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読書2018
2018年の読書メーター
読んだ本の数:25
読んだページ数:7963
ナイス数:476
2019 長谷川慶太郎の大局を読む
の
感想
世界のニュースの意味が正しく分かった気になれた。毎度のことながら論理の根拠の現実味に得心。ファーウェイへの制裁が始まったが、既にZTEへの制裁で勝ったアメリカの意図を知れた。米中覇権戦争が米国の勝利に終わり、行き着いた中国の姿には、現実味が。北朝鮮については既に溝に堕ち、南の経済にのまれていくと。その時、日本には覚悟すべき役割があると。銀行は、斜陽産業と。たしかドラッカーも日本の銀行員は多すぎと。独銀救済にメルケルが日本のメガに期待して、総理もメガも断ってると。日本は変えるべき点あるも、大分ましと思えた。
読了日:12月07日 著者:
長谷川慶太郎
アメリカにあった伊能大図とフランスの伊能中図
の
感想
地図の側線を追っていくと、道のりの果てしなさにつくづく偉業を思う。海岸線に沿い歩を進め、断崖には船を仕立て、測量をしていく御用旗の一隊。その秩序だった行動は、各地で国威にもなっていったのではないかと思ってしまう。この数十年後に鯨油目当てに強欲な西洋人が押し寄せることになる極東の島々には、決してひけをとらぬ科学性と合理性と、そしてかれらには備わっていない秀でた和の精神を備えた日本人がいた。西洋科学の本質を見抜き、精神と技を磨き、国難にあたってゆく次代の序章になる事績と思う。西洋人が盗み出すほどの技芸の賜物。
読了日:11月29日 著者:
日本国際地図学会
透明標本-吉村昭自選初期短篇集II (中公文庫)
の
感想
34才から39才までの短編作品集との解説。冴え尽きる生命の物語と思う。再び読んでも、情景が眼前に拡がり、そこに立ち尽くす心境が読む側にも湧いてくる作品ばかり。あとがきで、作者自身が読み返して、歳を重ねて失ったものを知り、選集版も原型のままで、「これでいいのだ、と思っている」との記述があり、なんだか同じような気分になった。今村昌平の「赤い殺意」は、同じような主題が醸し出されていたと思う。人の営みの表裏のやるせなさ、生死の境目のはかなさ、自他の境の曖昧さと残酷さなどが、直截に描きだされていると思う。
読了日:11月23日 著者:
吉村 昭
少女架刑-吉村昭自選初期短篇集I (中公文庫)
の
感想
人物、事件性とも極限的な設定の短編集ですが、物語の展開と結末に唖然としつつも、その短い巧みな展開を見せつける類の作品ではなく、精緻で鮮烈な描写が続き、光、風、雨、音、湿気、暑さ、寒さに、人物が眼前に削り出されてくるよう。昆虫のぬめり、鳴声、緩慢な動作等も、人物の心象と生活を表すようで、今村昌平の映画を観ているような気分になった。男女間の打算と、ほどけぬ束縛感は、戦後の世相の中で、露骨にひきづりだされた人間の本性のように見えてくる。二編は再読だが、また、読んでも、ますます研ぎ澄まされた映像を観た様な読後感。
読了日:11月11日 著者:
吉村 昭
国宝伊能忠敬関係資料
の
感想
佐原の伊能忠敬記念館で入手の図録。間宮林蔵記念館で地図の美しさに驚き、師匠にも期待して訪ねたところ、期待以上で感銘。この図録で、忠敬の測量の成り立ち、先進性、科学性、実証性がよく理解できましたが、特に、芸術性を帯びたところの説明に合点。幕府に献上した品が明治、大正で焼失したのは悲しい限りですが、残された下絵、写、絵図などでも引き込まれます。地図の景観表現が特筆との解説があり、現物はさぞ美しかったことかと嘆息。国土地理院で開示されてますが、参謀本部で模写したものが2001年に米国議会図書館で発見されたと。
読了日:10月24日 著者:
酒井 一輔、北風 美恵、宮西 英洋
つげ義春の温泉
の
感想
玉梨温泉の居間で拝見。若い頃、鄙びて侘しく寂しく湿った貧しく陰鬱な雰囲気に、入れなかった世界でしたが、奥会津の宿の窓際で川音を聞きながら読んだら、入り込んでしまいました。昭和40年代、50年代の各地の私も好きな温泉の写真と絵に、記憶に残っている風情を見つけて、楽しみました。いつ以来かわからぬ漫画には、宿の人間臭を嗅がされました。後半の旅行記も秀逸で、各地の消え失せた消え失せようとしている時が蘇るようでした。実に波長の合う温泉地巡りの数々でした。以前、定義温泉は謎めいて行けなかった事も思いだした次第。
