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NO.7-『ターミナルケアー』について
1) 現代は、医療技術の飛躍的進歩及び保険衛生、食生活の向上に伴い、世界的に人々の寿命は年々伸びている。したがって、この高齢化社会で高齢者が人生の終末期をいかに過ごすか、また隔家族化の進むなか高齢者を取り巻く家族的・社会的環境がいかにあるべきか、というのが高齢者の「タ-ミナルケア-」の問題である。
2) 「タ-ミナルケア-」は、治癒の可能性がない「死に行く患者」と家族にたいする身体的・心理的・社会的・宗教的要素を内包したケア-(看護)中心の治療とも言うべきであろうか。その理念は、イギリスのシシリ-・サンダ-スのホスピス病院設立(1967年)にはじまる。サンダ-スの考え方は、「無意味な延命治療よりも身体的苦痛や死への恐怖を和らげ、残された人生を充実させること」を重要視するものであった。こうした理念が、今世紀にまで浸透し、日本でもやっと高齢者の「タ-ミナルケア-」の問題が社会福祉政策の中に生命倫理として取り込まれるようになったと考えたい。
3) また、生命倫理の概念として確立された、「インフォ-ムド・コンセント」(患者が情報を知る権利、自己決定する権利)は、1981~2年にかけて生まれた概念であるが、そもそも、この概念は1947年「ニュルンベルク綱領」でナチスによる生態実験を告発し被験者の自然的同意を確立し、1948年「ジュネ-ブ宣言」では医の倫理宣言をし、そして1964年「ヘルシンキ宣言」で初めて被験者の「インフォ-ムド・コンセント」が明確にされたものである。つまり、こうした、生命倫理観は、タ-ミナルケア-、尊厳死・安楽死、臓器移植、人工生殖などの問題に伴い、1972年アメリカ病院協会の「患者の権利章典に関する宣言」により世界に発信し、生命倫理は1981年「患者の権利に関するリスボン宣言」で国際化し、1982年アメリカ大統領委員会の報告となり、「インフォ-ムド・コンセント」の概念が確立したのである。
4) 高齢者「タ-ミナルケア-」は、家族が介護者であると同時に家族自信もケア-をうけるべき対象者でもある(何故なら、報道等でみられるように、介護に疲れ無理心中という事例が多い)。とりわけ、寝たきり老人の在宅ケア-の場合、高齢者自信が肉体的にも精神的にも自立の可能性は低く、その分、専門家でもない家族介護者の負担は大きく、肉体的、精神的な健康状態の持続は、はっきり言って困難である(筆者も、ボランテイアではあるが、90歳の高齢者を月1回看護している)。また、介護家族の経済的負担の増大、自分の仕事と介護の両立とから生じる心身の疲労と生活苦が、家族間に亀裂を生じさせる原因となる。ここで、生じるのが介護認定と介護専門業者に任せるたいが本人の自己決定(個性の尊重)との問題である。一律認定や一律介護ではなく、高齢者の「個性」を重要視する必要がある。何故なら、高齢者は、人生において、それぞれの生き方、能力、趣向があり、介護についても社会契約としての「合意」が必要となってくる。被介護者のためでなくてはならない。被介護者の幸福のためでなくてはならないと考える。
5) こうした、高齢者「タ-ミナルケア-」という概念からすると、日本の社会福祉の現状では、高齢者福祉には厳しいものがあるのでは。2001年4月から介護保険が導入されたが、そこに多くの問題点が指摘されている。
例えば、この導入で、今まで家庭で介護できないという理由で病院に入院せざるを得なかった人までも在宅介護に切り替えられてしまったとか、また、介護保険では専門のホ-ムヘルパ-を各家庭に一定時間訪問させてケア-しようとするものだが、被介護者の生活では、食事、入浴、清拭、排泄、着衣等は日常生活であり、ホ-ムヘルパ-が不在の時も生じる。まして、夜間において要介護の場合、不眠、不穏、失禁、排泄等が生じた場合、派遣ホ-ムヘルパ-で十分対処できるかは疑問である。また、近所からすると、介護だからと大目にみているようだが、多くの迷惑駐車。朝から晩まで、介護車輌と記載した小型車が溢れている。やはり、不徹底な行政の責任であろう。
