薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
薄桜鬼 薔薇王腐向け転生昼ドラパラレル二次創作小説:◆I beg you◆ 1
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 10
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
黒執事 平安昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:蒼き月満ちて 1
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~ 1
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
F&B×天愛 異世界転生ファンタジーパラレル二次創作小説:綺羅星の如く 1
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
黒執事 BLOOD+パラレル二次創作小説:闇の子守唄~儚き愛の鎮魂歌~ 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 1
天上の愛地上の恋 大河転生昼ドラ吸血鬼パラレル二次創作小説:愛別離苦 1
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
火宵の月 吸血鬼転生オメガバースパラレル二次創作小説:炎の中に咲く華 1
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
火宵の月異世界転生昼ドラファンタジー二次創作小説:闇の巫女炎の神子 0
FLESH&BLOOD 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の騎士 1
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 3
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 7
F&B 現代昼ドラハーレクインパラレル二次創作小説:恋はオートクチュールで! 1
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 1
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黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 3
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD 帝国ハーレクインロマンスパラレル二次創作小説:炎の紋章 3
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
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FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 6
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
FLESH&BLOODハーレクインパラレル二次創作小説:海賊探偵社へようこそ! 1
天愛×相棒×名探偵コナン× クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 1
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 2
天上の愛地上の恋 BLOOD+パラレル二次創作小説:美しき日々〜ファタール〜 0
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOIヴィク勇火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 1
YOI×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:氷上に咲く華たち 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
刀剣乱舞 腐向けエリザベート風パラレル二次創作小説:獅子の后~愛と死の輪舞~ 1
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 2
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
天上の愛地上の恋現代昼ドラ人魚転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 2
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 1
F&B×薄桜鬼 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:北極星の絆~運命の螺旋~ 1
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・愛の螺旋 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
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「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。仁が両性具有です。苦手な方はご注意ください。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。性描写が一部含まれます、苦手な方はご注意ください。「お前、本当に大丈夫なのか?」「ただの風邪だから、大丈夫だよ。」「そうか。」初夏が過ぎ、夏が訪れた。連日の茹だるような暑さに、仁は体調を崩していた。「お父様、大丈夫?」「うん、大丈夫だよ。」そういった物の、仁は酷い貧血に襲われ、その日は仕事を休んだ。「おはよう、優。」「おはよう、碧。」碧は、登校してきた優の顔にアザが出来ている事に気づいた。「それ、どうしたの?」「ちょっと転んじゃって・・」「そう。明日の花火大会、楽しみだね!」「うん!」仁が自室で寝ていると、玄関のチャイムが鳴った。「はい、どちら様ですか?」『俺。』インターフォンの画面に映っていたのは、俊匡だった。「どうしたの?」「ちょっと、トラブっちゃってさ。」俊匡はそう言うと、土御門邸の中に入った。「え、見合いから逃げて来た!?」「いやぁ、親父から食事に誘われて行ったけど、見合いを勝手にセッティングされたから、バックレて来た。」仁が淹れてくれた麦茶を飲みながら、俊匡はそう言った後、溜息を吐いた。「俺は、もう結婚する気は無いんだよ。」「何で?俊匡だったら、きっといい人が見つかると思うよ。」「鈍いな、お前。俺はお前以外の奴とは結婚したくないって言ってんの。」「え・・」仁が戸惑った表情を浮かべていると、俊匡は彼を抱き締め、次の言葉を継いだ。「従兄弟同士とか、男同士とか、そんなの関係ねぇし。俺は、仁以外の奴とは結婚したくねぇし、仁とは別れたくない。」「僕は・・」「二人共、そこで何をしている?」背後から突然氷のような冷たい声がして二人が振り返ると、そこには怒りに滾った目で自分達を睨む有匡の姿があった。