ハリハリ資料室・第一分室

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2012年12月07日
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カテゴリ: Dumb Ways to Die
さて,今さら説明は不要だろうけれど,Dumb Ways to Die とは,メルボルンの鉄道会社・メトロ社の安全啓発ソングである。先日,画像付きで YouTube に流されるや,世界中で一挙に大ブレイクした。
http://www.youtube.com/watch?v=IJNR2EpS0jw

以下,原詞と拙訳。

Dumb Ways to Die
おバカな死に方

Set fire to your hair
火をつけちゃえ,自分の髪に
Poke a stick at a grizzly bear
つっついちゃえ,ハイイログマ
Eat medicine that's out of date
ボリボリ食べちゃえ,古くなった薬
Use your private parts as piranha bait
大事なあそこでおびき寄せてみよう,ピラニア
Dumb ways to die, so many dumb ways to die ※
いろいろあるよ,おバカな死に方
dumb ways to di-i-i-ie, so many dumb ways to die ※
いろいろあるよ,おバカな死に方

Get your toast out with a fork
引っ張り出そう,トーストをフォークで
Do your own electrical work
自分でやっちゃえ,電気工事
Teach yourself how to fly
適当に飛ばしてみよう,飛行機
Eat a two week old unrefrigerated pie
食べちゃえ,放置2週間のパイ
(繰り返し ※×2)

Invite a psycho-killer inside
うちにご招待しちゃえ,殺人狂
Scratch a drug dealer's brand new ride
傷をつけちゃえ,ヤクの売人の車
Take your helmet off in outer space
宇宙で脱いじゃえ,ヘルメット
Use your clothes dryer as a hiding place
隠れんぼしてみよう,乾燥機で
(繰り返し ※×2)

Keep a rattlesnake as pet
ガラガラヘビはペットにしちゃえ
Sell both your kidneys on the internet
腎臓は2つともネットで売っちゃえ
Eat a tube of superglue
接着剤は1本丸々飲んじゃえ
“I wonder what this red button do?”
「この赤いボタン押したら,どうなんのかなァ?」
(繰り返し ※×2)

Dress up like a moose during hunting season
狩猟シーズンには,ヘラジカの扮装しちゃえ
Disturb a nest of wasps for no good reason
スズメバチの巣には,訳もなく手を出してみよう
Stand on the edge of a train station platform
駅ではホームの端っこに立っちゃえ
Drive around the boom gates at a level crossing
踏切では遮断機をよけて車で強行しちゃえ
Run across the tracks between the platforms
駆け抜けちゃえ,ホームの間の線路
They may not rhyme but they’re quite possibly
このあたり,韻は踏んでないかもだけど,たぶんきっと
Dumbest ways to die, Dumbest ways to die
おバカな死に方一等賞,おバカな死に方一等賞
Dumbest ways to di-i-i-ie
おバカな死に方一等賞
So many dumb
ほんとにいろんな,
So many dumb ways to die
ほんとにいろんな,おバカな死に方

"Be safe around trains. A message from Metro."
「線路の近くでは気をつけよう メトロ社より」

twitter では,Happy Tree Friends,いわゆるハピツリに言及している人が多いようだけど,グロシーンを単純な絵柄で何とか見られるものにする,という手法は,South Park の Kenny 殺害ネタも思い出させる。
また,Dumbest Ways to Die という発想そのものは,ほぼ間違いなく,Darwin Award (ダーウィン賞:年間で最もおバカな死に方をした人たちに与えられる賞,映画化もされている)が下敷きだろうと思う。

直接の影響関係はなさそうだが,ほかに僕が連想したのは,同様に脚韻を踏んでいるエドワード・ゴーリーの『ギャシュリークラムのちびっ子たち』(子どもたちがアルファベット順に1人ずつ死んで/殺されていく),ポール・サイモンの“Fifty Ways to Leave Your Lover”のサビ(テンポのよい命令文の羅列),そして,ティム・バートン「ビートルジュース」(あの世の役所で,死者たちが自分が死んだときのままの姿で,順番待ちをしたり勤務したりしている)あたり。『ギャシュリークラム』は,英語版 Wikipedia の該当ページで引用された紹介記事でも(ダーウィン賞とともに)しっかりふれられていた。

