薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
薄桜鬼 薔薇王腐向け転生昼ドラパラレル二次創作小説:◆I beg you◆ 1
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 10
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
黒執事 平安昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:蒼き月満ちて 1
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~ 1
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
F&B×天愛 異世界転生ファンタジーパラレル二次創作小説:綺羅星の如く 1
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
黒執事 BLOOD+パラレル二次創作小説:闇の子守唄~儚き愛の鎮魂歌~ 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 1
天上の愛地上の恋 大河転生昼ドラ吸血鬼パラレル二次創作小説:愛別離苦 1
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
火宵の月 吸血鬼転生オメガバースパラレル二次創作小説:炎の中に咲く華 1
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
火宵の月異世界転生昼ドラファンタジー二次創作小説:闇の巫女炎の神子 0
FLESH&BLOOD 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の騎士 1
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 3
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 7
F&B 現代昼ドラハーレクインパラレル二次創作小説:恋はオートクチュールで! 1
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 1
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 2
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 3
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD 帝国ハーレクインロマンスパラレル二次創作小説:炎の紋章 3
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天愛×腐滅の刃クロスオーバーパラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 1
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 6
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 6
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
FLESH&BLOODハーレクインパラレル二次創作小説:海賊探偵社へようこそ! 1
天愛×相棒×名探偵コナン× クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 1
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 2
天上の愛地上の恋 BLOOD+パラレル二次創作小説:美しき日々〜ファタール〜 0
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOIヴィク勇火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 1
YOI×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:氷上に咲く華たち 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
刀剣乱舞 腐向けエリザベート風パラレル二次創作小説:獅子の后~愛と死の輪舞~ 1
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 2
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
天上の愛地上の恋現代昼ドラ人魚転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 2
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 1
F&B×薄桜鬼 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:北極星の絆~運命の螺旋~ 1
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・愛の螺旋 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「君が、伯母様の・・」「伯母様から、あなたの話を聞いていましたよ。特に、美しい翠の瞳の事を。」 そう言って椅子から立ち上がった少年は、ビセンテの頬を撫でた。「僕はアンジェと申します。」「伯母様は、一体何故・・」「僕は、産まれてすぐ母に捨てられました。父親は、何処の誰なのか知りません。」 アンジェはそう言うと、ワインを一口飲んだ。「母の存在を僕が知ったのは、あの人が処刑される一月前の事でした。」 アンジェは、ビセンテ達にラウルと会った時の事を話した。「お前が・・」 ラウルは、自分と瓜二つの顔をした息子を見て笑った。「母上、どうして僕を捨てたのです?」「お前を産んだのは、わたしの罪。」 ラウルには、かつて愛していた男が居た。 だが、互いの想いが通じる前に、ラウルは一人の男に犯された。 その男はパルマ公の親族であるラウルに求婚し、断られた腹いせに彼女を襲ったのだった。 その後、ラウルは地獄のような苦しみを味わった末に、アンジェを産んだ。 アンジェは男女両方の証をその身に持っていた。「アンジェ、お前にひとつ頼みがある。」 ラウルは、胸の谷間からある物を取り出した。「“これ”を、使いなさい。」「はい・・」 夕食の後、ビセンテが自分の部屋で休もうとしていると、そこへアンジェがやって来た。「どうした?」「眠れなくて・・」 アンジェは、そう言うとワインをビセンテに飲ませた。 ビセンテは、そのまま眠ってしまった。 彼が目を覚ましたのは、寝台の激しい揺れと、女の喘ぎ声が聞こえたからだった。「あぁっ、いい!」 自分の上に跨っているアンジェはそう言って絶頂に達した。「何をしている?」「カイト様が妊娠しているから、僕が相手をしてあげる。」「やめろ・・」「あの人は僕に、“あなたの子を産め”と最期に頼んだ。」「伯母様が?」「自分の血を絶やしたくないから、と。あの人らしいでしょう?」「やめろ!」「あぁ、また大きくなって来た。身体は正直だね。」 そう言って笑うアンジェの姿が、ラウルと重なって見えた。「やめろ・・」 ビセンテはアンジェを自分から引き離そうとしたが、自分のものをアンジェはきつく締め付けた。 ビセンテは、己の意思に反してアンジェの中に欲望を迸らせてしまった。「アンジェさん、余り食べていないようですが・・」「申し訳ありません・・」 アンジェはそう言うと、口元でハンカチを押さえた。「お医者様に診て頂いた方が・・」「いいえ、病気ではないので・・」 アンジェの言葉を聞いた海斗は、ゴブレットを引っくり返してしまった。 白いクロスに、赤い染みが徐々に広がっていった。 それは、まるで血のようだった。にほんブログ村
