tomorrow

tomorrow

キャデラック



ガソリンスタンドの夏は過酷だった。

スタンドの近くに、輸入車を扱っている車屋さんがあり、順一のスタンドに、ワックス掛けやら、洗車の依頼を持ち込まれる常連さんだった。

順一は、未だ見たり乗ったりしたことの無い車ばかりだった。

大体が、ソアラやクラウンの何倍もする車ばかりだった。

「ああっ、どんなに僕が真面目に働いても、手に届かない車ばかりなのだなぁ。」

メルセデスにBMWにロールスロイスにポルシェにフェラーリにキャデラック。

ビリージョエルは、キャデラックに乗る奴を皮肉っていたっけ?アメリカじゃキャデラックに乗る事が成功者の証しだってビリーも歌っていたっけ。

この間テレビで見た矢沢は、インタビューで言っていた。

「オレ、成り上がったら、キャデラックのリムジンとメルセデス買おうと思った訳よ!」

順一の頭には矢沢の声が鳴り響いていた。

「順一何ぼーとしているんだ!とっとと仕上げてしまえ!」

マネージャーに怒鳴られた。

キャデラックのリアシートはまるで応接間の様に豪華で、冷蔵庫に、シャンパン グラスがカウンターの上から吊るされていた。

運転席と後部座席の間には、ガラスの仕切りがありテレビと電話が備え付けれれていた。

テレビじゃこの国豊かだと騒いでいる。

でも僕の暮らしは何も変わらない。

上に上がるのか?下に下がるのか?このままの暮らしがいいとは思わなかった。

順一は何一つ答えなどみつから無い学生の、何者だかわからない、アルバイトの貧しい学生だったが、

ただ、この貧富の差だけは、この国は平等だと言っている奴等の言葉は信用できなかった。

「キャデラックに乗る事が夢ならば、俺はこの賭けから降りる。」

ビリージョエルの歌が、ラジオからいつまでも流れていた。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

人間の欲望は闇の様に深いと思う。。。。


© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: