INVICIBLE NIGHT

INVICIBLE NIGHT

よだん。


私は留年高校生であるが、今もなお学校には行っていない。今もこうして横になっている。ボイコットしてきたわけである。悪気などない。何せ自分の人生だ。好きに生きるべき、というのが信条である。となると面倒ごとが嫌いな私は自然と何もしなくなる。人間失格とはこのことか、ふむ。何故、私はこうなったのであろうかと考えを巡らせる。思考開始から数秒で答えは出た。なに、簡単なことだ。
「現代のゲーム、アニメ文化が面白すぎるのが悪い」
無論そんなことはない。それらも適度に取り入れれば日常はそれなりに充実したものとなろう。だが私のようにそればかりにだらけてしまうとこうなるのである。
「しかし何故だ。あの男は何故私と同じ道を歩んできたというのにこうならない」
無論こじつけである。彼は適度に娯楽を取り入れている。私と同じというのは私の我が侭だ。認めたくはないのでこう語るのだ。
彼は大学に通いながら働いてもいるし、勉強も出来る。運動も申し分ない。私とは正反対の人物である。趣味は読書である。以前バスケットボールに誘ったが彼は読書に専念したいと断ったほどである。勿論私は強引に連れて行ったが。
私が恋人についての話をすると死刑宣告をする悪癖があるのが困るところだ。のろけ話ならいざ知れず、ただそちらの方に話を振っただけで
「死んでしまえ」
というのである。私は悪くないといつも思うのだがどうだろう。
彼との付き合いは長い。とある日記形式のHPも一緒に書いていたぐらいだ。なんだから祝福してほしいのだが難しい。

先日彼と会って食事をすることにした。彼の予定がどうかは知らない。ただ昼食を一人で食べるのが億劫だったので一緒に食べることにしたのだ。だが彼は寝坊した。こちらは腹ペコで小一時間待った。すると彼から電話があり
「おはよう。マジで行くの?」
「行くのだ。今すぐに」
「じゃあ三時」
「二時四十分」
「…じゃあアレ。ほらマックとかであるじゃん、この時間までに作ります的な。目標タイム」
「そんなノリはいらない」
「…マジで行くの?」
「だって何も食べず待っちゃったんだもん」
それらのやりとりに十分かかったのだ。ようやく中華レストランに着いた時には三時ちょっと前であった。
私はキムチチャーハンと麻婆豆腐、彼はラーメンを頼んだ。食べながら他愛もない話をする。
「ゴクウが助けにきてくれて、その後女の子に魔法を教えてもらった、夢の中で」
やはりコヤツも同類であったと再認識する。
そして我々はマーボーラーメンなどを作りながら昼食を終えたのであった。

食後、何故かドラッグストアに行くこととなった。
「ところで、ワックスが欲しい」
少々驚いてしまった。彼はあまり髪型を気にしないタイプだったからだ。目覚めたのだろうか。おしゃれというものに。
「寝癖直しに」
さすがである。

ワックスの並んだ棚の前にはお試しコーナーがあった。掌ぐらいの鏡もついている。ここで付けるのか、付けるなら写真撮ってやる。そんなやりとりを中年の男性は邪魔そうに見ていた――――。





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