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Happy Valley Blog
読書2015.8~10
日本嫌いのアメリカ人がたった7日間で日本を大好きになった理由
の
感想
旬、初の楽しみ、躾、稽古事の意義、商品・サービスを細分化する思いやり発想、つきぬ改良、相手に合わせる文化など、ないがしろにしがちなありふれた旧来の価値観が、日本の力の源泉だと、35年ハリウッドの世界にいた著者が教えてくれた。日本らしさを失わないようにしないと未来も危ういと考えさせられる。楽しい本であったが、最近多い日本自賛番組とは少し違い、忘れんときなさいとの警鐘のような気もした。
読了日:10月31日 著者:
マックス桐島
日本人ビジネスマン、アフリカで蚊帳を売る: なぜ、日本企業の防虫蚊帳がケニアでトップシェアをとれたのか?
の
感想
WHO、国連、TIME表彰、ダボス会議、現地生産、大型商談、ブッシュ見学など、出だしは派手なノンフィクションかと思ったが、すぐにストーリー仕立てのマーケティングのレクチャー本風になり、解説コラムまで登場し、アフリカでのスタートアップの理屈解説も頻繁になる。ノンフィクションとは違う、マーケティングの物語仕立ての事例紹介で、住友化学での伝統的大企業の限界克服活動の紹介でもあった。面白い素材もあるけれど、読むのに疲れる文章、構成だった。推敲したのと言いたくなる文脈もあり編集者の仕事って何だろう。
読了日:10月30日 著者:
浅枝敏行
ホンダジェット: 開発リーダーが語る30年の全軌跡
の
感想
全うな技術的野心を実現させた胸のすく物語だ。すばらしい。航空宇宙関係の国際的三賞を世界で初めて受賞した藤野道格、革新機に挑戦させ続けたホンダ。冒険心が心地よい。いよいよ、世界でデリバリーされ、新しいホンダのモビリティーが世界で羽ばたくらしい。創業者の意気が受け継がれ、日本で開発し、アメリカで造るホンダスタイルだ。著者の悲劇の発動機「誉」では中島飛行機の悲劇がやるせなかった。その技術者たちは、後に自動車で活躍し、その自動車会社が、航空機事業に参入する。歳月を経たすごい話だ。日本の進路を暗示するかのようだ。
読了日:10月26日 著者:
前間孝則
背中の勲章 (新潮文庫)
の
感想
岩手県最初の戦死者とされた人物の捕虜となった苦悩、陸海軍の兵の虜囚の屈折、特攻生き残りの生ける死に顔、米の捕虜の処遇、米市民の反応、敗戦による日本人の変節とすさんだ心が、丹念に描かれている。またも、事実で戦争の真実を突きつけられた思いがした。復員し帰郷の列車内で「若い男は疲れた老人に席を譲ろうともせず」「険しい目で落ち着きなし」「日本人と異なる人種にみえる」とあった。以来、70年、そのままなのか。
読了日:10月22日 著者:
吉村昭
神宮の奇跡 (講談社文庫)
の
感想
昭和33年が神々しく、清々しく、力の湧き出るような年であったとは、驚きだ。敗戦による命懸けの帰国、前進するのみの困窮生活、勉学とスポーツでの精神鍛錬、野球の試練と歓喜、陛下の誠実な青春、胸に迫った。語られた時代は強靭で健全で誇り高い人々に満ちていた。この熱情と忍耐力は、いまでも列島のそこかしこで燃やされていると思いたい。知られていないだけだと思いたい。
読了日:10月21日 著者:
門田隆将
月下美人 (文春文庫)
の
感想
取材相手との親交を重ねて、過去を封じた闇の安息を壊し、家庭に困惑を招いた小説家としての罪を勤め、過去と向き合って安寧に至る元逃亡兵の人生の変化に安堵する小説家の救われる思いが丁寧に描かれていた。月下美人の一夜の開化が、罪と贖罪と悟りの安寧を表すかのようで凄惨な生き様にも清廉な読後感となった。
読了日:10月20日 著者:
吉村昭
帰艦セズ (文春文庫)
の
感想
逃亡の主人公は実在の人物だった。帰艦セズの乗員のいきさつを逃亡の主人公が思いやり、小樽の山中から阿武隈の出港を見下ろす帰艦しなかった乗員の姿を想うシーンの切なさには胸がつまる。