「今後一切、仁と会わないつもりだったんじゃないのか?」「そのつもりでした。でも、俺は・・」「仁との結婚は許さん。」「先生、二人の話を聞いてあげても・・」「火月、口を挟むな!」「はい・・」有匡と対峙した俊匡は、自分の想いを彼に伝えた。「俺は、仁以外の人とは結婚したくありません。」「同性婚が合法化されているとはいえ、現実は甘くない。碧はどうなる?あの子が、お前達の子だと知ったら、どうなるか・・」「それは、僕達の方から説明して・・」「二人共、冷静になれ。」仁は、俊匡を玄関先まで見送った。「明日の花火大会、行くよな?」「うん・・」「いつもの所で、待ってる。」「わかった。」火月は、玄関先で抱き合う仁と俊匡の姿を、静かに見ていた。「先生、二人の結婚を許してあげてもいいんじゃ・・」「駄目だ。二人には、わたし達と同じ苦労をさせたくない。周囲から反対されて、どんな目に遭ったか、お前も知らない筈がないだろう?」「それは、そうですけど・・」その日の夜、夫婦の寝室で有匡と火月は自分達が結ばれるまでの経緯を思い出していた。互いに運命に引き寄せられるかのように、二人は恋に落ち、周囲の反対を押し切って結婚したが、それまでが辛く困難なものとなった。「父上が居てくれたから、わたし達はこうして幸せになったが、仁と俊匡は・・」「先生、“運命には何人たりとも逆らえない”って、言うでしょう?僕達と同じように、あの二人は出逢ってしまったら、互いの存在が必要不可欠だって事。」「一目惚れはこの家の血筋、か・・今回はわたし達の方が折れるしかないな。」有匡はそう言うと、溜息を吐いた。「え、じゃぁ・・」「問題は色々と山積みだが、ひとつずつ解決していくしかないだろう―わたし達がかつて、そうしたように。」花火大会当日の夜、土御門邸に久しぶりに殊音家と土御門家の者達が集まった。「うわぁ~、お父様、似合ってる!」「そ、そうかな?」仁の浴衣姿を見た俊匡は、股間が熱くなるのを感じた。「父さん、どうしたの?」「い、いや、何でもない・・」一家総出で花火大会の会場へと向かった仁達は、それぞれ屋台の食べ物や遊びを楽しんだ。仁は父達と別れ、俊匡との待ち合わせ場所に向かうと、彼は荒い息を吐きながら仁を待っていた。「もう、こんなに濡れて・・」仁が下着の上から俊匡の昂ったものに触れると、そこは熱く脈打っていた。「お前だって、濡れてる・・」「もうすぐ、花火始まるね。」「あぁ・・」仁は、太い木の幹に掴まると、俊匡のものを奥まで受け入れた。「う、もう・・」「出して・・」俊匡は、仁の中へ欲望を迸らせた。「花火、綺麗だね。」「あぁ。来年も、また来ような。」「うん。」それは、二人にとって生涯忘れる事が出来ない、夏の日の思い出だった。「あれ、二人共何処に行ってたの?」「うん、ちょっとね・・」碧は、父の首に虫刺されのような痕がある事に気づいた。花火大会から数ヶ月後、仁と俊匡、そして文観と有匡は、聖アンジェロ学院の慈善バザーに参加していた。「カレー出来たから、味見してくれる?」「うん。」俊匡がカレーの鍋の蓋を開けた途端、仁は激しい吐き気に襲われ、その場に蹲った。「おい、大丈夫か?」「うん、大丈夫・・」その後も吐き気が治まらず、仁は俊匡達と共に病院へと向かった。「おめでとうございます、妊娠三ヶ月目に入っていますね。」「え・・」産婦人科の診察室で医師から妊娠を告げられた仁は、驚愕の表情を浮かべた。エコー写真には、二つの黒点が写っていた。「双子・・」「順番が逆になってしまいましたが、いいでしょう。よろしいですね、義兄上?」「あぁ・・」都内のカトリック教会で、家族と友人達に祝福されながら、仁と俊匡は結婚式を挙げた。「おめでとう、二人共幸せにね。」「ありがとう、お母さん。」「先生なら、碧と話しているよ。」「そう・・」教会の中庭で、有匡は碧に、仁と俊匡の事を話した。「じゃぁ、僕には二人の父親が居るって事?」「そうだ。」「僕ね、俊匡さんと初めて会った時、“この人が僕のもう一人のお父さんだ”ってわかったんだ。」「そうか。碧、お前はこれからどうしたい?」「僕、もうすぐお兄ちゃんになるんだよね、楽しみだなぁ。」仁と俊匡が結婚式を挙げてから数ヶ月後、二人が自宅でベビー用品を選んでいると、玄関のチャイムがけたたましく鳴った。「俺が出るよ。」「うん・・」俊匡がインターフォンの画面を見ると、そこには雛の姿があった。「姉さん、どうしたの急に!?」「あんた、色々と不安だと思ってさぁ、“先輩”のあたしが教えてあげようと思って、来ちゃった。」「ありがとう。ごめんね、引っ越したばかりで部屋が散らかってて・・」「碧は?」「スケート教室。僕と違って、あの子には才能があるみたい。」「そう。仁、つわりはもう治まったの?」「うん。」「じゃ、これ食べよっか!」雛がそう言って仁達に見せたのは、大手ファストフード店の紙袋だった。「うわ~、今一番僕が食べたい奴だ、ありがとう姉さん!」「あ~、あんた泣いてんの?」「うるさいなぁ~、もう!」そんな和気藹々とした様子の三人の元に届いたのは、有仁が危篤だという有匡からの連絡だった。にほんブログ村
2024年02月13日
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「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。仁が両性具有です。苦手な方はご注意ください。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。性描写が一部含まれます、苦手な方はご注意ください。 同じ頃、火月は神官とカフェで他愛のない世間話をしていた。 話題は常に、子供や孫の事だった。「それにしても、こんなにあんたと楽しく話せたのは初めて。」「そうかも・・」「アリマサとあんたが結婚した時、アリマサをあんたに取られたようで嫌だったんだよね。」 神官の言葉を聞きながら、火月は初めて彼女と会った時の事を思い出していた。「あんたがアリマサの嫁?ふ~ん、こんな地味な女の何処に惹かれたんだか・・」 長年生き別れていた兄・有匡に対する強い独占欲と執着を抱いていた神官は、そう言って有匡を激怒させた。「あの頃はさぁ、神官まだ若くて荒れていた時期だったから、今思えば本当に酷い事を言ったよね・・」「ううん、僕もあの時、先生がやたらあなたを気に掛けるから、変に嫉妬していたんだ。」「まぁ、神官はいつも寂しかったんだよね。あっちの家に引き取られたけれど、優秀ないとこ達と比べられたり、お嬢様学校に通わせられたり、ストレス半端なかったから家出したんだけどね。」「へぇ・・」 有匡から、土御門家の複雑な家庭環境を聞かされていた火月は、神官が今までどんな思いで生きていたのかを容易に想像できた。「そういえばさ、仁は今どうしてんの?公安で働いてんの?」「ううん。今は、警務課に居るよ。碧を育てないといけないから、時間の融通が利く所へ異動したんだ。」「運動会でキレキレのダンスを踊っていた子?将来大物になりそうな気がする。何か習い事とかしてんの?」「剣道とスケート。ふたつ共気に入っていて良く練習しているよ。ただ、困った事があって・・」 火月は神官に、先週起きた出来事を話した。「お祖父様~、龍槌閃やって~!」「う~ん、それは出来ないなぁ・・」「じゃぁ、天翔龍閃!」 某剣客漫画にハマった碧は、有匡に無茶振りして彼を困らせた。「何それウケる~!」「結局、牙突で落ち着いたけどね。」 神官は笑い転げ、危うく椅子から落ちそうになった。「それじゃ、またね!」「うん、またね。」 カフェの前で神官と別れた火月は、暫くすると自分が誰かに尾行されている事に気づいた。『先生、誰かに尾行されています。どうすればいいですか?』 