読了日:10月21日 著者:
つげ 義春
NHK英雄たちの選択 江戸無血開城の深層
の
感想
こうした歴史を学べる時代がとても嬉しい。征韓論でなく遣韓論であった事実が、勝者に歪められて転嫁されるとの歴史は、教科書に書いて欲しかった。西南戦争の意味も正しく書いて欲しかった。「歴史にifはない」と言う歴史学者の言説は、責任回避、安泰思考で、「ifを考える歴史」が役に立つ仕事としての歴史だとあとがきにある。偏向、教条的捏造が自己利益、自己保身のために垂れ流されているメディアの現況をみると、歴史を進歩させることができる学者・教師を選んで学ぶことが必要で、探せばそれはできる時代のようだ。学生の副読本に良い。
読了日:10月01日 著者:
磯田 道史,NHK「英雄たちの選択」制作班
悪玉伝
の
感想
最悪の将軍の三代後の治世での商人が生き生きと描かれていると思う。享保の改革と市井の格闘劇になっていると思う。財政、金融、民事訴訟対策の相対済令、目安箱、大岡裁き、北前船、甘藷奨励などの歴史要素が、物語を必然に仕立てあげていると思う。その事績に囲むことで、世に抗う人々の物語が迫真なものにかんじられるのだと思う。花、食事、着物に彩られる風雅な描写もまた、人の生活の楽しみ方を再現していて絵を見るかのよう。こうして、あらゆる登場人物が時代を体現しているように描かれていると思う。また、歴史の娯楽小説を楽しめた。
読了日:09月14日 著者:
朝井 まかて
星夜航行 下巻
の
感想
陳破空の本でヘーゲル曰、中国の歴史とは歴史でなく君主の入れ代わり立ち替わりしてるに過ぎず、いかなる進歩も生まれることはないとあった。石平は、中国は、易姓革命で王朝の交代の繰り返しで、冊封体制、周辺国制圧、朝貢体質で中共もと。明、朝鮮との冊封関係、西洋のキリスト教と一体の侵略・収奪主義の中で、戦国武将の限界点が克明に語られていると思う。英傑、愚帝、愚臣はいずこの文明でも繰り返し登場する宿命にあると諦観が漂う物語。その中で信と義と誠の人に救われる気分に。5年連載の作品で難儀な筋も感じましたが、読後は清々しい。
読了日:08月11日 著者:
飯嶋 和一
星夜航行 上巻
の
感想
著者の時代描写の緻密さに信をおいて読めた。歴史の事績の必然性がわかる作品と思う。武勇がなぜ発揮させられたのか、権謀がどのような思惑でしかけられたのか、確執はなにを要因に深まったのか、各階層のよりどころがどこにあったのか、歴史をつくりだした要素をもらさず配置してあると思う。社会の基底にある生産、物流、商流もその時代にふさわしいものにまとめられていると思う。そうした境遇で人に権勢を求めさせたものはなんなのか、描き出そうとしているのではないかと思う。抜き差しならぬ業がどのように固まっていくかを描いていると思う。
読了日:08月05日 著者:
飯嶋 和一
新装版 海の祭礼 (文春文庫)
の
感想
年譜を見ると著者59才の時の出版で、長英逃亡の二年後、冬の鷹の十二年後になる。著者の作品群の中では、幕末を舞台にした歴史小説の初期に位置する作品なのかも知れないが、その後に発表された数々の作品で描かれる、幕末に自らの置かれた境遇と折り合いながらも、果敢な意気で生き通した日本人の熱と怜悧な頭脳が、この作品でも描かれている。人間を描ききる筆致と事績の配置構成が、この作品でも見事と思う。またも、みずからに植え付けてしまった視点を矯正してもらえた気分。不確実に耐え、変化と更新を受け入れ、複雑化に対処した日本人史。
読了日:07月28日 著者:
吉村 昭
アメリカ彦蔵 (新潮文庫)
の
感想
生麦事件の発刊の翌年に発表されていて、表裏にある記録小説だった。国を造る志士達と、漂流するかに生きる民の対比を感じた。アメリカ人、イギリス人、フランス人の東洋での所業がいかなるものかを歴史の事跡としてだけでなく、うごめく人間として実像を描いていると思う。親身になる者も、打算に満ちた者も、皆、生きる者としてあるがままに描きだしていると思う。その揺るがない複眼視座は、物語を民族史に仕立て上げていると思う。いずれの歴史小説とも日本の先進文明との関わり方の実像を描いていると思う。読み進めるほど、勢いがます作品だ。
読了日:07月12日 著者:
吉村 昭
森鴎外全集〈14〉歴史其儘と歴史離れ (ちくま文庫)
の
感想
生麦事件の解説にあった鴎外の歴史の「自然」の考えを読んでみた。歴史小説での作家の躊躇は、歴史を知るものの良心と、歴史を知る読者を感動させたい創作心があいなかばする処にあるようだ。吉村は鴎外に心酔していたらしいが、この節度に執着した姿勢によるものなのか。歴史は、科学され、後年になればなる程、事実解明により変わるものと現代では考えるべきらしいので、歴史小説の寿命も作者の歴史「自然」観で決まると思う。これが吉村の魅力と思う。
読了日:06月29日 著者:
森 鴎外
生麦事件〈下〉 (新潮文庫)
の
感想
また、歴史の見方を突き付けられた。御一新の大回転は、この事件で起動することになったと知った。その後の思考、討議、格闘、戦闘、講和、交誼、殖産、貨幣流通増、技術革新、戦術刷新と続く、怒涛の事績の物語により、この時代の真実、歴史の本質を教えられたと思う。披露される様々な事柄は、その配列により、自己変革を成し遂げた日本人の姿を鮮明に描き出していると思う。全艦を英に拿捕された後に姿を消した船奉行とその添役五代才助の潜伏と復活のくだりには、著者得意の逃亡作品がまたひとつ増えたような気になった。複眼史実は実に面白い。
読了日:06月28日 著者:
吉村 昭
生麦事件〈上〉 (新潮文庫)
の
感想
思慮、研究、決意、探索、準備、鍛錬、論告。一連の活動が記録されている。資材を製造、集積し、鮮度を維持し、力を蓄える計画性と継続性は、合理的で決意に満ちている。なんと、勇敢で緻密で大胆な志士が育っていたことか。学び、練達し、備え、跳躍する時代の爽快なことか。具備する装備は旧式であってもそれを知り、身の置かれた状況を科学し、戦備し、決意を敵対者に正す姿は、ひけを取らない。バルチック艦隊を迎え撃つ冷静果敢を薩摩にみるかのようだ。「天下国家の為、粉骨砕身夷賊誅伐」を決心する理由が、騎士と武士の義としてわかる。
読了日:06月26日 著者:
吉村 昭
長英逃亡〈下〉 (新潮文庫)
の
感想
ノブリス・オブリージュを思いだした。学識者にも先頭にいる者としての責任があるのだと。それを果たした時に、人としての安息が許されるとでも自分に言い聞かせ、そのように生き抜く人。それを吉村は描いていると思う。現代ではアフガン農民の生命基盤をしあげつつある中村医師もその次元で生きる人に思う。学ぶ力こそが社会の進む力とスティグリッツはラーニングソサエティーで言ってるような気もする。又、人としての本質を迫られた。支援者内田が太陽暦を建言と。大隈重信はこれを聴いて月給支給をひと月減らせるととびつき移行させたと聞いた。
読了日:05月25日 著者:
吉村 昭
長英逃亡〈上〉 (新潮文庫)
の
感想
吉村昭記念文学館の関連略年譜によると1982年後半から翌年までこの執筆のために資料を求めて全国各地を旅するとあった。1982年は破獄の取材で、秋田県、青森県、北海道にたびたび赴くともあった。険しい山岳路、深い森、風雨、夜の海路などの身震いするような臨場感は、こうした綿密な事績調査と風物観察があってのことらしい。大作とはこうした造りによるものの事と思う。この作品で群馬中之条の魅力が増えた。更にいずこの潜伏先も今も宿や商店として残っていないものか、温泉ついでに散策してみたくなる。実に面白い。
読了日:05月21日 著者:
吉村 昭
百田尚樹 永遠の一冊 (『月刊Hanada』セレクション)
の
感想
この作家の主義主張を忌避する新聞やテレビは、作家の業績や存在自体も報道しないようにしているらしい。日本は、なんともいびつなジャーナリズムの後進国になりさがっているかのようだ。日本の新聞社、テレビ局は、全体主義の情宣機関とかわらない既得権益執着集団に見えてくる。
読了日:02月25日 著者:
百田尚樹,花田紀凱責任編集
天狗争乱 (新潮文庫)
の
感想
近江俊秀の日本の古代道路で、常陸には大規模な古墳群があり、立派な古道も発掘されていて、蝦夷戦争の兵站基地で道路網と水上交通の連動した地域とあった。また、磯田道史の日本史の内幕では、水戸藩は反徳川や反織田勢を徳川時代に召し抱えたとあった。木村重成、朝倉義景、雑賀孫市(村上海賊の娘の鈴木孫市?)等の子孫と。朝井まかての恋歌では、血気にはやる藤田小四郎率いる天狗党、後の宿敵同士の惨殺の応酬が悲しく謳われていた。常陸の地での尊王攘夷の沸騰は、先祖伝来のものであった気がする。著者の描く常陸の熱情の純度はすざまじい。