読了日:10月20日 著者:
吉村昭
逃亡 (文春文庫)
の
感想
兵員の孤独、精神の暴力、文字通りの暴力、服従と不服従、規律と狡猾、脅迫と懐柔等の極限での人間の本性が救いを求める姿が描かれている。戦争の綺麗事の精神論の空々しさが一層際立つようだ。
読了日:10月19日 著者:
吉村昭
伊四〇〇型潜水艦 最後の航跡 下
の
感想
吉村昭の小説を思い出させられるばかりのノンフィクション物語だった。訳者のあとがきによればWSJで「細部までこだわり抜いた興味深い調査と巧みな語り」と、meticulouslyと評されたらしい。著者巻頭言「左右いずれの側から見比べても、本当のことはいつもそう簡単にはわからない」と。相手の事も考えられる著者がアメリカ人であることに少々驚いた。戦争の本質は、依然「藪の中」だが、勇気と忍耐と言うだけでは語りつくせない高潔な物語を心から理解するのは容易ではないとも著者は言う。
読了日:10月18日 著者:
ジョン・J.ゲヘーガン
アメリカ人禅僧、日本社会の構造に分け入る 13人との対話
の
感想
対談相手の発言は、実績に裏打ちされた説得力のある行動している者の見事な考えだった。信念と真理が感じられ、教条的な日本のメディア的身勝手話は一切なかった。確実に前進している人々だった。著者の日本らしさの損得をあぶりだそうとする試みは、本人の「日本はやっぱりへんな国」との評で停止かと。唯一13人目の話は何を表現したいのか難しかった。
読了日:10月15日 著者:
ミラー和空
一路(下) (中公文庫)
の
感想
気持ちの晴れる時代劇。自浄できる賢者に未来を託したいとの願いがこもっている気がした。真面目に本分を賢くつくせと、政治、行政、司法に対して言いたいのかもしれない。
読了日:10月13日 著者:
浅田次郎
一路(上) (中公文庫)
の
感想
泰平の世の中で、長い、都合による運用の積み重ねで、本分は忘れられ、しきたりが形骸化し、私利と保身に政治が支配され、経世済民がなされない堕落した社会は、糺せと言っているようでした。抗う人の意志は、体現する行いによって賛同は得られるというようです。面白い。
読了日:10月12日 著者:
浅田次郎
どんな仕事でも必ず成果が出せる トヨタの自分で考える力
の
感想
トヨタの人と仕事の考え方を物語仕立てで解説した、とっつきやすい気持ちの良い啓蒙書。このような読み手に配慮した本はこれから学ぶ人には恰好だと思う。また、勤めにすり減ってきた人にも立ち止まって見直す時の視点が整理できていると思う。楽しい紹介本でした。
読了日:10月10日 著者:
原マサヒコ
伊四〇〇型潜水艦 最後の航跡 上
の
感想
地道な資料調査・取材による内容で、巻末の出典の注記はそれを物語るような量。日米どちらにも肩入れしない流れで事績を構成してあり、好印象。残虐行為、無謀行為、英雄行為、愚劣行為等の背景、結末、疑問が整理されていて、惨劇に嘆息しきりだった。倉田耕一著「アメリカ本土を爆撃した男」の戦後の贖罪と和解の美談の記述はなかった。
読了日:10月7日 著者:
ジョン・J.ゲヘーガン
二十世紀と格闘した先人たち: 一九〇〇年 アジア・アメリカの興隆 (新潮文庫)
の
感想
20世紀の歴史を正しく理解ができた気になれた。「若き日本の肖像 1900年、欧州への旅」の姉妹本で、アジア太平洋地域での先人たちの思考の格闘の歴史、その明暗までよくわかった。孫文の「西洋の覇道を模倣し、東洋の王道を否定」との警告に得心。なぜ日本人は威張るのか、優位にたつと傲慢と増長に陥るのか、条理の側に立つ勇気はあるかと、歴史認識の底にあるものが問われている。
読了日:10月4日 著者:
寺島実郎
日本人の道具
の
感想
表紙は、肥柄杓だった。農耕、漁労、生活、祭、防火、灯りなど、生活にかかわる古い道具の写真。素朴な味わいがある。庶民の器用さを物語る品々。
