tomorrow

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LAST GIG


順一は夢だけ追いかけていた。

生活と云う名の現実がすぐそこまでやって来ていた。

フリーターで生きて行く事がいかに大変な事かは19の頃に体験済みだった。

食べて行く為だったら、何でもやった。

ファミレスの皿洗いから、ちり紙交換から、塾の教材売り

ボーイから、ローディー、スタンドのアルバイト!!

だけれど、ケリを付けたかった!!

中途ハンパじゃ、ユミコの事を幸せにも出来ないんだ!!

今日のステージはレコード会社のコンテストだった。

緞帳が閉まり、ギターのヨネとキーボードのタクはセッティングを始めた!!ドラムのジローと、ベースのマサはスタンバイオーケーだ!!

ギターをワイヤレスに繋ぎ、僕はシュアーのマイクを確認してステージに向かった。

勝負は持ち歌2曲!!

係りの人が僕らに言う。

「いいですか!!失敗してもそのまま演奏を続けてください。途中で演奏を辞めない様に!!」

「keep on Rock..」   誰かが呟いた。

緞帳が上がり、真っ暗闇に放り出された。

ジローがドラムのカウントを取り始めた。ギターとハーモニカを握り締めステージへ向かった!!

一筋のスポットライトが矢の様に僕に向かってくる!!

逆光線で何も見えない!!

イントロで、ギターのヨネの声が被る!!ギターが正確な

リズムをキープする。

一人ぼっちのライブハウスも真夜中のスタジオも

今夜俺達が何者になれるのかなんてどうでも良かった!!

スライダースよりも、エレファントカシマシより、

いけているのは、俺達なんだ!!

喚声が聞こえた!!ステージの客の顔は見えないけれど、

演奏は完璧だった。

結果は残念ながら、勝ち残る事は出来なかった。

でも、満足だった。これ以上の物は順一にはムリだと

心の中で悟ったのだった。




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