で,実を言うと,(すでにほぼ回復しているが)一目見たときから,僕はこの Dumb Ways to Die がツボでツボで,フリータイムは可能な限り眺め続け,そうでなくてもずっと頭の中で流れているという,かなりヤバい状態だったのだ。
実際,「不思議な中毒性」がある,と紹介している記事もあり,YouTube に寄せられるコメントを見ても,そういう人は少なくないらしい。YouTube には,DWTD がひたすら繰り返される1時間バージョンまでアップされている。
僕は基本的にはダーク・コメディのファンなのだけれど,かといって,ハピツリやサウスパークが特段好きなわけではない。それがなぜこの歌と動画にだけここまで中毒してしまったのか,つらつら考えてみて,2つ,思いついたことがあった。

一つは,我々には,実際の死を体験することはなかなかできないにしても(当たり前だ),いわゆるヒヤリ・ハットだとか,あるいは「死ぬかと思った」体験だとか,そこまで大げさではないにしても,仕事なり対人関係なりで,「しまった」「うわ,最悪」「ああもう,時間を巻き戻したい!」と思うような失敗やら災難やらは,しょっちゅう体験しているわけで(僕だけ?),そういった体験や記憶に対する一種の「防衛反応」として,仮想的な「死の瞬間」を,いわば“安全化された形で”,つい繰り返し眺めてみたくなってしまうのではないかということ。

もう一つは,これはズバリ,普段は僕らが心の底に押し隠している「死」乃至「死者たち」に対する,包括的な「喪 mourning」乃至は「悼み」のプロセスの一環なのではないかということだ。
おバカな原因によるものではなくとも,我々はこれまでの人生の中で,何人もの知人や近親者を亡くしてきている。高2の夏休み,1か月の海外ホームステイから帰った僕は,祖母が日舞のお稽古中に心筋梗塞で他界したことを聞かされた。高校の部活の2コ上の先輩Aさんは,卒業後数年で首を吊ったが,動機までは伝わってこなかった。父が死んだからすぐに帰郷するように,という実家からの連絡を聞いたのは,ある年の夏の,花火大会の夜のことだ。先日,大学の同級生の名前を何の気なしにぐぐったら,目に飛び込んできたのは,彼を「しのぶ会」(1年以上前の)の告知だった。
知人や近親者の死の知らせは,多かれ少なかれ,何らかの傷を残す。僕のように,小さいころにはじめて「人は皆,一人の例外もなく,いつかは死んでいなくなる。自分もそうなのだ」ということに気づいたときのショックをうまく処理できず,それを引きずったままおっさんになってしまった人間にとっては,なおさらである。
予期も希望もせぬ死に遭遇したキャラクターたちが,諧謔と切なさ,楽しさと冷淡が入り混じったような柔らかいメロディーに乗って,その苦痛も驚きも後悔も忘れ去ったかのように,すべて吹っ切れたように,心底楽しそうに無邪気に歌って踊る光景は,だから,ある種の「救い」であり,「癒し」なのだろう。
この歌と動画の本来のメッセージ(Be safe around trains.)とはもはや何の関係もなく,天国のイメージのような効果,厳密に言うと,天国や極楽のイメージがおそらくそれを癒すことを目的として創出されたその同じ「傷」を癒す効果が,この画像には確かにあったのだろう--少なくとも,僕にとっては。もちろん,それによって(他人なり自分なりの)死が,いささかなりとも魅力的なものになる訳ではないけれど,多少飲み込みやすいものにはなったんじゃないかと思う(最後に,轢断3兄弟の3人目が,ぽろりと“半身”だけ倒れるところで,死はやはり死なのだ,ということをぞくりと悟らせて終わらせるあたりは,もう出来すぎと言うほかはないのだけれど)。

そう考えると,この,色とりどりのジェリー・ビーンズやコロッケのような dumb people の姿は,もしかしたら,人の「魂」の形なのかもしれない,と思う。





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最終更新日  2012年12月25日 21時44分27秒
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