読了日:10月3日 著者:
清永安雄
浅田次郎と歩く中山道 - 『一路』の舞台をたずねて (中公文庫)
の
感想
「一路」の舞台の旅行案内で、現地を歩いてみたくなる冊子。風情が残された背景がよくわかる。中山道は大事にしていきたい歴史街道のようだ。安藤優一郎の解説や、渡邊あゆみ、中村獅童との対談も面白い。
読了日:9月30日 著者:
浅田次郎
世界の辺境とハードボイルド室町時代
の
感想
評判どおり、面白い。著者曰く、「奇書」で「超時空比較文明論」だそうだ。辺境にも中世にも今ここにないものを求めているとしたら、健全な印と言う。とりとめのないような対談集に思えたが、読み終えると失われつつある日本人文明の本質を見せてもらった気になった。よく観察し、その立場になりきって思考されているのに驚いた。実に楽しかった。
読了日:9月30日 著者:
高野秀行,清水克行
希望の資本論 ― 私たちは資本主義の限界にどう向き合うか
の
感想
経済学としての資本論の正当性・論理性を思い出させてもらいました。池上さんもマル系専攻大学生だったのですね。佐藤さんは、社青同で珍しい高校生左翼で、アナキズムを探求したくてそれができる唯一の同志社神学部にいって、キリスト教神学にはまったとは驚きでした。肚のすわりが違うはずです。二人の危機感あふれる反・反知性主義に得心しました。「右肩下がりの教育の現状」の未来はとても怖い。
読了日:9月27日 著者:
池上彰,佐藤優
歴史とプロパガンダ
の
感想
著者の「「スイス諜報網」の日米終戦工作」の続きのようで興味深い。同書で藤村義郎中佐の美談は対日プロパガンダのひとつで粉飾と虚偽に満ちたものと論証されていた。本書では、対日プロパガンダが軍国主義と並ぶほどの思想統制、メディア支配、私信検閲であったことが論証され、おぞましい洗脳ぶり。NHKラジオ番組で米軍のブラック・プロパガンダ「真相はこうだ」放送に抗議が多く寄せられ、職員からもあの放送を聞くと悪寒を覚えるとの感想があったそうで少し救われた。後年のキッシンジャー・周・佐藤・田中の米中日の交渉も実に面白い。
読了日:9月25日 著者:
有馬哲夫
日本語の科学が世界を変える (筑摩選書)
の
感想
とても面白い。学究の先端の人々はしるよしもないが、地道で果敢に挑む姿と、成し遂げられた偉大な成果が、実は、日本語の科学としての成果であったものが多いと。この観察に未来が明るく感じられました。論文数を競ったり、アイデンティティーのないグローバル化など、百害あって一利なしの現状には未来が曇ります。でもネイチャーも面白い論文が減り、殻を破るようなものは日本人のものとの評に希望湧きます。「日本語の科学はすてたもんではない」とよくわかりました。
読了日:9月23日 著者:
松尾義之
海軍乙事件 (文春文庫)
の
感想
連合艦隊司令長官を二代続けて航空機移動中に失う軍事行動に驚いた。リスク管理と異常事態対応要領は戦略の根底にあるものと今では当たり前に思うが、戦意高揚、俘虜忌避自決の中で、徹底した軍事統制が貫徹していたのかと思っていたが、情報戦においては士気の低下防止の甘い論拠で大失策を繰り返していたようだ。参謀が作戦計画書を破棄せず、紛失しても都合よく解釈運用され、本人は事実沈静化のために栄転し、作戦も暗号も変えず、米軍に蹂躙されていくとは、悲しすぎる。日本人の変わらぬ本質を見せつけられた。見事な作品だ。
読了日:9月21日 著者:
吉村昭
大本営が震えた日 (新潮文庫)
の
感想
奇襲作戦の成功を期して懸命に企図秘匿に命を張った人々が描かれ、勝利を賭した姿がとても悲しい。あの惨劇の始まりが懸命な冒険的でも万策を尽くした作戦であったことが、余計に避けきれなかったものなのかとやるせなくなる。
読了日:9月19日 著者:
吉村昭
気仙沼ニッティング物語:いいものを編む会社
の
感想