2022年09月30日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「お前は、最初にあった時より美しくなったな。」「ジェフリー、あなたには色々と良くして貰ったのに、お礼ひとつもしないでごめんね。」「いいんだ。」「カイトから離れろ、ロックフォード。」背後からビセンテの氷のような声が聞こえ、海斗とジェフリーが同時に彼の方を見ると、ビセンテは怒りに燃える瞳でジェフリーを睨んだ。「お願いビセンテ様、ジェフリーを邪険にしないで。彼は、気を失った俺を部屋まで運んでくれたんだ。」「そうか・・カイト、身体は大丈夫なのか?」「うん。病気じゃないから。」「それは、つまり・・」「来年の八月頃には産まれるって、産婆さんから聞いたよ。」「良かった。」「ねぇビセンテ様、お願いがあるんだ。ジェフリーを、プリマスへ連れて行って。」「何故だ?」「この前、あの子が、一度でも良いから海を見たいって言ったから・・」「わかった。ロックフォード、ジェフリーを宜しく頼む。」「あぁ、わかった。俺が、ここに来たのは別の用があるからだ。」「別の用?」「ロンドンで、こんな物がばら撒かれているのを見つけてな。」ジェフリーは、そう言うと海斗にある物を見せた。それは、海斗とビセンテへの誹謗中傷が書かれた文書だった。「一体誰が、こんなものを・・」「さぁな。この文書よりも、気になる事があってな。実はロンドンを発つ前、トレド家に仕えていた男が、一人の少年を連れている姿を見たんだ。その子は、ラウルにそっくりだった。」「伯母様に、子供は居ない筈・・」「だが、居たんだ。あの子供の事を俺の知り合いに探って貰っているが、何か嫌な予感がする。」ジェフリーはそう言うと、前髪を鬱陶しそうに掻き上げた。「とにかく、暫く様子を見て、ロンドン行は延期した方がいいな。」「ねぇジェフリー、ひとつ聞きたい事があるんだけれど・・」「何だ?」「プリマスの皆は元気にしている?」「あぁ。ナイジェルは、最近体調を崩して寝込んでいる。」「どうして?滅多に体調を崩さない人なのに・・」「風邪をひいたと言っているが、俺は違うと思う。」そう言ったジェフリーは、何処か苦しそうな表情を浮かべていた。「お母様、お客様がいらっしゃるの?」海斗の寝室の扉が開き、黒髪の巻き毛を揺らしながら一人の少女が部屋に入って来た。「ミランダ、今まで何処に行っていたの?」「遠乗りに行って来たの。」「ミランダ、こちらはお母様のお友達のジェフリー=ロックフォードさんよ。」「初めまして。」「美人に育ちそうだな。」「娘に手を出したら許さんぞ、ロックフォード。」「ビセンテ様、落ち着いて・・」「奥様、旦那様、夕食の用意が出来ました。」「わかったわ。」海斗達がダイニングルームに入ると、そこにはジェフリーが話していた少年の姿があった。「初めまして、ビセンテ様。」少年は、そう言った後じっと黄金色の瞳でビセンテを見た。にほんブログ村
2022年09月29日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。ラウルは、国家反逆罪で逮捕され、斬首刑に処される事になった。「人殺し!」「悪魔め!」 粗末な馬車に乗せられ、ラウルは沿道に居た人々から石を投げられ、罵倒された。 だがラウルは泣き喚いたりせず、口元に笑みを浮かべていた。「早く行け!」 獄吏に急かされたラウルは、着ていたドレスの裾を踏んで無様に転んでしまった。 処刑場に集まっていた民衆がそんな彼女の姿を見てどっと笑った。 処刑台へと進んでいったラウルは、黄金色の瞳で民衆を睨みつけると、彼らに向かってこう叫んだ。「この肉体が滅んでも、わたしの魂は何度でも甦る!」 それが、彼女の最期の言葉だった。 ヤンは、女主人の首が胴体から離れた瞬間を見届けた後、ある場所へと向かった。 そこは、処刑場から少し離れた宿屋「蠍亭」だった。「“あの方”を迎えに来た。」 ヤンがそう宿の主人に伝えると、彼は黙ってヤンを二階の部屋へと案内した。「遅かったな。」 ヤンが部屋に入ると、そこには退屈そうに髪を弄っている少年の姿があった。「先程、お母上の最期を見届けました。」「そう。」 その少年は、母親譲りの黄金色の瞳でヤンを見た。 彼の名は、アンジェ。 ラウルが、この世に産み出した魂の分身だった。「これから、どうするの?」「さぁ、俺にもわかりません。」「ジェフリー様、どちらにおられますか~!」「ジェフリー様~!」 自分を捜している侍女達を木の上から眺めていたジェフリーは、突風に襲われバランスを崩し、木から地面へと真っ逆様に落ちてしまった。 しかし、彼の身体が地面に激突する前に、一人の男が彼を受け止めた。「全く、とんだやんちゃ坊主だな。」 そう言って自分を見つめた蒼い瞳をした男は、美しい金髪をなびかせていた。「ジェフリー!」「カイト、久し振りだな。元気にしていたか?」「うん。」 ジェフリーはそう言うと、カイトの手の甲に口づけた。「母様は、この人を知っているの?」「うん、この人はジェフリー=ロックフォード。あなたの・・お父さんだよ。」「え・・」「今まで、ずっと黙っていてごめんなさい。」 海斗は震える声でそう言うと、その場に崩れ落ちた。「ねぇ、本当にあなたが、俺の父様なの?」「あぁ。」 ジェフリーは、初めて自分と瓜二つの顔をした息子を抱き締めた。「ロックフォード様、奥様がお呼びです。」「わかった。」 ジェフリーが海斗の寝室に入ると、彼女はジェフリーに微笑んだ。「急に倒れたから驚いたぞ。」「ごめんね、ジェフリーの事を黙っていて・・」「謝るな。」「すっかり老けたね、ジェフリー。」にほんブログ村
2022年09月28日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。 夏の宴から、海斗はジェフリーの様子がおかしい事に気づいた。「ご馳走様。」「ジェフリー、どうしたの?」 海斗がジェフリーにそう尋ねても、彼は塞ぎ込むばかりで、何も話してくれなかった。 そんな日が続き、海斗が部屋で刺繍をしながら溜息を吐いていると、廊下が急に騒がしくなった。「カイト様、大変です!ジェフリー様が・・」 海斗が自室から飛び出してジェフリーの元へ向かうと、そこには全身傷だらけの彼の姿があった。「どうしたの?」「母様、俺は父様の子じゃないの?」「一体、誰がそんな事を・・」「ラウル様が・・」 ジェフリーは、ラウルの親族の子供達から己の出自についてからかわれ、彼らと取っ組み合いの喧嘩をしたのだった。「まったく、粗暴な所は誰に似たのかしら。」 ラウルはそう言うと、何処からか鞭を取り出した。「お前には、躾をしないとね。」「お止め下さい!」「一体何の騒ぎです、伯母様!?」「ビセンテ、息子をちゃんと躾けないと、乱暴な子に育ってしまうわ!」