島流れ者 - 悪意なき本音

島流れ者 - 悪意なき本音

2004.07.03
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この話は‘他人と暮らす-ルームメイト事情’の続き物となっているのでお暇な方(失礼)は左のコーナーをどうぞ。


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ああ、またしてもルームメイト探し。この家に来てから三度目。初めての日本人のルームメイトのSちゃんは今思うと本当に理想の同居人だったなあ。おとなしいし、素直だし、なんていったって忙しいから留守がちだったし。彼女は2003年の2月に入って12月に出て行った。理由はロスアンジェルスにある四年制大学に編入するためだった。

次に入ったルームメイトの21歳のアメリカンガールのBは、Sちゃんと年も近く、近所の短大に通う学生で、ウェイトレスのバイトをしているって所は一緒だったけど、Sちゃんとは正反対の、まさに‘アメリカ人の若い子’だった。とっても社交的で、常に誰かと一緒につるんでいて、家でじっとしていることなんて滅多になかった。仕事とバイトで忙しいというのもあるけれど、その二つがない休みの日でも、さっさと出掛けていっては遅くに帰ってくるので私たちにとってはうってつけのルームメイトだった。

しかし、彼女は入居のなんと二日目に早速男を連れ込んでいたので、彼氏ならまだしも、彼女曰くその‘友達’がその夜に酔っ払って家に帰れないとせがまれて仕方なく留めてしまったという事だった。Sちゃんは彼がいなかったし、女友達でも滅多に呼ぶことはなく、自分のほうから友達に会いに行くことが多かった。そんなまじめっこのSちゃんに慣れきっていた私たちは、泊り客については入居直後に話し合ったハウス・ルールで触れることを忘れていたのだ。

ちょっと言いづらかったが、ここはアメリカンギャル、ちょっと甘い顔をしたらその‘ゲスト’が仕舞いには、‘同居人’と化すことは目に見えていたので、初めが肝心とばかりはっきりと、“別の街から訪ねてきたりする友達を泊めることは構わないけど、それ以外でこういった形での泊り客はちょっと遠慮してほしんだけど”と、しっかり釘をさしておいた。

それ以降彼女は友達を呼んでもあまり長居させずにすぐに出掛けていくようになったので、これに関しては丸く収まったんだが、今度は、あれこれ彼女のだらしなさや無神経さが目に付くようになってしまった。例えば家賃を期限日から二日経っても払わなくてこちらが催促する羽目になったのが二回も続いたり、ジャックと私の電話はプライベートにしたいので、電話は自分の携帯電話を使ってと頼んであったのにも関わらず、私が帰ってきたときに使っていたのを幾度か目撃したし、また、極めつけは、勝手に私たちのタオルを私物化し、分からないように自分の部屋に隠していたり...そんなことが幾つか続いたので、私はジャックに愚痴を言い始めた。

ところがアメリカ人でしかも男である彼は、私のこういったことを、“そんなの俺が一緒に住んだルームメイト達からしたら可愛いもんだぜ、あんまり気にするな。”と真剣に取り合ってくれない。嫌なことを受け入れて黙っている性格ではない私なので、彼女がいないときに小さなメモに書いて彼女のドアにはることにした。しかし、彼女が帰ってくる前にメモを発見したジャックはことごとく捥ぎ取っては、“こういうやり方って最悪だよ!文句があるときは面と向かって言わないと余計に相手の癇に障るんだぞ!“と言うのだった。私としては、留守がちでなかなか顔をあわせることのない彼女なので、こうやったほうが手っ取り早いし、日本人気質か(?)面と向かって言うのはちょっと気が引けると思ったからこういった方法をとったと反論すると、私の英語はストレートすぎてつっけんどんで、感じが悪いと彼は言う。  ああ、そうですか...  こればかりは第二ヶ国語として英語を使う者としては素直に受け入れるしかないということで、それからは、なるべく彼女に直接、角が立たないようにヤンワリと、またジャックのほうからも言ってもらうようにしていた。

そもそも素直な性格で、対立することを嫌う彼女なので、こういった私たち(私だけ?)の申し出をすんなり聞き入れてくれるのだった。勿論こういったことがあったあとは、私達のほうも彼女が萎縮してしまわないように、顔を合わせるときは出来るだけフレンドリーにするよう心がけいた。例えば食事を余分に作っては彼女に“よかったらこれ食べてね”置き手紙を書いたり、滅多にいない彼女がいる週末の朝は一緒に朝食をとったりと、彼女をただのルームメイトではなく、多少なりとも家族のように扱って気を使っていた。

そうしているうちに彼女も打ち解けてきて、職場のこと、学校のこと、家族のことなど話すようになったので、なかなかうまく行っているなと思っていたのだが、実はそう思っていたのは私達だけだった。

入居三ヶ月目には行ったころから、もともと留守勝ちであった彼女がもっと家に寄り付かないようになっていった。自分のベッドで一晩、二晩寝る以外は近所に住む実家のところや、‘友達’と称するボーイフレンドのところで過ごし、日が明けると私達が仕事に出掛けた頃に家に帰ってきては、洗濯をしたり、趣味の絵を書いたりしているようだったが、仕事から帰ってきた私がガレージのドアを開けるのを聞くと、数分後には‘仕事に言ってくるから、じゃ、またね!’と、そそくさと逃げるようにして出掛けていくのだった。

そんな風にして出て行った彼女の後を見ると、まだ終わっていない洗濯物が洗濯機や乾燥機を置きっ放しになっているのがしばしばで、彼女の部屋はまるで豚小屋状態になっているのだった。その度に、まるで反抗期の家に寄り付かないティーンエイジャーをもった母親のように、嵐が去った後のようになった家の中をボーっと眺めている私だった。(子供を育てたことがない私だが、想像すれば、多分こんな感じだろうか?)

そんな状態が数週間も続いたので、ジャックと私は彼女がいつまでも、滅多に帰ってこない物置と化した部屋に$550も払っているのは馬鹿らしいから出て行くって言い出すのは時間の問題だといっているうちに、とうとうその日がやってきた。

妙に遠慮がちに切り出した彼女は、メキシコで一ヵ月半ほど語学留学を決めたので、切り詰める必要があるとして、ここを出て留学前のしばらくの間、妹のところでお世話になって、メキシコから帰ってきた後は、自分の部屋を探すという。これを聞いた私達は予想どうりであったので、彼女の素晴らしいチャレジと新たな生活を心から喜んだ。いちいち細かい事を言ってしまい、居心地悪くさせたのはこちらのほうなのに、言いづらそうにしていたのは、私達が彼女に気を使って色々して貰ったので、義理のようなものを感じていたらしい。

その後一ヶ月で彼女は出て行き、私達はルームメイト探し第三弾をスタートさせることになった。次回はもっとおおらかに細かい事気にせず思いつつ...

続く...






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最終更新日  2004.07.03 15:38:40
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