火月が有匡にそんなLINEを送ると、彼はこう返事を返して来た。―近くに交番か警察署を見つけたら、一目散にそこまで走れ。 火月はそのメッセージを見た後、すぐさま近くにあった交番へと走った。「すいません、変な人に尾行されています!」「変な人とは?」「あそこ、電柱の陰に居る人です!」(チッ、バレたか。) 火月を尾行していたのは、週刊ルビーの記者・佐々木だった。 彼はその場から逃げようとしたが、その前に警察官から話し掛けられた。「君、ちょっと来てくれるかな?」「は、はい・・」 佐々木は交番で事情聴取を受けた。「どうして、この人を尾行していたの?」「この前、そちらのご家族に取材を申し込もうとしたら、断られまして・・」「取材するのなら、こんな騙し討ちではなく、事前に連絡してくださらないと困ります!」「すいません・・」 警察から叱られた後、佐々木が交番を後にしようとした時、彼の前に火月が立ちはだかった。「僕と、少しお話しません?」 火月が佐々木を連れて行ったのは、自宅だった。「先生、連れて来ました。」「茶も出さずに済まないね。それで、一体どういうつもりでうちの妻を尾行したのですか?」「実は、土御門仁さんについてある噂が飛び交っているのです。」「ある噂、だと?」「はい・・」 佐々木記者から聞いた噂の内容は、信じられぬものだった。 仁が公安に居た頃、色仕掛けで標的を落としたというものだった。「事実無根のものだな。火月、お客様がお帰りだ。」「はい。」「待ってください、まだ話は・・」「貴様と話す事はこれ以上、何もない、去れ。」(あ~あ、後少しだったのに。) 土御門邸から追い出された佐々木は、雑居ビルの中にある週刊ルビーの編集部へと向かった。「おぅ、お帰り!いいネタはとれたか!?その顔じゃぁ、今日もボウズか。」「あちらさんのガードが固過ぎて、もうこっちは手も足も出せませんよ。もう別のネタを捜すしかないっすね。」「そうしろ。」 佐々木さんが出前で注文したラーメンを食べている頃、仁は会員制の高級クラブに居た。「珍しいね、君とこんな所でまた会えるなんて。」 一人の男が仁に話し掛けて来たのは、仁がもうそろそろ帰ろうかなと思った時だった。 声を掛けて来た男とは、仁が捜査の為に“一度だけ”関係を持った事があった。「お久し振りです、・・さん。」 何とかこの場を切り抜けようと、仁は男に向かって愛想笑いを浮かべた。「少し、痩せたかい?」「ええ。」「ねぇ、この後二人きりで飲まないかい?」「すいません、もう帰ります。」 自分の腰を触ろうとして来る男の手を払い除け、仁は高級クラブから出た。 夜の歓楽街を歩きながら、仁は溜息を吐いた。「お兄さん、今ヒマ?」「暇じゃありません。」「そんな事言わないでさ~」「離して下さい!」 仁が酔っ払いに絡まれていると、そこへ俊匡がやって来た。「あ~、やっと見つけた~!」「何、その子知り合い?」「オッサン、人の彼氏に手ぇ出すなよ~」「え・・」 俊匡は仁のネクタイを引っ張ると、彼の唇を塞いだ。「そっか、ごめんね。」 酔っ払いはそう言うと、街中だというのに仁を抱き寄せた。「俊匡、どうしたの?」「ずっと会いたかった・・」「わかった、わかったから!」自分にしがみついたまま離れようとしない俊匡を連れ、仁は近くのビジネスホテルへと向かった。「大丈夫、水飲む?」「うん・・」 仁がミネラルウォーターのペットボトルを俊匡に渡すと、俊匡はその中の水を口移しで仁に飲ませた。「ん・・」「飲んだな。」 俊匡がそう言ってニヤリと笑ったのを見て、仁は嫌な予感がした。「何、熱い・・」「媚薬を飲ませたんだ。」「馬鹿だな、僕がそんなので喜ぶとでも?」 仁がそう言って俊匡をベッドの上に押し倒すと、まるで彼を挑発するかのように、服の上から俊匡の下半身を責め立てた。 荒い息を吐きながら、仁と俊匡は服を着たまま互いの身体を貪り合った。「なぁ、お前会わない内にエロくなったな?」「そう?それよりも、このままだと帰れないでしょう?」「そうだな・・」 俊匡が服を脱いでいると、仁も徐に服を脱ぎ始めた。「俊匡、ずっと僕に会いたかったの?」「あぁ。」 俊匡はそう言うと、仁を己の方へと抱き寄せた。「なぁ、これからも会わねぇ?」「それは駄目。」 ビジネスホテルでの短い逢瀬の後、仁が俊匡と会ったのは、自宅の近くにある道場で行われた剣道教室だった。「お父様~、あのシーンの再現やって~!主人公と斎藤さんが戦う奴!」「え~、出来るかな~!」「面白そうだから、やってみようぜ!」 碧の無茶振りで、仁と俊匡は某剣客漫画の名シーンを再現した。 その時の様子が動画配信アプリで撮影され、大いにバズった。「わたしも混ぜてよ~、そしたらあの“やめんか~”おじさんやったのに~!あ、じゃぁまたやろうか。」「グランパ、それは無理かも・・」 剣道教室があった翌日、仁は風邪をひいて寝込んでしまった。「仁、ちょっといいか?」「どうしたの、父さん?」にほんブログ村
2023年12月30日
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「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。仁が両性具有です。苦手な方はご注意ください。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。「はい碧、ピース!可愛い~、もう一枚!」「グランパ、入学式始まっちゃうから・・」「そうだね。」 入学式の後、碧は教室で一人の少年と出会った。 彼は、銀髪に碧い瞳という、日本人離れをした容姿だった。 周りの子供達が仲良く固まっている中、その少年は独りで寂しく教室の片隅の席に座っていた。「ねぇ、君、名前は?」「優。お前は?」「僕は碧、よろしくね。」「あぁ。」 これが、土御門碧と、殊音優との出会いだった。「碧、お友達出来たか?」「うん。殊音優って子と仲良くなったよ。その子、銀髪で碧い瞳をしていたよ。」「そうか・・」 碧の言葉を聞いた有匡は渋面を浮かべ、思わず碧の手を強く握ってしまった。「痛い・・」「済まない。」(まさか、文観の孫が同じ学校に入学するとは・・)「ねぇ、お祖父様、何を怒っているの?」「怒ってなどいない。ただ、驚いただけだ。」(世間は狭いな。)「珍しいですね、あなたがわたしとお茶を飲みたいなんて。」 帝国ホテル内にあるラウンジで、有匡は文観と対峙した。「お前も知っていると思うが、碧とお前の孫が・・」「ええ、知っていますよ。」 文観は、そう言うと紅茶を一口飲んだ。「あの子・・優は、可哀想な子でね。母親を一月前に亡くして、父親は単身赴任中で離れ離れ。妻に良く似た顔をした優が学校で虐められやしないかと不安でしたが、こうしてあなたとの繋がりが出来て安心しましたよー義兄さん。」「馴れ馴れしくそう呼ぶな。虫唾が走る。」「おお、怖い。」 そう言いながらも、文観は何処か嬉しそうだった。「さてと、もうそろそろ人と会う時間があるのでね、わたしはこれで失礼致します。では、また学校で会いましょう、義兄さん。」 有匡はラウンジから去っていく文観の背中を睨みつけた後、少し冷めたコーヒーを飲んだ。「不味い。」(そろそろ、碧を迎えに行く時間だ。) ふとパソコンのキーボードを打つ手を止め、仁が愛用の腕時計で時間を確かめると、それは四時三十分を指していた。「すいません、もう上がります。」「お~、お疲れ。」「お疲れ様です。」 仕事を終えて警務課から出て廊下を歩く仁の姿を見ながら、喫煙所に居た刑事達が、こう囁き合っていた。―なぁ、あいつだろ?元公安のエースだった・・―“華麗なる土御門家”の御曹司・・―何でも、突然七年前に公安から警務課へ異動したんだと。―いつも定時で帰っているらしいが、女でも居るか?―そうだろう。 仁は碧を迎えに車で学校へと向かっていたが、運悪く渋滞にはまってしまった。