「これは、わたし達親子の問題です。伯母様は口出ししないで頂きたい!」「お前も、随分偉くなったものだね!」 ラウルはそう言ってビセンテを睨むと、去っていった。「ジェフリー、おいで。」「ごめんなさい。」「何を謝る事がある?お前は自分の誇りを守ったんだ。お前は、わたしの自慢の息子だ。」 ビセンテは、そう言うとジェフリーを抱き締めた。「あぁ、ビセンテの奴、生意気な口を利くようになって・・」「ふん、あんたの操り人形になれる人間なんて、そういやしないさ。」 ヤン=グリフィスは、そう言うと女主人を見た。「あいつはもう利用価値がない。どうすれば、あいつを葬れるのかしら?」 ラウルがそう言った時、何処か慌てふためいた表情を浮かべた侍女が部屋に入って来た。「奥様、大変です!」「何、うるさいわね。一体、どうしたっていうの?」「それが・・」「ラウル=デ=トレド、貴様を国家反逆罪で逮捕する!」「やめろ、離せ!」「伯母様・・」「ビセンテ、良くもわたしを裏切ったわね!お前には甘い汁を吸わせてやったというのに・・」「わたしは、もうあなたの言いなりにはなりません。」 ラウルは、国家反逆罪で逮捕された。「ラウル様が、どうして・・」「わたしが陛下に密告したのだ。もう、お前を苦しめるような事はしない。」「ビセンテ様・・」 海斗はビセンテと口づけをかわすと、ビセンテの愛撫に身を任せた。「愛している、カイト・・」「わたしも・・」 ビセンテと愛を交わした後、海斗は己の身体の異変に気づいた。「おめでとうございます、妊娠しておられますよ。」「母様、俺兄ちゃんになるの?」「そうよ。」 月満ちて産まれたのは、ビセンテと瓜二つの顔をした女児だった。にほんブログ村
2022年09月27日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。一部性描写が含まれます。「カイト、息災で何よりじゃ。」「陛下、わざわざお越し下さりありがとうございます。」エリザベス女王は、海斗の背後に隠れている金髪碧眼の少年を見た。「可愛らしい坊やじゃ、名を何という?」「ジェフリーです、陛下。」海斗が答えに窮していると、ビセンテが代わりに答えた。「産まれた時はあんなに小さかったのに、大きくなったのう。」「はい。」海斗は、自分のドレスの裾を掴んで離さない息子の頭を撫でた。「申し訳ありません、人見知りで・・」「謝らなくても良い。」宴の間、海斗は使用人達に色々と指示を出したり、客達と歓談したりして忙しく荘園内を走り回っていた。小さなジェフリーにとって、宴は楽しいものだったが、所詮それは大人達の集まりで、彼はすぐに退屈してしまった。「やぁ、久し振り。」エヴァンジェリン家の薔薇園の奥に、かつて海斗の相棒だった狼の墓があった。「君の子供達は、元気に今日も走り回っているよ。」ジェフリーがそう言った時、一匹の狼が彼の元へと駆けて来た。「ジュリー。」ジェフリーがその狼の頭を撫でると、狼は嬉しそうに鳴いた。「良い子だ。」ジェフリーは、そう言うと厨房からくすねて来た肉をジュリーにやった。「ジェフリー、ここに居たのね。」「母様。」「ジュリーも、大きくなったわね。」「ビセンテ、未だにカイトと床入りを済ませていないのはどうして?」宴の後、夕食の席でラウルはそうビセンテに問い詰めると、彼と海斗を睨んだ。「伯母様、それは・・」「カイト、あなたはどう思っているの?」「俺は・・」「いい事、今夜床入りを済ませなさい。」その日の夜、海斗とビセンテは結婚して以来、初めて同じ寝室で眠った。「こうして、あなたと隣で眠るだけでも胸が高鳴って・・」「わたしもだ、カイト。」寝台の中でビセンテと海斗がそんな話をしていると、ラウルが寝室に入って来た。「こんな事だろうと思っていたわ。」「伯母様・・」「わたしが見届けるから、ビセンテ・・後は、わかるわね?」「カイト、わたしは・・」「ビセンテ様、ひとつ約束をして下さい。あの子を・・ジェフリーを守ってやって下さい。」「わかった。」ビセンテは海斗を傷つけぬよう、優しく彼女を抱いた。「母様?」悪夢にうなされたジェフリーが、眠い目を擦りながら両親の寝室へと向かおうとした時、中からくぐもった母の呻き声が聞こえて来た。寝室の隙間から中を覗くと、母が父の上に裸で跨っていた。母が腰を揺らす度に、彼女の炎のような赤毛が揺れた。やがて父は、母の腰を掴んでそこに爪を立てると、大きく呻いて果てた。ジェフリーは、目の前で起こっている出来事を理解出来なかった。「本当にお前は、ビセンテに似ていないわね。」両親の情事を目の当たりにし、呆然としたジェフリーが自室へと戻ろうとすると、彼は運悪く廊下で自分を憎んでいるラウルとぶつかってしまった。ラウルは、冷たく光る黄金色の瞳でジェフリーを睨みつけ、乱暴にジェフリーの髪を掴んだ。ジェフリーが痛みに悲鳴を上げると、ラウルは嬉しそうに笑いながら、こう言った。「その金色の髪と蒼い瞳・・あの海賊と瓜二つの顔をしているわ。」「あなたは・・俺のお父様が誰なのか、知っているの?」にほんブログ村
2022年09月26日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。 ビセンテに一晩中啼かされ続け、何度も絶頂に達した海斗は、指一本すら動かせない位体力を激しく消耗していた。「失礼致します。」「あの・・」「奥様に、カイト様のお身体をお清めするようにと命じられましたので・・」「あの・・」「わたくし達は、カイト様の事を“全て”知っております。」 数人の侍女達に気圧された海斗は、そのまま彼女達に身体を清められた。「これをお飲みください。」「それは・・」「避妊薬よ。まぁ、必要無いと思うけれどね。」 ラウルは侍女達を部屋から下がらせ、海斗と二人きりになった。「そんなに怯える事は無いさ。お前を10年も生かし続けて来たのは、それなりの理由があるからね。」 ラウルはそっと、海斗の薄い下腹を撫でた。「ビセンテは、お前を狂おしい程に愛しているから、お前を殺しはしない。」「それは、一体どういう意味・・」「この家には、跡継ぎが必要よ。」「俺は・・」「この厳しい世を生き抜く為には、お前は賢くならないとね。」 ラウルはそう言うと、そのまま部屋から出て行った。(一体、俺はどうすれば・・)「伯母様、おはようございます。」「おはよう、ビセンテ。昨夜はカイトを苛め過ぎたようね?」「わたしは・・」「カイトが妊娠するのも時間の問題ね。」 あれから、ビセンテは箍が外れたように海斗を毎晩激しく抱いた。 その所為で、海斗は声が掠れてしまった。「申し訳ありません、陛下・・」「お前はわらわの道化師じゃが、その前に一人の人間じゃ。身体を大事にせよ。」「はい・・」 声が掠れただけではなく、謎の倦怠感と吐き気に海斗は悩まされていた。「カイト、どうした?大丈夫か?」「ジェフリー・・」 廊下を海斗が歩いていると、彼女はプリマスに居る筈のジェフリーとぶつかってしまった。「ごめんなさい、俺・・」「立てるか?」 激しい眩暈に襲われた海斗は、その場で気を失った。 海斗が目を覚めると、そこは心配そうに自分を見つめているジェフリー達の姿があった。「ここは・・」「陛下の私室だ。お前が急に倒れたから、陛下のご厚意に甘えてお前をここで休ませる事にしたんだ。」「そんな・・」「カイト、まだ起き上がってはならぬ。今は腹の子の事だけを考えよ。」 女王の言葉を聞いた海斗は、そっとまだ膨らんでいない下腹を撫でた。「そなたの美しい子守唄を聞ける子は、幸せじゃな。」「はい・・」 海斗は妊娠によって、女王の専属道化師の人を解かれた。 そして、海斗は雪が舞い散る中、ビセンテと華燭の典を挙げた。 5年もの歳月が経ち、エヴァンジェリン邸では夏を祝う宴が開かれた。にほんブログ村