また、介護保険には、介護者が息抜きできるようにデイケア-やショ-トステイなどもあるが、やはり不十分であろう。日本の介護制度そのものが、純粋に介護について考えている学者とは異なり、あたかも、戦後の冷戦下では仮想的国を想定し、共産主義勢力崩壊後には、「テロとの戦い」と言った新たな戦争を見出そうとする策略から生じた「産物」に似ている。誰が得をしているのかが、概観できるであろう。所謂、行政のアドホック的政策である。
その上、不十分な介護政策・内容であるにもかかわらず、介護を受けることができるのかどうかの認定基準の厳しさ及び引き受け先の空きの状態である。さらに、大きな問題は費用である。何故、80歳の老人が一人で一生懸命生きているのに、保険料を納めなければならないのかが疑問である。僅かな年金暮らしの中から、天引きする一方、社会保険料の無駄使いが横暴しているこの社会状況を各国はどう判断しているでしょうか。国連で、日本の官僚制度の悪さが人権侵害に匹敵するほどであると指摘している。日本は、今回の問題に限らず、まだ批准していない項目が多すぎる。世界に顔を出すには、環境・人権・福祉といった方面で「正当性」に基づいた判断をする必要がある、リトルアメリカでは世界は納得しない。
6) 前回、「貧困の概念」のなかで、福祉政策も「平等主義」に基づいて、それも「スタ-トラインからの平等」の政策が求められるべきであると記述したが、「僅かな年金暮らしの中から、天引きする」政策は、福祉の後退といえる(他国の学者の指摘内容)。
例えば、社会福祉事業法等一部改正法案大綱(1999年4月15日)のなかで、「個人が尊厳をもってその人らしい自立した生活が送れるよう、個人の選択を尊重した制度の確立、質の高い福祉サ-ビスの充実、個人の自立した生活を総合的に支援するための地域福祉の充実を図るため、所要の改正を行うものである」と述べている。もっともらしい趣旨である。美辞麗句である。しかし、「自立」という美名は、社会福祉の後退を意味する。この内容の意味するところは、これからは個人が「自立的」に事業経営者と契約をし、自分が受ける介護サ-ビスの質(レベル)を選択し、そして、その費用は自己負担であり、程度・限度を超えるものについて行政(国・地方公共団体)が負担しましょうということである。社会福祉の理念は、この高齢化社会で高齢者が人生の終末期をいかに過ごすか、また隔家族化の進むなか高齢者を取り巻く家族的・社会的環境がいかにあるべきか、というのが高齢者の「タ-ミナルケア-」の問題であることを鑑みると、各国が指摘するように日本の福祉政策は後退していると考えられる。
以上
私のボランテイア活動について:
天涯孤独と称していた90歳の老人は、疎遠であった子供と姪とにより病院関係者と相談の後、唯一の財産である都内のマンションを売却し、滞納税および民間保証会社との保証契約の支払いにより、看護施設に入床することになりました。家族は援助無しとのことでした。
【参考図書】
1) 曽我英彦 棚橋實 長島隆編 『生命倫理のキ-ワ-ド』 理想社 1999年
2) 佐々木隆志著 『日本における終末ケアの探求』 中央法規 1999年
3) 橋本肇著 『高齢者医療の倫理』 中央法規 2000年
4) 日野原重明編 『老人医療への新しいアプロ-チ』 医学書院 1992年
5) 全国老人福祉問題研究会編 『老後保障最新情報資料集16』 あけび書房 1999年
6) 丸尾直美 『福祉政策の新展開』 中央大学経済研究年報34号 2004年
7) 池上直己著 『医療の政策選択』 勁草書房 1993年
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