「先生、さようなら~」「さようなら~」 碧はスマートフォンのメッセージアプリで仁宛に今日は電車で帰宅する旨を告げ、学校から出て、駅へと向かった。 しかし、彼は電車に乗るのが初めてだったので、自宅の最寄駅までの切符をどう買えばいいのかわからなかった。「どうした、迷子か?」 券売機の近くで碧がウロウロしていると、一人の男性が彼に声を掛けて来た。「わかった、じゃぁおじさんが一緒にそこまでついて行ってあげよう。」「ありがとうございます。」 その男は、優と同じ色の瞳をしていた。「その制服、聖アンジェロ学院だな?懐かしいな~、俺も昔、その制服着てたんだよ。」「そうなんですか。」「なぁ、その目は生まれつきなのか?」「はい。オッドアイっていうんですって。」「学校で虐められていないか?」「いいえ。今、クラスの間で陰陽師の戦隊モノが流行っていて、その主人公がオッドアイなので、友達から羨ましがられます。」「へぇ~」 電車内で碧が男と楽しく話している内に、自宅の最寄駅に着いた。「ご親切にして下さり、ありがとうございました。」「じゃぁな。」 碧が帰宅すると、玄関ホールでは蒼褪めた顔をした父と祖父母の姿があった。「碧、無事に帰って来て良かった!」「心配かけて、ごめんなさい。」「ご飯にするから、手を洗っておいで。」「うん。」 同じ頃、俊匡が実家に一月振りに帰省すると、玄関先で彼は優と熱い抱擁を交わした。「暫く会わない内に大きくなったな?」「あのね、学校で友達が出来たんだ!」「そうか、良かったな。どんな友達なんだ。」「う~んとね、その子は左右目の色が違っていて、右目が碧みがかった黒で、左目が真っ赤なんだ!」「へぇ、そうか。」 俊匡の脳裏に、電車の中で話した少年の姿が浮かんだ。「碧、そろそろ寝なさい。」「あと五分だけ練習してもいい?」「運動会でやるダンスの練習か?」 有匡が水を飲みに、一階のリビングに入ると、そこには液晶テレビの前で、ダンスの練習をしている碧の姿があった。 その曲は、昔大ヒットしたアニメの主題歌だった。「お祖父様、絶対に見に来てね!」「あぁ、絶対に行くよ。おやすみ、碧。」「おやすみ、お祖父様。」 皆が寝静まった土御門邸を、一人の記者が遠くから眺めていた。「Jolly good show,My boy!」 運動会当日、クラス対抗リレーで碧が一位を獲った時、有仁はそう叫び、周囲からひかれていた。「父上、はしゃぎ過ぎです。」「いやぁ~、うちのひ孫格好良い!」 保護者用の観客席ではしゃぐ有仁に有匡が少し呆れていると、そこへ一人の記者がやって来た。「失礼します。土御門有仁さんと、有匡さんでいらっしゃいますね?わたくし、こういう者です。」“週刊ルビー、聞いた事がない雑誌だな。”“どうせ三流のゴシップ誌でしょう。家族と過ごす時間を邪魔するとは、不躾な輩ですね。”「え・・あの・・」 フランス語で突然話し始めた有仁と有匡に面食らった記者は、そのまま警備員によって学院の外から摘まみ出された。「キャ~、碧、こっち見て~!」 いつの間に用意したのか、有仁は自作のうちわを振り、さながらアイドルのコンサートのように歓声を上げていた。「お祖父様、見てくれた?」「うん、見てたよ~!」「父上、はしゃぎ過ぎですよ。恥ずかしいからやめて下さい。」「ひ孫の初めての運動会なんだから、はしゃいで当然だろ!有匡、大体お前は全てにおいて淡白過ぎるぞ!クールビューティーも程々にしないと・・」「昔わたしが対抗リレーで一位を獲った時、拍手で済ませたあなたが言うセリフですか?」「人は変わるもんなんだよ~!」 運動会の後、家族で銀座にあるステーキハウスで仁達が夕食を取っていると、そこへ文観達がやって来た。「おや皆さん、奇遇ですね。」「アリマサ、久しぶり~!」 そう叫んだ神官は有匡に抱きつこうとしたが、有匡に避けられた。「久しぶりに会ったのに、その反応酷くない!?」「相変わらずうるさい奴だな、お前は。」 そう言って溜息を吐いた有匡だったが、その顔が何処か嬉しそうに見えた事に、火月は気づいた。(先生、もしかして・・)「は?親戚付き合いをしたい?」「昔、妹さんとは“色々”とありましたけれど、今なら共通の話題があるし、先生にとっては血を分けた妹だし・・」「まぁ、確かにお前の言う通りかもしれん。」 有匡はそう言うと、火月の隣で横になった。「そういえば、最近ウチの周りをうろついている記者が居るから、もし話し掛けられても相手にするなよ。」「わかりました。」 数日後、有匡は仁と共にPTAの役員会に出席した。 そこには、文観の姿があった。「おや、また会いましたね、義兄さん。」「叔父さん、どうしてここに?」「どうしてって、この学校のPTAの役員になるからに決まっているからでしょう?」「え・・」 火月からああ言われても、どうしても有匡は文観を好きになれないでいた。にほんブログ村
2023年12月27日
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※BGMと共にお楽しみください。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。仁が両性具有です。苦手な方はご注意ください。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。また、あの少年が夢に出て来た。(どうしたの、またお父さんとお母さんとはぐれたの?)―いいえ、違います。母上に会いに来たんです。(母上?)―もうすぐ、会えますね。そう言って仁の薄い下腹を指した少年は、闇の中へと消えていった。「待って!」「仁、意識が戻って良かった!」少年に向かって空へと伸ばされた仁の手は、有匡にしっかりと握り締められていた。「父さん・・ここは?」「お前は、お前を虐めていた同期生達の一人に川へ突き落とされたんだ。」「あぁ・・」“お前の所為で、人生滅茶苦茶だ!”日本橋で自分を睨んで来た、あの男はどうなったのだろうか。「幸い脳には異常なかったが、肋骨が三本折れているから暫く入院するようにと、先生が言っていたよ。」「そう・・」「胎に居るのは、俊匡の子か?」「どうして・・」「最近、お前が煙草を吸わなくなったからな。それに、さっきからはしゃいでいてうるさい。」 有匡には、“人ならざる”ものが視える力を持っている。 それは、先祖から受け継いだものだと、仁は子供の頃有匡から教えられた。「僕は、妊娠しないと思っていたんだよね。でも、まさか妊娠するなんて思いもしなかったよ。」「産むのか?」 仁は、有匡にそう尋ねられると、静かに頷いた。「この子が、夢で僕に会いに来てくれた。」 自分と瓜二つの顔をした、碧みがかった黒と、上質なルビーを思わせるかのような真紅の瞳。(早く、会いたいな・・) 仁はそう思いながら、そっと下腹を撫でた。「父さんは、反対なの?」「お前の考えを尊重するだけだ。父上にこの事を知らせたら、きっと大喜びなさるだろう。」「そうだね。そういえば、グランマってどんな人だったの?」「幼い頃に生き別れたから、余り良く知らなかったが、学生時代に父上と出会って一目惚れしたそうだ。」「一目惚れするのは、ある意味血筋かもしれないな。」「まぁ、そうかもしれんな。」 有匡と仁がそんな事を話していると、そこへ文観がやって来た。「お久し振りですね、二人共。」「ここへは何をしに来た?」「おやおや、わたしは可愛い甥の見舞いに来ただけですよ。」 飄々とした口調でそう言った文観は笑ったが、その目は笑っていなかった。「実は、うちの俊匡が沙穂さんと離婚する事になりましてね。つきましては、あなた方にひとつお願いがあって、こちらに参った次第です。」「お願い、だと?」「ええ。仁君、今後一切俊匡とは会わないで頂きたい。」「わかりました。」