読了日:02月18日 著者:
吉村 昭
彰義隊 (新潮文庫)
の
感想
著者の最期の長編歴史小説らしい。亡くなる二年前から連載が始まったと著者の年譜にある。最初の長編歴史小説は冬の鷹ともある。冬の鷹では、前野良沢が隠棲した場所として根岸がでてきた。日暮里の新堀村もでていた。彰義隊でも、根岸、日暮らしの里として新堀村が登場していた。最初も最後もこの界隈繋がりで、著者の生まれ育った日暮里周辺の愛着はなみなみならぬらしい。生きる舞台として描くのにふさわしい人々の生活がある場所なのだろう。著者の原点をゆっくり散策して味わってみたい。
読了日:02月10日 著者:
吉村 昭
海に沈んだ大陸の謎 最新科学が解き明かす激動の地球史 (ブルーバックス)
の
感想
自然科学は、誠実だ。事実調査と推論を重ねる努力、結論の検証をたゆまずに続ける姿勢、この態度が科学者であるらしい。社会の事象を科学するのが、社会科学だが、教条主義に怠け、歴史の科学的修正を拒む態度をとっては、もはや科学ではない。ドグマに生きる経済学者、歴史学者が多いようだ。磯田道史の古文書による歴史の解明には未来をみるようで、感嘆したが、岩石、地層、化石、放射性同位元素の減衰が、地球史の「古文書」であるとは。その探索、解析、蓄積、推論の事績に驚いた。地球の歴史も「古文書」で解明されているようだ。
読了日:02月07日 著者:
佐野 貴司
日本人だけが知らない世界から尊敬される日本人 (SB新書)
の
感想
学ぶべき人間像として自国の偉人を子供たちに教えない国、日本を浮き彫りに。なんという人間教育をして来てしまったことか。老世代に巣くう偏向で自虐的な価値観に愕然となる。昭和一桁世代の稲盛和夫は、自分の世代の失敗は、子供に正しい教育をしなかったことだと言っていた。寺島実郎は、資産運用ばかりに血道をあげず、シルバーデモクラシーとして毅然としろと言っていたが、愛国心なき個人主義の老世代にできるだろうか。今こそ、教育とメディアを正さねば、日本人の美徳は消えてゆくと言う事らしい。
読了日:02月05日 著者:
ケント・ギルバート
朝鮮半島終焉の舞台裏 (扶桑社新書)
の
感想
共産主義の亡霊にかどわかされた20世紀の妄信が、極東にはびこり、偽善的全体主義が独裁支配しつづけ、膨張しているとあらためて思う。共産主義の欺瞞が成長しつづけている。最大の危険は、眼前に北鮮が迫るのだが、最終的には中共の中華嗜好主義者らとよくわかった。北鮮の独裁者の母は、在日朝鮮人と。戦後の情煽時代の帰還者なのか。未来を蝕む左翼は、ほとほと罪深い。
読了日:02月04日 著者:
高橋 洋一
『週刊文春』と『週刊新潮』 闘うメディアの全内幕 (PHP新書)
の
感想
週刊誌には、負の印象が強い。お騒がせ商売と。誠実な社会につけ入る商売人との印象もあった。それが、朝日を始め大手のメディアがそれ以上に、社会に背信している事を知った今、週刊誌の功に気がついた。まともな取材と編集があったらしい。風前の灯のプロ記者たちは、途絶えてはならぬと納得。安手の記事と偏向捏造編集を繰り返す衆愚新聞は買うまい。信用できる記事を買うことが正義らしい。週刊誌の俗悪な告発より、新聞テレビの偽善と嘘は、罪深く、詐欺である事がよくわかる。
読了日:02月04日 著者:
花田 紀凱,門田 隆将
トヨタ語の“力" 部下を変える一言、現場を動かす一言
の
感想
日経テクノロジーによると、GoogleはMBA流のマネジメントを排し、トヨタ流を実践し、米では人気のないドラッカーも学ばれていると。遂にはトヨタの本質を理解した欧米企業が出てきて、日本も危うくなるとあった。トヨタの企業文化の本質がよくわかるトヨタ語の手引きだ。企業人として、経済人として、人として、正しい倫理が説かれていると思う。志と徹底と共栄が根底にあった。大野耐一は「カンバン デモクラシー」とも言っていたらしいが、実に民主的な企業文化だ。左翼の言う「自動車絶望工場」は、実は希望に満ちた道場だったようだ。
読了日:01月16日 著者:
桑原晃弥
読書メーター
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