2022年09月23日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。一部性描写が含まれます。「俺は、婚約者が居るというのに、他の男に惹かれてしまっているんです。」「恋というものは、人を狂わせる。己の心に聞くが良い。」「はい・・」「それよりも、最近そなたの芸風が変わったと、ギャリーから聞いたぞ。」「え?」「あやつが言うには、そなたの歌と踊りに、微かに色気が漂っているとな。」「そんな・・」「恋というものは、芸を彩るもの。じゃが、一歩間違えば破滅に繋がる。」「肝に銘じます。」 海斗が女王の部屋から出て王宮の廊下を歩いていると、突然彼女は何者かに唇を塞がれた。「誰?」「カイト・・」「その声は、ビセンテ様?どうして、こんな・・」「今の君を、誰にも渡したくない。」 そう言って海斗を見つめたビセンテの翠の瞳は、欲望に滾っていた。 己の腰に、何か硬いものが当たっている事に海斗は気づいた。「今ここで、君を抱けたらどんなにいいか・・」「いけません・・」「ビセンテ、何をしているの?」 海斗とビセンテが揉み合っていると、そこへラウルが侍女達を連れて通りかかった。「いけないわ、こんな所でそういう事をしては。そうだ、今晩我が家にいらっしゃい、カイト。陛下の許可は取ってあるわ。」「はい・・」「それじゃぁ、わたしはこれで失礼するわね。」 ラウルはそう言って笑うと、二人の前から去っていった。 その夜、海斗とビセンテはトレド家の晩餐会に招かれた。「今宵の牡蠣は、フランスからわざわざ輸入された、新鮮なものですよ!」「まぁ、美味しそうね!」「皆さん、未来ある二人に乾杯!」「乾杯!」 楽しい晩餐が終わり、ビセンテと海斗は同じ寝室で休む事になった。「ビセンテ様、あの・・」「漸く二人きりになれたな、カイト。」 ビセンテはそう言うと、海斗を抱き締め、寝台の上に押し倒した。「お前は、どこもかしこも甘い匂いがするな。」 ビセンテは海斗にキスの雨を降らせると、彼女の桜色の乳首を舌で嬲った。「あぁっ、あ!」「濡れているな、カイト。」 ビセンテが海斗の中を激しく掻き回していると、そこから透明な蜜が溢れ出て来た。「そろそろ頃合いだな・・」 ビセンテはそう言うと、己の猛った肉棒を海斗の中に容赦なく打ち込んだ。「はぁ、はぁっ・・」 頭から爪先までキスの雨を浴び、海斗はビセンテの腕の中で何度も蕩けた。「そう、ビセンテが・・」「甥を嗾(けしか)けるなんて、あんたも悪趣味だな。」「わたしがあの子の内なる欲望を目覚めさせただけよ。スペイン男の愛は、激しくて情熱的なのよ。」「あんたの死んだ旦那のように、か?」「子は授からなかったけれど、あの人は四六時中わたしを求めたわ。まぁ、今となっては良い思い出だけれど。」にほんブログ村
2022年09月22日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「伯母様、今の話は本当なのですか?」「あなた、一体何を言っているの?」ビセンテがラウルにそう尋ねると、彼女はそう言ってビセンテを見た。「お願いです伯母様、真実を話して下さい!」「誰に向かって口を利いているんだ、お前!」突然ドスの効いた声で自分に怒鳴って来たラウルを、ビセンテは怯えた表情を浮かべながら見た。「お前が黙っていれば、お前も、カイトもずぅっと幸せでいられる。」「伯母様・・」「この世には、二種類の人間が居る。強い者と、弱い者。強い者になる為には、賢く生きなければいけないのよ。」「真実に蓋をして生きろと?」「今までみんなそうやって生きて来た。他人の事ばかり慮っても、強くなれないのよ。」(わたしは、どうすればいい・・)「大丈夫、お前は賢いから、命だけは助けてあげる。その代わり・・」ラウルはビセンテの耳元で悪魔の言葉を囁いた。「カイトを、抱きなさい。」「わたしは、まだ・・」「欲しい物は、必ず奪い取る。それが他人の物でもね。」「カイトを、助けてくれますか?」「勿論よ。」ラウルは、天使のように優しくビセンテに微笑んだ。「カイト、気が付いたか?」「ここは・・」「カササギ亭の中だ。お前は、宮廷で“天使の貴婦人”に掴みかかっただろう?」「あいつは天使なんかじゃない!あいつは、悪魔だ!」「教えてくれ、彼女は一体お前に何をした?」海斗はラウルが10年前、レティシアを殺し、自分を殺そうとした事をジェフリー達に話した。「そんな事が・・」「ビセンテ様は、きっと気づいていると思う。」「そうか。だが、これからどうする?もし、お前の婚約者がラウル側についていたら?ラウルに、お前の命を人質として取られ、ビセンテがラウルに服従を強いられていたら・・」「彼はそんな事は・・」ビセンテは、優しく誠実な人だ。でも、もし―「カイト、見つけたぞ。」部屋の扉が乱暴に開き、ビセンテが中に入って来た。「ビセンテ様・・」「君を迎えに来た。」「そう・・」ラウルの真実を―本性を知った今となっては、海斗はビセンテに抱き締められても、少しも嬉しくなかった。「あなたが・・」「わたしの婚約者が、世話になりましたね。」慇懃無礼な口調でビセンテはジェフリーにそう言った時、海斗は嫉妬に燃える彼の翠の瞳に気づいた。「ジェフリー、この子をお願い。」「わかった。」寂しそうに鳴くジェラルドの頭を撫でると、海斗はビセンテと共にカササギ亭を後にした。「陛下、わたくしとカイトとの結婚を認めて下さいますよう・・」「ならぬ。カイトはわらわの専属道化師、いくらそなたでもその頼みは聞けぬ。」海斗は、女王の言葉を聞いて安堵の溜息を吐いた。「カイト、陛下がお呼びよ。」「は、はい・・」「カイト、そなたの心は今、揺れているのであろう?」「陛下・・」にほんブログ村
2022年09月21日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「カイト・・」「いけない事だって、わかっているよ。でも俺は、あなたの事が好きなんだ。」 海斗は、そう言った後ジェフリーに抱き着いた。 ジェフリーは、欲望に支配されて頭が爆発しそうだった。「お前には、婚約者が・・」「でも、今まで俺を支えてくれたのはあなただ。」「後悔しないか?」 ジェフリーの問いに、海斗は静かに頷いた。 子供の頃、屋敷の侍女達が“初めて”の時は痛いと話していたが、痛いのは最初だけだった。「ジェフリー・・」「カイト・・」 ジェフリーの背中に爪を立てながら、海斗は快楽の頂に達した。「起きなさい。」「う・・」 冷水を頭からかけられ、ピッポが低く目を開けると、そこは暗く湿った地下牢だった。「お前に色々と聞きたい事があるのよ。」 ラウルはそう言うと、ピッポを見た。「奥様・・」「カイトは?お前がここへ連れて来たものとばかり思っていたけれど・・」「そうする前に、金髪の伊達男が・・」「そう。」「奥様・・」「さぁ、これを持って消えなさい。」「はい・・」 ピッポが屋敷から去った後、ラウルは彼の後をつけるよう、男に命じた。 その日の夜、ピッポの遺体が溝で発見された。 彼は喉を真一文字に切り裂かれていた。「ピッポが死んだ?」「あぁ。」「ピッポが死んだ!?」 天蓋の中から上半身裸の海斗が出て来たので、ナイジェルは思わず目を伏せた。「ジェフリー、話がある。」「わかった。」 海斗を部屋に残し、ジェフリーはナイジェルと共に娼館から出た。「あんた、一体どういうつもりだ?貴族の娘に手を出して。絞首台に送られるぞ!」「わかっているさ、そんな事。」「ジェフリー、お前・・」「これまで、俺は散々浮名を流してきたが、あいつだけは・・カイトだけは特別なんだ。」「これからどうする?」「さぁな。先の事はわからない。」 海斗がジェフリーと共に宮廷に戻ると、一人の貴婦人が海斗に駆け寄って来た。「カイト、生きていたのね、良かった!」「あ・・」 海斗の脳裏に、美しい悪魔の顔が浮かんだ。「俺に触るな!」「カイト?」「この人が、お母様を・・」 海斗はそう言うと、ラウルを睨みつけた。「カイト、どうしたの?」「あなたが、お母様を・・」「カイト。」 頭上から声がして海斗が俯いていた顔を上げると、そこには黒衣の青年―ビセンテの姿があった。「ビセンテ様・・」「カイト。」 ビセンテは、海斗がラウルに怯えている事に気づいた。「どうした、カイト?」「この人が、お母様を・・」 海斗はそう言うと、気を失った。にほんブログ村