「口約束だけでは安心できませんからね、こちらの書類にサインを。」 文観は満面の笑みを浮かべた後、仁に一枚の書類を差し出した。「どうぞ。」「ありがとうございます。」 文観が去った後、仁は涙を堪える為、俯いた。「仁・・」「これで、いいんだ。」「そうか・・」 同じ頃、俊匡は沙穂と離婚届を市役所に出しに行った。「今まで、ありがとう。」「それはこっちの台詞だよ。」「元気でな。」「あなたも。」 市役所の前で沙穂と別れた俊匡は、独り寂しく家路に着いた。「ただいま。」 そう言いながら部屋に入っても、迎えてくれる者は居ない。「今年の正月は、独りか・・」 俊匡は自嘲めいた笑みを浮かべた後、結婚指輪をゴミ箱の中へと投げ捨てた。「明けましておめでとう~!」「おめでとう~!」 川の中へと突き落とされ、肋骨を骨折して入院した仁だったが、無事に退院し、新年を家族と迎えられた。「仁、もう大丈夫なの?」「うん。年末の大掃除しなかったから、ちょっとしてくるね。」「無理しないでね。」 自宅の二階にある自室へと入ると、そこは雑然と散らかっていた。 ゴミ袋に要らない物をどんどん捨てていくと、仁は机の引き出しの奥にしまってあった指輪を見つけた。それは、俊匡と京都市内の宝石店で選んだペアリングだった。(これは、捨てられないな・・) 仁は、そのペアリングに鎖を通して首に提げた。「ふぅ、何とか片付いたな・・」 同じ頃、俊匡も断捨離に勤しんでいた。 そして彼も、ペアリングを見つけ、仁と同じことをした。「仁、もう掃除は終わったの?」「うん。姉さん、その人は誰?」 家族が集まるリビングに戻ると、そこには見知らぬ男性が立っていた。「あたしの夫になる人、マシューよ。」『はじめまして。』『姉の事を、宜しくお願いしますね。』 姉の夫・マシューと挨拶を交わした仁は、何処か不機嫌な顔をしている有匡を優しく宥めている火月の姿を見て、思わず笑ってしまった。『どうしました?』『いえ・・父が、姉をあなたに盗られてしまって、拗ねているのを見てしまったので・・』 仁の言葉を聞いた有匡が、“わたしは拗ねていないぞ”という視線を仁に送った。「もう、いい加減機嫌直して下さいよ、先生。」「うるさい、わたしはあの男をまだ認めていない。」 有匡は、雛の結婚式当日まで不機嫌なままだった。「まぁまぁ、一目惚れはこの家の血筋なんだから。」 「だがな・・」 「もぅ~、パパ、いつまで拗ねてんの?早く行くよ!」 中々教会にやって来ない有匡に痺れを切らした雛が、そう言って有無を言わさず彼を新婦控室から連れ出した。 礼服姿の有匡と共に教会のヴァージン・ロードを歩く姉の姿は、とても綺麗だった。「おめでとう、姉さん。」「ありがとう。」「仁。」 披露宴で仁が雛と話していると、突然背後から声を掛けられ彼が振り向いた先には、俊匡が居た。「俊匡・・」「一緒に踊ってくれないか?」「うん・・」 氷のような文観の視線を感じながら、仁は俊匡とワルツを踊った。「この後、二人で抜け出さないか?」「うん・・」 その日の夜、仁は俊匡に抱かれた。(さよなら、俊匡・・ありがとう。) 空が白み始める頃、仁は俊匡の唇に別れの口づけをして、ホテルの部屋から去った。 月満ちて、この世に生を享けたのは、元気な男の子だった。「おめでとうございます。」 難産の末に漸く会えた我が子をこの胸に抱いた時、仁は涙を流した。「わぁ~、可愛い!」「でしょう、見ていて飽きないよ。」「そうか。仁、もう名前は決まっているのか?」「うん、“碧(あおい)”にしたんだ。」(僕はもう独りじゃない。この子が居るから・・)「イテテ・・」 産後回復の為に歩きなさいと看護師から言われた仁が点滴台を支えに病院の廊下を歩いていると、俊匡の姿を産婦人科で見かけた。 彼の隣には、美しい女性が立っていた。(もう忘れよう。) 仁が病室に戻ると、有匡が碧にミルクを飲ませてゲップをさせていた。「そんなに驚く事はないだろう。」「随分と慣れているね。」「双子のお前達を火月と交代でおむつを替えたり、風呂に入れたり、寝かしつけたりと大変だったんだぞ。仁、辛い時は周りに頼れ。」「うん、わかった・・」 仁は碧の育児を両親や祖父に手伝って貰いながら、慌しい日々を送っていた。「碧、忘れ物は無い?」「うん!」 七歳になった碧は、仁と共に彼の母校である私立名門小学校に入学した。にほんブログ村
2023年12月25日
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素材は、NEO HIMEISM様からお借りしました。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。仁が両性具有です。苦手な方はご注意ください。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。一部加虐描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご注意ください。「う・・」「はぁ、お前の中、きつくて気持ちいい・・」仁が目を開けると、俊匡が己の最奥に欲望を放っていた。「何で、こんな事・・」「仁が好きだからに決まってんじゃん。」「何その自己中DV彼氏みたいな台詞。」仁は痛む腰を擦りながら、ベランダに出て煙草を吸っている俊匡を睨んだ。「父さんと、昼間何を話していたの?」「沙穂と、別れようと思ってさ。」「だからさっき、あんな事を・・」「沙穂は良く出来た女だよ。あいつも仕事しているのに、毎日家事を頑張ってくれてさ・・俺は、とんだ果報者だ。」「どうして、別れるなんて・・」「もう、あいつが子供の事で悩んだり苦しんだりする姿を見たくない。あいつには、あいつの人生がある。」「子供が全てじゃないけど、一人で勝手に決めないで、沙穂さんと話し合いなよ。」「有匡さんと同じ事を言うのは、やっぱり親子だなぁ。あ、前から聞いてみたかったんだけれど、仁の瞳って綺麗な色をしているけれど、それって遺伝なの?」「亡くなったお祖母様・・グランマが英国人でね、隔世遺伝ってやつ?父さんも少し碧が入っているけれど、僕よりは少ないかな。」「ふぅん。俺のお袋、碧い目をしているから、俺も碧い目をしているんだよね。その所為で子供の頃に虐められていたけど、気にはならなかったよ。」「僕もそうだったかなぁ。姉さんは金髪紅眼だから、中学・高校の時に生活指導の先生から黒染め指導されていたよ。まぁ、姉さんはフィギュアスケートしていたから、窮屈な日本を飛び出して、海外に行ったから今の成功があるんだけどね。」「仁も、スケートしてたの?」「うん。中学入る前に辞めたよ。才能なかったからね。それで、自然と警察官になったんだ。」「そうか。でも、警察学校を卒業した後、何処に行っていたんだ?」「警察大学校。そこは厳しかったけど、辛くはなかった。でも・・同期生からの、虐めは辛かったなぁ・・」仁はそう言って煙草を吸った後、唇を噛んだ。「仁・・」キャリアの、しかも“大物”である祖父と父を持った仁をやっかんだりする輩は少なからず居るだろうと思っていたが、彼がいじめに遭っていた話は初めて聞いた。「まぁ、やられた事は私物隠されたり、壊されたり・・顔以外の所を殴られたりしたな。反撃はしたけれど、あいつらはいつも、僕に責任を押し付けて来た。」今でも、悪夢にうなされる、虐めの記憶。中でも一番酷かったのは、性的なものだった。風呂に入っている時に下着や服を盗まれたり、捨てられたり、裸を勝手に撮られたりした。そして、あの嵐の夜―「どうした、仁?」「ううん、何でも・・」仁の煙草を持つ手が震えている事に気づき、俊匡はそっと彼を抱き締めた。「大丈夫、ここにはお前を傷つける奴は誰も居ないよ?」「うん・・」仁は深呼吸すると、あの嵐の夜の出来事を話し出した。