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番組構成師 [ izumatsu ] の部屋
「青少年に見てもらいたい番組」
先週の金曜日(6月18日)全国の民間放送が加盟する日本民間放送連盟(民放連)が、『青少年に見てもらいたい番組』なるものを発表した。
きょう、その一覧を初めて見た。驚いた。
北から南まで、衛星放送も含めて、民間放送局全局の「見てもらいたい番組」が局別にずらりと並んでいる。
「日本民間放送連盟『青少年に見てもらいたい番組』一覧 (2004年春)」
この「見てもらいたい番組」は各放送局が独自に選んだもので、選定委員のような人がいるわけではないらしい。
ぼくは今日まで知らなかったのだけど、民放連は、
『青少年の知識や理解力を高め、情操を豊かにする番組を各放送事業者は少なくとも週3時間放送する』
という取り組みをしているという。
この取り組みに基づいて各放送局が指定したのが、『青少年に見てもらいたい番組』というわけだ。
しかし・・・・・・「少なくとも週3時間放送する」とな?
1週7日間、168時間ある中の、「少なくとも3時間」。あまりに短い気もするのだが、この基準、なにを根拠にはじき出したのだろう?
「青少年の知識や理解力を高め、情操を豊かにする番組」というのも、わかるようで、よくわからない。“見てタメになると思われる”くらいの表現にしておけばいいのに、「知識」とか「理解力」とか「情操」とか、定義が難解な言葉に頼るから、深い意味があるようで、実はなんだかさっぱり把握できない、あいまいな基準となってしまう。
しかし、この、各民放が自選した、「青少年の知識や理解力を高め、情操を豊かにする番組」を北から南へ順に見ていくと、その局の番組に対する姿勢が見えるようで、結構興味深い。
各局が選定した「見てもらいたい」番組の数には、大きなばらつきがある。
例えば、TBC東北放送が「青少年に見てもらいたい」としてあげたのは、わずかに4番組。上記の「少なくとも週3時間」というノルマ達成のため、ムリヤリ選んだ感じ。
逆にYBS山梨放送は、17番組をあげている。キー局が「見てもらいたい」番組に選定した番組は、それを放送するローカル局も選んでいる。だから、複数のキー局の番組を流すYBSのような局は、「見てもらいたい」番組が多くなるのも当然だ。
キー局の意向は、ローカル局にも無条件に反映されるということか。
キー局の番組は、各系列局では流されるが、独立U局はその恩恵を受けない。しかし、例えばTVKテレビ神奈川などは、自主選定だけで10番組をあげている。TVKのサービスエリアでは、キー局の番組も見ることができる。競合は厳しい。その中で、「見てもらいたい」番組を自社だけで10番組もあげているのは、自社制作に力を入れているという自信と主張だろうか。
キー局5局が自ら選定した『青少年に見てもらいたい番組』は、次の通り。
◆東京放送(TBS)
『関口宏の東京フレンドパークII』
『探検!ホムンクルス~脳と体のミステリー~』
『世界・ふしぎ発見!』
『ZONE』
『どうぶつ奇想天外!』
◆日本テレビ
『伊東家の食卓』
『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』
『冒険!CHEERS!!』
『所さんの目がテン!』
『ザ!鉄腕!DASH!!』
◆テレビ朝日
『ドラえもん』
『人生の楽園』
『ポカポカ地球家族』
『題名のない音楽会21』
『いまどき!ごはん』
『グレートマザー物語』
『大改造!!劇的ビフォーアフター』
『素敵な宇宙船地球号』
◆フジテレビジョン
『ポンキッキーズ21』
『脳内エステ IQサプリ』
『晴れたらイイねッ!』
『ちびまる子ちゃん』
『サザエさん』
『発掘!あるある大事典II』
◆テレビ東京
『ガイアの夜明け』
『ペット大集合!ポチたま』
『所さん&おすぎの偉大なるトホホ人物伝』
『美の巨人たち』
『なぜ?謎!ごはん』
アニメが3本、ドラマはゼロ。クイズものはじめ「見てためになる」番組か、親子で見ても安心な、よくも悪くも、トゲなし毒なしの番組が並ぶ。
これら「見てもらいたい」番組の中で、ぼくがよく見ているのは、テレビ東京の『ペット大集合!ポチたま』、フジテレビの『ちびまる子ちゃん』ぐらいだ。
ま、ぼくは「青少年」ではないけれど。この「青少年」というカテゴリー、何歳から何歳くらいまでを想定しているのだろう?
「少年」と言えば、小学校の高学年から高校生ぐらいまで。「青年」は、高校生から25歳くらいまでという感じがする。
少年法など、法律の面から言えばまた違うのだろうが、各局が「見てもらいたい」番組にあげた番組を見ると、“青少年”というより、“子ども”を対象にしているように思える。ずいぶん幼い感じがする。
キー局が自分たちで選定した『青少年に見てもらいたい番組』には、PTAのお父さん、お母さん方があげた「子どもに見せたくない番組」はひとつも入っていない。それだけ、制作者側も自覚しているということか。
逆に、お父さん、お母さんたちが「子どもに見せたい番組」にあげた『世界ウルルン滞在記』(TBS) と『トリビアの泉』(フジテレビ)は、自社選定の中にあがってはいない。父母と局との感覚が違うということなのだろうか?
なんにしろ、「ためになりそうな」番組を父母は好むし、局が「青少年の知識や理解力を高め、情操を豊かにする」ために「見てもらいたい」とする番組も、父母の意向にそうものということ。
めでたしめでたし、か?
しかし、民放全局の「見てもらいたい」番組に、ドキュメンタリー系の番組がほとんどないのは寂しい限りだ。
ぼくの住む九州には、九州の系列局を結ぶブロックネットのドキュメンタリー系番組がいくつかある。例えば、『ムーブ2004』。
キー局の系列で言えばTBS系列にあたる九州・山口・沖縄の8局が持ち回りで作る30分のドキュメンタリー番組。
これを「見てもらいたい」番組にあげているのは、RKB毎日放送だけだ。
う~ん、足並みが乱れとるなぁ。あとの7局はどうしたの?
フジ系列にあたる九州・沖縄各局が同様に持ち回りで制作している同様のドキュメンタリー『ヒューマン九州21』は、5局があげているというのに。
スポンサーもつかず、少ない予算でがんばっている。なのに、局として「見てもらいたい」と思ってはいないのだろうか?
寂しい。
悲しい。
情けない。
これも、全国ネットで放送しているドキュメンタリー系の番組の全滅ぶりを見れば納得もいく。
全国24局でオンエアしている『テレメンタリー2004』を「見てもらいたい」番組にあげているのは、ただ1局。
33局でやっている『生きる×2』もわずかに2局。
同じく33局で流れる『いきいき! 夢キラリ』は13局があげているが、これは4月に始まったばかりだ。
30局をネットする『NNNドキュメント04』にいたっては、「見てもらいたい」という局はゼロである。
こういう全国ネットのドキュメンタリー系番組を作っているローカル局は、“この番組は自社制作”だ、という意識がないのだろう。
空しい。
何よりしかし、ネットの中心であるキー局が、これらの番組を「見てもらいたい」番組に選んでないのがそもそも情けない。
しかし、民放の総元締めである日本民間放送連盟が、自ら音頭をとって、『青少年に見てもらいたい番組』を発表する。それも、『青少年の知識や理解力を高め、情操を豊かにする番組』として。
どうも、なんとなくすっきりしない。
あまたある他の番組は、どんな思いで作っているのか?
そんな疑問が湧くのだが・・・・・。
(2004.06.24)
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