2022年09月20日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。 海斗はエリザベス女王専属の宮廷道化師となり、忙しい日々を送っていた。「おい、犬っころの躾をちゃんとしておけよ!」「はい・・」 道化師仲間達は皆新入りの海斗に親切だったが、今彼女の前に居るピッポだけは違った。 彼は女王のお気に入りとなった海斗が気に入らないのか、暇さえあれば海斗に嫌がらせしてきた。 こういう類の人間には何を言っても無駄なので、海斗はピッポを無視する事にした。 だがピッポの方は、海斗を追い出そうと躍起になり、とうとう彼はある事件を起こした。 それは、冬の訪れを感じるようになった、肌寒い日の事だった。(あ~あ、最悪・・) 下腹部の鈍痛で目覚めた海斗は、経血で汚れたシーツを洗う為に、狼のジェラルドと共に宮殿の外へと出た。 外は、雪が降っていた。 水を張った盥の中で経血で汚れたシーツを海斗が洗っていると、ジェラルドが突然海斗に向かって唸った。「どうしたの、ジェラルド?」 海斗はジェラルドを落ち着かせようとしたが、彼は唸るのを止めなかった。「見つけたぜ、商売敵。」「ピッポ・・」「清純そうな顔をして、とんだ尻軽だったとはなぁ。」「何を言っているの?」「知らないとは言わせないぜ。お前、毎晩あの金髪の伊達男のモノを嬉しそうに咥え込んでいるみたいじゃねぇか?」 ピッポはそう言うと、持っていた短剣で海斗のシャツを切り裂いた。「やっぱりな。男の振りをしても、お前が女だって事は前から気づいていたぜ。」「ひっ!」 ピッポがこれから自分に何をするつもりなのかを海斗は悟り、助けを呼ぼうとしたが、その前に彼女はピッポに猿轡を噛まされてしまった。「暴れるな。ちょっと天国を見せてやるからさぁ・・」 ピッポがそう言いながら自分が穿いていたホーズの前を寛げようとした時、彼はそのまま前のめりに倒れ、動かなくなった。「カイト、大丈夫か?」「ジェフリー・・」「これを上から羽織れ。そんな格好のお前を連れて歩く訳にはいかないからな。」 切り裂かれたシャツの隙間から見える胸の谷間を見ないようにジェフリーはそう言いながら、海斗に自分が着ていた天鵞絨のマントを羽織らせた。「ピッポは?」「あいつは気絶しているだけだ。」 ジェフリーは海斗とジェラルドを連れて、行きつけの娼館「カササギ亭」へと向かった。「あら、久し振りじゃない、ジェフリー!そちらの可愛いお嬢さんはだぁれ?」「部屋は空いているか?」「ええ。」 娼婦に部屋を案内されたジェフリーは、海斗が自分を見つめている事に気づいた。「どうした?」「あなたは、俺の事をどう思っているの?」「どうして急にそんな事を言うんだ?」「あなたの事が、好きだから。」にほんブログ村
2022年09月19日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「実は、あなたが淫売宿に行っている間に、この子に芸を仕込んだんだ。」「やるな。だが、お前さんの命を狙う刺客達の目をどうやって誤魔化すんだ?」「俺が、男装するっていうのは?向こうは、俺の事を“貴族の姫”としか思っていないようだし。」「名案だな。だがひとつ、問題がある。ナイジェルをどう説得するつもりだ?」「それは、今から考える。」海斗はそう言った後ナイジェルの部屋のドアを叩くまで、かなり時間がかかった。「駄目だ。」「絶対に迷惑をかけないから、お願い!」「ナイジェル、カイトもそう言っているんだから許してやれ。」「わかった。」ナイジェルは渋々と海斗の案を呑んだ。「本当に、いいのか?」「いいよ。髪が短い方が手入れしやすいし。」「そうか。」こうして海斗は長い髪を切り、ドレスを脱いで、狼と共に旅する芸人となった。海斗と狼の息の合ったダンスは、行く先々で話題となった。エディンバラを一行が出発してから一週間後、彼らはロンドン入りした。「おかしら、大変でさぁ!」「どうした、ユアン?」「実は、俺達の事を貴族の旦那様方が聞きつけたみたいで・・」「早く用件を言え!」「女王陛下が、俺達に至急宮廷に参上せよと・・」「そなたか、巷で噂の狼使いというのは?」「はい、陛下。」「緊張せずとも良い。いつもと同じように芸をせよ。」「わかりました。」海斗はいつも路上で芸をする時のように、狼と息の合ったダンスを女王の前で披露した。「見事なダンスであったぞ。」「ありがたきお言葉でございます、陛下。」「その赤い髪‥見た事があるぞ。そうじゃ、そなたの洗礼式で、わらわはレティシアに抱かれていたそなたを見た・・カイト。」「陛下・・」「決めた、今日からそなたはわらわの宮廷道化師とする!」「陛下、素性がわからぬ者を宮廷に出入りさせるなど・・」「お黙り!わらわの言葉は、神の言葉と同じ事。」「は、はぁ・・」こうして海斗は、エリザベス女王専属の道化師となった。「陛下、何故俺を・・」「ロックフォードから、そなたの命を狙う者の話を聞いたのじゃ。それがどのような者でも、神の代理人であるわらわに手出しは出来まい。」女王はそう言うと、海斗に微笑んだ。「今、何と言ったの?」「カイト様は、女王陛下の専属道化師となりました。」「やってくれたわね、ロックフォード!」(卑しい海賊が、わたしを出し抜こうなど愚かね。でもわたしは悪魔に魂を売った女・・ロックフォード諸共お前を今度こそこの世から葬り去ってやるわ、カイト!)悪魔の哄笑が、不気味に闇の中で木霊した。にほんブログ村
2022年09月16日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。 ジュリア達に別れを告げ、海斗がジェフリーと共に修道院から去ろうとした時、一匹の狼―海斗の手を舐めた狼が、二人の前に現れた。「ごめんなさいね、お前を連れてはいけないの。」 海斗がそう狼に話し掛けると、狼は悲しそうな声で鳴いた。「連れて行け。お前の護衛にはなるだろう。」「いいのですか?」「あぁ。宿の主人には俺が金をやる。何せ、スペインとの戦争で色々と稼いだからな。」「そうですか。」「済まない、気を悪くしたのなら謝る。」「いいえ。」 修道院を出発してエディンバラの街に到着した二人は、宿屋「銀と百合亭」へと入った。「いらっしゃいませ。お客さん、狼はちょっと・・」「ネズミ除けにはなると思うが?」 ジェフリーはそう言うと、宿の主人に金貨が詰まった袋を手渡した。「そうだ、二階の一等上等な部屋が二部屋あったんでした!今からご案内致しやす!」「ほらな?」 宿の主人に案内された部屋は、清潔なシーツが敷かれているベッドと暖かい毛布があった。「すいません、お風呂に入りたいのですが・・」「そうですか、では今から温かいお湯を桶ごと持って参りますね!」「修道院ではどんな風に暮らしていたんだ?」「朝夕の祈りをしたり、ハーブで石鹸を作ったりしていました。」 