その日、仁は警察学校時代の友人と酒を飲んだ後、寮の部屋で寝ていた。外から激しい雷鳴と雨音が聞こえ、仁が目を覚ますと、そこにはいつの間にか自分を虐めていた同期生の五人組グループが居た。彼らは結束バンドで仁の両手首を拘束し、容赦なく仁を犯した。嘔吐し肛門から出血している仁を嘲笑いながら、彼ら、いや奴らは仁を性欲処理用の人形のように雑に扱った。殴られ、意識を失う前に仁の瞼の裏に焼き付いたのは、奴らが着ていた青いシャツだった。有仁と有匡は、仁の事件を内密に処理し、公にする事はなかった。その後遺症で、仁は青いシャツを着る事はおろか、見る事すら出来なくなった。「僕は・・あんなのは、“悪ふざけ”だと、“体育会系の悪ノリ”だと、自分に言い聞かせて来た。そうされるのは、僕が弱いからと、思っていた。」仁は俊匡の腕の中で、激しく小刻みに震えた。「あの日、僕が酒で酔っていなければ・・僕が隙を見せたから・・」「お前は悪くない。」俊匡は過呼吸になりそうな仁の背中を、まるで赤子をあやすかのように優しく、トントンと一定のリズムで叩いた。仁はやがて、俊匡の腕の中で眠った。「大丈夫だよ、仁。」翌朝、俊匡が起きると、隣に仁の姿は無かった。「おはよう、二人共。良く眠れたかい?」「はい・・」ホテル内のレストランで有仁からそう声を掛けられた俊匡は、少し気まずくなった。「仁は?」「あの子なら、有匡とわたし達の部屋で話しているよ。その様子だと、仁の事件を知ってしまったんだね?」「はい。」有仁は俊匡の言葉を聞くと、渋面を浮かべた。「実は、こんな動画がネット上で拡散されてね。」 有仁がそう言って俊匡に見せたのは、あの事件の動画だった。「何で、こんなのが・・」「この前、わたしが警察庁に来たのは、仁を虐めていた同期生達の処分をする為だよ。彼らは皆、懲戒処分にした。」「多分、その内の一人が、逆恨みでこの動画をネットに上げた・・」「俊匡君、仁はまだあの時の苦しみや痛みを抱えている。どうか、あの子を支えてやってくれ。」「仁を支えるのは、俺だけではなく、あなたも有匡さんもでしょう。」「そうだね。」有仁と俊匡がそんな話をしていると、コートのポケットに入れていたスマートフォンが鳴っている事に俊匡は気づいた。その頃、仁は有匡と向かい合うような形でソファに座っていた。「本気なのか、裁判をするという事は、お前は今まで隠していた恥部を晒け出す事になるんだぞ?」「それでもいい、一生あの時に奴らに与えられた痛みに苦しむ位なら。」仁はそう言うと、シャツの袖を捲って有匡に手首の傷をつけた。「今はもう目立たなくなっているけど、あの事件の後は死にたいと思っていた。」「済まなかった、仁。わたしはお前と向き合う事をしなかった。」「いいんだよ、謝らなくても。」仁は、生まれて初めて父と抱擁を交わした。「裁判となると、長くて辛い戦いになるぞ。」「それは、覚悟しているよ。」こうして、仁は自分を虐めていた同期生達を訴える事にした。裁判に勝つまで、有匡の言葉通りそれは長く辛いものとなった。ネット上には仁に対する誹謗中傷で溢れ、殺害予告までされるようになった。それでも、仁は歩みを止めなかった。「大丈夫?あんた顔色悪いわよ?」「そうかな?」年末に火月と共に日本に帰国した雛からランチに誘われ、仁がメニューを見ていると、何処からかコーヒーの良い香りがして、それが自分の鼻先をくすぐった時、彼は激しい吐き気に襲われた。「大丈夫なの、本当に?」「大丈夫、ストレスの所為で消化不良になっているだけだから。」「そう。」雛にはそう言って笑って誤魔化した。「パパから裁判の事、聞いたよ。勝ったんだってね。」「うん・・」「嬉しくなさそうね。」「裁判が終わった後、相手の一人に、“人の人生壊して楽しいか?”って、詰られたんだよね。僕は、“それはこっちの台詞だ”って言ってやった。」「やるじゃん。あんたも強くなったねぇ。子供の頃は、泣き虫でいつもあたしの後をついて回っていたもんね~」「ちょ、いつの話だよ!?」姉は、いつも仁の心を明るくする太陽だった。母が、闇に包まれていた父の心を照らしたように。「あ~、楽しかった。僕も姉さんみたいになりたいなぁ~」「無理だね。あんたは太陽になれない。でもさ、あんたは太陽にはなれなくても、月にはなれるよ。」「月?」「そう、月。悩んでいる人や苦しんでいる人に優しく寄り添う、月のような存在だよ、あんたは。」「なれるかなぁ・・」「なれるって!あんた、何泣いてんの~!もう、泣き虫なのは昔から変わってないね~!」「う、うるせぇ!」雛とカフェの前で別れた仁が日本橋を歩いていると、突然彼は誰かに腕を掴まれた。「お前の所為で、人生滅茶苦茶だ!」一方的に男に罵声を浴びせられ、首を絞められた仁は、男と揉み合ったはずみで川の中へと落ちてしまった。にほんブログ村
2023年12月22日
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素材は、NEO HIMEISM様からお借りしました。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。仁が両性具有です。苦手な方はご注意ください。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。性描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご注意ください。「え、えぇぇ・・」「ちょ、あの・・」有仁は自分が投下した爆弾発言を聞いた仁と俊匡の反応を見て、嬉しそうに笑った。「どうやら、図星みたいだね。」有仁はそう言って満足そうに笑うと、有匡の肩を叩いた。「有匡、そろそろ行こうか?」「はい、父上。」有仁が椅子から立ち上がると、周囲がざわめいた。『またね、仁。』仁にキスとハグをした有仁は、有匡と共に食堂から去って行った。「何だったんだろうね、グランパ。」「さぁな。それよりも仁、何処か静かな場所へ行かないか?」「うん・・」俊匡に手をひかれて連れて行かれたのは、駐車場に停めてある彼の車だった。「どうして、こんな所に?」「どうしてって、こういう事をしたいからに決まっているだろ。」「ん・・」俊匡は仁を車の後部座席へと押し込むと、彼の唇を塞いだ。「やめっ・・」「もう、我慢できねぇっ!」俊匡はそう叫んで唸ると、仁の両手首を手錠で拘束し、その上にネクタイで目隠しした。白くて雪のような仁の肌に、俊匡は薔薇色の痕をつけた。「ここ、こんなに濡れているぞ。」仁のズボンを下着ごと脱がせると、蜜で濡れそぼっている秘所へと俊匡は指と舌を這わせた。「やだ・・」「仁、ごめんな、意地悪しちゃったな。」俊匡が仁の目からネクタイを外すと、切れ長の碧みがかった黒い彼の瞳が、俊匡を睨んだ。「今度は、お前の好きにしていいから。」「そう。じゃぁ遠慮なく。」仁は俊匡の股間の前に屈み込み、ズボンのジッパーを下ろすと、躊躇いなく彼の魔羅を喉奥まで咥え込んだ。「うっ・・」容赦なく激しく吸い上げられ、俊匡は仁の口内に欲望を吐き出した。仁は生臭いそれを、喉を鳴らして嚥下した。桃色の唇に少しだけ飛び散ったそれを見た俊匡は、再び己の魔羅が熱くなるのを感じた。「俊匡・・」仁はゆっくりと俊匡の上に跨ると、今まで誰にも暴かれた事がなかった膣の中に、俊匡の魔羅を迎え入れる為、腰を深く下ろした。「ん~、んん~!」「仁・・」「俊匡、好き・・」仁はそう言って俊匡に微笑んだ。「動くぞ・・」「うん・・」仁は俊匡から激しく突き上げられ、甘い嬌声を上げた。「もう・・」「俊匡、お願い・・」脳髄が焼き切れるかのような激しい快感の波に襲われ、俊匡は意識を失った。誰かが、闇の中で泣いている。(何だ?)仁が、泣き声がする方へと向かうと、そこには一人の少年が膝を抱えて泣いていた。『どうしたの?』―父上と母上と、はぐれてしまったのです。