番組構成師 [ izumatsu ] の部屋

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「子どもに見せたい番組」とは


少し前(6月16日)に、日本PTA全国協議会が
「子どもに見せたくない番組、見せたい番組」を発表した。
(数字と一覧表はasahi.comから引用)

昨年11~12月に全国から会員を抽出して調査を実施。
調査に応じた5011人のうち、「見せたくない番組がある」と答えた父母1296人に
番組名をふたつまで記入するよう求めてできあがったのが、
この「子どもに見せたくない番組」ベスト10。


◆子どもに見せたくない番組(「※」は番組名の特定なし)

(1)ロンドンハーツ(テレビ朝日系)
(2)水10!(フジテレビ系)
(3)クレヨンしんちゃん(テレビ朝日系)
(4)志村けんのバカ殿様(フジテレビ系)
(5)笑う犬の太陽(フジテレビ系)
(6)※サスペンス番組
(7)めちゃ×2イケてるッ!(フジテレビ系)
(8)※バラエティー番組
(9)うたばん(TBS系)
(10)学校へ行こう!(TBS系)
(10)ボボボーボ・ボーボボ(テレビ朝日系)
(10)※殺人シーンのあるドラマ


このうち、ぼくが見たことのあるのは『クレヨンしんちゃん』だけだ。
他の番組はどのような内容なのか知らないが、
父母がこれらの番組を子どもたちに見せたくないとする理由は、

1.「ばかばかしい」--------62%

2.「常識やモラルを極端に逸脱」--41%

3.「言葉が乱暴」---------39%  (複数回答)


どの理由も主観的なものだから、それはそれでいいのだけれど、
「ばかばかしい」番組の効用というのがあることも忘れていけないと思う。
「ばかばかしい」ものばかり見ている子どもが、将来、ばかばかしい人間になるのならば、
テレビ世代の親たちは、みんな「ばかばかしい」オトナであるはずだ。

幼稚園のとき、自宅にテレビがやってきたぼくなぞ、完璧なテレビっ子。
「ばかばかしい」番組の代表だった『8時だヨ! 全員集合』を始め、
「ばかばかしく、“無”常識で、言葉遣いのめちゃくちゃな」番組ばかりを見て育った。

きっと今、「ばかばかしい」オトナの最前列に並ぶだろう。
親にならなくてよかったと思うばかりだ。







父母が選んだ「子どもに見せたい番組」ベスト10は、こちら。


◆子どもに見せたい番組 (「※」は番組名の特定なし)

(1)プロジェクトX(NHK)
(2)どうぶつ奇想天外!(TBS系)
(2)その時歴史が動いた(NHK)
(4)週刊こどもニュース(NHK)
(5)※ニュース番組
(6)伊東家の食卓(日本テレビ系)
(7)地球!ふしぎ大自然(NHK)
(8)世界ふしぎ発見!(TBS系)
(9)世界ウルルン滞在記(TBS系)
(10)トリビアの泉(フジテレビ系)


『プロジェクトX』は、2位『どうぶつ奇想天外』の3倍の票を集め、
ダントツの首位。
見せたい理由のトップは、「将来の夢や目標とする人物像を育める」。

ホント?

同番組は、ぼくもたまに見る。
オープニング&エンディングを飾る中島みゆきの圧倒的な歌といい、
田口トモロヲの独特なナレーションといい、とてもよくできていると思う。
たまにはハズレのときもあるが、それは仕方ないだろう。

あのボリュームの番組を毎週やれる。
やはり、スポンサーが国と国民であるNHKにしかできないことだ。

しかし、『プロジェクトX』を見せることで子どもたちの心に
「将来の夢や目標とする人物像を育める」というのはホントかなぁ??
お父さん、お母さんたちは、ホントにそういう効果を期待しているのだろうか?
子どもがいないので実感としてはわからないのだけれど。

困難を乗り切るサクセスストーリー、ドラマチックな構成・・・・・、
あの作り方は、家族をかかえ、責任を背負い込んで社会の荒波を乗り切ろうとしている
おじさんをターゲットにしている。

この番組が見る側に提示しているのは“将来の夢”ではなく、
疲れ切ったおじさんへたちの“癒しとエール”。
だからこそ、書籍となり、ビデオとなっても、売れ続ける。

疲れたおじさん(おばさんでも同じ)たちが感動するからといって、
大人とは違う感性の世界を生きている子どもたちの心に響くとは思えない。
子どもたちには子どもたち自身が作り出す世界があり、子どもたちの価値観がある。
自分自身を思ってもそうだったし、子どもはそうやって自分を育んでいくはずだ。

もし、小学生、中学生、高校生のわが子がいたとして、アニメよりも『プロジェクトX』始め、
ベスト10にあげられた番組ばかりを見ているとしたら、ぼくはすごく心配するだろう。
すべての番組に“解答”が用意されている、そんな気がするから。


「見せたい番組」はもちろん、
「見せたくない番組」ベスト10の制作側も、やはり喜んでいるんだろう。
スポンサーが喜ぶ限りは。


(2004.06.23)



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