番組構成師 [ izumatsu ] の部屋

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系列超えた番組流通網

◎地方局は、系列を超えた番組流通網を。

今年(2003年)はテレビの地上波デジタル放送元年。
経費負担に苦しむローカル局は制作費を削減している。
生き残るためには優れた番組の制作が不可欠だが、それもままならないのが現状だ。

番組を充実させるためには、系列を超えたローカル局の「番組流通ネットワーク」を作る必要がある。
ローカル局は優れた番組を数多く制作してきた。
だが、地元で放送された後は局のライブラリーにしまい込まれ、
他県の視聴者が目にすることはほとんどない。

例えば、放送界を代表する日本民間放送連盟賞。
そのテレビ番組部門のうち、報道、教養、エンターテインメントの3部門は、
全国を7地区に分け、各地区1本の優秀作品から部門別に最優秀作品を選ぶ。
しかし、これらの作品が全国ネットで放送されることはない。

実際、今年度(2003年度)の優秀作品21本のうち、私が放送を見ることができたのは、
九州地区代表となった地元福岡の局制作の2作品だけだった。

『炭坑美人』(教養部門最優秀賞)は、炭坑で石炭掘りに従事した女性にスポットをあてた作品。
過酷な労働を明るく笑顔で語る老女たちの力強さに胸をうたれた。

『笑ってチョゴリ!』(エンターテインメント部門最優秀賞)は、日本の笑いが韓国で通じるか、
若手芸人たちが挑戦する。
カタコトのハングルで披露される漫才やコントが韓国の若者たちに受け入れられていく様子に、
日韓関係の新時代を感じた。

『カニが消える』『漂流カゾク』『盲目の名馬』・・他の優秀作品にも魅力的なタイトルが並ぶ。
こうした優れた番組を他県の人々が見ることができないのは、いかにも惜しい。

番組流通ネットワークが実現すればより広く視聴者に見てもらえるだけでなく、
放送内容の充実にも一役買うことができる。

もちろん、流通させるのは賞を受けた番組に限らない。
先日、沖縄の局の情報番組を見る機会があった。
沖縄ソバの特集で「沖縄の島にみる麺とスープの違いは?」などを掘り下げて、興味深く見せてくれた。
こうした、地元に根ざした情報は、住んでいる場所に関係なく視聴者に楽しく受け入れられるに違いない。

今やローカルでも番組の大半はグルメと旅。
「大評判のラーメン屋紹介」といった番組は私も好きでよく見る。
だが、同じ店が何度も登場するような状況の陰で、
上にあげたような番組に接する機会が激減していることを憂慮している。

視聴者のニーズに応えることが局の使命ならば、
こうした番組も選択肢のひとつとして提供し続けなければなるまい。
番組流通ネットワークはその一助ともなる。

スポンサー探し、番組告知、視聴率獲得など、難しい問題は多々あるが、
視聴者のためにも実現されるべきテーマだと考えている。(2003年1月)




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