そう言った少年の顔は、自分と瓜二つだった。(あぁ、この子は・・)『大丈夫、わたしが一緒に君の父君と母君を捜してあげるからね。』(かたじけのうございます。)少年の小さな手を握った時、仁は不思議な夢から覚めた。「仁、大丈夫か?」「うん・・」仁が起きて辺りを見渡すと、そこはラブホテルの一室のようで、ベッドがやたら大きく広かった。「ここは・・」「あのままにしておけなかったから、ここに避難して来た。あ、ラブホじゃないから安心して。」「そう・・」 俊匡からミネラルウォーターのペットボトルを受け取った仁は、キャップを捻って開けた後、それを一口飲んだ。「身体、辛くないか?」「僕を車内に監禁して手錠で束縛した上に目隠しした張本人がそれを言う?」「本当に、すいません・・」俊匡は急にいたたまれなくなり、全裸で仁に土下座した。「いや、もうそんなのいいから・・」仁が呆れたような顔で土下座する俊匡を見ていると、スマートフォンが鳴った。(何だろう?)仁がスマートフォンのスリープモードを解除すると、LINEの通知が三百件も来ていた。「え・・」「どうした?」「グランパから、めっちゃメッセージ着ているんだけど・・」“お~い、今楽しんでる?”“シャンパン冷やして待ってるよ。”“あ、それとも赤飯がいいかな?”「父上、いつまでやっているのですか?」「ん~、仁から中々返事が来ないから、こんな時間までLINEしてたら、バッテリーが20%しかない。」「馬鹿なんですか、あなた。」年甲斐もなく孫の恋バナにはしゃぐ父親を、有匡は冷めた目で見ていた。「あ、そういえば、来週友人のお孫さんの結婚式があるから、礼服用意しておいてね。」「急に言われても・・それに、まだ出席するとは・・」「行くよね、ね?」有匡はこの時思い出した、父が人の話を全く聞かない奴だという事を―「わぁ~、美味しそ~、写真撮ろ、写真!光弱い、光!」礼服姿でスマートフォン片手にスイーツを様々な角度で撮りながらはしゃぐ有仁を、有匡は遠巻きに眺めていた。「済まないな、仁。折角の休みの日に来て貰って。俊匡君も。」「昨夜、“来週結婚式来ないとお前達の黒歴史を全世界に公開しちゃうぞ、ミャハ!”と、ふざけたLINEが来たので仕方なく・・」「そうか。俊匡君、沙穂さんはどうしている?」「あいつなら、高校の同窓会とか言って、地元に帰っています。」そう言って目を伏せた俊匡の様子を見て、有匡は甥夫婦の関係が上手くいっていない事に気づいた。(まぁ、“あの二人”が舅姑だからな・・)自分の妹・神官こと艶夜と、彼女の夫でもあり自分の義弟でもある文観こと弘真。皮肉な事に、妹は警察の不倶戴天の敵―暴力団、所謂ヤクザの元に嫁いだ。それからは、妹夫婦とは没交渉になっているが、俊匡の結婚式の時に一度だけ顔を合わせた事があった。「うちの組はあたしらの代で終わりにするから、安心してよ。」「お前はそう言うが、あいつが・・」「弘真もいいって言っていたよ。まぁ、息子達にはカタギとして生きて欲しいからね。」「そうか。」「まぁ、ウチの爺が生きていたら、の話だけど。」弘真の父・真彦は、“昔ながらの”ステレオタイプのヤクザで、昨今の現状を鑑みて、組を解体しようと考えていた。『もう昔のような、ヤクザが大手振って歩けるような時代じゃねぇ。』その真彦がコロナで亡くなり、組長が弘真となった時から、組の中で“早く跡継ぎを”という声が上がって来た。しかし、俊匡と沙穂の間に中々子が授からず、不妊治療外来を二人が受診した際、沙穂が自然妊娠しにくい身体だという事が判った。俊匡には、弟の弘匡が居るが、彼は高校を卒業して絶縁同然に家出して、現在消息不明だ。「沙穂と、別れようと思っているんですよね。彼女には、彼女の人生がある。」「一度、彼女と話し合え。」「はい・・」その日の夜、有匡達は結婚披露宴があった京都市内のホテルに泊まった。そのホテルには、室内露天風呂が部屋にあった。その湯船に二人で浸かりながら、仁と俊匡は今後の事を話し合った。「なぁ、俺が離婚したら、一緒になってくれる?」「それは、出来ない・・」「何で?こんなに濡れているのに?」俊匡は仁を己の膝上に抱き上げると、前戯も無く己の魔羅を仁の膣に挿入した。「このまま、中に出すぞ!」「あ、やだ・・」俊匡は気を失った仁を褥の上に寝かせると、そのまま彼の上に覆い被さった。にほんブログ村
2023年12月21日
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素材は、NEO HIMEISM様からお借りしました。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。仁が両性具有です。苦手な方はご注意ください。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご注意ください。「そうだったの。その人ってどんな人?」「俺の従兄弟。ガキの頃は良く遊んでいたけれど、警察学校を卒業してから疎遠になっていたんだ。」「そう・・」俊匡は洗濯物を畳みながら、警察学校の入学式の事を思い出していた。真新しい制服に身を包み、期待と不安に胸を膨らませていたあの頃、何も怖いものはなかった。厳しい訓練の日々の中でも、仲間達と切磋琢磨し合っていた頃は、懐かしかった。だが、仁はどうだったのだろう。新入生総代として入学式で壇上に上がった仁は、誰よりも凛々しく、美しかった。三代続いて警察官―キャリアの一族に生まれた彼にとって、その重責はどんなに辛かったのだろうか。「どうしたの、ボーっとして?」「ちょっと、昔の事を思い出してさ・・」「警察学校時代の時の事?」「まぁ・・な。」「お休み。」「うん、お休み。」妻・沙穂が寝室へと入った後、俊匡はスマートフォンで一枚の写真を見ていた。それは、警察学校時代の卒業式のものだった。仁と二人で撮った写真は、これだけだった。あれから、今まで仁に何があったのか俊匡は知らない。ただ、彼が今の世では幸せになって欲しいと思っている。その日の夜、俊匡は“昔”の夢を見た。幕末の動乱の中、束の間の幸せを感じていた頃のものだった。『なぁ、もし生まれ変わったら、どうする?』『う~ん、そうだなぁ・・また、お前と会いたいなぁ。』甘い情事の後、そんな睦言を言い合いながら、決して結ばれぬ我が身を恨んだ。もし、自分が維新志士ではなかったら。もし、彼が新選組隊士ではなかったら。ありもしない、“もし”を色々と考えながら、仁との関係に溺れていった。そんな蜜のような甘い関係が終わったのは、函館で再会した時だった。『仁・・』『俊匡・・』砲撃が轟く中、仁と刃を交えたが、仁はその場で自害した。何とか彼を救おうとした俊匡だったが、仁は彼の腕の中で息を引き取った。“俊匡、ごめん・・”“愛している、仁。生まれ変わっても、俺はお前を愛し続ける。”(未練がましいよなぁ・・)もう、仁との関係は終わった筈なのに、今でもその関係を望んでいるなんて、自分の女々しさに俊匡は笑ってしまった。朝日を浴び、俊匡はその時自分の頬が涙に濡れている事に気づいた。(会いたい・・仁。)「最近、食べているのか?顔色、悪いぞ?」「うん、まぁね・・」自分と瓜二つの顔をした有匡は、そう言って蒼褪めた顔をしている仁を心配そうに見た。「最近仕事が忙しくて・・」「まさか、また悪夢を見たのか?」有匡は、そっと仁の手を握った。「昨夜、親戚の爺共に薬を盛られそうになって襲われそうになったけど、未遂で終わったよ。」「そうか・・」有匡の眉間に皺が寄るのを見た仁は、慌ててこうつけ加えた。「あ、俊匡に助けて貰ったよ。」「俊匡に?」あ、地雷踏んだな―仁はそう思いながら、食べ終わった食器をシンクで洗い始めた。有匡と、有匡の父・文観は犬猿の仲だった。