海斗はそう言うと、修道院から持って来た荷物の中からラベンダー石鹸を取り出した。「これを、旅のお供に持って行きたくて・・」「そうか。」「旦那ぁ、両手が塞がっているんで、ドアを開けて貰えませんかね?」 ジェフリーがドアを開けると、桶ごと清潔な湯を持って来た主人が部屋に入って来た。「それじゃぁ、ごゆっくり。」 宿の主人はそう言うと、意味ありげな視線をジェフリーと海斗に送って部屋から出て行った。「一緒に入るか?」「え・・」「冗談だ。」「あの・・俺が風呂に入っている間、向こうを向いて貰ってもいいですか?」「わかった・・」 ジェフリーがそう言って海斗に背を向けた時、彼は己の股間が張り詰めている事に気づいた。 初めて会った時はまだ小さな子供だったが、10年もの歳月が経ち、彼女は美しい蝶へと変身していた。 このまま、彼女を押し倒せたら―ジェフリーは一瞬、そんな考えに駆られたが、寸での所で思い留まった。「ジェフリーさん?」「少し、外の風に当たって来る。」 ジェフリーは海斗にそう嘘を吐いて、宿屋の近くにある淫売宿で一晩を過ごした。「さてと、これからどうする?」「お金を稼ぎながら旅をするのはどう?」「良い考えだな!でも、どうやって稼ぐ?」「まぁ、見てて。」 海斗はそう言うと、狼に踊りの芸をさせた。「凄いな、いつこいつに芸を仕込んだんだ?」にほんブログ村
2022年09月14日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「エリス、薔薇を摘み終わったら、厨房を手伝って!」「はい・・」 赤毛の修道女・エリス―海斗は、薔薇を摘み終え、厨房へと向かった。 彼女がこの、聖天使修道院で暮らすようになったのは、今から10年前、美しい悪魔から全てを奪われた日の夜の事だった。 あれから彼女は、親切な男に拾われ、彼の故郷であるエディンバラへと向かった。「お前さん、名前は?」「わたしは・・」 海斗は首を絞められ、後頭部を何者かに殴られた所為で記憶を失っていた。「そうか。酷い目に遭ったみたいだなぁ。じゃぁ、俺があんたに名前をつけてやろう、今日からあんたは、エリスだ!」「エリス・・素敵な名前。」 こうして海斗は、“エリス”として新しい人生を歩む事になった。「じゃぁな、エリス。」「ありがとう、ジェラルドさん。」 聖天使修道院の前で命の恩人・ジェラルドと別れた海斗は、そこで修道女として暮らし始めた。 修道院での生活は、華やかで賑やかだった宮廷での生活と比べると、穏やかで静かなものだった。 朝夕の祈りをし、ハーブや薬草で石鹸を作ったり、菜園で採れた野菜をスープにしたりと、朝から晩までやる事は多いが、海斗は毎日が充実していた。「エリス、院長先生がお呼びよ。」「はい・・」 海斗が修道院の廊下を歩いていると、木陰の向こうから視線を感じた。(何だ、今の?)「きゃ~、誰かぁ!」「狼よ、狼が出たわ!」 修道女が悲鳴を上げて逃げ惑う中、狼はわき目も振らず真っ直ぐに海斗に向かっていった。 海斗は逃げる事なく、狼の目をじっと見つめた。 すると狼は、海斗の手を舐めた。「カイト。」「院長様・・」「来なさい、話があります。」「はい・・」 聖天使修道院院長・ジュリアは、そっと海斗の頬を撫でた。「あなた、まだ記憶が戻っていないの?」「はい・・俺は、一体何者なのでしょう?」「あなたは、カイト=エヴァンジェリン。エヴァンジェリン家の跡取り娘よ。」 ジュリアはそう言うと、海斗にある物を手渡した。 それは、レティシアが死の間際まで身に着けていたロザリオだった。「カイト、スペインへお逃げなさい。ここは危険です。」「何故です?」「あなたを、スペインまで送り届けてくれる方がこちらにいらっしゃいましたよ。」 そう言って扉を開けたジュリアは、部屋の中に数人の男達を招き入れた。「久し振りだな、カイト。」「あなたは・・」目尻に皺が寄っていたが、ジェフリー=ロックフォードの美貌は10年の時を経ても衰えていなかった。「ロックフォード殿、カイトの事を頼みましたよ。」「わかりました。」 こうして、海斗はジェフリーと共に再び旅に出る事になった。にほんブログ村
2022年09月13日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「本当に大丈夫なのか?」「何が?」「レティシア様を殺したのは、あんただろう?」「そう言う事は、知っていても黙っておくのが賢い生き方というものよ。」「赤毛の娘は、どうするつもりだ?あの娘は、曲がりなりにも貴族の娘だぞ?」「わたしは、己の欲望を満たす為ならば、手段を選ばないのは知っているでしょう?」 ラウルの氷のような冷たい声が、海斗の耳朶を突き刺した。(ラウル様が、お母様を・・)「それで、どうするつもりなんだ?」「事故に見せかけて殺すのさ。丁度舟遊びには良い季節だし・・」 ラウルがそう言った時、廊下で大きな音がした。「人の話を盗み聞きするなんて、悪い子ね。」 ラウルはそう言うと、海斗の頬を優しく撫でた。「あ、あなたが・・」「お前は、頭が悪いようだねぇ?残念だよ。」 黄金色の瞳を妖しく光らせ、ラウルはまるで歌うような口調で言った後、後ろに仕えていた男に目配せした。「嫌だ、助けて!」「さようなら、カイト。天国でレティシアと仲良くね。」 海斗は男に首を絞められ、意識を失った。(お母様・・)「遺体は川に捨てなさい。」「わかった。」 ラウルは海斗の首に提げられていたロザリオを鎖ごと毟り取った。 絹を裂くような悲鳴が屋敷の外から聞こえ、ビセンテはゆっくりと目を開け、寝台の中で寝返りを打った。 そこへ、彼の乳母がやって来た。「ビセンテ様、大変です!カイト様が・・」 ビセンテが乳母と共に屋敷の外へと出ると、そこには人だかりが出来ていた。「ビセンテ・・」「何があったのですか?」「カイトが昨夜、足を滑らせてそのまま川に・・」「そんな・・」 ビセンテが野次馬達を掻き分けると、そこには布を被せられている婚約者の遺体があった。「嘘だ!」「可哀想に、亡くなる前まで神に祈っていたのね。」 そう言ってラウルがビセンテに見せたものは、彼女が生前肌身離さず身につけていたロザリオだった。(カイト・・) 海斗として立派な葬儀を行われた哀れな洗濯女の娘は、エヴァンジェリン家の立派な墓に葬られた。「ビセンテの様子は?」「お部屋で塞ぎ込んでおられます。」「そう。」 ビセンテを診察した医師によると、彼は精神に大きな負担がかかってしまったのだという。「時が全てを解決してくれるわ。」「ええ・・」 海斗の死から、10年もの歳月が経った。 ロンドンから遠く離れたエディンバラ近郊にある修道院の薔薇園で、薔薇を摘んでいる修道女の姿があった。 彼女の髪は、炎のように赤かった。にほんブログ村