気持ちのよい健やかな内容でした。震災復興のお題目ではない、地域循環事業の起業話で、調査、研究、設計、調達、人材募集、訓練、受注、製造、納品、宣伝、アフタケアの一連が、地域に根差し、地域に助けられながら、作り上げられる話で、読み易く、楽しい内容。唯一、全国放送メディアの震災復興お涙シナリオでやらせ撮影が要求され、現地の人の逞しく明るく乗り越えようとする素顔との解離に断ったくだりもあり、堕落メディアはここでも有難迷惑をかけてたようです。
読了日:9月15日 著者:
御手洗瑞子
切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか
の
感想
ブレット・スティーブンスは日本酷評の中で「ソニーは人員整理ができず、NY公立学校の「ラバールーム」で時間を過ごさせている」と。米人は人員整理に疑問はなく、利益至上・高額報酬は正義であり、日本は変なのだろう。今のソニー経営も「倒れゆく巨象IBMはなぜ凋落したのか」の金融経営と同じで、資産・人材の切り売り経営のようだ。「巨象」は株価と役員高額報酬と引き換えに、品質と顧客サービスをないがしろにしてきたそうだが、本書でのソニーも、「巨象」の拝金経営によく似ている気がしてきた。原点回帰するとよいが。
読了日:9月13日 著者:
清武英利
もう一つの「幕末史」: “裏側”にこそ「本当の歴史」がある! (単行本)
の
感想
反薩長史観はとても面白い。後付けの権力者用語の維新でなくて御一新と呼んだ方がよさそうだ。龍馬暗殺の犯人推定もさもありなんと得心。御一新のときのリアリズム、自己変革、人材登用のダイナミズムが今こそ問われると。昭和戦前史のタコツボエリート集団主義のような官僚主義で国策誤るなと。攘夷でヒステリー起こすたちが日本人には遺伝しているらしい。劇画を見ているかのように面白かった。
読了日:9月12日 著者:
半藤一利
狗賓(ぐひん)童子の島
の
感想
自然と共存しながら強く穏やかに過ごす人々の健やかな描写に心が和みます。支配と収奪と暴力と驕りの歴史にはやるせなくなります。いわれなき咎に忍耐と研鑽と信念と支えあう人々との月日で勝ち抜いた姿に安堵できます。幕府も新政府も支配と収奪の本質は変わらないとの諦観には、経世済民の見識の深さに思い至ります。狗賓童子の島との題にされたことがよくわかりました。島国日本の今も変われぬ姿かのようで、とても面白い作品。
読了日:9月12日 著者:
飯嶋和一
日本人が知らない漁業の大問題 (新潮新書)
の
感想
従来の流通制度の効能を改めて再評価し、大規模で規格化したグローバルな流通の批判が繰り返しされ、美味しい魚を味わいたい人の為に少し考え直せと言います。豊かな漁場に恵まれているのに、安くて不味い鮮度の落ちる魚食事と。それにしても本書で言う問題点があるのに、なぜにこんなに愚かしいのか、漁業者、漁協、流通、消費者、行政、学者とも、自分ベストで批判や提言主張はするが、すくんで前にでられないかのようだ。近海「漁業消滅」もさもありなんと心配になった。
読了日:9月10日 著者:
佐野雅昭
日本の「運命」について語ろう
の
感想
近代の事績の由来が数多く解説されていて面白い。江戸の大名の生活基底にある事実、明治維新の志士の本音、中国の歴史の懐深さ、植民地進出の事情と西欧と異なる殖産統治など本質的なことが分かり易い。科学は経験の累積で確実に進歩をとげるが、人類もそれにともなって進化していると思うなと。変容、あるいは退行していると思うくらいでないと正しいものは書けないと。やはり、事実を曖昧にしない姿勢を守っている人だ。
読了日:9月6日 著者:
浅田次郎
熱風の日本史
の
感想
面白い。明治から平成までの日本人の付和雷同、変節、社会の風潮がよくわかる。新聞が扇動し、庶民がますます踊り、また、庶民が排他されてもきたのが実像のようだ。著者は熱風(同調)現象をまとめ日本人の自画像を描いたらしい。それにしても新聞は、いわばバブル商売人で、右でも左でも時々の大勢に逆らわず正義ぶって、泡立てれば泡立てるほど儲かるとばかりにしてきたらしい。「度し難き厚顔無恥(1945.8.18高見順の評)」らしい。