というのも、二人の間には“色々”とあったらしく、従兄弟同士であるのに、学校や教会の集まり以外では、余りというよりも、親戚付き合いは皆無に等しかった。だから、俊匡と警察学校で再会した時は驚いた。それに、彼と寮が同室だったので、人見知りだった仁は助かった。警察学校の地獄のような半年間を経て、仁は警察大学校へ入学した。しかし、そこで仁は同期生達から陰湿ないじめを受けた。偉大な祖父と父を持つ仁は、否応がなしに周囲から注目され、期待された。それが仇となった。教官に何度も相談したが、取り合って貰えなかった。そして―(思い出すな。もうあれは終わった事だ。)そう自分に言い聞かせながら、仁は大きく深呼吸した。「仁、大丈夫か?」「うん・・」「そういえば、昨夜火月から連絡があってな。年末に雛と帰って来るらしい。」「姉さんが!?」双子の姉・雛(すう)は、母・火月(かげつ)と共にロンドンで会社を経営していて、日本に帰って来るのは半年に一度だけだった。「コロナ禍で、二人が日本に帰って来るのは三年振りだな。」「うん。姉さんとは時々スカイプで話しているけれど、やっぱり顔を合わせて話した方が良いなぁ。」「そうだなぁ。」母と姉の話をしていると、自然と有匡と仁は笑顔になる。「じゃぁ、行って来るよ。」「気をつけてな。」有匡に見送られ、仁は“職場”へと出勤した。通勤・通学ラッシュを過ぎた地下鉄の車内は、少し空いていた。『すいません、警視庁はどちらの駅で降りればよろしいでしょうか?』『桜田門で降りればすぐですよ。』『ありがとう。』十代後半と思しき少年は、仁に礼を言った後、隣の車両へと向かった。(何だったんだろう、あの子?)仁が警察庁の中に入ると、一人の男性が何処か困惑した様子で受付の前を行ったり来たりしていた。『どうかされましたか?』『済まない、孫に会いに来たんだが、何処の部署なのかわからなくてね。』そう言って仁の方を振り向いた男性は、祖父・有仁だった。「どうして、日本に?」「サプライズさ。というのは嘘で、有匡からお前の様子が少し変だと連絡を受けて、昨日来たんだよ。」「そうなの・・」有仁と共に廊下を歩いていた仁は、擦れ違う同僚達が恐怖で蒼褪めている事に気づいた。(何だ?)「ひ、ひぃ~!」「失礼だなぁ、まるで人を幽霊みたいに。」「ねぇお祖父ちゃん・・」「グランパと呼びなさい。」「グランパ、本当に“偶然”ロンドンから来たの?もしかして・・」有仁は突然仁の唇に己の人差し指を押し当てた。「大丈夫、お前は何も心配しなくてもいいよ。」(そう言われてもなぁ・・)仁が自分の席で書類仕事をしていると、有匡がそこへやって来た。「仁、今いいか?」「わかった。」仁が有匡と共に喫煙所へ向かうと、そこに居た刑事達が二人の姿に気づき、そそくさと去っていった。「ねぇ父さん、どうしてグランパを呼んだの?」「父上は、“孫馬鹿”だからな。」有匡はそう言うと、紫煙と共に溜息を吐き出した。「ふぅん・・」寡黙な父は、それ以上何も言わなかった。「仁、お前をいじめていた奴等には、それ相応の“落とし前”をつけさせたからね。」ニコニコとそう言って食堂でコーヒーを飲んでいる有仁の姿を、周囲の人々は遠巻きに見つめていた。仁が周りを見渡すと、自分達が座っているテーブルの周囲には、誰も座っていなかった。「グランパ、どうして・・」「いやぁ、孫に恋のロマンスが訪れたと聞いてね。」仁は有仁の言葉を聞き、思わずコーヒーを噴き出してしまった。「父さん・・」「相手が誰なのかは知らないが、わたし達には隠し事は出来ないぞ。」「わたしを巻き込まないでくれませんか、父上。」「あの~、ここ座ってもいいですか?」二人のやり取りを見ていた仁は、自分達のテーブルに俊匡がやって来る事に全く気づかなかった。「おや、トシじゃないか。会わない間に随分と大きくなったね。」「あ、有仁さん、お久し振りです。」「父上、俊匡と知り合いなのですか?」「知り合いも何も、わたしの可愛い孫だから。」語尾に音符がつきそうな口調でそう言った有仁は、新たな爆弾を投下した。「それで、二人共付き合っているの?」にほんブログ村
2023年12月19日
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※BGMと共にお楽しみください。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。仁が両性具有です。苦手な方はご注意ください。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご注意ください。その日は、父方の親族の法事があった。生前親しくなかったが、多忙な父の代わりに土御門仁は出席する事になった。「済まないな、仁。あの人達の顔なんて見たくないだろうに・・」「大丈夫、顔だけ出してすぐに帰るから。」父・有匡を安心させる為にそう言った仁だったが、法事の後、彼は案の定親族に絡まれた。「やっぱりお前は、有匡に似ているな。」「そうですか?」「あぁ・・」その時、親族の男達の顔が、一瞬獣のように見えた。「血は、争えんな。」嫌な予感がして仁が部屋から出ようとすると、急に力が入らなくなった。(何だ・・?)「お前の父親は、色仕掛けで出世したんだ。」「あの雌狐め・・」男達に襲われそうになり、仁は激しく抵抗して、部屋から飛び出した。エレベーターホールで仁がエレベーターを待っていると、そこへ一人の青年がやって来た。「大丈夫ですか?」「はい、何とか・・」仁はそう言って青年の顔を見ると、彼は自分の従兄弟の、俊匡だった。「何だ、お前か・・」仁はそう言った後、破顔して俊匡の方に倒れ込んで来た。「おい、しっかりしろ!」俊匡は仁を起こそうとしたが、彼は荒い呼吸を繰り返して、苦しそうだった。「薬、盛られてたかも・・」「立てるか?俺、ここのホテルに部屋を取ってるから。」「うん・・」俊匡が仁を自分の部屋へと運ぶと、仁は俊匡に抱きついて来た。「どうした!?」「身体、熱い・・」仁はそう言うと、おもむろに服を脱ぎ出した。「え、ちょっと待って!」「待てない。」仁は俊匡の唇を塞いだ。「ずっと、こうしたかった・・」「俺も・・」媚薬の所為なのかどうかはわからないが、仁は俊匡に抱かれた。(何だろう、この感覚・・)俊匡に抱かれている間、仁は不思議な感覚に陥っていた。前にも、あったような気がする。“愛している、仁。もし生まれ変わっても、俺は・・”血だらけで自分に向かって手を伸ばした俊匡の笑顔を、今になって仁は思い出してしまった。「仁、ごめん、辛かったか?」「違う・・」仁は、溢れ出る涙を止めようとしたが、出来なかった。その様子を見た俊匡は、彼が前世の記憶を取り戻している事に気づいた。「仁、ごめんな。“あの時”、お前に辛い想いをさせたまま逝かせて・・」「ずっと、謝りたかった・・」勝手に誤解して、袂を分かった癖に、最後は泣いて縋って―何て狡い奴だろうと、仁は我ながら思った。「いいんだよ、こうして会えたんだし・・」「ありがとう・・」仁は、俊匡の腕の中で蕩けた。「昨夜はごめん・・迷惑かけて・・」「有匡さんによろしく。これ、俺のLINEのIDと電話番号。何かあったら、連絡して。」「うん・・」「じゃぁ、また。」自分の髪を優しく梳いてくれた俊匡の薬指には、指輪が光っていた。(どうして、いつも僕は・・)もっと早く、記憶を取り戻さなかったんだろう。そうしたら、彼と・・「うっ・・」胸の奥に閉じ込めていた、過去の傷が疼き出した。「雨、か・・」ポツリ、と窓ガラスを濡らす雨粒を見ながら、天が自分の代わりに泣いてくれるのだと思った。「ただいま。」「お帰りなさい。出張、どうだった?」「まぁまぁかな。でも、久し振りに大切な人に会えて、嬉しかったよ。」にほんブログ村
2023年12月15日
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