machu-Picchu"(SONORADIO SE8031)、クスコの著名な楽団、Conjunto Sol del Peru の "Musica de los Andes Peruanos Vol.2"(同 SE9017)に収録されている El Condor Pasa はどちらも三部構成となっています。いずれも LP 自体に発売年の記載がありませんが、前者については Vivanco が1961年の録音と述べています

なるほど、だとするとインカスのコンドルの録音よりは前ですね。とすると、やはりインカス以前から改変されたメロディーは存在した、ということなんですね。

いずれにしても、「コンドルは飛んでいく」という世界的名曲の、特に有名な部分が、実はオリジナルではなかった、というのは驚きの事実です。

ところで、また演奏を見させていただく機会を、楽しみに待っていますよ! (2014.10.25 09:28:21)

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