読了日:9月5日 著者:
井上亮
陸奥爆沈 (新潮文庫)
の
感想
吉村昭自身も小説と言うより、ドキュメンタリーの範疇に入るのだろうと評していました。不気味で堅牢で近寄りがたい威風をたたえる戦艦の中に、人間がひしめきあい、規律に服従する世界にも欲望や恨みがひそんでいることが書き明かされていました。はかなさと同居する悲しみがこみ上げてきます。日本海軍の底で生きた兵士の現実が浮かび上がってきたように思います。
読了日:9月4日 著者:
吉村昭
大放言 (新潮新書)
の
感想
大手新聞の扇動的な商業記事への反論がよくわかった。正直なわかりやすい説明。炎上史で、大方の人間は、新聞資本の自己都合偏向角度体質に気付くのでは。政治家、新聞記者がおかしい国は、おかしくなる。図書館の民業圧迫もよくわかる。娯楽系の新刊は一年は図書館に入れるなというのも一理ある。メディアの皮層な正義きどりの暴きも痛快。
読了日:8月30日 著者:
百田尚樹
戦艦武蔵ノート (岩波現代文庫)
の
感想
面白く読みました。吉村昭の戦争観、戦争と敗北についての民衆の考えに対する評価、進歩的文化人の言説への懐疑、戦争批判にみえる卑怯な態度、開戦の責任、物を対象にした文学小説創作への不安、事実の直接取材の信念、他人の書いたものへの不信などなど、あの小説を創り上げるにいたる吉村昭の素顔をみたような気になった。ノンフィクションの宝。
読了日:8月30日 著者:
吉村昭
水木しげる: 鬼太郎、戦争、そして人生 (とんぼの本)
の
感想
とても懐かしく面白い。梅原猛との2010年の対談、呉智英の解説では、水木しげるの魅力を改めて知る思い。紹介される戦前、戦地、戦後の絵には、健やかなもの、暗く寂しいもの、温もりが溢れるものが、同居しているようで心に残る。資料の蒐集、勉強の片鱗には感服至極。呉によれば、漫画家は手塚治虫の影響を受けているが、水木は全く受けておらず、劇画グループとの接点はなく、非常に特異な存在だそうだ。紙芝居、貸本、雑誌と漫画の三世代を生きた人はいないそうだ。網羅する復刻が出てるようで楽しみだ。
読了日:8月29日 著者:
水木しげる,呉智英,梅原猛
骨が語る日本人の歴史 (ちくま新書)
の
感想
日本人の起源が多系統で独自の発展を遂げたり、外来文化の影響を受けたりしてきたことがよくわかった。骨の分析で証され、これまで流行って来たルーツ論議の独善さがよくわかった。身体特徴の変わり具合には驚いた。遺骨で生き生きした人の様子が分かるとは不思議なものだ。
読了日:8月26日 著者:
片山一道
世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠
の
感想
ノーベル賞経済学者が、アメリカの政治と政策の失敗を糾弾したまとめ本。不平等は市場ではなく、政治がつくったと。銀行は投機ビジネスをやめ、貸付業務に戻れと。上位1%の税率が貧困層より低いと。キャピタルゲイン課税も低いと。当たり前に増税せよと。トリクルダウンは幻想、中間層以下の消費が需要を作ると。アメリカに機会均等はなし。取り戻せ。チャールズ・ファーガソンの強欲の帝国と同意見。サマーズのようなハーバード経済学者達は強欲略奪者セクト。149億ドルの商業農家への補助金も呆れる。貧者から収奪し富者へ分配の国。
読了日:8月21日 著者:
ジョセフ・E・スティグリッツ
田園回帰1%戦略: 地元に人と仕事を取り戻す (シリーズ田園回帰)
の
感想
田園回帰世帯を増やし、過疎の中山間地の就労人口を増やし、生産と調達の地域内循環量をふやし、生活圏として過疎地を改造するやり方がよくわかった。地域の自覚と工夫次第で過疎地に埋まっている遊休財が活かされ、地域は生き返ると。分析、手法、事例とも納得できる実践的なもので、人口収縮国家に萎縮するのは間違いのようだ。但し、著者の文明観から産業文明、都市文明の批判が繰り返され、説得力のある実践良書なのにかえって、田園生活の敷居が高くなる。田園いいねで十分皆わかるのでは。