2022年09月12日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「まぁ、お世辞が上手くなったわね。この様子ならば、宮廷にいつ出ても大丈夫ね。」「奥様・・」「堅苦しい呼び方はもう止めて頂戴。遠縁とはいえ、わたしとあなたは伯母と甥ではないの。」「そうでしたね、ラウル様。」「あなたの妹さんと、哀れなエヴァンジェリン伯夫人の最期を聞いたわ。神様は時に残酷な事をなさるのね。」「ええ・・」 海斗の養母であるレティシアは、自室で就寝中に、屋敷に侵入して来た賊に惨殺された。 その賊は、数日後顔を潰された状態で、遺体となって発見された。「二人の魂が安らかでありますように、アーメン。」「アーメン。」「あの子には、もう会った?」「いいえ。」「いずれ、あの子とはここで会えるわ。それまで、長旅の疲れをゆっくりと癒しなさい。」「はい・・伯母様。」 ビセンテは“天使の貴婦人”ことラウルに向かって深々と一礼した後、部屋から辞した。「奥様、大奥様がお呼びです。」「わかったわ。」 ラウルは溜息を吐くと、徐に座っていた長椅子から立ち上がった。 面倒な事は早く済ませてしまおう。「お義母様、わたくしにお話とは何でしょうか?」「あなたでしょう、レティシアを殺したのは?」「何の事です?」「とぼけるのはお止し!お前が今まで何をして来たのか、わたしにはお見通しなんだ!」「・・誰のお陰で、この家が大きくなっていると思っているんだ、婆。」「ひ、ひぃっ!」 目障りだった姑は、突然ラウルの前で苦しみ、息絶えた。「大奥様!」「お医者様を!」 ラウルは悲嘆に暮れる振りをしながら、姑の葬儀に参列した。「どうして、わたくしの周りには死の影が付き纏うのかしら?」「伯母様・・」「ビセンテ、あなただけが頼りよ。」 ラウルはそう言うと、ビセンテにしなだれかかった。「ビセンテ様・・」「まぁカイト、来ていたのね。」 ラウルは海斗を見てそう言うと、ビセンテから離れた。「あの・・」「さっきは、少し気分が悪くなってしまって、ビセンテに支えて貰っていたの。そうよね、ビセンテ?」「は、はい・・」「それではわたしはこれで失礼するわ。」 久し振りにビセンテと会えたというのに、何故か海斗は嬉しくなかった。「さっきの事は・・」「あの方が、ビセンテ様の伯母様なのですね。とても綺麗な方・・」「わたしは、君しか・・」「もういいです!」 自分を抱き締めようとしたビセンテの手を、海斗は邪険に払い除けてしまった。(後で、ビセンテ様に謝らないと・・) 海斗がそんな事を思いながらベッドの中で寝返りを打っていると、廊下から人の話し声が聞こえて来た。にほんブログ村
2022年09月09日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。バンベリーを発ったジェフリー達一行が漸くロンドンに到着したのは、彼らがデヴォンを発ってから一週間が経った頃だった。「ここだ!」海斗はレティシアから渡された手紙に書かれた住所を頼りに、ロンドンのシティにある貴族の家を訪ねた。「すいません、誰か居ませんか~!」「まぁカイト、良く来てくれたわね!」屋敷の主人であるエリスは、海斗を見るなり破顔して彼女を抱き締めた。「デヴォンからここまで遠かったでしょう?」「はい。」「マリーは?彼女はあなたと一緒だと思っていたのだけれど・・」「マリーは亡くなりました・・盗賊に襲われて・・」夕食の席でエリスからマリーの事を尋ねられ、海斗はそう言った後唇を震わせて目を伏せた。「まぁ、ごめんなさい・・」「いいえ。知らなくて当然ですわ。」「彼女の御魂が安らかでありますように、アーメン。」「アーメン。」海斗達は、マリーの冥福を祈った。「ねぇ、これからあなた達はどうするの?」「デヴォンに戻る。俺達の役目は終わった。」「今までありがとう、ジェフリー。あなた達に会えて良かった。」「俺もだ、カイト。」別れの日の朝、海斗とジェフリーは抱擁を交わした。「ジェフリー、あなたに主のご加護がありますように!」「元気でな、カイト!」海斗は、ジェフリー達の姿が見えなくなるまで彼らに手を振った。「ジェフリー、いいのか?」「何がだ?」「あのお姫様の事さ。」ナイジェルの言葉を聞いた時、ジェフリーは苦笑いを浮かべた。「俺は、遠くから見守る事しか出来ないのさ。あの子は貴族のお姫様、俺はしがない私掠船乗り。結ばれない恋をしても、仕方無いだろう。」「そうか。」「さてと、感傷に浸るのはもうやめて、帰るとするか。俺達の根城、プリマスに。」「あぁ。」スペインとの戦が迫る中、恋にうつつを抜かしている暇はない。(俺の居場所は宮廷じゃない。)「あの伊達男は誰?」「と、言いますと?」「あの娘と共にロンドンまで来た護衛の男だよ。」「あの方は、ジェフリー=ロックフォード殿といって、プリマスの私掠船乗りだとか。」「私掠船乗り・・あんな美男子が海賊ならば、わたしも船に乗ってみたいわ。あぁ、でも無理ね。わたしは、船上の生活よりも宮廷に居る方が性に合っているわ。」フランドルレースをふんだんに使った扇子で顔を扇いでいた“天使の貴婦人”は、口元に浮かべた。「奥様、お客様です。」「そう、お通しして。」「失礼致します、マダム。」部屋に入って来たのは、まだ幼さを残したビセンテだった。「暫く会わない内に、逞しくなったわね。」「奥様も、会わない内にお美しくなられましたね。」にほんブログ村
2022年09月08日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「カイト様、お逃げ下さい!」「マリー!」 ジェフリー達がならず者達と斬り結び、辺りに激しい剣戟の音が鳴り響き、海斗は天鵞絨のマントを目深に被り、元来た道を引き返した。「待て~!」 背後から声が聞こえ、慌てた海斗は川の中へと入っていった。 春先の川の水は、氷のように冷たかったが、海斗は躊躇うことなくその中を歩いていった。 絹のドレスは水を吸ってたちまち重くなり、海斗は水の中で足を取られ、溺れてしまった。(誰か、助けて・・) 海斗は、意識を失った。「おい、大丈夫か!?」「肋骨の辺りを叩く、水を飲み込んでいるかもしれん!」 ジェフリーはそう叫ぶと、海斗の肋骨を拳で叩いた。 すると彼女は、勢いよく水を吐き出した。「どうして、水の中に入った!俺が助けなければ、死んでいたぞ!」「ごめんなさい・・」「そう怒るな、ジェフリー。気が動転してしまったんだろう。」 右目に眼帯をつけた男―ナイジェル=グラハムは、そう言って海斗に自分のマントを羽織らせた。「それにしても、どうして俺達がここに居るのがわかったんだ?」「さぁな。それよりも、今は良い宿屋を探す事だ。」「そうだな。」 ナイジェルは気絶した海斗を抱えると、ジェフリーと共に宿屋へと向かった。「カイトには、伝えないのか・・乳母の事を。」「あの子には、目が覚めたら伝える。隠しても、必ずわかるからな。」「そうだな・・」 宿屋「白鹿亭」に着いたジェフリー達は、女将のリリーに歓迎され、彼らは一週間振りに美味しい食事と清潔なベッドにありつけた。「カイト様は、まだ眠っているのか?」「あぁ。一気に旅の疲れが出たらしい。無理もない、デヴォンからここまで歩き通しだったからな。」 ジェフリーはそう言うと、海斗の髪を優しく梳いた。「ん・・」「起きたか。」「ここは、何処?マリーは・・」「ここは俺達の行きつけの宿屋だ。残念だが、お前の乳母は死んだ。」「俺の所為で・・」「彼女は最後に、お前にこれを渡すように、俺達に伝えてくれた。」「これは・・」 ジェフリーが海斗に手渡したものは、エヴァンジェリン家に代々伝わる短剣だった。 海斗は、その短剣を握り締め、泣いた。「そう・・逃げられてしまったんだね。」「申し訳ございません、奥様!」「こちらへおいで。」 ジェフリー達を襲ったならず者の生き残りが恐る恐る主の元へと近づくと、彼女は隠し持っていた短剣を彼の首筋にめり込ませた。「がぁっ・・」「役立たず。」 彼女は天使のような微笑みを浮かべながら、冷たく用済みとなった男の遺体を見下ろした。「さっさとこれを片づけておいで。」「は、はい!」(お前を殺すのは、このわたし。だから早く、ロンドンにおいで。)にほんブログ村
2022年09月07日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「娘は何処に居る!」「知りません。」 刃を首元に突き付けられても、レティシアは毅然とした態度を兵士達の前で取った。「隊長、娘は何処にも居ません!」「娘は居りませんと申し上げましたでしょう、何度も言わせないで下さいな。」「おのれ・・」「さぁ、もう用が済んだのでしょう?」「行くぞ!」 兵士達が屋敷から去った後、レティシアはその場に崩れ落ちた。「奥様!」(カイト、どうか無事でいて。) 屋敷を出た海斗は、マリーと共に街道を歩いた。 街道には人気が無く、聞こえるのは鳥の鳴き声だった。「カイト様、急ぎませんと・・」「う、うん・・」 ロンドンはまだ遠く、海斗がマリーと共に宿屋に入ったのは、日が暮れる前の事だった。 その頃には二人共疲れ切っていて、宿の女将が振る舞ってくれた料理に舌鼓を打った後、天鵞絨のマントに包まって干し草のベッドの中で眠った。「ん・・」 海斗が目を覚ましたのは、まだ夜の帳が下りていない頃だった。「何かしら?」「階下の酒場で、ジプシー達が芸を客に見せているそうですわ。」「へぇ・・」 好奇心旺盛な海斗は、部屋から出てそっと階下の酒場を階段の手摺りの隙間から覗いた。 酒場では、ジプシーの踊り子が情熱的な踊りをして客達を楽しませていた。 軽快なタンバリンやリュートの音色を聞いている内に、海斗は階段の手摺りから身を乗り出してしまった。「カイト様!」 海斗の身体は宙に舞い、木の床に叩きつけられそうだったが、その前に金髪碧眼の男が彼女を受け止めた。「大丈夫かい、お嬢さん?」「は、はい・・」「カイト様、お転婆が過ぎますよ!奥様が今の姿をご覧になったら、何とおっしゃるか!」「ごめん、マリー。」「お前、名前は?俺はジェフリー=ロックフォード、自由気ままな吟遊詩人さ。」「俺は、カイト=エヴァンジェリン。」(エヴァンジェリン、貴族の娘か。) 自分の腕に抱かれているこの娘は、上質な天鵞絨のマントと絹のドレス姿から見て、訳有りな旅をしているようだ。「本当に、お嬢様を助けてくださってありがとうございます!」 マリーはジェフリーに感謝の言葉を述べると、胸の前で十字を切った。「あんた達、訳有りかい?」「はい。」「そうか。ここで会ったのも何かの縁だ。話を聞かせてくれないかい?」「はい、実は・・」 マリーの話を聞いたジェフリー達は、ある事を思いついた。「俺達と一緒に、ロンドンに行かないか?女二人だと何かと心細いし、自慢じゃないが、俺達は剣の腕が立つぜ。」「まぁ、ありがとうございます!」 こうして、海斗達はジェフリー達一行と共にロンドンへと向かう事になった。 だがバンベリーを過ぎた頃、海斗達の前にならず者達が現れた。「赤毛の娘だ、間違いねぇ!」「褒賞金は頂きだぜ!」にほんブログ村
2022年09月06日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「まぁ、メンドーサ様、お久しぶりですわね。」 メンドーサは、恭しくレティシアの手の甲に口づけた。 レティシアは、彼の後ろに控えている少年の姿に気づいた。「ヴィンセント、大きくなったわね。」「はい・・」「あなたの可愛い天使は、今日はいらっしゃらないの?」「マリアは、一月前に天に召されました。」「あの子の御魂が主の下で安らげますように、アーメン。」 レティシアはそう言って胸の前で十字を切った。「カイト、こちらへいらっしゃい。」「はい、お母様。」 海斗は泥だらけになりながらレティシア達の前に現れた。「まぁ、何ですその格好は?」「ごめんなさい・・」「リズ、早くこの子をお風呂に入れて!申し訳ありません、この子はとってもお転婆でして・・」「健康なのはいい事ですよ、マダム。」「そうですわね。」 レティシアがビセンテの言葉に気を良くしている頃、海斗は乳母のマリーと女中頭のリズによって風呂に入れられていた。「こんなに泥だらけになって、一体何をなさったんですか!?」「栗鼠を追い掛けていったら、泥濘の中で転んじゃって・・」「もう、そんな事をされるのはおやめになって下さいませ!」「そうですわ!」「わかったよ。じゃぁ木登りや駆けっこはやめて、乗馬をするよ!」「勝手になさいませ!」 リズはそう叫ぶと、海斗に頭から湯を浴びせた。「さっき、俺を助けてくれた人は誰?」「あの方は、ビセンテ=デ=メンドーサ様、カイト様の許婚ですわ。」「許婚・・じゃぁ、あの人と俺は、将来結婚するの?」「ええ。ですから、カイト様はお転婆を控えなさいませんと!」「わかっているよ!」 自分の許婚とは知らず、ビセンテに泥だらけの姿を見られてしまい、海斗は死ぬ程恥ずかしかった。 だから、彼女はこの日から木登りをしたり、泥遊びをするのを止めた。 その代わりに、海斗は料理や裁縫、ダンス、乗馬や外国語などをレティシアや家庭教師達から学んだ。「あの子も漸く落ち着いてくれて助かったわ。」「えぇ。それよりも奥様、手紙が届いておりますわ。」「まぁ、誰から?」 レティシアは、リズから受け取った手紙に捺されている封蝋に刻印されている紋章を見て、思わず顔を顰めた。「奥様?」「カイトを呼びなさい。」「は、はい・・」「お呼びでしょうか、お母様?」「カイト、今すぐ荷物を纏めて、この手紙の送り主の元へ向かいなさい。」「何故です?」「あなたの命が、狙われています。日が暮れない内に早く!」 こうして海斗は、マリーと共に住み慣れて来た屋敷と荘園を離れ、ロンドンに居るレティシアの友人の元へと旅立った。「主よ、どうかこの世の災難からあの子をお守り下さい・・」 レティシアがそう言って胸の前で十字を切った時、武装した兵士達が広間に雪崩れ込んで来た。「奥様、お逃げ下さい!」にほんブログ村
2022年09月02日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。 黒雲が月を覆い隠そうとしている頃、ひとつの命が産まれた。「奥方様、産まれました!」「男?女?」「それは・・」「わたくしを、産屋まで案内なさい。」レティシアはそう言って椅子から立ち上がると、女が居る産屋へと向かった。屋敷の外れに、その産屋はあった。レティシアが中に入ると、干し草の中では臍の緒をつけたままの赤子が産声を上げていたが、その赤子をこの世に産み落とした母親はこと切れていた。「奥方様‥この子は・・」「この子を、屋敷の中へ。今夜は冷えるから、温かい湯に浸からせないと、死んでしまうわ。」「は、はい!」清潔な布に包まれた赤子は、男女の証が両方ついていた。レティシアが赤子を抱いて産屋から出ると、空にはいつしか美しいビッグ・ディッパー(北斗七星)が浮かんでいた。「カイト、あなたは、今日からカイトよ。」レティシアの言葉が解ったのかどうかは知らないが、赤子は嬉しそうな声を出して笑った。「カイト様、どちらにいらっしゃいますか~!」「カイト様~!」赤毛を揺らしながら、7歳となった海斗は木の上で自分を捜している侍女達を見下ろしていた。「何処へ行かれたのかしら?」「また奥様に叱られてしまうわ。」海斗が侍女達の会話を木の上で聞いていた時、突風が彼女を襲った。「カイト様!」「誰か~!」海斗はバランスを崩し、地面へと真っ逆様に落ちていった。だが彼女の身体が地面に激突する前に、黒絹のマントに彼女は包まれた。「こんな所で、赤毛の天使と会うなんて、わたしは何て幸運な人間なのだろう。」そう言って笑った少年は、翠の瞳をしていた。「あなたは、誰?」「カイト、怪我は無い?」「お母様・・」「あれ程木登りはしてはいけないと言ったでしょう!」「ごめんなさい・・」「メンドーサ様、わたくしの娘が失礼を・・」「いいえ。」「ビセンテ、ここに居たのか、捜したぞ!」「伯父上・・」ビセンテ=デ=メンドーサは、伯父が不機嫌そうな顔をしている事に気づいた。にほんブログ村
2022年08月29日
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