読了日:8月19日 著者:
藤山浩
ブラック オア ホワイト
の
感想
現役を終えた男が、自分自身が祖父、父から繋がっていたことを自身に理解させ、自身の現役生活を自身に理解させようとするかのような話でしたが、老境に入ろうとして現役から遠ざかる時、それまでに過ごしてきた時と場所を辿りながら、最期の自分を突き詰める心境になる話でした。斜に構えた夢うつつな語り口に、突き詰めて生きてきたはずの戦後世代の浮沈を込めているのかと思います。
読了日:8月16日 著者:
浅田次郎
「スイス諜報網」の日米終戦工作: ポツダム宣言はなぜ受けいれられたか (新潮選書)
の
感想
中田整一のドクター・ハックに感動しましたが、アメリカの中枢にも親日家がいて、天皇制存続と国体維持、早期終戦を画策していたとは驚きました。トルーマンの原爆投下の野心が、使える機会作りと防共の対ソ威嚇にあったとは・・・京都を原爆投下第一候補地からはずしたのは、長老の米陸軍長官であったとは・・・藤村海軍中佐の美談はフィクションで戦後はCIA関係人であったとは・・・惨劇収束に向けて懸命な米国要人もいたことに驚きました。
読了日:8月12日 著者:
有馬哲夫
居酒屋の誕生: 江戸の呑みだおれ文化 (ちくま学芸文庫)
の
感想
18世紀の中頃、百万都市江戸の居酒屋が、都市生活者の息抜きとして今の居酒屋にも繋がってることがよくわかりました。豊かな肴、大量の下り酒の消費、工夫凝らした呑み方、酒具、いきいきとした古文書の呑兵衛達の挿絵などなどとても楽しい。ひとり酒、割り勘、定額メニュー、夜明かし、むかえ酒など、遊ぶ庶民の活気が満ちた本で大変面白い。
読了日:8月11日 著者:
飯野亮一
答えは必ずある---逆境をはね返したマツダの発想力
の
感想
連続赤字の苦境から見の覚めるような車を立て続けに出して、独自の高性能な世界を造り始めたマツダ。倒産寸前に追い込まれた末の奇跡なのか、何が起きたのか不思議でした。本書でよくわかりました。企業体質の改革に取り組んでいたのですね。日本の縮図をみるようで、マツダのような変革が日本自身に必要で、できるリーダーを選ばねばいけないようです。電気自動車の社会経済的矛盾の指摘に納得です。普及は無理と。
読了日:8月7日 著者:
人見光夫
HARD THINGS
の
感想
とても全うな経営指南と思います。シリコンバレーのベンチャー企業の思考と行動の規範に感心します。造り、試し、直し、売ったり買ったり、雇ったり解雇したり、借りたり貸したりの荒波の中で、人(同志)と技術製品の成功に最大価値を置いていたようでまともです。チャールズ・ファーガソンの指弾する強欲金融族の対極にあるかのようです。健全で過激で筋の通った実業家伝と思います。著者の「アーンスト&ヤングには恨み骨髄」との評にはさもありなんと。
読了日:8月6日 著者:
ベン・ホロウィッツ
新・観光立国論―モノづくり国家を超えて
の
感想
デービット・アトキンソンは、独り善がりの「おもてなし」「技術大国」など自画自賛して、ご都合主義で効率の悪いのが日本で、人が多いから経済規模が大きくなっただけで、これからは観光産業でもっと食えるようにしろと。観光資源の文化財を大事に保護しろと言っていた。本書は、農業、工場、自然、医療など地域に在るものを組み合わせて統合リゾート観光にしてけば、地方でも稼げて、サービス業の低所得も向上できると。それをする人材を育てよと。都市と地域連携の創生の提言だった。
読了日:8月4日 著者:
寺島実郎,一般財団法人日本総合研究所
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